勘。   作:めもちょう

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13、秘密部屋に押し込まれていたのは。

 「ひ、引き戸ぉ?」

 

 嶺井と斎藤に事情聴取を行っていた高木が上ずった声を上げる。本棚の後ろから突然現れた扉に驚いたからだ。

 

「じゃ、開けようか」

「ちょ、ちょっと待ってくれ君! どうしてここに引き戸があるって分かったんだい?」

「どうしてって……勘だよ」

 

 千葉の問いに直也は冷たくそう答えた。それから直也は引き戸の取っ手に手をかけ、開く。

 

 開いた扉からのものと、取り付けられているもののほとんど意味をなさない明かり窓からしか光源がない暗いそこには、漂う埃と、先ほど嫌なほど嗅いだ血の匂いが充満していた。

 

「物置きか、ここは」

「埃臭いだけじゃなくって、やけに血の臭いがするよ? あ、千葉刑事、あれ!」

「あれ?」

 

 コナンが指し示す先には、何やら新聞紙に包まれた細長い棒のようなものがあった。千葉は壁に立てかけられていたそれを手に取る。

 

「千葉、それちょっと見せてくれ」

「はい」

 

 千葉は物置から出て、高木と目黒警部にそれを差し出す。明るいところで改めて確認すると、それには赤黒いものが付着していた。慌てて新聞紙に手をかけると、中から現れたのは、乾いた血のついた、ゴルフクラブだった。

 

「まさかこれって!?」

「凶器か!?」

 

 彼らがそう声を上げたことで嶺井の肩が跳ねた。その様子を見た斎藤は落胆から溜め息をついた。

 

「……嶺井」

「! な、なんだ、斎藤」

 

 後ろを向いた嶺井が見たのは、自分を憎むような目をする斎藤だった。

 

「お前だな? 笠原を殺したのは」

 

「っ……!!」

 

 

 

 嶺井は恐怖した。斎藤が自分を犯人呼ばわりしたゆえに、警察、第一発見者の小学生らに疑いの目を向けられたからだ。

 

「な、何を馬鹿な……まさかお前がそんな愚かな……」

 

 動揺し震える声でなんとか否定してみれば、なんと斎藤はため息を盛大に吐いたではないか。

 

「嶺井……もしお前が犯人でないとするなら、どうしてお前は動揺するんだ。どうしてすぐに否定しない。お前は自分と反対の意見には激しく反論する奴だっただろう?」

「っ!」 

 

 斎藤の指摘したとおりだ。普段の嶺井であればすぐに口を開き、相手に反論させないとばかりの勢いで意見する。嶺井はそうすることを楽しみとすると同時に、それができる自分のことを誇りに思っていた。それができていないことを指摘された今、嶺井は屈辱感を覚えた。しかし、嶺井はまだ冷静さを失っていなかった。

 

 何を焦る必要があるのか。自分の反応は自然なことなのだから。

 

「べ、別に何のことはない。斎藤、お前だって自分が犯人扱いされたら動揺するだろう? それも親友の殺人事件でだ。自慢の饒舌だって固まるってもんだ」

 

 そうだ。自分は親友を犯罪者に殺された悲しい関係者。動揺したって何らおかしいことはない。警察から、無垢な小学生から、そして親友から睨まれたとしても、自分は落ち着いて自分でいればいいのだ。

 

「考えてもみてくれ。確かに俺は笠原に恨みを持っていた。しかし、それはせいぜい喧嘩のネタにはなっても、殺人の動機になりうるほどのものか嶺井? 違うだろう。それに俺たちは何度かこの家に訪れることはあったが、この物置のことは知らなかったんだぞ? 知らない場所に俺が凶器を隠せるとでも?」

「じゃあ外から来た犯人にも無理だよね。わざわざこんな大きい本棚で隠されたこの物置に、凶器を隠すなんてさ」

 

 嶺井の反論を止めたのはコナンだった。

 

「なっ!?」

 

 嶺井は心底驚いた。見るからに利発そうな子供ではあるが、まさかこの状況に口を出すとは思わなかったのだ。思わず唾液を飲み込み、自身の心臓が胸が痛くなるほど叩いているのを感じていると、コナンは更に続けた。

 

「それにさ、おかしいんだよね」

「何がだい? コナン君」

「もし犯人が外から来た強盗だったりしたら、家がこんなに綺麗なのはおかしいなって。それにこの家を隅々まで見たんだけど、どこにも鍵をこじ開けた箇所がないんだ。だとしたら犯人って、玄関から堂々と入ってきたことになるよね? 普通おかしくない?」

 

 このガキ……! 嶺井は自身の怒りを落ち着かせることに精一杯だった。歯軋りがひどくなったことに気づいて、ようやく心を落ち着かせようと試みた。

 

「それにね、あそこのダイニングテーブルには冷めたコーヒーの入ったコーヒーメーカー、キッチンには洗われたカップが2つ。これってもしかして、笠原さんとお客さんに出されたものじゃないかな?」

「お客さん……?」

「うん。……もしかしたら、犯人かもね」

 

 コナンに自信満々な視線を向けられた嶺井は、自身の体を巡る血液が熱を発するのを感じた。

 

 

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