海賊と〇〇、時々鉄の華 作:鉄のクズ
話がなかなか進まない orz
「――――はー、こいつがギャラルホルンのMSを黙らせた特殊弾丸か。一度機能すると弾には見えねえな。にしても
片付けも一通り済んで手空きになった『おやっさん』ことナディ・雪之丞・カッサパは回収した特製ゴム弾を調べていた。勿論ドレイクからは許可を得ている、
……何やら物騒な副音声が聞こえてきたが、多分聞き間違いではないので断じて違反したりはしない。あんな“ヤバイ”男を敵に回してまで欲しいモノなんてない、とおやっさんは心に誓っている。じゃあなんでそんな恐怖を飲み込んでまで調べたいのかといえば、技術者の悲しいサガとしか言いようがない。彼に付き合わされて同じ様に怖い思いをしたタカキ少年とヤマギ・ギルマトン少年はそんなおやっさんに向けて質問を投げかける。
「―――どう、おやっさん。熱心に見てるけど再現とかって出来そう?」
「もし出来たら凄い戦力になりますよね。これと三日月さんが組み合わされば敵なしですよ!……あ、もちろんあの海賊の人は例外ですけど」
「ああ、ありゃあもう戦う羽目になってる時点で駄目な手合いだな。あの旦那は目的のためならどんな手段も取れる、しかもその方法をしっかり握ってるから尚のこと危険だ。
……そいつはともかくとして、再現はちょいと無理だなあ。素材はさして珍しくもない合成ゴムだが、加工技術がイカレてやがる。どっから見ても理解できない出鱈目さは、エイハブリアクターとどっこいだ」
おやっさんの予想外の言葉に、タカキとヤマギはそれぞれ驚嘆の声を上げる。凄いモノであることは分かっていたが、それほどの代物とまでは思っていなかったのだ。だがしかし、とタカキは再び疑問を投げる。
「で、でも昭弘さんの弟さんは、そんな貴重品だって扱いはしてなかったよ?」
「寧ろバカスカ撃ちまくってましたよね?」
「そこなんだよなあ。お前らもこれ見たらわかる様に、ガンダムフレームみたいな骨董品と違って新品だ。つまりはテメエらで創り出したってことなんだが、こいつを量産できる技術や設備を持ってる時点でナグルファルは唯の海賊じゃねえ。
MSを仕留められる弾丸なんざ、『MSは格闘戦』っていう世の常識をひっくり返す代物さ。しかも当たり処が悪けりゃ一撃必殺なんざ初見殺しにも程がある。もしGHにこいつを売りこみゃ人生を100回は遊んで………暮らす前に口封じされるくらいにはやべえ」
全員がごくり、と息をのみ視線を交わす。そう言われてみれば、何の変哲もないゴムの筈なのに禍々しさを感じる様な気がしてくるのは先入観故か。
「しかし、戦列を並べた一斉掃射で敵を薙ぎ倒す、か。昔どっかで聞いたことがある戦法なんだが……俺も歳だな、全然出てきやがらねえ。まあこいつのことは忘れようぜ。利用できないなら知ってても災いの種にしかならねえ」
「「はーい、わかりました!」」
さっさと頭を切り替えた三人はナグルファルのクルーに弾丸を返却すると、地球行きに向けた道具の整備へと着手し始めるのであった。
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――――所変わって管制塔、通信が切れ真っ黒な画面しか映さなくなったモニターが映り続けている。誰も画面を消そうとしないのは、そうする気力すらわかないほど脱力してしまっているからだ。
『これはヒドイ』と。
時間を少し遡ること10分前。クランク達に通信設備を使わせることを快諾したオルガは、ビスケットを連れて通信室へと足を運んだ。ちなみにそれ以外の参番組とクーデリア(とその秘書フミタン・アドモス)を除外したのは、通信の内容によっては感情や声を抑えられないことを危惧したからである。
そうしてGH火星支部支部長コーラル・コンラッドへと回線を繋ぎ、手始めに『敵が秘蔵していたMSにより部隊は壊滅、自身とアインは辛うじて撤退したが破損したMSでは基地までもたない為、指示を請いたい』とクランクに話させた。後は相手の反応次第だが、前もって覚えさせた台詞を駆使して情報を抜き出す予定であった。
