ありふれた能力世界最強   作:コロンKY

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ヒュドラ

全ての準備を終えたハジメとカービィとユエは、階下へと続く階段へと向かった。

 

その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。

 

二百メートルも進んだ頃、前方に行き止まりを見つけた。いや、行き止まりではなく、それは巨大な扉だ。全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

「……これはまた凄いな。もしかして……」

「……反逆者の住処?」とユエ

 

「ハッ、だったら最高じゃねぇか。ようやくゴールにたどり着いたってことだろ?」

 

「……んっ!」

 

「やったね2人とも!」

 

と上からハジメ、ユエ、カービィ。

 

 

 

 そして、三人揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。

 

 

その瞬間、扉とハジメ達の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

 ハジメは、その魔法陣に見覚えがあった。忘れようもない、あの日、ハジメが奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地に追い込んだトラップと同じものだ。

カービィも見覚えのあるのだが緊張感がなかった。

 

だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。

 

「おいおい、なんだこの大きさは? マジでラスボスかよ」

「……大丈夫……私達、負けない……」

「ボクも戦うからね!」

 

 

 魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにするハジメとカービィとユエ。光が収まった時、そこに現れたのは……

 

 体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光がハジメ達を射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気がハジメ達に叩きつけられた。

 

 

同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開いた。

カービィは危険を察知してコピー能力を急いで使う。

 

「コピー能力マジックビーム!」

カービィは急いで杖に魔力を思い切りかけ力を溜める。

「タイムビーム!」

 

タイムビームが命中し、ヒュドラは動きを止める。

 

ハジメは驚いたように

「どうなったんだ?」

と呟く。

「時間があるから急いで!!」

とカービィは呼びかける。

 

「わかった。」

「んっ!」

 

 

ドパンッ!

 

「〝緋槍〟!」

 

「サイクルビーム!」

 

「〝緋槍〟! 〝砲皇〟! 〝凍雨〟!」

 

ドパァン!ドパァァァン!!

 

「サイクルビーム!はどうビーム!!マシンガンビーム!!レボリューションビーム!!」

 

次々と攻撃がヒットする。

 

「みんな来るよ!!」

 

ハジメ、ユエ、カービィは下がる。

 

時は再び動き出した。

 

すると急にダメージを与えられたことで違うモーションに映り一瞬で七つ目の銀色に輝く頭は、ハジメからスっと視線を逸らすとユエをその鋭い眼光で射抜き予備動作もなく極光を放った。先ほどのハジメのシュラーゲンもかくやという極光は瞬く間にユエに迫る。ユエは魔力枯渇で動けない。

 

ハジメは銀頭が視線をユエに逸した瞬間、全身を悪寒に襲われ同時に飛び出していた。

 

 青頭の時の再現か、極光がユエを丸ごと消し飛ばす前に、再び立ち塞がることに成功したハジメ。だが、その結果は全く違ったものだった。極光がハジメを飲み込む。後ろのユエも直撃は受けなかったものの余波により体を強かに打ちぬかれ吹き飛ばされた。

 

 極光が収まり、ユエが全身に走る痛みに呻き声を上げながら体を起こす。極光に飲まれる前にハジメが割って入った光景に焦りを浮かべながらその姿を探す。

「ハジメ!?」

 ハジメは最初に立ち塞がった場所から動いていなかった。仁王立ちしたまま全身から煙を吹き上げている。地面には融解したシュラーゲンの残骸が転がっていた。

 

「ハ、ハジメ?」

「……」

「そんな……」

カービィは不注意のあまりタイムビームのことを伝えなかったことを悔やむ。

 ハジメは答えない。そして、そのままグラリと揺れると前のめりに倒れこんだ。

 

「「ハジメ!」」

 

仰向けにしたハジメは容態は酷いものだった。指、肩、脇腹が焼き爛ただれ一部骨が露出している。顔も右半分が焼けており右目から血を流していた。角度的に足への影響が少なかったのは不幸中の幸いだろう。

 

 ユエは急いで神水を飲ませようとするが、そんな時間をヒュドラが待つはずもない。今度は直径十センチ程の光弾を無数に撃ちだしてきた。まるでガトリングの掃射のような激しさだ。

 

カービィは飛び出す。

 

「させない!コピー能力ミラー!リフレクトフォース!!」

 

カービィはハジメとユエをかばいリフレクトフォースで攻撃を跳ね返すが長くは続かない。

 

カービィに纏われていた鏡は破壊され直撃した。

瞬時にコピー能力ヒーローソードに切り替えてヒーローガードでハジメ達を守る。

 

