もしも次、生まれたなら   作:銭湯メイド

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注意 時系列無視


バレンタインデー特別編

 レイは部屋に立てかけてあるカレンダーをジッと見つめる。2月。たしか、アインズがこの世界に来た日と合わせて作られたカレンダーで、彼の世界の暦と同じ。彼の世界では今はきっと2月なのだろう。

 時間の流れが同じなのかは不明だが。

 

「………2月」

 

 何だろう?記憶の隅に、何かが引っ掛かる。失ったアインズと共に生きた世界の記憶だろうか?

 

「バレンタインデーですわ!」

「ふわ!?」

 

 ジッーとカレンダーを見つめていると唐突に後ろから声をかけられる。振り向くとそこには満面の笑みを浮かべるアルベド。

 

「さあ、参りましょう!」

 

 ヒョイと抱え上げられるレイ。何処に?と尋ねると乙女達(我等)の戦場ですわー!という返事が返る。

 さっぱりわからない。しかし、同じレベル100でも近接戦ビルドのアルベドと基本生産職のレイでは力比べにもならず、レイは大人しく運ばれる事にした。

 

 

 

 

「バレンタイン、この時期になると至高の御方々の話の話題に出て、ウンエーなる者達もイベントとやらを始めるようです………ワン」

 

 乙女達の戦場………もとい厨房にてペストーニャから説明を受ける。バレンタインというのは2月14日に行われる行事で、女性から男性に日頃の感謝、或いは好意を込めてチョコレートを送るのだとか。もっとも、友チョコ、義理チョコ、前述の感謝チョコなどもあり一概に女子が告白する日という訳ではないらしい。

 

「好きな人………か……」

 

 特にそういう相手はいない。いないったらいない………が、感謝を伝えるという意味ではナザリックの住民はもちろん、支配者たる彼にも必要だろう。

 

「………………」

「?レイ様、お顔が赤く……体調が優れぬのでしたらお休みになった方が……あ、ワン」

「え、あ………いや、大丈夫だよ」

「クッソカワイイカヨ」

「え?」

 

 アルベドが何か言っていたが振り返ると何か?と首を傾げられた。気のせいだったのだろうか?

 

「えっと、一緒に頑張りましょうねレイ様!」

 

 と、ツアレ。そういえば、女子のイベントだというのに参加者が3人だけとは…………。

 

「こういったイベントには、我々ナザリックの者達は参加してこなかったのです。マーレ様達など創造主が女性の方は創造主様直々に貰っていたようですわん」

「不思議と、渡すという意志が持てなかったのです。私はこういった男女間のイベントのもといモモレイではなくアインズ様の世界の行事について再調査しましたが………知っているのは私の他にデミウルゴスぐらいかと……」

 

 他は恐らく創造主、或いは創造主と親しい者から何かを貰う日だと思っているだろうとの事だ。

 

「それ、私が上げていいのかな?彼等彼女等からしたら創造主がプレゼントくれる日なんだろう?センパイ曰く私も彼等と交流があるらしいけど、記憶を失ってる身では気が引けるなぁ」

 

 アインズが言うには、レイはアインズと同郷で、アインズの後輩。アインズもといモモンガの手伝いをするためにユグドラシルという世界に入り、リアルで命を落としこの世界に来たとか。

 けど、思い出せない。マーレやアウラを含めた大半の者達が好意的に接してくれるが、彼等が創造主より与えられた自分との絆は前の自分。少し寂しい。

 

「気にする必要はないと思います」

「ツアレ?」

「私も、妹と数年間離れ離れになって、あんなことのせいで、昔の記憶なんてとても曖昧でした。それでも、あの子はまた新しく思い出を作ろと言ってくれました」

「……………」

「だから、レイ様もまた新しい思い出を作ればよろしいと思います。あの方々を、嫌っているわけではないのでしょう?」

「……………うん、まぁ」

「それでは、一緒に作りましょう?あ、でも……」

「?」

「その、身勝手なんですが………レイ様がセバス様にあげたら、やだなぁって」

 

 

 