ところが、だ。失敗の報を聞いて取り乱したコーラルは、机に頭を強打させながら発狂するという、見ている全員をドン引きさせる奇行に走ったばかりか、ノブリス・ゴルドンだの監査だの、聞いてもいないことをベラベラ話し始めたのだ。はっきり言って意味が分からないし、口が軽いとか言うレベルでもない。
そうこうしている間に復活したコーラルは、周囲と同じく茫然としていたクランクに対し玉砕としか言えない命令を捲し立てた後そのまま通信を切ってしまった。あれが左遷部署とはいえ一支部の最高権力者だというのだからGHも人材難が深刻そうだ。
―――といった事態に全員の精神がやられた所で冒頭の時間軸に戻る。全員の思考が戻ってくるまで30分ほど時間を費やしたが、落ち着いた彼らの精神に沸々と湧きあがったのは“怒り”と“呆れ”であった。
話を整理してみれば、一連の騒動は地球から何ら指示があった訳でも大義があった訳でもなく一から十までが『コーラルのプライベート事情』によって引き起こされたのだという。しかもその事情とは端的に言えば『賄賂に使うためのお金がいっぱい貰えるから』というもの。海賊もびっくりな私欲100%の行動理由である。
此処に居る全員が思った、『あれ、GHの生業ってなんだったっけ?』と。ユージン・セブンスターク以下血の気の多い連中やクーデリアさんを居させなくて良かったと心から思った、とはビスケットの言である。
それから、聞き出すまでも無く勝手に吐いた『ノブリス・ゴルドン』というキーワードも極めて重要なものだった。こっそり録音していたデータをクーデリアとフミタンにも伝えた所、その人物はクーデリアの最大の
ドレイクからすれば、平和的独立を目指している人間を何で武器商人なんぞが支援するのか、その時点で疑問と疑惑が満載である。まあ碌な味方が居ない状況で相手を選んでいる余裕は無かったのだろうが、今回の録音データで狙いは判明した。ノブリスにとって彼女は単なる餌に過ぎない。しかも独立ではなく独立運動によって高まった気運を、彼女の死を以て闘争へ奔らせることで発生する紛争特需こそが彼にとっての果実。支援はそれを得るための肥料くらいにしか思っていなかったのだろう。
「……そんな、ノブリスさんが私を?」
「お嬢様、御気を確かに」
「なんだよそりゃ、戦争起こして金儲けだぁ?俺達の仲間が死んだのは、そんな糞みたいな計画の“行きがけの駄賃”だって言いたいのか?~~~ッざけんじゃねえぞッ!!」
「よせユージン、クーデリアさんが怯える。……とはいえ、確かにふざけた話だ。俺達一山幾らのガキなんざどうなろうがって話は珍しくねえし、戦って生きてる俺達を軽んじるのはまあ分からなくもない。けどな、真っ当な仕事を一生懸命やって生きてる人や、クーデリアさんみたいに誰かの為に必死になれる人が食い物にされるのは“筋が違う”」
壱番組に虐げられていたオルガ達だが、人として扱ってくれる人も少なくはなかった。よくCGSに顔を出している少女アトラや彼女の面倒を見ている雑貨屋の女将さん、それからビスケットの祖母である桜という老婆など。そして彼らがクーデリアの活動が実ることを願っていることも良く聞いている。その思いをド汚い手で穢されたことを、オルガやユージンは本気で怒っていた。
「とはいえ俺達に出来ることなんてたかが知れてる。今日GH共に吠え面かかせられたのはドレイクさん達の助力があってこそだ。だが俺達の目の前には、連中の糞みたいな計画をぶち壊せる御人がいる。まだ契約を続けてくれるのなら、俺達は命を賭けてアンタを地球へ連れて行って見せる。決めるのはアンタだ、クーデリアさん」
その場にいる全員の視線が一人の少女へと集まる。未だショックから立ち直れていなかった彼女は、その視線に宿った“強さ”に背を押される様に気持ちを整えると、決意を持った表情で彼等に宣言する。
