海賊と〇〇、時々鉄の華   作:鉄のクズ

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第6話

 

 

 

 

「―――クーデリア・藍那・バーンスタインの動きを掴んだというのは本当だな?」

 

「ええ、もちろん。我々オルクス商会に火星から宇宙ステーションまでのエスコートを依頼してきましてね。ここに新しい団長とかいう若造と交わした証文もございます」

 

「………良いだろう。もしこの予定日に連中が現れたなら、貴様等が報酬に提示してきた取引は任せる」

 

「ありがとう御座います!今後ともわが商会をどうぞ御贔屓に」

 

 クランク達に再突撃を命じて早三日、一向に音沙汰がないことに痺れを切らしたコーラルが行動に移そうと考えていると、思わぬ吉報が舞い降りた。あまり想像したくは無かったがクランク達は返り討ちに合い、しかし損耗が激しい件の民兵達はこそこそと火星から逃げ出す算段を整えているという情報が密告されたのだ。

 

 これで相手の行動は把握した。予定日まで少し時間がある、これなら万全の準備で迎撃できるだろう。セブンスターズの若造共の目が煩わしいが、クーデリアさえ始末できれば監査などどうとでもなる。コーラルはもうすぐやってくる大金を前に皮算用に耽っていた。

 

 こうして、()()()()()()()()()()()奇襲が行われることとなった。

 

 

 

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「―――トドの野郎を使ってこっちの予定をGHに教えた!?何でそんな真似を?」

 

 CGSの倒産ならびに鉄華団の起業に関する書類手続きを急ピッチで進めようやく目途が立ったころ、オルガ達はドレイクから爆弾を投げつけられることになった。

 

「ええ、丁度良い餌もあったので快く請け負ってくれましたよ」

 

「いや、請け負ってくれましたよじゃなくて……いや、アンタのことだからちゃんと利益のあることだってのはわかってるんですけどね、いつもいつも急すぎますよ」

 

 げんなりと肩を落とすオルガに、隣りにいるビスケットとユージンが宥めに入る。キャンセル料のことも含め、突拍子も無いことを起こしまくるのだこの海賊船長は。くすくすと笑っていたドレイクだが、一通り楽しむと表情を真面目なものへと切り替えた。

 

「もちろん、利益というか寧ろ必須と言って相違ありません。今回の目的は大きく分けて三つ、まず一つは行き違いになることを防ぐ為です。貴方達が最速で準備を整えていることは理解していますが、それでも一日二日とはいきません。今まさに崖っぷちの人間からすれば、その僅かな期間は無茶な行動に移るのに十分なのですよ。流石にクランクさんが連絡を絶ってから時間が経ちすぎますし。

 我々が此処に居る間なら返り討ちにすれば万事解決です。しかし丁度宇宙に出たタイミングで襲撃されれば居残り組は確実に壊滅します。もしくは彼らのモラルを考えれば最悪人質や()()()()にされるでしょうね。当然ですが戦力を残す余裕などありません」

 

 ドレイクの言葉に鉄華団の三人は顔を見合わせる。残念ながら船の規模と危険度の都合で此処に居る全員を連れて行くことは出来ない。もちろんMWやそれを扱える人員は残すが、GHが本気になれば造作もなく蹴散らされるだろう。彼らに矛先を向けさせない様、ある程度は連中の目を惹きつける必要があるという意見は全くの道理であった。

 

「すみません盲点でした、ご配慮感謝します。本来なら自分達で気付かなきゃならないことなのに」

 

「御気になさらず、単にその経験が有るか無いかというだけです。これから覚えて行けばよろしいかと。話を戻しましょう、二つ目の目的はGH火星支部司令官コーラル・コンラッドの殺害です。

 今は目先の欲と不測の事態で気が回っていませんが、もし貴方達を完全に取り逃がせば、ノブリスへの点数稼ぎに色々策を巡らせてくる可能性があります。地球への影響力も高い大富豪、何よりクーデリアさんの支援者として自他共に認められる人物の協力があれば、彼女に無実の罪を着せるなど容易い。

 そうなった場合これ以上なく面倒な事態になります。犯罪者相手ならGH地球本部も大手を振ってクーデリアさんを排除できますし、交渉に関しても悉くケチがつきます。なので余計なことが出来ない様に口を封じます。捕虜の方々から聞く限り、この件に密接にかかわっているのはコーラルだけの様ですから、他は生き残っても余計なことは出来ないでしょう」

 

