海賊と〇〇、時々鉄の華 作:鉄のクズ
第七話
ドルトコロニー、地球に本部を持つ『ドルトカンパ二ー』が所有する産業コロニー群であり、他にも歓楽街や上流階級御用達商店が多く入り込んでいる。地球にほど近いということもあり様々な船や取引が活発に行き来し、その数だけ利益と金を落としていく。事情を知らない人間からすれば、此処が栄えない理由など無くその恩恵を受ける住民はさぞ裕福な生活をしていると考えるだろう。
しかし、現在1から6まで存在するドルトでは殆どの場所で危険な空気が流れていた。街行く人の顔は暗く、コンビニに入る作業着を着た労働者は何日も家に帰れていないのか服にも本人にも汚れが溜まっている。今日は多くの会社で給料が支払われ、且つ明日は休日だというのに歓楽街の人通りは驚くほど少ない。上流階級の縄張りである1から3ではそんな光景は見られないが、代わりに不安や緊張を滲ませ足早に帰る人が多い。犯罪発生率がここ最近急激に上昇しているからだ。
そんな危うさをはらんだ街中を横切り、とあるカラオケ屋に入る集団が居た。若手サラリーマンの二次会ならそう珍しくもないが、その団体の取り合わせが場に似つかわしくないものであった。
一人は作業着に身を包んだ如何にも現場担当といった中年男性、一人は流行や生地、見栄えを重視した高級スーツを羽織った壮年、最後の一人は銃創や火傷跡が残る藍色のトレンチを着たどう見ても堅気に見えない人相の悪い男と、見事にバラバラな取り合わせである。
しかしそんな彼らを見ても受付は顔色一つ変えず、流れる様な動作で部屋番号が掛れたセットを引き渡す。それを受け取ったトレンチの男は全員を先導し、番号の書かれた一室―――――ではなく、防火扉の方へ手を掛ける。そこには非常階段やエレベーターなどではなく、分厚い壁に覆われ防諜設備が整った一室が広がっていた。
「ほ、本当にこんな部屋が現実にあるのですね……」
「そりゃそうさ、現代はどこもかしこも物騒だからな。その分こういう場所の需要も増えるってな。……商談に入る前に言っとくが、相手は仁義は守るが筋金入りのヤクザ者だ。人情に訴えるやり方は悪手だと忠告しておくぜ?」
それぞれソファーの適当な場所に座ったことを確認したトレンチの男は、テレビに電源を付ける前にそう伝えると、二人の人物がしっかり頷いたことを確認し電源を付ける。テレビに偽装されたモニター通信機は、当然カラオケの画面ではなく一人の青年を向こうへ映し出していた。
「―――おや繋がりましたか。相変わらず時間に正確ですねノックスさん」
「当然じゃねえかドレイクの旦那、俺はどんな御大臣にも物怖じしねえが、アンタの不興を買うことだけは御免だ。命の恩人に不義理をする文屋なんぞ誰が信用するかよ」
ノックスと呼ばれた男は本人の言うとおり元戦場カメラマンのフリージャーナリストである。こう見えて反戦活動や地球圏外の人権運動に熱心な人物で、クーデリアとも取材で対面し、“ノアキスの七月会議”の記事を地球内で報道したこともある。しかし本人の広い人脈が災いし、GHのとある秘匿作戦を暴いた挙句、取材先の(無実の)レジスタンス諸共消し飛ばされかけたことがある。その窮地をナグルファルに救われて以来、彼は本業の傍ら情報屋として動いたり、今回の様に仕事の仲介を行ったりして付き合いを続けている。
「そちらが今回の依頼人ですか。見た所真面目に働かれている堅気の方の様ですが、何故我々のようなヤクザ者を頼ろうと?」
「あ、ああ。依頼主は私だ、トニー・ヒースという。ドルトカンパニー・コロニー支部で取締役の一翼を担っている。本来なら、君の言うとおり社会に責任のある会社、それも役員が反社会団体と関係を持つのはリスクが高すぎるが、正直そのリスクすら安く見えるほどの窮地に我々は立たされているのだ」
「……詳しくお伺いしても?」
促され、ヒース役員はぽつぽつと語り始める。元々ドルトコロニーは経済圏アフリカンユニオンの“所有物”であることから、地球に根強い『地球至上主義』の煽りを受けやすく、労働者側と経営側の対立は根深い。しかも管理職を地球出身者が独占していることも合わさり、現状に即した労働環境が用意されないまま続いている、と。
「―――うん?先程貴方はご自身を取締役と言っていましたが、貴方も地球の生まれですか?」
「ああ、管理職と言うのは『アフリカンユニオン政府のドルト担当役員』という意味だ。我々コロニーの経営陣は社長を含めほぼ全てが雇われ役員といった所で、決定権はあちらにしか存在しない。そして彼等と直接連絡を取れるのは会長とその取り巻きのみなのだがね、『地球至上主義者共に宇宙に追いやられるような人材』の程度など、貴方なら容易に想像が着くだろう?」
「……そういうことですか。失礼、話の腰を折ってしまって、続けてください」