「……私が歩んできた道は、誰かの欲に舗装されたものかもしれません。ですがこの活動で実現できたこと、そして何より参加した皆さんに宿った『今をより良いものにしたいという思い』は、決して偽りなどではありません!私は、私に託された思いを偽物にしないためにも必ず地球へと辿り着き交渉を成功させなければなりません。どうかお願いします、私を地球へと送り届けてくださいッ!!」
「―――引き続きのご利用ありがとうございます。我々新生CGS……改め、“鉄華団”は貴方を必ず無事に地球へとお連れ致します」
クーデリアとオルガは固く握手を交わす、二人の思いの強さを表すかのように。そんな彼らをフミタンは眩しそうに眺めていた。クーデリアが参番組……鉄華団を護衛に希望した時点で彼らの素性はある程度調べ、それらが“過酷”の一言では済まされないものだというのはすぐに分かった。けれど彼らは誰かの為に本気で怒り、全力で行動することが出来る。自分や『彼らを“宇宙ネズミ”と揶揄する人間』よりもよほど貴く高潔な生き物ではないか、と。
「オルガ、鉄華団……って何?」
「俺達の新しい名だ、今思いついた」
「おまッ、そういうことは全員で話し合ってだなあ――――」
決意を固めた少年たちは、気迫を充実させながらもいつも通りの姿へ戻っていく。明確な目的が出来たことで成すべきことが見えてきたのだろう。そんな彼らを呼び止めたのは、先程から黙っていたドレイクだった。
「えーと、熱くなっている所申し訳ありませんがもう少しよろしいですか?」
「あ、すいません身内でばっかり熱くなっちまって」
「いえ御気になさらず、若人の自律は見ていて嬉しいものですから。……それより、ちょっとこちらでもややこしい事になりましてね。ほら、入ってきなさい」
「はあ……って、確か昭弘の弟の?」
「昌弘って言います。あの、突然何ですけど………。
――――――――ナグルファルを降りることになりましたので、どうか雇ってください!オルガ団長ッ!!」
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「――――さて。少しばかり時間が出来たことですし、後回しにしていたことを片付けましょうか、昌弘」
コーラルへと連絡するより約10分前のこと、クランクが台詞を暗記する時間を要求したので暇になったドレイクは、昌弘を呼びだし二人きりで話をしていた。
「……あの、まずは謝らせてください。命令無視して飛び出してしまったこと」
「私はあの時何も言ってませんからそこは謝る必要ありませんよ。まあ独断専行はいただけませんが、今回は事情が特殊ですから不問にします。……ですが、言いたいことはそこではありませんね?」
「はい。頭領は命令無視じゃないと言いましたが、それは偶々そうだっただけです。もしあの時行くなと命令されていたとしても、俺は多分……いや間違いなく同じことを、していたと思います」
ドレイクは膝を折り、目線を同じ高さに変えると頭をくしゃりと撫でてやる。それから、ゆっくりで構わないから思うところを言いなさいと、穏やかな口調で言い聞かせる。その姿は参番組を震え上がらせた男とは別人のようであった。
「……兄貴がこんなにも大事な存在だったなんて知らなかったんです。あの人も言ってたけど、多分生きてないだろうって俺も思ってましたし。もう一度会えた時も、絶対泣いたら心配するだろうからって思ってたのに耐えられなかった。MWなんかでMSに立ち向かっているのを見て、今度こそ本当に会えなくなるって思ったらもう止まれなくて……。
こんなんじゃみんなの足を引っ張るだけです。それに兄貴が心配で仕事が手に着かないと思います。受けた恩を碌に返しもしない薄情者で申し訳有りません、どうか俺を船から降ろしてください!」
「……どうやら、決意は固いようですね」
「すみません頭領。俺のことはどうか忘れ――――むぶぅッ」