 二つ目についても物騒な内容が出てきたが、こちらについては反応が薄かった。そもそもこの面倒事のほぼ全てがコーラルの愚行が原因である。どの道“落とし前”は着けさせる予定だったので、それが確定しただけの話でしかない。

 

「分かりました。殺された仲間の仇でもありますから、確実に始末します。それで、最後の一つは?」

 

「最後のは二つ目と連動しますが、コーラルの遺体とMSの確保です。言い忘れてましたがこの人物は昔MS実働部隊で鳴らしていたらしいのです。ですからこの窮地だと確実に自分で打って出ようとするでしょう、部下に任せて失敗したばかりですし。

 それに加えて、先に用意していた“仕込み”も組み合わさるとなかなか有効な交渉カードに仕立てることが出来ます。誰にでも使える強力な、ね。そのためにも『こちらが誘導したとおりに』襲ってきてもらった方が都合が良くなります」

 

「交渉……?いやアンタには散々お世話になってるんで、可能な限り対処させてもらいます」

 

「よろしく頼みますね。まあ最悪始末さえしていただければ後は此方で回収するので余裕があれば、くらいに思っていて構いませんよ」

 

 その後は必要なやり取りに関する擦り合せを行い解散することとなった。その中で、ふと疑問に思ったのかビスケットが質問を飛ばす。

 

「そういえば、よくトドが請け負いましたね。あの人ギャラルホルンと事を構えるのを随分避けたがってたようですけど。どうやって言うこと聞かせたか聞いても?」

 

「ああ大したことはしていませんよ、次の就職先の世話を少々しただけですから。丁度向こうも、変に首輪が着いてなくてそこそこ頭の回る駒は足りない様でしたので」

 

 

 

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 頭脳労働組が必死で作業を進めている中、現場労働組(脳筋達)も勿論暇を持て余している訳ではない。地球へ辿り着く前からきな臭くなってきている以上、戦力の向上は欠かせない。しかも大慌てで慣熟させなければならない武器が増えたのでこちらもオルガ達に負けないくらい大わらわだ。

 

 それというのもドレイクが寄越した『キャンセル料』に起因する。その内の一つは、昌弘が乗っていたガルムロディ・カスタムである。元々昌弘の専用機だったのでそのまま移籍してきたのだが、今現在この機体には三日月が搭乗している。バルバトスが修理中なのも原因だが、この機体に搭載された“あるシステム”が彼の習熟にうって付けだったからだ。

 

「……ふうん、結構変わるね。でもなんか変な感じだな、この……マー何とか」

 

『『マーシャル・アシスト・システム』っす。阿頼耶識と連動して稼働するプログラムで、搭乗者が望む行動を登録された技術で修正し実行するものです』

 

 三日月は今手ごろな丘の前に立っているのだが、目の前には縦一文字に切り裂かれた斬撃跡が残されている。そしてその少し横には、半ばで止まった斬撃跡が並んでいる。前者がガルムロディ、後者が無理を言って稼働させたバルバトスがメイスで付けた跡だ。

 

 整備状況もあってか、総合能力はガルムロディの方が上だが、リアクターの差で出力と馬力はバルバトスが遥かに上である。にもかかわらずこの結果になったのは、その差を覆すだけの“業”があったからだ。

 

 これこそがマーシャル・アシスト・システムの効果である。兜割りの如き力の入れ具合・腰の使い方・重心移動を再現してみせるだけでなく、阿頼耶識を通じて『どうすればこう出来るのか』を何となく感覚に残せるので、習熟すればシステムなしで業を使い熟すことも出来る。字が読めない三日月達には万の教本に勝る品物だ。ただ、当然欠点も存在する。

 

『ただし、このシステムは三日月さんレベルになるとデメリットにもなるんでバルバトスでこれが出来るようになって下さいね』

 

「デメリットって?」

 

『機械の最適と三日月さんの最適は違うってことです、動かすだけで精一杯って奴ならともかく。例えば銃撃を避ける場合、三日月さんは相手に迫る形で避けようと思っても、システムは後退する方がこの状況は適切だって判断したら、三日月さんの意思よりも優先されてしまうんですよ。自分の思い通りに動かない兵器とか悪夢でしょ?』

 

「……わかった。大体のコツ?は分かったから後はバルバトスで練習するよ、ありがと昌弘」

 

 レクチャー役は当然のごとく昌弘である。ちなみに彼が三日月に敬語なのは自分が後輩だからというのもあるが、兄が一目も二目も置く人物だからというのもある。つい最近再会したばかりなのに早くもブラコン根性が滲み出ている。

 