ドレイクが納得したことを確認したヒース役員は話を続ける。現状社員たちに彼らの労働に相応しい賃金や環境を用意できているとは到底言えないが、それでも支部の経営陣は必死に遣り繰りし、会長等を宥めすかしながら何とか現状維持を続けてきた。
その甲斐もあってこの問題の深刻化を食い止められていたが、ある時を境に本部が求める目標・経常収支が突然跳ね上がった。説明を求めても何の回答も得られず、撤回もしくは交渉の席を用意してほしいと会長に頼んでも一顧だにされない。それどころか“本部からの目標”という大義名分を得た会長派は嬉々として差分を労働者の賃金等を削減して補填するようになった。
余りにも一方的な命令、しかも交渉の余地すら与えられない状況に頭を抱える経営陣であったが、追い討ちを掛ける様な信じられない情報が入ってきた。それは――――。
「『ドルトの経営陣が本社と組んで労働者を弾圧し、搾取している』という噂が突然、しかも加速度的に広まっているのだ。ここにいるナボナ・ミンゴ君は抗議デモをまとめる立場に居る人でね、ここに連れてきていないが、我々経営側と労働者側のパイプ役になってくれているサヴァラン君に紹介して貰った人材だ。彼から話を聞いた時は耳を疑ったよ」
「ナボナと申します。私はドルトで働いてもう数十年になり、この会社の仕組みはある程度理解しているつもりです。その経験から言わせてもらえば、デモをしても解決の糸口にはならないのに何故今更と思いまして。そこで彼らが暴走しないように、とサヴァラン君の頼みでデモの代表を請け負いました」
「なるほど、経営陣に決定権が無い以上デモをしても効果は見込めませんね。それならストライキの方がよほど効果的だ、此処の重要性を考えれば他の経済圏からも圧力を掛けて貰えるでしょうし。経営陣の収入が減らないことを『協力している』と早合点したか、それとも“そう思い込まされたか”ですか」
「おそらく後者だ。治安が加速度的に悪くなっていき、それを止める手段すら奪われてきた我々に本社が差し向けてきたのは、本社の代理人でも弁護士でもなく、ギャラルホルン最強の部隊『アリアンロッド艦隊』だったのだからな!その瞬間私達は理解したよ、本社は我々の命を奴等に売ったのだとッ!!」
その言葉にノックスとドレイクは眉を顰める。二人とも最近アリアンロッドがドルトの近くに来ているのは知っていたが、まさか狙いが此処だとは思わなかったのだ。
ドルト・コロニーは謂わば圏外圏や火星から運ばれるレアメタルや希少物質が運ばれる集積地。ここの生産が止まるということは、母体であるアフリカンユニオンだけの損失に留まらない。
それに何よりの問題が“地球に近すぎる”ということだ。仮に彼らの目論見通りになったとしても、木星や火星ならともかく目と鼻の先すら満足に抑えられないのか、と経済圏から罵られても文句が言えない場所である。睨みを利かせるための作戦だというのなら完全に逆効果だ。
「そういう訳で俺が相談されたんだが、連中の目的が分からんことには記事にしても世論を動かんせん。で、旦那に連絡を取ったんだが……どうやら心当たりがあるらしいな」
「……確証はないのですが。ノックスさん、アーヴラウの蒔苗議員が贈収賄で失脚したという話を覚えてますか?」
「ああ、あくまで疑惑で証拠も挙がってないし、爺さんが釈明もせずに雲隠れしたのを不思議に思ってたから良く覚えてるぜ。確かその件で騒がしかったのが親ギャラルホルン派の……おい、まさかそういうことか?」
「ではないかと。目的は経済圏にアリアンロッドを避難させ、一時的で良いから地球に降りられなくすること。そしてもう一つが、火星を脱出したことで蒔苗氏との接触が現実味を帯びてきた“革命の少女”の殺害もしくはその名に疵をつけること、そう私は睨んでいます」
そもそも、こんな『アリアンロッドばかり割りを喰う仕事』を総司令官ラスタル・エリオンが自発的に実施するとは考えにくい。それにコロニーを不安定化させ虐殺する等という大仕事は、例えエリオン公といえど一存では決められない。最高幹部による会議で決議されるべき案件だ。
恐らくGH統制局局長イズナリオ・ファリドが同じくセブンスターズのバクラザン家とファルク家を抱き込み、ついでに後見の地位を利用してイシュー家の発言権を使いごり押したのではないか。イズナリオはアーヴラウの政治家を利用して内政干渉紛いのことを行っており、蒔苗議員ほど影響力のある政治家が反論すら出来ず即座に雲隠れしたことからもそれは明らかだ。それにイズナリオは度々アーヴラウを訪れており対抗派閥のアンリ・フリュウとの親密さをアピールしている。蒔苗議員すら叩き出したという実績、そしてGHの影響力を見せつけたことで、事前投票予想では端にも棒にも掛らなかった彼女が最有力候補に伸し上がったのだ、無関係という方が無理だろう。
