今回でポピパ結成です。どうぞ。
数週間前。僕たちはクッソ眠い6時間目に学校祭の計画なんぞを練り練りしていた。なんでも、うちの高校はご近所の花咲川女子学園と合同で開催しているらしい。しかも毎年。
今年は会場が花女だそうで、何の手伝いをするのか、の討論中である。
ちなみに僕は凜空と梓と成り行きで装飾をすることになった。
そこからつい昨日まで準備を続けていた。沙綾たちに会ったときに凜空がニヤケ顔で関係を訊いてきた時はぶん殴ってやろうかと思ったが。沙綾も顔赤くするから疑われるんだよな…。(ボソッ)
〜〜
そんなこんなで当日である。僕たち3人は当日の仕事はないのでゆっくり見て回ることができる。しかし僕が目を付けたのは、昼からに控えた自由発表である。恐らく香澄たちはここで披露するんだろうが…沙綾だけが気掛かりだ。
◆◆◆
〜沙綾side〜
私は珍しく、純たちに起こされ目を覚ました。…いや、正確には起きていたのだが。
身支度を整え下に降りると、朝食が用意されていた。
「母さん、大丈夫…?」
「沙綾にいっぱい助けてもらったから。」
母さんはそう言い、「食べて」と、お米の入った茶碗を差し出してきた。
「文化祭、頑張ってたじゃない。香澄ちゃんたちと。」
「……うん。」
◇◇◇
朝食を食べ終えた私は、支度をして玄関で靴を履いていた。
「後で純たちと遊びに行くからー。」
と母さん。
私は返事をして玄関の扉を開けると、何かが落ちてきた。
…手紙? "さーやへ" と書いてある。いつ来たのだろうか。
気になって母さんに訊いてようと思い振り返ると。
「母さん、これ、……!?」
そこには、台所にもたれかかる母さんの姿があった。
◆◆◆
〜零哉side〜
僕は特にやることもなかったので、他の2人を置いて当日準備をしていた香澄たちのもとへ手伝いに行った。
僕が行くと、香澄、りみ、おたえの3人が珍しく暗い顔をして話をしていた。
「沙綾ちゃん、来ないね。」
「香澄、家に行ったんだよね?」
「…ちょっとだけ。」
…そういうことか。
僕は3人の所へ。
「おはよ、皆。」
「あ、レイ君…」
「えっと…聞いちゃった。…沙綾に何かあったの?」
「何かあったのかはわからないけど、さーやまだ来てなくて。」
すると、パンが届いたらしく香澄が呼ばれていた。
恐らく運搬だと思ったので僕もついていくことにした。
玄関先には沙綾の父である亘史さんがおり、香澄が話を訊いていた。
「あのっ!さーやは…」
「僕も気になってました。何かあったんですか?」
すると亘史さんは、言いづらそうに言葉を紡いだ。
「……今朝、妻がね。」
「なっ…!?」
「えっ…!?」
「ああ、大したことじゃない。昔から貧血気味でね。娘が病院へ連れて行くと聞かなくて。…すまないね、迷惑ばっかりかけて。」
「いえ!迷惑なんかじゃ…。」
香澄は更に続けた。
「…あの!さーやに、 "こっちは大丈夫" って、伝えてもらえますか!?」
「ああ。…うちの娘からも伝言だ。」
「え…?」
<文化祭、成功しますように。ライブ、成功しますように!』>
◇◇◇
その後は色々見て回ったが、どの出し物もなかなか完成度が高く、珍しく面白いと感じた。…まだ、気掛かりはあるが。
「ごめん、2人とも。ちょっとトイレ行ってくるから、先回ってて。」
僕は凜空と梓にそう言い、校舎裏へ向かった。
「この辺なら…」
人気もないので、僕は沙綾に連絡することにした。
しかし、いくら待っても沙綾が電話に出る様子はない。
「………やっぱりダメか。」
だがこのままではまだ諦められない。僕は少しでも想いが伝わればと思い、留守電をかけた。
「…もしもし?零哉です──」
◆◆◆
〜沙綾side〜
医師の診断を終え、母さんは特に問題ないということで私はひと安心していた。
ふとスマホを見ると、 "保存されたメッセージ" が3件届いていた。…香澄と零哉から?何かあったのだろうか。
まずは香澄のほうを確認する。
<さーや?あ、香澄です。お母さんどう?さーなん泣いてない?じゅんじゅん元気?…さーや、大丈夫?
カフェはね、大盛況!みんなパン美味しいって!えへへ。>
すると、急に電話口から色んな人の声が聞こえてうるさかったので急いで外に出たが、出た時にはもう再生が終わってしまっていた。
香澄からもうひとつあったので再生してみる。内容は、私の家に歌詞を送ってくれたということ、私にも届くようなライブをしてくれるということだった。
そういえばと思い、今朝届いていた歌詞の書かれた紙を取り出し、目を通す。
…見ていくうちに、自然と涙が溢れてきた。どうしてだろう…?
