海賊と〇〇、時々鉄の華 作:鉄のクズ
GHのMSは全て撃破され、MW隊も逃げる機会を逃したために余力があった三日月と昌弘に殲滅された。危機が完全に去った現在、参番組は負傷者の手当てと遺体の回収を行っていた。
「ドレイクさん、この度は俺達を救ってもらって本当にありがとうございました」
「いえ、その言葉は昌弘に言ってあげてください。それよりこちらとしても予想外のことで対応が遅れてしまいました。まさかあらゆる手続きを飛ばしてGHが出てくるとは。被害の方は?」
「……死んだのは28、俺達だけならもっと酷い事になってました。MSとMWの戦力差は分かってたつもりなんすけどね」
アインとクランクをMSごと捕獲してやってきたドレイクは、この場に残っている面々で最も立場が上であるオルガ、それからドレイクの要望で連れてこられたクーデリアの三人で情報交換を行っていた。
「しかし本当に解せませんね。GHはあくまで警察機構、今回のアーヴラウ経済圏での会談があくまで蒔苗氏からの受諾という姿勢を取っている以上しゃしゃり出てくる要素はありません。クーデリア氏が何か非合法な手段で会談の席を用意させた、とかなら話は別ですが」
「そ、そんな事実はありません!私達はこれまで一貫して話し合いによる解決を目指してきました。ましてや法に触れる様なことなど――」
「でしょうね。そんなことをすれば例え百の契約書を交わそうといつでも覆されてしまう。だからこそGHが出てくるとすれば貴方が蒔苗氏と何らかの正式な契約を行ってからだと思っていました。
もし私が蒔苗氏の政敵なら、その現場を襲撃して全員を殺害したのち、押収した契約書を無茶苦茶な内容に改竄し蒔苗氏を経済圏への背任容疑で処分します。そしてその片棒を担いだ、若しくは強要したという容疑を貴女に掛ける。そうすればGHはアーヴラウの政治家に多大な貸しを作ることが出来、政敵も目の上のたんこぶをまとめて処理できる」
「なるほど。クーデリアさんの活動は俺達火星で生きる人間にとっては希望そのものだが、当然目障りだと感じる人間もいるってことか。特に地球には。……ちょっと待ってください。それってアーヴラウの政治家がクーデリアさんを殺す動機ですよね?GHには何の得もない……ですよね?」
「そこが幾ら考えても分からないんですよ。GHは火星で株をやってる訳でも土地の所有者でもない。火星支部の人材事情を見ればどれだけ軽く見られてるかは瞭然ですし、あの連中は根っからの地球至上主義者です。正直な所、火星がどうなろうが知ったことでは無い筈なのですが」
「そういや、連中端っから戦争しか考えてねえ動きでした。もし万が一クーデリアさんを犯罪者として動いてたんなら、令状か逮捕状を持ってガサ入れすんのが普通でしょう。だがアイツラは見張りに出てた年少組を一方的に撃ち殺しやがった」
「――この話はここまでにしておきましょう。これ以上はせっかく知っている方がいるのですから、そちらに謳って頂きましょう」
「ドレイクさんが捕虜にしたって奴等ですか、そいつらは―――『オルガさんッ!』―――どうしたタカキ!」
破損したMWの撤去作業もほぼ完了し、そろそろ戻るついでに尋問へ向かおうかとした時、参番組で良く整備等後方担当に駆り立たされている少年タカキ・ウノが血相を変えてやってきた。表情からもあまり良くないニュースのようだ。
「さっき管制塔に連絡があって、壱番組があと数分で帰って来るみたいなんです。通信越しでも正気じゃないってくらい荒れてて、戻ってきたら本気で不味い事になるかもって……」
「おーおー、ずいぶん遠くに逃げたもんだなあ。しかもドレイクさん達があいつらじゃなく俺達の救援を優先したことも根に持ってそうだ」
オルガと彼の副官ともいえるぽっちゃりした青年ビスケット・グリフォンの策で、多くのMWが壱番組の追撃に出ていた。しかし行動不能となったオーリスが自身だけでも救助させようと、地べたを這いずりながらMW隊に要請をがなり立てていた。そのお陰と言うべきか追撃はそれほど深くなかったため彼らは見事逃げ果せたという訳だ。ただ逃げ過ぎた所為でCGSを目視できなくなり、ほとぼりが冷めたのを見計らっていたので今頃になって帰ってきたのだが。