むせるハジメを押さえつけて無理やり飲ませた。

 

 ユエはハジメに神水を飲ませた。しかし、神水は止血の効果はあったものの、中々傷を修復してくれない。いつもなら直ぐに修復が始まるのに、何かに阻害されているかの様に遅々としている。

 

「どうして!?」

 

 ユエは半ばパニックになりながら、手持ちの神水をありったけ取り出した。

 

 実は、ヒュドラのあの極光には肉体を溶かしていく一種の毒の効果も含まれていたのだ。

 

 

「……今度は私が助ける……」

 

 そう決意の言葉を残し、ユエは柱を飛び出していった。魔力は僅か、神水は既に使い切り、頼れるのは身体強化を施した吸血鬼の肉体と、心もとない〝自動再生〟の固有魔法、そしてハジメのドンナー、それとカービィだ。カービィは今もなおハジメをかばい続けている。

 

 

 

 ユエは少しでも状況を打開しようと、苦し紛れではあるがドンナーの引き金を引いた。〝纏雷〟は使えないが雷系の魔法は使えるため何とか電磁加速させることができた。そして、ビギナーズラックというべきか、弾丸は弾幕の隙間を縫うように銀頭のこめかみ辺りに着弾した。

 

 しかし、

 

「えっ」

 

 思わずユエが声を漏らす。確かに電磁加速させた不十分とは言えそれなりの威力を持った一撃だったはずなのに、銀頭は浅く傷ついただけで大したダメージを受けた様子がなかったのだ。ユエの表情に絶望の影が差す。しかし、自分の敗北はすなわちハジメの死を意味するのだ。ユエは歯を食いしばって再び回避に徹する。

 

 だが、そんなワンパターンがいつまでも続くはずがなかった。銀頭の眼がギラリと光ると二度目の極光が空間を軋ませながら撃ち放たれた。光弾の影響で回避ルートが限られていたユエは、自ら光弾に飛び込み吹き飛ばされることで、どうにか極光のもたらす破滅から身を守る。

 

 しかし、その代償に腹部に光弾をまともに喰らって地面に叩きつけられた。

 

「うぅ……うぅ……」

 

 体が動かない。直ぐさま動かなければ光弾に蹂躙じゅうりんされる。わかっていて必死にもがくユエだが、体は言うことを聞いてくれない。〝自動再生〟が遅いのだ。ユエはいつしか涙を流していた。悔しくて悔しくて仕方ないのだ。自分ではハジメを守れないのかと。

 

 銀頭が、倒れ伏すユエに勝利を確信したように一度「クルゥアアン!」と叫ぶと光弾を撃ち放った。

 

 光弾がユエに迫る。ユエは眼を閉じなかった。せめて心は負けるものかとキッと銀頭を睨見つけた。光弾が迫り視界が閃光に満たされる。直撃する。死ぬ。守れなかったこと、先に逝く事を、ユエはハジメに対し心の中で謝罪しようとした。

 

 刹那……一陣の風が吹いた。

 

「えっ?」

 

 気がつけば、ユエは、自分が抱き上げられ光弾が脇を通り過ぎていくのを見ていた。そして、自分を支える人物を信じられない思いで見上げる。それは、紛れもなくハジメだった。満身創痍のまま荒い息を吐き、片目をきつく閉じてユエを抱きしめている。その隣には頭に飛行機のようなものを付けているカービィーージェットカービィがいた。

「もう大丈夫だよ。」

「泣くんじゃねぇよ、ユエ。お前の勝ちだ。」

「カービィ!ハジメ!」

 

ユエは感極まったようにハジメに抱きつく。怪我はほとんど治っていない。実際、ハジメは気力だけで立っているようなものだった。

 

ハジメは銀頭を見やる。周囲に光弾を浮かべながら余裕の表情で睥睨へいげいし、今更死にぞこないが何だと問答無用で光弾を放った。

 

「遅ぇな」

 

 ハジメはギリギリまで動かず、光弾が直撃する寸前でふらりと倒れるように動き回避する。

 

 銀頭の眼が細められ、無数の光弾が一気に襲ってきた。

 

「ハジメ、逃げて!」

 

 ユエが必死の表情でハジメに言うが、ハジメはどこ吹く風だ。ユエを抱いたままダンスでも踊るようにくるりくるりと回り、あるいはフラフラと倒れるように動いて光弾をやり過ごしてしまう。まるで光弾の方がハジメを避けていると勘違いしそうだ。カービィももうスピードで攻撃をかわして更に攻撃を仕掛ける。

