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ハジメ達が出ていき、雫達と二、三話をしたあと、リリアーナは今夜のパーティーの準備もあったので部屋に戻ってお付の侍女達と打ち合わせをしていた。やっていることは、主にドレスの選別だが。
「まぁ、素敵ですわ、リリアーナ様!」
「本当に……まるで花の妖精のようです」
「きっと、殿下もお喜びになりますわ!」
既に何十着と試着を済ませた果てに選ばれたドレス候補の一つを試着して、姿見の前でくるりと回るリリアーナに、周囲の侍女達がうっとりと頬を染めてお世辞抜きの賛辞を送る。十四歳という少女と女の狭間にある絶妙な魅力が、淡い桃色のドレスと相まって最大限に引き立てられていた。侍女の一人が言ったように、まさに花の精と表現すべき可憐さだった。
「そう、ね。これにしましょうか。後は、アクセサリーだけど……」
リリアーナ自身も納得したようで、一つ頷く。
いくらこれが政略結婚であり、皇太子であるバイアス・D・ヘルシャーが父親に似た極度の女好きで、過去何度か会った時も、まだ十にも届かない年齢のリリアーナを舐めるような嫌らしい視線で見やり、そのくせ実力は半端なく、王国に来た時も下級騎士を〝稽古〟と称して徒いたずらに嬲るという強さをひけらかす嫌な人間であったとしても、夫になる相手であることに変わりはない。
なので、パートナーとして恥をかかせるわけにはいかないし、自分の婚約パーティーでもある以上、リリアーナも最大限に着飾ろうと思っていた。光輝に言われた〝好きな人と〟という言葉がやけに頭にチラつくのを振り切るように。
リリアーナとて女の子だ。ハイリヒ王国の才女と言われ多くの人々から親しまれようと、女の子らしい憧れくらいある。ピンチの時に、颯爽と現れる王子様を夢見たこともあるし、偶然の出会いに惹かれあって、多くの障害を乗り越えながら結ばれるというラブストーリーを妄想したことだってある。
だが、それは有り得ない未来だ。リリアーナは聡明であったが故に、幼い頃から自分に課せられた使命とも言うべき在り方を受け入れていた。だから、心の底では嫌悪感を抱く相手であっても、立派な妻になろうという気持ちは本当であり、今夜のパーティーも立派に皇太子妃として務め上げようと決意していた。
と、その時、突然、部屋の外が騒がしくなった。そして何事かと身構えるリリアーナ達の前でノックもなしに扉が開け放たれ、大柄な男が何の躊躇いも遠慮もなくズカズカと部屋の中に入ってきた。リリアーナに付いてきた近衛騎士達が焦った表情で制止するが、その男は意に介していないようだ。
「ほぉ、今夜のドレスか……まぁまぁだな」
「……バイアス様。いきなり淑女の部屋に押し入るというのは感心致しませんわ」
「あぁ? 俺は、お前の夫だぞ? 何、口答えしてんだ?」
「……」
注意をしたリリアーナに、鬱陶しそうな表情で返したのはリリアーナの婚約相手であるバイアス・D・ヘルシャーその人である。数年前と変わらない、粗野で横暴な雰囲気を纏い、上から下までリリアーナを舐めるように見る。リリアーナの背筋に悪寒が走った。
「おい、お前ら全員出ていけ」
バイアスは、突然、ニヤーと口元を歪めると侍女や近衛騎士達にそう命令する。戸惑う彼女達に恫喝するように再度命令すれば、侍女達は慌てて部屋を出ていった。しかし、近衛騎士達は、当然渋る。それを見てバイアスの目が剣呑に細められたことに気がついたリリアーナは、何をするかわからないと慌てて近衛騎士達を下がらせた。
「ふん、飼い犬の躾くらい、しっかりやっておけ」
「……飼い犬ではありません。大切な臣下ですわ」
「……相変わらず反抗的だな? クク、まだ十にも届かないガキの分際で、いっちょ前に俺を睨んだだけのことはある。あの時からな、いつか俺のものにしてやろうと思っていたんだ」
そういうと、バイアスは、顔を強ばらせつつも真っ直ぐに自分を見るリリアーナに心底楽しげで嫌らしい笑みを浮かべると、いきなり彼女の胸を鷲掴みにした。
