勘。   作:めもちょう

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7、探索者に降りかかる災難。

 コナンたちを置いて民家の敷地内に入った直也は、まずインターホンを鳴らしたが、誰も出てこなかったため、庭などの家の周りを見ていた。

 

 空の駐車場から左の方を見ると庭があり、そこには物干し竿などが取り付けられている。外の道側には幾つか木が植えられており、その木は手入れが行き届いているのが伺える。

 

 その庭に出入り出来るようにか、大きな窓と縁側がある。脱ぎかけのサンダルがあり、この家の人間が使用している形跡があるが、残念ながら窓には厚手のカーテンがかかっており、中の様子を伺うことは出来ない。

 

 まあ外出中なら閉めるよなと一人思い、今度は裏へ周ろうと庭の更に先を行く。

 

 庭と反対へ回る道はとても狭く、体を横にしてカニのように歩かなければ通れなかった。しかしそれでも服や肌が塀や壁で擦れていく。

 

 ここはあまり掃除されていないのか、落ち葉や風で飛ばされてきたであろうゴミが落ちていた。大人では通れないほどの狭さなのだから、仕方ない。

 

 

「痛ぇな……」

 

 

 体に付いたすり傷や汚れを見て、軽くため息を吐く。それから汚れを取るために服を叩く。

 

 狭い通路を抜けた先にあるのは、通路ほどでは無いにしろ、これまた狭い通路だ。見たところ窓はあるが、換気や明かりのための窓で、大人が出入りできるほどの大きさの窓、……ではあるが、なにもここから入ろうとは思わないだろう。

 

 換気用の窓といえば、先程の狭い通路にも、一階の天井部分に当たるであろう場所に小さく窓があったなと、直也は通路を覗く。

 

 まあそれはいいと、窓を確認した直也は探索を続ける。

 裏庭には数本木が生えていた。これも外から中の様子が見えないようにするためだろう。

 

 

「ルールー、どこだーい? 出ておいでー!」

 

 

 直也は一度呼びかける。それで出てくるとは思っていないが、確かにここにいると勘が告げているのだから、いることは間違いない。

 

 せめて鳴き返してくれないもんかと期待してまた呼ぶが、何度呼んでもルールーはついに鳴き返してはくれなかった。

 

 

「とすると、ルールーは家の中か……?」

 

 

 ここは颯太の家ではないのだから、それはおかしい気がするのだがと直也は首を傾げる。

 親切な人が拾ってくれたのだろうかと思うことにして、捜索を続けようと直也は近くの窓の中を覗き見た。

 

 

 直也は目を疑った。

 

 

 直也が窓から覗いた部屋には大きな本棚があり、木の色を基調とした落ち着いた雰囲気の作りから、書斎であると伺えた。

 そのような落ち着いた雰囲気な作りの部屋だからこそ、そこに転がる惨状に、目がどうしても釘付けになってしまう。

 

 

「ぁ……、ぅ……」

 

 

 直也はそれがなにか理解できたと同時に、絶句した。それから覗いていた窓に両手をつき、必死に中のそれの様子を確かめようと身をよじっていた。

 

 書斎と思われる部屋の中で転がっていたのは、この家の主人と思われる男性だった。

 ゆったりとした格好をしているその男性は、こちら側に向かって、うつ伏せの状態で倒れている。しかし頭部は、今直也が覗いている窓の下にあるサイドテーブルやら本やらで隠れて確認することができない。

 

 

「大丈夫ですかー!? おーい!! 大丈夫ですかーっ!?」

 

 

 直也は窓を叩きながら大声でそう呼びかける。しかし男性はまったく反応しない。直也はさらに声をかけ、窓をバンバンと叩くが、それでも結果は変わらなかった。

 

 

「まさか、熱中症……?」

 

 

 確か部屋の中でもなるんだよなと、テレビでやっていた程度の知識をひねり出した。

 この日は比較的過ごしやすい気候で、熱中症になるような暑さではないのだが。

 何がどうあれ、緊急事態には変わりなく、直也は表の玄関に回る。

 

「あ、直也さん! 何かあったの? さっき大声出してたけど」

「コナン君! 大変なんだ、家の中で男の人が倒れてる! 暑さで倒れちゃったかもしれないから助けるの手伝って! 哀ちゃんも!」

「なっ!? わかったよ!」

「わかったわ!」

 

 

 この家の駐車場で合流した三人は玄関へ急ぐ。

 

 なぜ真っ先に玄関へと向かったのかと問われれば、それはただ単に家への入り口だったからで、鍵が開いている等という都合は考えていなかったからである。

 

 直也は再びインターホンをならし、大声で呼び掛ける。

 

 先ほどから散々大声をあげていたため、他の家の住民たちが何事かとわらわら集まってくる。

 

 そんなことを気にせず、直也たちはドアを叩く。この家に他の住民がいれば、この騒ぎで気づいてくれるだろうと期待していたのだが、反応はない。しびれを切らした直也がドアの取っ手に手をかけた。

 

 

「っえ?」

 

 

 するとどういうことだろうか。ドアはいとも簡単に空いてしまったではないか。つまり最初から鍵は掛かっていなかったのだ。

 

 なんてことだ、訪れた時点で早急に助けられたかもしれなかったのか! 舌打ちをしながら、直也は勢いよく扉を開け、中に飛び込んでいった。

 

 

「おーい! 大丈夫ですかー!!」

 

 

 書斎であるだろう部屋の前にたどり着いた直也は再びドアを強く叩き、今度は戸惑い無くドアノブに手をかけた。

 

 

「大丈夫ですか! ……っぅ!?」

 

 

 勢いよく書斎の中へ踏みいった直也は、その書斎の光景に、書斎に充満していた匂いによって、ゆっくりとした足取りで、後ろに下がらなければならなかった。

 

 どうして。

 

 様々な疑問が頭の中で駆け巡る。そんな中、直也がやっと口の中で発した言葉はそれだった。それすらも誰の耳にも届かないばかりか、さらに直也の頭を混乱させる結果を招くだけだった。

 

 

「直也、さん……?」

 

「来んな、コナン君。見ちゃいけない」

 

 

 いきなり顔を青くした直也を心配したコナンが声をかけながら近づくが、それを直也に静止された。そこでコナンは気づいた。いつの間にか嗅ぎなれていた、鉄のような匂いに。

 

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