勘。   作:めもちょう

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9、頼りにならない警察と己。

「それじゃあ君は、今日たまたま笠原さんの家に立ち寄り、あそこの窓から笠原さんが倒れているのを発見。不審に思った君は玄関から入り、笠原さんが死んでいるのを確認した。……ということだね?」

「うん」

「そうか。でも本当にありがとう直也くん。君が見つけてくれなかったら、笠原さんは死んだことに気づかれなかったかもしれなかったからさ」

「え、なんで?」

「あぁ、笠原さんの奥さんは数年前にお亡くなりになっていてね。2人の子供も、今は家庭を持っているからなかなか帰ってこないようだし。今は2人とも出張でここからかなり離れた場所に居るみたいだけどね」

「近所付き合いとかないの?」

「それはそこそこあったらしいから、もしかしたら数日すれば、可能性はあったかもしれない。ただこのあたりの皆さんは朝から夕方まで仕事に行っている人が多いらしくてね。目撃証言は期待できないんだよね」

「そうなんだ……。ていうか刑事さん、よく大事なことベラベラ喋るね?」

「え? あ、あはははは……」

 

 

 直也が指摘すると、高木は困った様な、焦ったような乾いた笑いをした。

 

 

「いくら僕が第一発見者だとしても、一般人なのにさ……」

「はは、耳が痛いよ。いや、コナン君がいるからつい、ね」

「……は? コナン君がいるから?」

「ああ。コナン君って探偵の毛利さんといるからか、よく現場にいるんだよ。小さいことにもよく気づいてくれるし、実は僕たちコナン君を頼りにしている部分があるんだよね」

 

 

 立ち上がった高木は気まずそうに直也から目をそらし、頭をかく。そんな高木を直也は軽く失望したように仰ぎ見る。それから視線を目の前のテーブルへとずらした。

 

 

「その分警察は頼りにならないと……」

「ん? 何か言ったかい?」

「言ってない」

 

 

 ボソリといった言葉がやはり聞こえなかった高木は直也になんだったのかを訊ねるが、直也はきっぱりとそれを否定した。

 強く否定された高木は「そうかい」と一言言って、仕方ないといった様子で直也を見下ろす。

 

 コナン君といえば、と直也は青い顔をあげて家を見渡す。一緒にいたいと言ってコナンもこの家の中にいるはずなのだが、先程からコナンの姿が見えない。重い腰を上げ、もしや、と先程の高木の話を思い出しながら笠原が死んだ現場を恐る恐ると覗く。

 

 

「っ!!?」

 

 

 コナンはそこにいた。

 

 コナンは長年経験を積み重ねてきた探偵のように、静かに、注意深く笠原の遺体を見ていた。時折、何か考えているかのように口元に手を持っていく姿は様になっており、直也はひとり固まった。

 

 血濡れの遺体と小学1年生。ありえない組み合わせで、ミスマッチで。なのにどこか日常のような。奇妙で奇妙で仕方がない。

 

 

「コナン君!」

 

 

 直也は震えを抑えた声でコナンを呼ぶ。その声にコナンはビクリと肩を震わせ身構えた。

 

 

「な、なに? 直也さん?」

「なに? じゃないよ! なんで死体の近くにいるのさ! 離れて! というか行くよ!!」

「え、ちょっ!」

 

 

 直也はコナンの腕を引っ張り、部屋の中から出る。しかしその時、直也は再び笠原の遺体を見てしまったばかりか、思い切り血の匂いを嗅いでしまった。

 故に直也は部屋から出たところで膝から崩れ落ちてしまった。

 

 

「直也さん!?」

「大丈夫かい?」

 

 

 いきなり膝をついた直也を心配するコナンと高木。直也はそれをありがたく思いながらも、垂れた前髪の中からコナンに畏怖の目を向けていた。

 

 

(刑事さんはいいとして……コナン君はいったい、何なんだ……?)

 

 

 直也はそこまで考えてやめた。考えてはいけないと、ありのままを受け入れたほうがいいと勘が告げていた。

 

 直也はため息しながら顔を上げる。

 

 

「帰りたい……」

 

 

 気づけば時計の針は既に6時半を過ぎたあたりを指していた。少なく見積もっても2時間は心労と戦っていたのだ。疲れても仕方ない。

 時計を見たついでに家の中を見渡す。綺麗にされていることと、やたらと本棚が多いという印象を持たせる家だ。リビングの大きな窓の近くにはゴルフのパターマットが置かれている。きっと趣味だったのだろう。

 

 それからもう一度時計を見たとき、直也は違和感を感じ取った。

 

 

「直也さん……?」

「高木さん、目暮警部、連れてきましたよ」

 

 

 コナンはあの時の、この家に入る前の直也になった彼に声をかける。その声に続くように、千葉の声が聞こえた。その後ろから、ふたりの老いた男性が現れた。

 

 

 直也はそのふたりを見て、口の中だけで言った。

 

 

「あ、犯人だ」

 

 

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