レイシフトでこの時間軸に来てから彼是大分経過したかしら?
見える風景は相変わらず荒廃した世紀末、私たち以外の人類は影も形も無し……途中で他のマスター候補と合流できるかと希望を抱いたけれど今の所その気配も無し……。
突然のサーヴァントの襲撃を如何にか凌いぎ、加勢してくれたサーヴァントらしきフード姿の男性と共に場所を移した私達一行、一先ずの危機は脱したけど残ったままの本題にあらためて目を向けると頭が痛くなるわね。
唯一の救いは竜也さんの存在かな、彼は少なくとも一回人類史の消滅を食い止めた実績がある、これは意外に事実は大きい。
「さっきは助かりました。」
戦いを終えて気が落ち着いた様子の藤丸が竜也さんに感謝の言葉を伝えてる、ふ~んちゃんとお礼が言えるのねアイツ。
「あのスーツかっこいいですね、まるでヒーローみたいだ。」
「何言ってるよ藤丸、事実彼は人類を救ったヒーローじゃない。」
当たり前の事を言う藤丸に思わず反論するけど、その藤丸は疑問の表情を浮かべていた。
「そうなんですか?」
「ちょっ何とぼけてるのよ!マシュ、貴女からタイムレンジャーについて教えてあげて。」
この呆けた顔だと本当に知らないみたいね、まぁ藤丸は最近まで民間人だった訳だし知らなくても無理ないか。
仕方ない無知なマスターの教育は、契約したサーヴァントの役目って事でマシュに任せますか。
「?……あの、所長タイムレンジャーって何のことですか?」
「へ⁉ちょっと、貴女までどうしたのよ⁉あの地上の三分の二を消滅させた人類史最悪の大災害と呼ばれる大消滅を食い止めた英雄の五人の内の一人じゃない⁉……まさかロマ二!」
彼の事を知ってると思ってたマシュでさえ知らないなんてどうなってるの⁉彼女が知らないって事は若しかしてロマ二も?
「……所長とても言いづらい事ですが、僕も彼の事もタイムレンジャーと言う団体の事もましてそんな大規模災害の情報も知りません……。」
「そんな……!」
じゃあ……私が知ってるこの歴史はナニ?
「……やっぱり、君だけ俺達の事を知ってるんだな。」
「え……?」
今まで静かに私たち遣り取りを見ていた竜也さんが徐に口を開いた、私だけが竜也さん達を知っている?
「君の言う通り大消滅は実際に起きている……ここじゃない違う時間軸上の、俺達タイムレンジャーが居た世界でね。」
「違う……時間……軸?」
竜也さんに告げられた言葉を聞いた時、私は視界が揺れ意識が遠く離れていくのを感じた。
「はっ!マリー!」
最後薄れる視界の中心でひどく動揺した竜也さんの顔が見えて、彼が呼んだ私の事を指すだろう愛称を何故だがとても懐かしく感じた。
……その日、幼い私が目にしたのはさっきまで自分の家だった瓦礫の山だった……。
最初は何が起きてるのか分からなくて、言い様のない不安感から家の中に居た父と母の名前を声がかれるまで呼び続けた。
自分が置かれてる状況を知ったのは……そうきっと、泣き疲れた疲労と極度の空腹で動けなかった私を拾ってくれた親切な生存者の老夫婦から話を聞いた時だったな……。
大消滅、後に人類史最大最悪の被害を齎した大災厄……世界の人口の殆どが死に絶えたと聞いた時は信じられなかった……けど、世界の主要都市の殆どが壊滅して行政は疎か主要なライフラインが全て停止した世界の景色は、それが事実だと否応なしに認めさせたの。
誰しもが予想だにしない大規模で未曾有な災害に世界は混乱していたわ……そんな時よ、浅見グループが当時辛うじて残っていた地下施設で臨床実験中だった冬眠カプセルを使用して12歳以下の子供を対象にコールドスリープで未来の世界に送ろうと言う趣旨の計画が持ち上がったのは。
そして当時の私は十歳になったばかりで世界で生き残っていた数少ない子供だった、後は言わなくても分かるわよね……最後に、その時代で見た景色は両親を失って失意の淵にいた私を救ってくれた老夫婦に泣きながら見送られた光景だったわ……。
それから目を覚ませたのは千年も先の未来だった、その世界はちょっと前の私が永い眠りに就くより前の世界とは掛け離れ過ぎていて……。
最初は何処か恐怖を感じていた事は覚えてる、でも最初だけよ後は未知の世界にワクワクしてきっと目は爛々に輝かせていたんじゃないかしら?
私達はその時代で里親に預けられて、その時代に会った生活に馴染んでいった、未来の世界で暮らして慣れない事もあったけど、それなりに楽しく暮らしていたわ。
でもね……偶に記憶の片隅でさ、元の時代のお母さんとお父さんみんなが大変な時にそれで私の面倒を見てくれたお爺さんお婆さんの顔が過ぎって……堪らない寂しさに震える日もあった、負けるんもんか!って踏ん張れば踏ん張る程、心に抱えた孤独感は強くなっていった……。
そんな私が成人して時空管理局の技術部に勤め始めて、その時タイムレンジャーの事を知った……もし時間を書き換える事が出来るなら、あの大消滅を未然に防げたらそう思って入った時空管理局で正にその時代で戦ってる人達がいるって聞いたら、無性に応援したくなって気が付いたら色んな物を作ってた……それから、あの災害の首謀者が倒されたと聞いて嬉しさのあまり気絶して……。
気が付いたら元の時代の、倒壊した筈の私の家の自室で当時の年齢相当の私が寝ていた訳、これが俗に言うタイムパラドックスってやつ。
そんなこんな会って無事元の生活に戻れた私は、この時代に戻してくれた竜也さん達にお礼の気持ちで未来で培った技術を現代に再現して、なるべく私の居た三千年代に技術の進歩レベルを合わせようとしたんだけど、何処で噂を拾ったのか当の竜也さんが来ちゃって、その時にひと悶着会って誤解を解いて一緒に頑張ってる内にいい関係になって……結婚式を明日に控えたその日、またも激しい眩暈で意識を失った私は私じゃない私の走馬灯みたいなものを見て、気が付いたら今のオルガマリー・アニムスフィアになっていた……あぁ、思い出した私……この時間軸の世界の私の体の中に入っちゃってたんだ……あれ?じゃあ、こっちのオルガマリーは……そうだ!確か私無意識の内に……って事は、まだ私たちの体は無事ね……。
「……リー!マリー!」
竜也さんの声だ……暫くぶりに聞いたな懐かしい……それじゃあ、思い出したついでにいつもの強請ってみますか!
「お姫様は、誰に何をされたら起きるんでしたっけ?」
「っ!マリー……全く、君って人は……。」
目を瞑ったままソレを待つ私に、竜也さんは久しぶりのアレをくれた。
「なっ!」
「はぅ!」
「おお!熱いね~!」
周りに居た三人の声が聞こえるが今は気にしないおこう、兎も角いつもの目覚めの儀式は終わったし目を覚ましますか……。
「おはよう竜也さん。」
「おはようマリー。」
うん幸せ!