「っ!? いやぁ! 痛っ!」
「それなりに育ってんな。まだまだ足りねぇが、それなりに美味そうだ」
「や、やめっ」
乱暴にされてリリアーナの表情が苦痛に歪む。その表情を見て、ますます興奮したように嗤うバイアスは、そのままリリアーナを床に押し倒した。リリアーナが悲鳴を上げるが、外の近衛騎士達は気が付いていないようだ。
「いくらでも泣き叫んでいいぞ? この部屋は特殊な仕掛けがしてあるから、外には一切、音が漏れない。まぁ、仮に飼い犬共が入ってきても、皇太子である俺に何が出来るわけでもないからな。何なら、処女を散らすところ、奴等に見てもらうか? くっ、はははっ」
「どうして……こんな……」
リリアーナが、これからされる事に顔を青ざめさせながらも、気丈にバイアスを睨む。
「その眼だ。反抗的なその眼を、苦痛に、絶望に、快楽に染め上げてやりたいのさ。俺はな、自分に盾突く奴を嬲って屈服させるのが何より好きなんだ。必死に足掻いていた奴等が、結局何もできなかったと頭を垂れて跪く姿を見ること以上に気持ちのいいことなどない。この快感を一度でも味わえば、もう病みつきだ。リリアーナ。初めて会ったとき、品定めする俺を気丈に睨み返してきた時から、いつか滅茶苦茶にしてやりたいと思っていたんだ」
「あなたという人はっ……」
「なぁ、リリアーナ。結婚どころか、婚約パーティーの前に純潔を散らしたお前は、どんな顔でパーティーに出るんだ? 股の痛みに耐えながら、どんな表情で奴等の前に立つんだ? あぁ、楽しみで仕方がねぇよ」
たとえ、嫌悪感さえ抱く相手だとしても、妻として支え諌めていけば、いつかきっと立派な皇帝になってくれる、いや、自分がそうしてみせると決意したリリアーナの心に早くも亀裂が入る。
リリアーナは悟ったのだ。目の前の、今にもこぼれ落ちそうな涙を必死に堪えるリリアーナを見てニヤニヤしている男は、ある意味、正しく〝帝国皇太子〟なのだと。
バイアスに恥をかかすまいと選んだドレスが、彼の手により引きちぎられる。シミ一つない玉の肌が晒され、リリアーナは羞恥で顔を真っ赤にした。両手を頭の上で押さえつけられ、足の間にも膝を入れられて隠すことも出来ない。
バイアスは、ニヤついたまま、キスをするつもりなのか、ゆっくりと顔をリリアーナに近づけていった。まるで、リリアーナの恐怖心でも煽るかのように目は見開かれたままだ。片手で顎を掴まれているので顔を逸らすことも出来ないリリアーナは、恐怖と羞恥で遂にホロリと流れた自身の涙にすら気づかずに、ふと思った。
望んだ通りの結婚なんて有り得ないと覚悟はしていたけれど、こんなのはあんまりだと。本当は、好きな人に身も心も捧げて幸せになりたかったと。それは、王女という鎧で覆った心から僅かに漏れ出た唯の女の子としての気持ち。
そして、香織や雫に聞いた話を思い出す。ピンチの時に颯爽と現れて、襲い来る理不尽を更なる理不尽で押し潰し、危難の沼から救い上げてもらったという、まるで御伽噺のような物語。
もし願ったなら、自分にも救いは訪れるのだろうか。リリアーナは、何を馬鹿なと王女としての自分が嗤う声を聞きながら、それでも止められず心の中で呟いた。
すなわち、
――助けて
と。
その瞬間、仰向けに組み伏せられたリリアーナは自分に迫るバイアスの肩の上に、天井から落ちてきた小さな蜘蛛らしきものがピトッ! と着地するのを目撃した。「えっ?」と驚きながら目を見開いたリリアーナの眼前で、蜘蛛は足の一本を振りかぶると、そのままそれをバイアスの首にプスッ! 突き刺した。
「いつっ! なんだ? 今、くびにぃ……」
首に感じた痛みに、もう僅かでリリアーナの唇に接触するというところで身を引いたバイアスは首を押さえる。その時には、既に天井に吊るした糸を辿ってスルスルと退避している蜘蛛。
リリアーナが、呆然とその光景を見ていると、バイアスは、突然、目を瞬かせながら呂律が回らない様子になり、直後、そのままガクッと意識を失い、リリアーナの上に倒れ込んだ。