 ドレイクのキャンセル料はそれだけではない。もう一つは鹵獲したクランクのグレイズで、こちらにもマーシャル・アシスト・システムが新たに搭載されている。パーツ不足と破損状況から左腕しか動かないが、システムは狙撃にも劇的に補整するため固定砲台兼射撃訓練機として現在シノが搭乗している。そして最後の一つは―――――。

 

『う、うおおおおおォッ!?くそ、このジャジャ馬が!大人しくしやがれッ』

 

「昭弘が振り回されるってどれだけヤバイんだあのゴツイMS」

 

「あ、シノ降りてきたんだ。あれってバルバトスと同じガンダム・フレームなんだって。しかも背中のバックパック以外に肘にもスラスター着いてるからコントロールが難しいみたい」

 

「はぁー、あれってかなり貴重なんだろ?そんなもんポンってくれるなんてすげえなあの頭領って人」

 

 昭弘が必死に飼い慣らそうとしているのは、『ガンダムグシオン・レストア』。名前の由来は自分達を“取り戻した”と言う象徴と、変態オカマの玩具から厄祭戦の英雄という“本来の姿に戻った”ことから来ている。カエルのようなフォルムから本来のスマートな姿に戻っているのだが、ナグルファルの人員が適当に考えたアイデアやギミックを片っ端から積み込んだせいで以前より更に巨大化している。

 

 背中の巨大なランドセル状のバックパックに大量の近接武器に大型スラスター、そして予備の推進剤が収納されており、銃火器の類は肩部アーマーのサブアームにある仕込み武器があるので一切装備していないが、それでも重量は限界ギリギリとなっている。

 

 腕は地面に着きかねないほど大型化しており、肘近くに一基の大型スラスターと腕部に姿勢制御用のブースターが備えられている。これらを用いて最高速度を維持したまま殴打することが出来るため、轢き逃げならぬ轢き殴り攻撃を主力としている。それにマーシャル・アシスト・システムから最適な打撃を身につければ大型シールド諸共敵MSのコックピットを粉砕できる。

 

 ただしバルバトスより遥かに重い機体で機動戦をするというコンセプト上、機体とパイロットに掛かるGが凄いことになっており実用性に欠ける。昭弘と三日月以外が乗れば間違いなく気絶するし、ガンダム・フレーム以外で同じことをすれば負荷に耐え切れず空中分解してしまうとのこと。

 

「ね、ねえ昭弘さん。やっぱりガルムロディに乗りませんか?幾らなんでもこの短期間で乗りこなすのは無理ですって!」

 

『ダメだヤマギ。これから待ってるドンパチは今までの比じゃねえ、俺よりMS戦の経験が有る昌弘を遊ばせておく余裕はない。だからといってまた今度まで練習しておきます、なんてのも無理な相談だ。弟が……約束も碌に守れなかったこんな俺を、まだ兄貴と言ってくれる弟の後ろで指咥えて待ってるなんざ、俺が俺自身を許せなくなるッ!

 だから何としてもこいつを、使い熟すとまでは行かなくても動かせるようになってやる。そのためなら血反吐の一つや二つ、いくらでも吐いてやらあッ!!』

 

「いやだから本番前に怪我したら駄目ですって!?三日月さーん、シノさん、もしくは弟くん誰でも良いから昭弘さん止めてーーッ!!?」

 

 ……非常に騒がしい事になってはいるが、全員が極めて高い士気を以て練度を高めていった。

 

 

 

□□~~~□□

 

 

 ―――そうこうしている内に時間は過ぎ去り、とうとうXデーを迎えることとなった。待ち伏せの数は火星支部に残存するMSのおよそ8割にあたる12機、まさしく背水の陣で待ち構えていた。

 

 時計をしきりに確認していたコーラルは、予定時刻丁度に表れた一隻の船を見つけたことで表情を下卑たものへと変える。

 

「―――来たか。おい、一応降伏勧告を行え。今の俺は機嫌が良い、今大人しく言うことを聞けば死に方くらいは望み通りにさせてやる」

 

 命令を受諾した部下は『クーデリア・藍那・バーンスタインの身柄を引き渡せ』とだけ通信を行う。それに対する民兵組織の返答は―――

 

『革命の少女が民兵を護衛に付けたことは存じている。しかし我々はつい先日起業したばかりであり、噂の少女が依頼したというCGSとは無関係である。臨検の要請ならば従うが、そちらの命令には応えようがない』

 