「…………反応しないんですね」

「私、モモレイ以外のCP興味ないもの」

 

 

 

 

 そしてバレンタイン当日。

 

 

 

 シャルティアの場合。

 

「バレンタイン?そう、意中の相手に……そんな意味があったのでありんすか……………」

「どうした?」

「なるほど。つまりこれはそういう事でありんすね?まあまだ夜には早いけど、ささ、レイ様に此方に。大丈夫、手とり足取り私が教えんす♪」

「…………?」

 

 この後アルベドが飛んできた。

 

 

 コキュートスの場合。

 

「有難キ幸セ」

「そう思ってくれるならこちらとしても嬉しいよ。うん、何なら毎年作ろうかな」

「毎年………デハ、御子ガオ産マレニナレバ………?」

「うーん、まだそういうのは想像できないかなぁ。でも、男の子だったら私が上げて、女の子だったら一緒に作って配るかなぁ」

「オ、オオ………姫、爺ハ………爺ハァァ!」

「え、あの………ちょ、どうしたの!?」

 

 

 

 

 アウラ&マーレの場合。

 

「チョコクッキー!やったぁ!」

「あ、ありがとうございますレイおね……あ、様」

「私の事を姉の様に思うのは、ぶくぶく茶釜さんがつくった設定なんだろう?なら、3人きりの時はお姉ちゃんでも良いよ」

「えへへ、じゃあお姉ちゃん達と一緒に食べよ!アタシお茶煎れるね!」

「あ、お姉ちゃ………あ、えっと、レイお姉ちゃん………ボ、ボクは机と椅子を用意してくる!」

 

 この後めちゃくちゃお茶会した。

 

 

 

 デミウルゴスの場合。

 

「ふむ、ナザリック中を回り、最後にアインズ様に?なるほど、そういう事ですか。解りました、人払は任せてください」

「人払い?」

「いやいや、今日は実にめでたい日になるでしょう」

「……………?」

 

 

 

 ユリの場合。

 

「チョコレート、ですか。ボ……あ、いえ、私に?宜しいのでしょうか、ペストーニャ達に比べて、私はあまり貴方とは」

「いいのいいの。私が上げたいんだからさ……覚えていないけど、貴方の創造主からも私に関する何かを入れられてるんでしょ?」

「はい、この感情は、恐らくは………」

「なら、きっとお世話になったんだと思う。その人には、今はお礼を言えないし」

「お礼、ですか。解りました、ではこれはその時まで……」

「ユリを生んでくれたこと。私をユリの友にしてくれたお礼……」

「…………………」

「だから、今君に、受け取ってほしいな」

「………はい」

 

 

 

 ルプスレギナの場合。

 

「レイ様〜!かわいいルプーちゃんからチョコっすよ〜!」

「あれ、知ってたの?」

「最近ツアーちゃんが甘い匂いを漂わせてるんですそれとなーく聞いたんすよ。レイ様も私の為にチョコヲ作ってくれてるとか。でも、どうせなら交換しようと思いましてね」

「ルプー」

「あ、どうせならアインズ様と別けてくださいッス!私達が至高の御方に渡すのも無礼っすから。アインズ様と、分けるんすよ?」

「う、うん………」

 

 

 

 ナーベラルの場合。

 

「は、チョコ?なぜ私が人間の………アルベド様?何か?」

「良いからこっちへ」

「…………」

「ぐふ!?」

「!?」

「申し訳ありませんレイ様。ナーベはどうやら腹痛のようで今日はモノが食べられないと」

「そ、そう……明日は元気な姿を見せてくれると嬉しいなぁ」

「明日……分かりました。明日までには解放します」

 

 

 シズの場合。

 

「レイ様、器用」

「シズはぬいぐるみの方がいいと思って。どう?等身大ハムスケ人形」

「最高。シール上げる」

 

 

 

 ソリュシャンの場合。

 

「センパイや他の人達から聞いて彫刻したヘロヘロさん型チョコ。ごめんね、私が覚えていればもう少しそっくりに出来たかもしれないけど」

「いえ、いいえ!ありがとうございますレイ様!ああ、だけど食べるのが勿体無い」

 