ここで私は零哉からもメッセージが届いていたのを思い出し、再生する。
<…もしもし?零哉です。香澄たちから聞いたよ。…お母さん、大丈夫だったかい?僕に何かできることがあればいつでも言ってよ?力になるからさ。
…香澄たちは、まだ諦めてなかったよ。 "沙綾ならきっと来る" って思ってると思う。沙綾には無理させたくないけど…できるなら、期待に応えてあげて欲しいな…って。僕の勝手な頼みなんだけどね。
とにかく、無理はしないでね。…じゃあ、また。>
…零哉は優しいな。こんな私を心配してくれるなんて。まぁそれは香澄たちもそうなんだけど…
すると、スピーカーにして再生したのを母さんたちに聞かれていたみたいで、後ろから声をかけられた。
「零哉くんでしょ?優しいわね。とっても心配してくれてるじゃない。」
「うん…」
すると母さんは
「沙綾。行って。」
と言う。私は黙って首を横に振った。
「沙綾は優しいね。お母さんにも、皆にも優しい。ちょっと零哉くんにも似た優しさ。」
「ちょっと…」
「…その優しさを、もっと自分に向けて?」
「無理だよ…」
「大丈夫。沙綾ならできる。1人じゃないんだから。」
すると、純と紗南も励ましてくれた。
「さながいるから大丈夫!」
「オレも!」
「…ね?」
自分にも優しさを向ける…。
零哉にあって、私になかったものだ。
今気づいた。だから零哉はあんなに…。
「…なんか私、全然ダメだね。」
「いってらっしゃい。」
「「いってらっしゃーい!」」
…こんなに背中を押されちゃ、行くしかないよね。
「…いってきます!」
そう言い、私は学校へ走り出した。
──貰った音源を聴きながら。
◆◆◆
〜零哉side〜
やまぶきベーカリーのパンが売られているクラスの出し物にはしっかり寄り、とうとう自由発表を迎えた。
あまり出る人が居ないのか、香澄たちが1年生だからかは分からないが、CHiSPAのあとはすぐに香澄たちの出番になってしまいそうだ。
「……沙綾…。」
そしてとうとうCHiSPAが演奏を終え、香澄たちがステージの上へと上がった。
「文化祭、盛り上がってるかぁ〜!」
香澄のMCのおかげで会場は盛り上がり、ライブも順調だったが…。
「次は、今日のために作った曲です。今日は1人いないけど、いつか一緒に歌おうって約束しました。」
やっぱり沙綾には届かなかったのか…。
すると、体育館のドアが勢い良く開き、沙綾が姿を見せた。──手に、ドラムスティックを握って。
◆◆◆
〜沙綾side〜
私が学校へ着くと、人はあまりいなかった。皆体育館にいったのだろう。
急いで体育館へ向かう私。しかし、入口付近に着くと──
私が逃げてきた相手、CHiSPAと遭遇してしまった。
少しの沈黙の後、言いたい事がまとまった私は元メンバーの3人に声をかける。
「ナツ、フミカ、マユ!私…」
言い切る前に、ナツが口を開いた。
「沙綾とのバンド、楽しかった。…沙綾は?」
「……!!」
ずるいよ、そんなの。
「楽しかった…!楽しくて、大好きだったよ…!!」
ナツはそれだけを言いたかったようで、 "皆待ってる" と伝えてくれた。
すると、新メンバーの "さとちゃん" が、私にドラムスティックを手渡してくれた。
「ありがとう。借りるね…!」
そう言い、私は体育館の扉を勢い良く開けた。
「沙綾!?」
「沙綾ちゃん…!」
「…ふ。」
香澄のもとへ行くと、香澄は笑顔で手を差し伸べてくれた。
ステージに上がり、ドラムに座る。
「出来んの…?」
と有咲。
「どーだろ。1回聴いただけだし…絶対ボロボロ!」
「そこは気持ちで。」
「一緒に頑張ろう?」
おたえとりみりんもそう言ってくれた。
準備が出来たので香澄に目配せすると、香澄がMCを始めた。
「お待たせしました!聞いてください。
『STAR BEAT!〜ホシノコドウ〜』」
◆◆◆
〜零哉side〜
「沙綾……。」
なんだ、全然いい顔してできるんじゃないか。
皆すごく楽しそうで…少し、羨ましい。僕は、心の底から "楽しい" と思えたことはないから──。
ともかく、文化祭のライブは香澄たちのおかげもあってか大成功に終わった。
◇◇◇
ー花咲川女子学園 校門ー
「沙綾。ライブ、良かったよ。」
「えっ、零哉も見てたの!?」
「うん、バッチリ。あ、動画も撮ってあるけど…」
「だっ!やめろっつの!」
「え、別に有咲を撮ってた訳じゃないんだけど…」
「う…。」
「有咲、自爆した。」
「う、うるせぇ!!」
「あっははは!」
「ま、まぁ、改善点の確認程度に使ってよ。沙綾に送っとくからさ。」
「ん、わかった。ありがとうね!」
沙綾もいると皆今までよりも楽しそうに見えていいな。
このまま頑張って欲しいと、素直に思った。
──こうして、香澄率いるバンド『Poppin'Party』がここに結成された。
ぬわああんちかれたもおおおん
やっとポピパ結成しました。
こんな長ぇプロローグ誰が読むんだって話ですよね(書いたんお前や)
次からは本編が開始します。零哉についてもっと掘り下げるのでよろしくお願いします。
次回更新はやっぱり未定です。頑張ります。