勘。   作:めもちょう

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6、勘が働けば、他は見えなくなるらしい。

 直也が見ているのは、一軒の二階建ての民家だ。大きさはそれほどでもないが、外観は綺麗で周りの民家と比べてもそう目立つものでもない。返って個性がなく、埋もれているようにも思える。

 

 しかし直也は、その無個性の家に強く惹きつかれている。コナンと灰原の声が全く届かないほどには。

 ようやく体を右にひねり、直也はそのまま、その民家の敷地内へと足を運ぶ。

 

 その様子に驚いたのは、コナンと灰原だ。

 

 

「ちょ、ちょっとあなた! どうするつもり!?」

「直也さん、いきなりどうしたの!?」

 

 中に人が居るかも知れない。そうでなくとも勝手に人の敷地内に入るという行為は褒められたことではない。

 元太たちのようにまだ幼いならば、拍子に、ということで許されるかもしれないが、直也はそういうことも分別がつく年齢だ。

 しかしコナンたちが呼び止めるのも聞かず、直也は歩を進める。

 

「だから、待ってってば!!」

 

 動揺しているのか、らしくもなくコナンは直也の右腕を引き、無理やり止めた。

 

 

「!!? ……」

 

 

 物理的に呼び止められた直也は大きく驚きながらも声は出さず、首を回して腕を引いているコナンを見遣る。そして一つ、溜め息をつく。

 

 

「うーん、いきなり変なことしちゃってごめんね? 驚いちゃった?」

「あ、当たり前でしょっ! あなたいきなり……!」

「ホントだよ。でも、もしかしてここにルールーがいるの?」

 

 元の明るい直也に戻った様子に、今度はコナンたちが安堵の溜め息を吐いた。

 しかし、それはつかの間の休息だと思い知ることになる。

 

 直也はおもむろに腕にあるコナンの手を解く。コナンも必要性をすでに感じていなかったため、それに応じる。自由の身になった直也は2人の方へ向き直り、その小さな頭を撫でる。

 

「そう。コナン君が言った通り、僕の勘がそう言ってるんだ。ここにいるのは間違いないよ。でもね、それと同時に、君たちを連れて入ってはいけないとも言っているんだ。ね、ここで待っててくれる?」

「え……で、でも、3人で探す方が……」

「ね、コナン君。分かってくれないかい?」

 

 頭の上に乗っている手に力が入るのを二人は感じた。

 

「君たちがいると集中の邪魔なんだ。ここで待っててくれる?」

 

 言葉は優しく、尋ねているようにも聞こえるが、その実、拒否権などコナンたちには与えておらず、むしろ脅しているようにも2人に感じさせた。

 焦げ茶の目は、寒々しかった。

 

「う、うん……」

「分かった、わ……ここで待ってる」

「いい子だね」

 

 そこでようやく直也は微笑む。しかし二人は再び安堵を感じることはなかった。

 

「じゃあ、ルールーを探してくるね! あ、ランドセルもお願い!」

「えぇ……」

「頑張ってね……」

 

 故に、二人は手を振り返し、見送ることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 民家の敷地内へ入り、消えていった直也のことを思い、二人は語っていた。

 

「灰原。あいつのことをどう思う?」

「神崎さんのこと? ……そうね、何とも言えないわ」

「だよなぁ……」

 

 彼は変な人間だ、とコナンは感じた。

 感情が豊かで、暖かい人間だと思えば、ひどく感情がないときもある。しかしこれ以外にも別の面が直也にあるように思えてならない。

 

「あいつはいったい、何者なんだ……」

 

 

 コナンは直也が入っていった民家を見上げながら、未だ答えの出ない問題に頭を悩ませていた。

 

 

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