みなまで言わせてもらえず、頬を摘ままれた所為で口から変な音が出てしまった。口がアヒルの様になってしまっているが、後ろめたさ故に抗議の視線を送るだけに留める昌弘。
「早合点は悪い癖ですよ。船を降りることは、縁を切ることと同義ではありません。貴方だけじゃなく、色んな理由で船を降りる人は出てくるでしょう、もっと君達は夢を見るべきです」
「夢……?」
「例えば、アストンに好きな人が出来てその人との間に子供が生まれたら?デルマは意外と話し上手ですから、経験を積めば商売も上手くやるかもしれません。そうやって自分の道を見つけたなら船なんか降り立って良いですし、もう一度乗り込んでくるのも大いに結構。一段落したら、いつでも帰ってきなさい」
「兄貴と、お土産いっぱい買って帰ってきます。……必ず!」
□□~~~□□
「――――と、いう訳なんですよ」
「は、はあ……。わかりました、彼なら俺達も信頼できますし腕の立つ奴は今は一人でもほしい。よろしく頼むぞ」
「はいッ!兄貴共々頑張ります!!」
オルガの許可を得られたことにほっとした昌弘は、そのまま通信室から出て行った。恐らく兄の元へと向かったのだろう。その姿に、先程まで滾っていた面子も口元をゆるませている。
「ところで、ややこしい事ってのは一体?」
「それがですね、昌弘が船を下りてしまうと“
懐から取り出した書類を見てオルガもそれを思い出し『あぁ、そういえば』と相槌を打つ。せっかく昌弘が鉄華団に移籍するのに、昭弘を引き取ってしまっては本末転倒である。
「ならとっとと破棄したらどうっすか?俺達は別に―――」
「いいえ駄目です。何故なら私はコレを出汁に参番組を潰したんですよ?その癖自分が破る時はお咎めなしは不味いでしょう」
「いやいや、俺達こそその何倍も恩があるんですから受け取れませんって」
「じゃあその拒否を却下します。受け取らないなら、ぶちのめしてでも強制的に受けとらせます」
「「「無茶苦茶だーッ!?」」」
あまりにも物騒な善意の押し売りに、近くにいたユージン、ビスケットも参加して悲鳴を上げる。その仲睦まじさに微笑みながらも、残念ながら海賊は撤回はしてくれなかった。
「ははは、海賊と上手く付き合うなら諦めが肝心ですよ?基本黙らされるか黙らせるかの二者択一です、感情のままに生きたいから無頼になんて身を落としてる訳ですし」
「は、はあ……」
□□~~~□□
――――それから数日後、今度こそやることを終えたナグルファルは基地へと戻り火星を離れる準備を整えていた。急ピッチで書類仕事を片付けた鉄華団は、明日には宇宙へと旅立つ。キャンセル料の押し売りは済ませ、明日に備えた
『―――それにしても今回は随分羽振りの良いことだな。採算の合わないビジネスは海賊のすることじゃない、それが君の口癖だったはずでは?』
「あの子たちはまだまだ被保護者でしたからね、少しは社会人の先輩としてサービスもしますよ。それに……彼等に目を掛ける理由が出来ました」
『――――ほう?』
「紛争を起こして一時の大金をせしめる。太く短く生きるのは結構ですが、運動と言うものは何時だって若者が先頭を歩く。しかも火星全土へ燃え広がる紛争となればすぐには終わらない。それだけの人が死ねば、社会は大きく縮小しますし補充は容易にはいきません」
『一山幾らで人間は売られ、そして買われていくが?』
「彼らは歯車になれても社会の一員には成れません、いや成らせようとしない。社会基盤は壊れるばかりで、そもそもヒューマンデブリとて無限に補充される訳ではない。そう遠からず火星は限界を迎えます。お前としてはその方が都合が良いんでしょうが」
『………』
音声は応えない、唯カタカタと音を立てるだけである。これ以上は酒が悪い方に入る、戸呟くとドレイクはボトルとグラスを片付け就寝の準備に入る。
電気が消されても尚、鋼の球体はカタカタと揺れ続けていた。何も知らない人には愛嬌のあるボールが揺れているだけに見えるが――――
―――――その本性を知る人間からは、