「―――オルガ君、でしたね。もし君さえよければこの件、私に任せてもらえませんか?」
「「……はい?」」
異口同音で首を傾げるオルガとビスケット、しかし振り向いたことをすぐさま後悔することになる。彼らは勘違いしていた、自分達少年兵にも柔らかい物腰でいてくれていたからてっきり『良い大人』だと勘違いしていた。
―――大間違いも良い所だ。相手は海賊、しかも“札付きの”と形容される類の悪党ときている。礼節はドレイクの単なる趣味であり、彼らが“敵”ではないからだ。しかし、残念ながら『これから戻ってくる連中』は違う。彼らは隙を見せてしまった、だがそれ以上に怒らせた。
オルガは、自分達はそれなりに修羅場を潜り抜けてきた自負がある。だが“本当にヤバイ奴”と相対するのは心の底から『怖い』。そう思うのはダサい訳じゃない、思わない奴は唯の馬鹿だと彼とビスケットは今日学んだ。それはもう強烈に、あれだけ嫌悪していた壱番組に同情すら思い浮かべてしまうほどに。
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「―――おいコラ餓鬼共ッ!!俺達が帰ってきたってのに出迎えもしねえってのは何事……誰だテメエ?」
壱番組所属のササイは荒れていた。いつもいつもヤバい所を参番組に押し付けていた所為で、彼らはGHからの襲撃に全く対応できず無駄な被害を被り続けた。何せ参番組と比較して交戦時間及び兵力が半分以下だったにも拘わらず、犠牲者は倍以上というのだからどうしようもない。
だがそれら全てをオルガ達に責任転嫁している彼は、その憤りをぶつけることしか頭になかった。彼らの鼻がもう少し利いていれば、目の前に居る人間が誰か分からずとも命の危機を察することが出来ただろう。
「初めまして、私はジョシュア・ドレイクと申します。縁あって少年たちに加勢した者です」
「あぁ?確かマルバが言ってた客か。何で俺達よりあんな餓鬼共を優先しやがったッ!!」
「な、おいバカ!?その人は――――」
相手が誰かも知らず噛みつくササイに、慌てて近くに居た男が止めに入ろうとするが最後まで言葉は続かなかった。後方で待機していたガルム・ロディがライフルを発射し、ササイの命を摘み取ったからだ。しかもゴム弾だったのが災いし、実弾の様に消し飛ばず爆発四散といった有様となってしまった。煙が晴れた
「……誰に向かってそんな口を利いているのですか?今の我々は海賊です、貴方達法の元に創設された傭兵とは違います。私達は気に入らなければ、無価値と判断すれば、そして何より顔に泥を塗る連中は微塵の躊躇なく鏖殺する。これを覆せるのは我々以上の力を持った人間のみですが、その資格がある方は此処に居ますか?」
自分の目と鼻の先に人肉ミンチが転がっている。にもかかわらず笑みを浮かべたまま崩さない青年に震えあがり、壱番組は誰一人意見することは無かった。それを返事と受け取ったドレイクは話を続ける。
「……居ない、ようですね。では本題の前にそちらの質問に応えましょう。何故貴方達を放置したか、でしたか?それはですね、私が此処に居る理由が『契約を反故にしたことへの報復』だからですよ。契約違反の落とし前として、この施設および資材は我々が接収します」
その一言に壱番組が騒ぎ始めるも、先程の光景に気勢を殺がれドレイクに意見するものはいない。そんな彼らの中で一人、挙手をして前に出る男がいた。
「あのー、いいですかね?」
「ええどうぞ。許可を得てから発言するのは上位者に対する正しい作法ですよ」
男の名前はトド・ミルコネン。長いものに巻かれる典型的な小物であるが、擦り寄る為の努力と行動力は妙に高いという小賢しさを備えている。そして今この瞬間も全力で擦り寄りに来ていた。
「えへへ……。えーと、接収とか契約違反とか言う話は俺達にはちょっと、ねえ?そういう話はマルバの奴としてもらわないと」
「良い所に気付きましたね。ええ、貴方の言うとおり本来はマルバと話を付けるのが筋です。……ですが、その『マルバが居ない』という事実こそが契約違反の根拠なわけですよ」
