「もう戻っても大丈夫なんだね? 分かった! 直也お兄ちゃん、目隠し取るね」
「あ、はい」
光彦からの連絡を受けた歩美が直也の目隠しを取る。いきなり明るくなった視界に、直也はせっかく開けたまぶたを閉じなければならなかった。
「うわ、まぶしー」
「それじゃ、教室に戻りましょうか」
「あ、はい。あ、目が慣れるまで待ってくださーい」
そんな直也のお願いもむなしく、灰原は先へ行く。仕方なしに直也は眩しさから避けるように目を手で塞ぎ、歩美に手を引かれながら教室へ戻る。
「こんな、3階の端っこの教室までくるんだから、目隠ししなくてよかったんじゃない?」
「そ、そうだったかもね~……エヘヘ」
教室に戻った直也は、すぐに教室の違和感に気がついた。眩しさに慣れ、教室を見回すその目は、鷹が獲物を探すかのように鋭い。
「あ、これが最後の試験です! ですので、当てるチャンスは1回きりにします!」
「え!? そんな、1回きりなんて酷いよー」
「でもオメー、ここまで全部1回で当ててきたじゃんよ! それともなんだぁ? ここに来て自信なくしちまったかぁ?」
「なくしちゃいましたか~?」
「そんなことないよ! 分かった。1回きりだね」
元太と光彦に煽られ、直也は気合を入れ直す。両手で頬を叩くと、また先程のように睨みをきかせ、天井を見上げた。
(……当たってるかなぁ……?)
本当の事を言えば、直也は筆箱の隠し場所の検討が既についていた。しかし、自信がないのだ。できれば勘が外れていて欲しいし、探したくもないのだが、自分の力を認めさせたい。信頼を勝ち取りたいと考えていた。
(やるしか、ないのかな……)
「おい光彦、元太、オメーら外出てろよ」
「はあ!? いきなり何言うんだよコナン!」
「そ、そうですよ! これは入団試験なんですよ? 僕らが審査しないで誰が審査するんですか!?」
直也が探そうか探さまいかを迷っているそばでは、コナンが元太と光彦に教室の外に出るように促していた。
「怒んなって。あのなぁ、お前ら2人共、あいつが正解の場所を見るたび慌ててんぞ? 正直邪魔だぞ?」
確かに、彼らは直也がある一定の場所を見た途端に慌てたように声を漏らしたりしていた。これでは相手にここにありますよと教えているようなものだ。
しかしコナンにそれを指摘された二人は反省の色を浮かべながらも、その後自信有りげにニヤついた。
「だ、だってよ~」
「コナン君が教えてくれたあの場所、絶対に見つからない気がするんですから。見つかりそうになったら、そりゃ慌てますって」
「おまえらな~……」
とりあえずコナンは二人を遠くにやる。その間も未だに直也は悩んでいた。
(本当に、勘だけで見つけられるのか?)
今までのは勘で乗り切れたのだとしても、こいつは無理だろうなと、お手並み拝見とうすら笑いながら、コナンは直也を観察することにした。
静かな教室で、直也は悩んでいた。コナンを含めた教室に残っている3人にはそれが筆箱の在処を考えているように見えるようだが、それは違う。
直也は、探そうか探さまいかを悩んでいるのだ。筆箱の在処は既に検討がついている。しかし、その在処を捜索するのを彼は少々悩んでいるだけなのである。
「ねえコナン君。お兄ちゃんの筆箱ってどこにあるの?」
「え? 今答え聞くのか? そうすると歩美ちゃんも光彦たちと同じ場所に行かなくちゃならなくなるぞ?」
「え!」
「ヒントくらいならいいんじゃないの? 本当に分かりにくい場所にあるのなら、私たちでも分からないんでしょうし」
「灰原、オメーなぁ……」
直也が悩んでいるそばでそのような話をするコナン、歩美、灰原。直也は考えるのに必死なのか、こちらの話を聞いている素振りはない。見張っていたいという思いはあるものの、コナンは2人に少しばかりヒントを与える為に教室の外に出るように言った。
「いいか、あいつに聞こえたら台無しだからな。小さい声でしゃべるから、ちゃんと聞けよ?」
「うん!」
「はいはい、分かったから早くヒント頂戴」
「オメーなぁ……。じゃあヒントだ。1つ目、そこは、普段から掃除されない場所だから、すごく汚れている。2つ目、そこは普段、意識されない場所だ」
「え、それだけ?」
教室の外に出たコナンは2人にヒントを出す。しかし、やはりというべきか、歩美にはまだ分からないようだ。
「フッ……なるほどね」
「お? 灰原は分かったのか?」
「えぇ。まだ分からないけれど、検討は付いたわ」
「ふ~ん?」
「な、なによ」
灰原はコナンのヒントを聞いて隠し場所がわかったと笑うが、コナンはそんな灰原を見てニヤニヤと笑う。
「なによ、私の考えが外れてるとでも言いたい訳?」
「ま、当たってるかどうかは、あいつが教えてくれるだろうよ」
コナンは教室の中の直也に目をやる。すると直也はすでに動き出していた。
「よし、やるぞ!」
そう言うと直也は教室の中央の席2列をそれぞれ左右に寄せ始めた。
「え、彼はいったい何をやっているの!?」
「あぁ、正解を見つけちまったみたいだな」
「ど、どういうことコナン君?」
「あ、話し合い終わったの? だったら机寄せるの手伝って欲しいな~」
歩美と灰原が困惑しているのに気づいていないのか、直也はのんきに3人にそう頼んでいた。