勘。   作:めもちょう

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19、当たらずも遠からず。

 トラウマ克服祝いのパーティーが幕引き、俺たちは帰路に着いた。泰輝さんと颯太さんと別れ、元太、光彦、歩美ちゃんとも別れる。探偵事務所までの道のりを、灰原と一緒に歩く。

 

「何か、気になることでもあるの?」

「え?」

「顔に書いてあるわよ」

 

 顔に出てたか。そうだ。俺は、まだ不思議に思っているんだ。

 

「なんで、直也さんは少年探偵団に入る、なんてことをするんだ? 何か、目的があるとしか思えねぇんだ」

「確かに、そうね。学年も違うし、普通なら入ろうとは思わないわね。自分たちで名乗ったほうが早そうだし」

「自分たちでって……。泰輝さんは『楽しそうだから』って言ってたって言うけど、本当かどうか、怪しいところだ。俺たちを、利用しようとしてるんじゃないか?」

「利用? 何に」

 

 それはまだ分からない。だが、「楽しそう」という理由だけで、事件に巻き込まれてまで探偵団に入るのは、余りにもリターンが少なすぎる。直也さんは知らなかったのか? 俺たちが、いくつも殺人を含む事件に巻き込まれてきたことを。

 

「利用って言うなら、もしかしたら、怪盗キッド絡みかもね」

「は? なんでだよ」

「あなたも見て、驚いたじゃない。神崎さんの部屋の壁に貼られた、等身大ポスター。あれは相当なファンね」

 

 確かに、そんなのもあったな。そのポスターの横には使い込まれたトランプや、手作りらしいキッドのぬいぐるみ、他にもマジックグッズや、傷だらけのヘルメットも置いてあった。普通の子供部屋の中で、あそこだけ異様な雰囲気を漂わせていたことを覚えている。

 

「キッド絡みで? ファンだから、キッドに近づけるから、探偵団に?」

「探偵団というより、あなた狙いかもね」

「俺?」

「だってあなた、“キッドキラー”でしょう?」

 

 新聞で取り上げられてしまい、俺にはその呼び名もついてしまった。そのことを知っていたとしたら……?

 

「相当、演技うまいぞ、直也さん。挨拶したとき、俺に対して一時も含みを持った目線を向けてきてない。気づいてないだけかもしれないが……」

「そうね……。フフッ」

「なんだよ」

「いいえぇ? もしかしたらってこと、思いついただけよ」

「もしかしたら、って、なんだよ」

 

 灰原はクスクス笑うだけで、答えを教えてくれない。推理してみようと思ったが、やっぱりよくわからない。「降参だ」といって、俺は答えを再び求めた。

 灰原は言った。

 

「彼の特殊能力を思い出してご覧なさい」

「特殊能力……? ま、まさか……」

「ありえない話じゃないわ」

「おいおい、嘘だろぉ……それが真実なら、あいつ、とんでもない行動派じゃないか……」

「何をわかりきったことを」

 

 よく知りもしない組織に入ろうとしたのも、事件を解決したのも、全ては怪盗キッドに近づくため。突発的な行動は、絶対に考え練られたものじゃないだろう。あいつの行動は全て。

 

「勘、かよ……」

 

 

 

 

 場所は変わって、直也の部屋。彼は破損した自転車用のヘルメットを小脇に抱え、等身大の怪盗キッドのポスターを見上げていた。

 

「少しでも、チャンスを多くするため」

 

 直也はヘルメットを両手に持ち直す。

 

「いくら、勘に背こうとも、覚悟したことは、曲げない」

 

 その目には、かつてのような濁りはない。

 

「キッド。お前に、会ってやる」

 

 あるのは、純粋な覚悟だけだった。

 

 

勘。

 

 

 

 

 

 

 

ココカラアトガキ

 

 ここまで作品をご覧いただき、誠にありがとうございました。これにて、『勘。』は完結とさせていただきます。

 理由は、ここまでしか書いてないからです。あと、キリがいい。

 この先は少年探偵団絡み、怪盗キッド絡みの事件に少し顔を出す程度で、直也くん自身はきっと、「僕より幼い子達の成長を見届けないとだよね」とか考えて、あまり手出ししないことでしょう。危険と勘がお告げすれば、相応の行動はします。あと、コナン君の行動はよく監視してます。(小五郎さんポジション)

 残りのお話は、ぜひ、皆様の脳内で保管していただけましたら、幸いでございます。

 それでは、また、次の機会にお会いしましょう。

 


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