 

 ユエが目を丸くする。

 

「ユエ、血を吸え」

 

 静かな目、静かな声でユエに促す。ユエはただでさえ血を失っているのにと躊躇ためらう。ひらりひらりと光弾を交わしながら、ハジメはユエをきつく抱きしめ首元に持ち上げる。

 

「最後はお前の魔法が頼みの綱だ。……やるぞ、ユエ、カービィ。俺達が勝つ!」

「……んっ!」

「うん!」

ハジメの強烈な意志の宿った言葉に、ユエもカービィもまた力強く頷いた。

 

 ハジメは見ていた。揺らぐ意識を必死に繋ぎ留めながらユエが一人戦っている光景を。ハジメの銃を片手に必死に戦い、嬲なぶられるように追い詰められていく姿を。そして、極光が放たれ地面に倒れ伏し止めを刺されそうな瞬間を。

 

 ハジメの胸中に激烈な怒りが満ちた。自分は何をしている? いつまで寝ていれば気が済む? こんな所でパートナーを奪われる理不尽を許容するのか? あんな化物如きに屈するのか?

 

 否! 断じて否だ! 自分の、自分達の生存を脅かすものは敵だ! 敵は、

 

「殺す!」

 

 その瞬間、頭のなかにスパークが走ったような気がし、ハジメは一つの技能に目覚めた。〝天歩〟の最終派生技能[+瞬光]。知覚機能を拡大し、合わせて〝天歩〟の各技能を格段に上昇させる。ハジメはまた一つ、〝壁を超えた〟のだ。

 

 この技能でハジメは一瞬でユエの元にたどり着き、緩やかに飛んでくる光弾をギリギリでかわしているのである。

 

 やがて、ユエが吸血を終え完全に力を取り戻した。

 

「ユエ、合図をしたら〝蒼天〟をカービィはウルトラソードを頼む。それまで、回避に徹しろ」

「ん……ハジメは?」

「俺は、下準備」

 

「ん!」

「わかった!」

 

ハジメはドンナーを撃ち尽くすと〝空力〟で宙へ跳躍する。今までの比でないくらい細やかなステップが可能になっており、天井付近の空中を泳ぐように跳躍し光弾をかわす。

 

 いい加減苛立ったのか銀頭が闇雲に極光を放った。スッとかわしたハジメはニヤリと笑う。ハジメは看破していた。銀頭が極光を放っている間は硬直していることを。そして、リロードしたドンナーを再び六箇所に向かって狙い撃った。

 

 

 ハジメは天井にドンナーで穴を開け、空中で光弾をかわしながら手榴弾を仕込みつつ、錬成で天井の各部位を脆くしておいたのである。そして、六箇所をほぼ同時に撃ち抜き爆破した。

 

ただの質量で倒せたら苦労しないのだ。〝縮地〟で押しつぶされ身動きが取れない銀頭に接近し、錬成で崩落した岩盤の上を駆け回りそのまま拘束具に変える。同時に、銀頭の周囲を囲み即席の溶鉱炉を作り出した。その場を離脱しながら焼夷手榴弾などが入ったポーチごと溶鉱炉の中に放り込み、叫ぶ。

 

「カービィ!ユエ!」

「んっ! 〝蒼天〟!」

「わかった。スーパー能力!ウルトラソード!!」

 

 

「グゥルアアアア!!!」

 

 銀頭が断末魔の絶叫を上げる。何とか逃げ出そうと暴れ、光弾を乱れ撃ちにする。壁が撃ち崩されるが、ハジメが錬成で片っ端から修復していくので逃げ出せない。極光も撃ったばかりなので直ぐには撃てず銀頭は為す術なく巨大な剣と高熱に挟み撃ちにされた。

 

 感知系技能からヒュドラの反応が消える。今度こそヒュドラの死を確信したハジメは、そのまま後ろにぶっ倒れた。

 

「「ハジメ!!」」

 

ユエが慌ててハジメのもとへ行こうと力の入らない体に鞭打って這いずる。

 

「流石に……もうムリ……」

 

 何とかハジメのもとへたどり着いたユエが抱きついてくる感触を感じながら、ハジメはゆっくり意識を手放した。

 

カービィはなんとか持参していたマキシムトマト(全回復アイテム)

と、言うより、決戦前、調理した魔物から入手した、『マキシムトマト』で体力を回復して、その先にあった建物の中に2人をロボボアーマー(エスパーモード)で運んだ。

 

 




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