勘。   作:めもちょう

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11、推理は整理、勘は無計画に。

 コナンは顎に手を添え、考えていた。

 謎はなんだ? まずはまとめよう。

 

・犯行に使われた凶器はどこへ行った?

・犯人の動機はなんだ?

・どうやって家に侵入したのか? 出たのか?

 

 とりあえずこんな感じだろうか。分かるものから一つひとつ解いていこう。

 

 一つ、犯人の動機はなんだ?

 

 遺体を見た感じだと、怨恨の線が強い。鈍器で頭部を3度も打たれている。つまり被害者に相当な恨みを持った者の犯行だ。

 家が荒らされた形跡も見られない。つまり最初から笠原を殺すことが目的なのが分かる。ということは犯人は笠原と面識のある人物で、なおかつ深い関わりがある人物だ。

 

 一つ、どうやって家に侵入したか、出たか。

 

 家の中をあらかた見て回ったが、どこにもこじ開けられたような痕跡はない。つまり玄関か庭の大きな窓から入ったということだろう。つまり顔見知り。

 先程の推理と合わせると、親しい間柄なのがわかる。入るのは簡単だったろう。しかし出るときは余裕がなかったか、鍵が無かったかで鍵を閉めることができなかった。それで自分たちは容易にここへ入ることができた。

 

 今分かる事で考えられるのはここまでだ。ここから先はまた情報を手に入れなければならない。

 

 

 コナンは千葉が連れてきた二人の老人を見る。背が高く、少々キツめの顔つきをしているのが嶺井 兼明。目暮警部よりかではないが恰幅の良い、優しげな顔をしているのが斎藤 哲次だ。

 コナンは嶺井を注視する。その嶺井はどこか落ち着かない様子であたりを見回していた。

 聞けば、彼らは被害者の笠原の昔からの友人らしい。

 

 笠原の子供は遠くにいて、犯行は不可能。妻はそもそも亡くなっている。それら以外に親しい間柄なのは……。

 

 

 犯人はこの中にいる。あとは凶器だ。それを隠した場所も探さなければならない。……おそらく凶器は犯人が持ち去ってしまったのだろうが。

 

 

 それでも、もう一度家の中を見て回らなければ。今度は直也も誘おうかとあたりを見たコナンが彼を見つけたとき、直也はテレビ近くの本棚の前に立っていた。

 

 

「ここか」

 

 直也は天井まであろうかという大きな本棚の前に立っていた。ホコリがかぶらないようにとかけられた本棚の中には趣味のものか、ゴルフ雑誌やクラブのカタログ、他にもハードカバーの書物が置かれている。相当本が好きな人らしい。

 そんな大きな本棚が三つも並んでいる姿は少々威圧的で、多少このリビングと合っていない。

 しかし直也は興味ないことには関心が行かない人間だ。では直也の関心はどこに向いているのか。それはまだ直也本人にも分かっていない。

 

「どこだ?」

 

 本棚の前で少しの間悩んだあと、直也はためらいなく本棚にかけられた薄手のカーテンを取り払った。

 後ろで千葉が焦った声で「何やってるんだ! 止めなさい!」というが、直也の耳には届かない。いつぞやの時のように、完全に外界の感覚をシャットアウトしているらしい。

 

 直也は背後の千葉が止めるのを余所に、本棚とその周りを注意深く観察する。

 

 本棚自体は一見何も変哲もない、ごく一般的な作りだ。決してどこかの本を押すとどこか秘密の場所が開く、といったようなふざけた仕掛けは施されていそうにない。そもそもこの本棚は後付け。壁にピッタリついているわけではない。

 

 壁も同様に、何か特殊な仕掛けが施されたような痕は見られない。

 

 直也は首をひねる。このあたりに何かあることは間違いないのだ。なんせ自分の勘がそう告げているのだから。間違いないのだ。

 

 

「チッ……じゃあ、何があるっていうのさ」

 

 

 なにか掴めそうなのに掴めない、そんなもどかしい感情が直也の胸を支配していく。その感情を吐き出すように、直也は垂らしていた右手で握り拳を作り、力を込めて壁を殴る。もちろん、痛くない程度にだが。

 

〈ドォン……)

 

「ん?」

 

 直也は違和感をまたもや覚えた。今度は分かる。音だ。普通の壁を叩いた時よりも、どこか低いような、空気があるような、そんな音がした。

 確かめるためにもう何度か叩く。やはり違う。この本棚の奥に、まだ何か空間がある。

 

 直也はにやける顔を抑えることができなかった。

 

 この奥に何かある。ではそこに行くにはどうしたらいいか。

 勘は直也を決して裏切らない。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「な、何をしてるんだ?」

「さあ、僕たちが見つけられないものでも見つけたんじゃない?」

 

 千葉の疑問に応えたのはコナンだった。コナンもまた、直也の行動の意味を理解しきってはいないが、直也が意味のある行動以外しないというのは、探偵団の皆と行ったあの試験を思い返せば分かる。

 特に、自分の世界に入り込んでしまったこの状態では。

 

「見つけられないもの……? それよりコナン君、彼、何度呼びかけても応えてくれないんだけど……」

「僕も今日初めてあったばかりだからよく分からないけれど、たまにこんなふうになるよ。気にしなくていいと思う」

「そうなのかい……」

 

 千葉は戸惑う様子を隠そうともせず、直也を見てただ困惑していた。

 普通そうだよな、とコナンはそんな様子の千葉を置いて、今度は本棚の下を覗き込もうとしている直也に声をかけた。

 

 

「直也さーん。何してるの?」

「…………」

 

 やはりというべきか、直也は反応を示してはくれなかったが。

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