「契約……と、言いますと?」
そう尋ねるトドに向かってドレイク一枚の紙を投げ渡す。それは先日交わしたマルバとの昭弘に関する売買契約書の写しであった。
「ははあ、これが。えーと、ああ昭弘を………『俺達が見捨てた』昭弘をってことですかい!?」
「話の早い方は嫌いではありませんよ、ええその通りです。我々から様々な支援を確約させておきながら、対価である筈の少年を捨て駒に使った。しかも『デカい仕事があるから』といって引き渡しを延期しておきながら、だ。これを侮辱と言わずしてなんと言うのですか?」
「ヒィッ!?お、仰る通りですハイ……」
僅かに怒気が含まれたことに怯えながら、慌てて追従するトド。しかしそれは媚び売りだけでなく本心からの同意でもあった。マルバが自分達に言っておいてくれれば、もしくは最低でも昭弘を1軍と共に脱出させておけばまだ言い訳が立ったものを、とんだヘマをこいてくれたと心の中で罵倒する。そりゃCGSを見限りもするだろうと。
「とはいえ我々に民兵組織を扱うだけの人的余裕はありませんし、そもそも武力組織は本職があるから不要です。であれば組織を一新させ代わりに契約を履行してしまおうと思いましてね?私としては契約を果たしてくれるなら誰でも構いませんので、主観に基いた結果オルガ・イツカ君を新たなトップに指名した次第です」
「ハアッ!?あんな宇宙ネズミ共をどうし……あ、申し訳ありません。つい……って、いや、ちょっとま、ままままってまってまぎゅあうあつg――――――『ブチリッ』
『オルガをトップに据える』その一言に過剰に反応してしまったのはマルバの次に高い地位についていたハエダという男だ。彼は先程挽肉にされたササイと共に、特に参番組に暴力を振っていた人物であった。
そんな自分が下剋上をされればどうなるかという恐怖が彼を突き動かし、しかしすぐに自分の失態に気付き詫びを入れようとしたが既に手遅れであった。口答えだけならともかく、不幸なことに彼の放った“ある単語”はナグルファルにとって死刑執行書のサインに等しいものだった。
轟音と共にMSが飛来し、命乞いも虚しくゆっくりと脚部が降ろされていった。骨や臓腑が砕け圧潰していく音が響き渡り、先程のミンチを耐えた連中の胃もとうとう決壊した。人間を一息に潰さずにMSの足を降ろすというのはかなりの精密作業となる。それを事もなげにやってのけるということは、技量の高さもあるがそれ以上に手下すらこの行為を
「私達の前で『宇宙ネズミ』という言葉を使った人間は、例外なくブチ殺してるんですよ。忠告が遅くなったことを謝罪します。さて、私からの説明は以上です。後はお任せしますよ、“新代表”?」
ドレイクが手を挙げると同時にシャッターが開く。そこには残ったMWとバルバトスで武装した参番組が揃っていた。彼らの殺気を孕んだ眼光に、抵抗できるだけの気力は壱番組には存在しなかった。
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「―――さて、脅しをかける手間が省けましたね。それでは謳って貰いましょうか、ギャラルホルンの士官様方?」
あとの始末を参番組に任せたドレイクは、その足で近くに転がして置いたアインとクランクの下へ赴く。当然ながら一部始終を見てきた二人の顔色は最悪だ。
「……だんまり、ですか。なら、“今の”貴方達に用はありません」
「ならどうする。俺達を殺すのか?」
「そんな一ギャラーの得にもならないことしませんよ。犬並の誇りが糊になっているのなら引き剥がすまでのこと。そうですね、例えば若く顔立ちも整ってることですし。貴方の四肢を落として男娼窟にでも放り込んでみましょうか?」
辛うじて吠えてみせたアインであったが、返ってきた言葉に今度こそ顔面蒼白になった。地球でどんな扱いを受けてきたかは知らないが、衣食住に困らない『圏外基準でいえば十分恵まれた』育ちには刺激が強かったようだ。それとも地球で何か見聞きしたのだろうか?何せセブンスターズの一人が“アレ”だから噂くらいは耳にしただろうし、もし幼少期に会っていればどうなっただろうか?