はっきり言ってイズナリオはやり過ぎている。こちらもドルトでの作戦同様セブンスターズといえど独断で実行できる権限を完全に超えている。いざとなればアリアンロッドが実力で止めることも許される状況だ。だからこそ、そうさせないためにこの作戦をねじ込んだのだろう。
海賊退治と暴徒の虐殺は全く印象が異なる。例え“宇宙人”と蔑む相手と言えど、自分と同じ形をした存在を躊躇いなく殺す集団など普通の感性なら忌避感を抱くだろう。元々燻る反GH思想と合わさった国民の悪感情を政府は無視できない。暫くの間アリアンロッドは経済圏への入国を拒否されるだろう。必要ならこの作戦を『アリアンロッドのマッチポンプ』として概要を漏らすことも考えられる。よってエリオン公はアーヴラウに干渉できなくなる訳だ。
「そ、そんな……我々は今まで必死に働いてきました。不満や怒りを飲み込んで今日までやって来たんです!ただ労働に見合った対価を欲しがっただけの我々をッ!それをよりにもよって何の関係もない政争で死なせるというのですか……」
「………火星の“革命の少女”が出てくる理由は?確かに数か月後持ち込まれる予定となっている武器の送り主は、クーデリア氏の支援者とのことですが」
ドレイクの予想を聞かされたナボナは、自分達に訪れる末路を嘆き泣き崩れてしまう。対してヒース役員は努めて冷静に返事を返すが組んでいた手から血が流れている。表情も憤怒に歪み、もし関係者この場に居れば殺しかねない程殺気に溢れている。
「恐らくノブリス・ゴルドンとの利害の一致ですね。独自の情報網に引っかかったのですが彼はクーデリア嬢を殺したくて仕方がないようです、出来れば鮮烈に。
そしてイズナリオはアリアンロッドにクーデリア嬢殺害を擦り付けたい。ただ待遇改善を訴えただけの一般人を殺した、しかもそれを切欠に火星で紛争が起きればエリオン公に責任を問うことも出来るでしょうね。アーヴラウに圧力を掛けさせれば彼を失脚させ権限を奪えるかもしれない、そんなところでしょう」
「……それで旦那よ、この話受けるのかい?聞いてる感じだと随分ややこしい案件みたいだが。どうやってもリスクとリターンが釣り合わんが、そこんとこ海賊としてどうなんだ?」
「お願いしますッ!我々に払えるものなど多くはありませんが、何でも致します!!例え何を持っていかれたとしても、このまま連中の餌食になるより遥かにマシですッ!!」
「私からもお願いする、いやお願いします!私の権限が及ぶ範囲でなら、どんな要望も受け入れる用意があります。どうか、なにとぞッ!!」
始まる前は『情に訴えるな』と言っていたノックスだったが、想定以上に胸糞悪くなる策略を前にしては流石に彼らに肩入れせずにはいられなかった。彼の問いに便乗する様に必死で頭を下げ懇願する二人を前に、ドレイクが出した結論は――――。
~~~その頃鉄華団は~~~
ラフタ『へ、へへへ――――』
昭弘『――――へ?』
ラフタ『変態だーーーーッ!?』
昭弘『はあッ!?いきなり何言ってやがんだ!』
ラフタ『だって!そのデカブツ、アタシの百里に余裕で着いてくる変態起動だし、アタシより何倍も強いGが掛かってるのに平気そうな変態パイロット乗ってるし、人妻の尻を永遠追っかけてくる変態だし、トリプルスコアで変態じゃないのーッ!(自慢の速度を簡単に追いすがられて混乱中)』
昭弘『いや、最初の二つは百歩譲って受け入れるにしても、最後のは幾らなんでも言いがかりだろうがッ!?つーか追われるのが嫌なら人妻をMSに乗せるな――って待ちやがれッ!!』
昌弘『三日月さん、あのピンクの百錬は多分”ルージュのアミダ”です。圏外圏で最強とも恐れられてる人ですが、絶対に”殺し合い”にまで行かないでくださいね!あくまで俺たちの目的は交渉の席を作ることなんですから』
三日月『それ出撃前にも聞いた、ちゃんとわかってるよ』
昌弘『……アンタが先の戦いで『忘れてた』って呟いたの忘れてませんからね!?オルガさんからも”ミカは細かいところは割と抜けてるから注意してくれ”って頼まれたんですからね、新入りの俺がッ!』
三日月『………わかった』
アジー『聞いてたのと随分違うね、MSが三機もある民兵なんてそうはいないよ。しかもあの動き、阿頼耶識……だけじゃなさそうだ。どうする姐さん?』
アミダ『へえ、吠えるだけのことはありそうだね。でもあれじゃまだまだ”脇が甘い”。とはいえ”お仕事”はアタシらの旦那の仕事だ。女房の役目はあくまで”子供の躾”さ、やりすぎんじゃないよアジー!』
名瀬『……なあマルバさんよ、俺たちタービンズと真っ向からやりあえる戦力があるってどういうこった?なんでオタク夜逃げしたんだよ?』
マルバ『――――(絶句)』
ちょうどタービンズに子供じゃないアピールをしている最中の模様。オルガはミカがコーラル機にメイスぶん回したのが玉ヒュン物だったので昌弘に言い含めています。