 

 エントマの場合。

 

「エントマってチョコ大丈夫?」

「ええ、はい。基本的に何でも食べれますわぁ………あ、勿論レイ様のことを食べたりはしませんからご安心をぉ」

「そっか。じゃ、はい、チョコ……食用ゴキブリを油であげて、チョコでコーティングしただけだけどね」

「わぁい。あれ、でもレイ様平気なんですか?ゴキブリ」

「ん?ああ、私は別に………沢山いるとちょっと怖いけど虫は基本的に栄養高いし、美味しいしね………蜂の子とか」

「…………私も栄養価、高いでしょうかぁ?」

「食べないよ?食べないから距離取らないで」

 

 

 

 

 アルベドの場合。

 

「最後の方になっちゃったけど、はい、アルベド………」

「まあ、私には内緒で別のを作ってたのですか」

「うん。驚かせようと思って」

「ふふ。私もです。こちらを………」

「ありが………あれ、これ、服?」

「チョコだけがバレンタインではありませんからね。シズとかも、そうだったでしょう?」

「確かに」

「ふふ、着付けはお任せください。アインズ様に会う前に、着替えて見せては?」

 

 

 

 

 

 アインズの場合。

 

「………………」

「うみゅ………」

 

 自室に戻ると女体化した後輩が寝ていた。直ぐに人化を解く。アンデッドの精神に飲まれぬための措置ではあるが人間のままだと細かい事で驚いたりするのだ。よし落ち着いた。

 

「レイ、起きろ。俺の部屋で何している」

「ん、みゅ……シェンパイ………?」

「……………」

 

 よし、落ち着いた。

 しかし顔が赤いなこいつ。少し状態を調べてみるか。ふむふむ、酩酊?あ、机に並べられているウィスキーボンボン食ったのか。確率でなるからなぁ、今はアイテムを外してるみたいだし。というか何だこの格好、茶色の生地に赤のリボンによる装飾。可愛い。よし、落ち着いた。

 

「えっとぉ………あれ?ここセンパイの部屋?」

「そうだ。何故ここに?」

「ええっと………アルベドが、ここで待てって…………待ってる間、ルプーがくれたチョコを………」

「そうか………所で、背中のは気付いているか?」

「しぇなか?」

「いや、良い」

 

 アインズは『私を食べて』と書かれている紙をそっと剥がし握り潰す。

 

「それで、えっと………チョコ、というか………うん、これ」

「ココア?」

「チョコ料理。色々考えたり、作ったりしたんですけどねぇ………何故か、センパイにはぁ………これがしっくり来て」

「………………」

 

 ふと、過去に思いを馳せるアインズ。

 

 

 

──これは、ココア?

──結構高かったっすけど、今日はバレンタインですから

──バレンタインって、お前男だろ?

──一昔前は友チョコとかあったらしいですよ?それに、所詮お菓子会社の陰謀。感謝を伝えるのに、男も女も関係ないでしょ?

 

 

「………もらうよ」

「本当ですかぁ?やったぁ………」

「お前は覚えていないだろうが、私はお前が入れるココアが、大好きなのだよ………なんてな」

 

 

 

 

 後日談。というか今回のオチ。

 

「アルベド、ルプスレギナ………首を出せ!」




守護者達の大まかな反応

シャルティア

女同士は浮気にならないはず。何時でもカモーン!

コキュートス

何時カ御子ヲソノ身ニ宿ス。オォ、爺ハァ……

アウラ&マーレ

年齢的には年上だが、精神的に年上なレイニお姉さんぶりたいと思いつつも甘えたい(マーレの設定にぶくぶく茶釜が書き加えたもの)
優しいお姉ちゃん。恋心とは別の憧れを抱いている。頭を撫でられるのが好き。(アウラの設定にぶくぶく茶釜が書き加えたもの)


デミウルゴス

創造主であるウルベルトからも師事を受けた事のあるナザリック総出で守るべきお方。アインズの正妃


アルベド
信じられるか?こいつらこれで付き合ってないんだぜ?だが、そこが尊い!

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