―――というものだった。微妙にこちらが想定した言い逃れと異なる内容であったこと、そして『情報にあった“少年兵”が用意したとは思えない文言』に違和感を持った随伴兵がコーラルへと指示を仰ぐが、当の昔に彼の眼は曇りきっている。

 

「ふん、言い訳がしたければもう少し真面なものを用意しろというに。情報にあった船の型式番号と同じで無関係の筈があるまい。時間の無駄だったな、MSを出撃させろ!一人残らず皆殺しにしろッ!」

 

 『『『りょ、了解ッ!』』』

 

 元より殺す以外の思考を放棄しているコーラルはそのまま攻撃を命令する。部下たちは戸惑いながらも、所詮は火星人の始末だとさほど抵抗を見せずに実行する。しかし一体が連絡艇に取りついた瞬間、噴き出した煙と共に姿を見せたバルバトスによって粉砕される。

 

「ほう、あれがオルクス商会の言っていた機体か。だが所詮は単機、囲んで潰せば―――『Bi―――ッ!Bi―――ッ!』―――な、なんだ?……エイハブリアクターの反応!?新手、いや伏兵か!監視は何をやっていた、いやそれよりもオルクスッ!敵MSは一つしかないのではなかったのかッ!?」

 

『ひいッ!?い、いえ我々もそうとしか聞いて―――『BOMBッ!』―――』

 

 最後まで言うことなく、鉄華団所属強襲装甲艦『イサリビ』に固定されたグレイズの迫撃砲によって機関部が大破、通信が途絶する。さらにイサリビから発進したガルムロディとグシオンが強襲し、それに連動して挟撃に移ったバルバトスによって瞬く間にGHはその戦力を失っていった。

 

 イサリビがこれほどタイミングよく表れたのは、リアクターを最低限までスリープさせ昨日からランデブーポイント傍で待機していたからである。ちなみに一部とはいえ鉄華団が宇宙に出られたからくりは、GHの怠慢が要因である。なまじ相手の動きを補足しているという慢心が、予定日より以前の定期船への関心を疎かにさせていた。しかもクーデリア以外は顔が割れておらず男だけの集団への監視の目は余計に緩くなっていた。

 

 それはともかく、戦況は鉄華団の独壇場であった。固定砲台(グレイズ)の正確無比の狙撃が敵MSのメインカメラを撃ち抜き、崩れた瞬間をガルムロディが猟犬の名に恥じぬ俊敏さと獲物のハルバードで刈り取っていく。三日月は早くも物にし始めている棒術にてメイスを使い熟し、群がるグレイズ相手に無双している。さらには、辛うじて出力70%でなら飛ばせるようになった昭弘が一撃離脱を繰り返し、止めようと進路を遮ったMSは、盾諸共コックピットを拳で砕かれ沈黙した。

 

「ば、ばかな……。相手は無名の弱小民兵のはずだ、これほどの戦力をどうやって――――うおぉッ!?」

 

「あ、忘れてた。こいつは殺しても良いけど『ミンチ』にしたらダメなんだった。……バルバトスでどうやったら良いんだろ?」

 

 まさに鎧袖一触、12機居たグレイズは既に壊滅し残ったコーラル機に三日月がメイスを叩きこむ。辛うじてアックスを盾にしたお陰で死なずに済んだが、角度が悪かったせいでマニピュレータに異常が出てしまっている。僅か一合で戦闘力を激減させられてしまったコーラルだが、しかしそんな彼に一縷の望みが舞い降りる。

 

「―――!エイハブウェーブの反応、新手……あっちか」

 

「コーラルめ、我々を出し抜こうとしておきながらこの体たらくか。しかし壊滅、か。まあ海賊討伐すら碌にしてこなかった連中ならこんなものか」

 

 コーラルからの援軍要請を受諾していたが、連絡を意図的にずらされたことで出遅れた監査局付き武官ガエリオ・ボードウィンが乱入してきたのである。この隙に離脱したコーラルからは一端意識を外し、三日月は躊躇なく突っ込んで来たガエリオのシュヴァルベ・グレイズを躱す。完璧に避けて見せた三日月だったが、その眉間には珍しく皺が寄っていた。

 

「……ねえ、アイツ確か『とーりょー』が言っていた『かんさきょく』だよね。何で襲ってくるの?火星支部以外にクーデリアを襲う理由は無し、ほーりつ?にも根拠はないんでしょ?」

 

『さ、さあ……?ってそれより、このままじゃコーラルが逃げます。急がないとッ!』

 

「昌弘任せた、俺はこいつの相手しとくから。昭弘、シノ、手伝って」

 

『『『了解(わかった)!』』』

 