「えっ? えっ?」
混乱するリリアーナの前に、再度、蜘蛛が糸を伝ってバイアスの上に降りてくる。バイアスは現在、リリアーナの上に覆いかぶさっている状況なので、彼の肩口に乗る蜘蛛がちょうどリリアーナの眼前に来ている。そこまで間近で凝視して、リリアーナは初めてその蜘蛛の異様さに気がついた。
「……金属の…蜘蛛?」
そう、バイアスの肩に乗っている蜘蛛は金属で出来ていたのだ。目を丸くするリリアーナの前で、金属の蜘蛛は「止めだぁ!」とでもいうように、再度、プスッ! とバイアスの首に先程とは違う足を突き刺した。意識を失っているにもかかわらずビクンッ! と震えるバイアス。呼吸はしているので、本当の意味で止めを刺したわけではないようだ。
リリアーナは、ハッと我を取り戻すとズリズリと体を動かしてバイアスの下から這い出る。そして、女の子座りをしたままジッと眼前の蜘蛛を見つめた。金属の蜘蛛は、少しだけリリアーナに水晶のような光沢のある目を向けると、そのまま糸を巻き上げてスルスルと天井へと上がっていく。
「あ、待って、待って下さい! もしかして、貴方は……」
リリアーナが慌てて制止の声をかけるが、金属の蜘蛛はお構いなしに上がっていき、八本の足で天井にしがみつくと、そのままカサカサと外壁の方へ移動する。そして、僅かに紅い光を放つと、いつの間にか空いていた外に通じる壁の穴を塞ぎながら部屋から出ていってしまった。
破れたドレスの前を寄せて肌を隠しながら座り込むリリアーナは、ようやく事態を把握して、微笑みを零しながらポツリと呟く。
「ありがとう……南雲さん」
リリアーナがバイアスの婚約者である以上、今、助けられたところで、それはその場凌ぎでしかないと分かっている。だが、それでも、今この時、救いを求める呟きに応えてくれたことが、どうしようもなく嬉しかった。
胸元で破れた服を抑えてギュッと握られたリリアーナの両手は、あるいは、他の何かを握り締めているかのようだった。
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応接室を出てお付のメイドに部屋へ案内されたハジメ達。メイドを追い返したあと、ずっと、何かに集中するように目を瞑っていたハジメがスッと目を開く。それに気がついたユエとカービィが、普段よりずっと口数の少ないハジメに声をかけた。
「……どう? ハジメ」
「どうなったの?」
「……ん~、上々だな。……途中、ちょっと面倒事があったが……予定の六割は完了した」
ユエに答える声も、他の何かに集中しているかのように鈍い。
「早いね。やっぱりトラップは多いのかな?」
「……そうだな。だが、全てを解除する必要はない」
「ふむ、今夜がパーティーというのは幸いじゃの。人が固まれば、色々動きやすいのじゃ」
「最終的にはパーティー会場に集まることになりそうですね。……上手くいくでしょうか?」
シアが、少し不安そうな表情になる。
何せ、これから自分の家族の未来が決まる一世一代の大勝負が始まるのだ。緊張しない方がおかしいだろう。そんなシアのウサミミをハジメがモフり、ユエが頬をムニり、ティオが髪をナデナデして、香織が手をギュッと握る。
微笑む仲間に、シアは込み上げるものを感じる。
しかし、涙は流さない。たとえ、それが嬉し涙でも、まだまだ流すのは早いからだ。代わりに、いつものようにニッコリと輝く笑みを浮かべた。自分は一人ではない。家族もいる。恵まれすぎなくらいだと、その思いを隠さずあらわにした笑顔。ハジメ達が好むシアの魅力だ。
シアの笑顔を確認したハジメは、いたずらを前にした子供のようにニヤリと笑みを浮かべると仲間に力強く告げる。
「さて、主役達のために舞台を整えようか」
その言葉に、カービィ、メタナイト、シア、ユエ、ティオ、香織も同じような笑みを浮かべて力強く頷いた。
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