「―――我々は、何も知らん。我々が司令官より受けた指示は、貴様等が殺したオーリス・ステンジャを指揮官としてクーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を確保しろ、ただそれだけだ」
「……はい?指示?それだけですか、では聞きますがその指示の法的根拠は?適正な会議・審議を以て決定した作戦なら作戦名なり逮捕状なりは存在しているはずですよね?それらを受領した上で行動したんですよね、警察なんですから」
「「………」」
流石にこのまま黙秘は危険だと判断したクランクが会話を引き継ぐ。しかしその答えは警察機構として、いや“大人”としてあまりにも杜撰としか言いようがなかった。早い話が浚って来いと言われたから『はいわかりました』と何の呵責も疑問も持たずに飛び出した訳だ、どう考えても真面な社会人の対応ではない。
仮に連中が良心の欠片もない屑だったと仮定してもお粗末に過ぎる。“クーデリアの死”は圏外圏だけでなく交渉を行うアーヴラウ政府も関心を持つ。その場合それなりの捜査がされるだろうが、どう考えてもこの事件は“オーリス以下3名による暴走”として処理されるだろう。我が身が可愛ければ疑問の一つくらいは浮かんできそうなくらいものなのだが。
「……………はぁ。何の法的手続きも経ず上官の思うままに暴力行為に耽る。何が警察ですか、貴方達のやってることはコーラル・コンラッドの私兵です。浚って殺して脅す、海賊と何の違いもありません。恥を知りなさい」
「何をッ!貴様らがそれを言うのか!!」
「だからこそ言ってるんですよ。私は貴方達が言う“賎しい海賊”であり、しかも子供にその片棒を担がせている外道だ。いずれ相応しい末路がやってくるでしょうね。それで?そんな私と同列に成り下がったことを自覚した貴方は、何の呵責も感じないのですか?なら、貴方達は私の同類ですよ。少なくとも
侮蔑と共に告げられた言葉に、それでも何も言い返せず俯くしかないアイン。クランクに至っては、縛っていなければ自殺でもしかねないほどの沈痛な面持ちである。
「まあ貴方達を扱下ろすのはまたの機会にしましょう、我々も暇ではありませんから。知らないならそれでも別に構いません。本人の口から語ってもらうまでです。―――こちらの準備が整い次第管制室へ来てもらいますよ、そこの通信室でコーラルに連絡を取って貰います。
勿論、我々が指示したこと以外を話したり、
ドレイクからの要求に、二人は目を見合わせると彼に向かって頷いた。彼からの指摘が呼び水となったのか、要求以外にも彼等自身この命令の詳細を知りたくなったらしい。二人の反応に気を良くしたドレイクは、さっそく設備を借りるべく再びオルガ達の下へと向かった。