 相手が何を考えているのか良く分からないが、取り敢えず目的を果たそうと行動に移す三人。だが彼らの疑問は割と正当なものだと言えよう。

 

 何度も繰り返すが、現状警察機構(GH)クーデリア(一般人)に何かをする義務も権限もない筈である。これまでの襲撃は全てコーラルの汚職故であり、百歩譲っても許される攻撃は同僚(コーラル)の保護を名目にした牽制であって突撃ではない。戦闘行動の停止を勧告するわけでもないし、鉄華団からすれば汚職に加担していない奴が何をしに来たのか、本気で分からないのである。

 

 例えるなら、『事情も聞かされず現場に急行したがドンパチが始まっていたので、とりあえず状況把握も説明も受けず、敵っぽいという独断で目に付いた奴を殺し始めた警官』といったところか。警察として、あまつさえ誠実さと中立性を求められる監査局の在り方として甚だ不適切としか言えないだろう。口では腐敗だなんだといってはいるが、無意識の部分ではガッツリ『ギャラルホルン流』が染みついているガエリオらしいといえばそうだが。

 

 だが主力試作機であるシュヴァルベとガエリオの腕を以てしても、一対三でしかも全部特別機となれば分が悪すぎた。もし最初から火星支部と共闘してたならともかく、単騎が集中攻撃を受けてはどうにもならない。機動戦をしようとすれば後ろから余裕で追いついてきたデカブツ(グシオン)に背部スラスターを握りつぶされ、迎撃しようとすれば割り込んできたバルバトスに押し留められてしまう。

 

 ドレイクから『殺したら後が死ぬほど面倒になるから』と言い含められ、殺る気のない三日月は此方から仕掛けずあえて防戦一方を“演じる”。……ガルムロディがフリーなんだけど仲間(コーラル)を助けに行く気ないのかコイツ?マジで何しに来た?という疑問は常時浮かべながら。

 

 ひたすら萎える白兵戦に徹していたが、オルガから“仕事は全部終わった”という通信が来たので切り上げることにした。ただし、切り上げる直前に発した言葉でお互いに相手が誰かを認識し、暴言はともかくイサリビを狙おうとしたことにイラッときた三日月がメイスの石突きでコックピット周りを強かに撃ちつけることになったが。

 

 少しばかりすっきりした三日月は、もう用はないとばかりに撤退する。元々スラスターがやられているので追撃は不可能、態々付き合っていたのはコーラル討伐の邪魔だったからというだけなので見向きすらせずに。

 

 こうして鉄華団は、考えうる限りで最良の結果で火星脱出を果たすのだった。

 

 

 

□□~~~□□

 

 

 

 「(―――けけけッ、ガキ共がギャラルホルン相手にやらかすと言い出した時はどうなるかと思ったが、まさか“宙の悪魔”の推薦で連中と誼が出来るなんてなあ。何処にツキが落ちてるか分かんねえもんだな)」

 

 僅かな私物と退職金を一緒に入れられた救命ポッドの中、トド・ミルコネンはほくそ笑みながらハッチが開く時を待っていた。GHと闘うなど論外、かといってナグルファルの不興を買うのも最悪だ、と頭を抱えていた彼はその張本人から就職先を斡旋された。

 

 正直話が旨すぎるとも思ったが、どの道他に行く当てもなし。言われていたオルクス商会への密告も“襲撃当時のCGSの保有MS数”という嘘にならない情報を送ったりと自分なりに貢献したつもりであり、あの男の性格なら悪いようにはされないと判断していた。

 

 そうこうしているとポッドが回収された振動が伝わり、ハッチの開放と共にゆっくり両手を挙げた状態で姿をさらす。そこには厳めしく銃を構えるGH下士官、そして本命の相手である監査局特務三佐マクギリス・ファリドが待ち構えていた。

 

「一応確認するが、君が“彼”の言っていた人物で間違いないかな?」

 

「へえ、トド・ミルコネンと言います。『“ヨシュア”から伝言を預かっている』といえば通じると聞いてますが」

 

「間違いないようだな、では詳しく話を聞くとしよう。その前に……『伝言』を先に聞かせてくれるかな?」

 

「ええ、特に人目をはばかる様な内容でもありませんし。えーっと『“印刷”は無事に済みました。ただし何処かの馬鹿が乱入したので価値が桁二つほど上がって困っています。一応予定通り“昔の職場”へと送っておく』とのことで」

 

 その言葉を聞いて、マクギリスは隠そうともせず大笑いを上げたのだった。

 

 

 

 

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