俺の親友は前世は男だったけど、今は幼女になった 異世界カルテット 作:ボルメテウスさん
「それにしても、まさか同室まで用意されているとはな」
「それにまるで俺専用と言うばかりの服だな」
食事を終え、各自の部屋で休むように伝えた後、私達も自身にあてがわれた部屋で休む事になった。
部屋の中は和室という事もあり、昔懐かしの畳に布団、日本の旅館でよく見られる和室となっていた。
さらには、個人の持ち物として、私のサイズにあった衣服に軍服、さらには個室でも楽しめるように数種類のコーヒーが用意されていた。
しろがね用の持ち物としては、衣服に治療用の道具に、しろがねが好きだった漫画であるからくりサーカスまで用意されていた。
この世界に転移させた奴らによって、私達の趣味や必要物品の多くが用意されている事から、油断はできない状態が分かる。
「とりあえずは、着替えるか」
「あっあぁ、そうだな」
いつもの事ながら、奴の着替えには目を背けそうになる。
「んっ?」
「なっなんでもない、とにかくやるぞ」
そう言い、奴に装着されている手錠に触れると、しっかりと接着されていた手錠が一時的に離れ、奴はその間にこの和室の寝間着として用意されていた服を着ていく。
奴につけられている手錠は特定の人物が触れる事により、手錠内に仕込まれている魔導磁石が反応する。
そうする事で、磁石が反発するように離れていき、触れている間は手を自由に動かせる。
ならば、魔力を送るのを辞めれば良いのではと言えば、そうではない。
魔力が斬れる寸前で強力な磁気によって強制的に手錠はくっつかれてしまうので、基本的には鍵で魔力磁石を無効にさせるぐらいしかない。
「にしても、こういうのは、結構久しぶりだな。
ほとんどは外国だからな」
「まぁ私達は既に日本で生まれた前世がある程度だからな。
既にこちらの生活に慣れてしまっているからな」
そうだ、これは既にごく普通の事なのだ。
前は身体が女性という事で悩んだが、それはもう過去の話。
しろがねと結ばれる為に必要な事だとしたら、特に問題ない、むしろこれは武器になる。
しろがねは前世との関係で仲良くなっているが、既に再会してから二ヶ月以上は立っている。
久しぶりに出会った親友との友情が次第に恋愛感情に発展したと、思わせて、しろがねと近づけば
「んっ、なんとか着替えが終わった」
「あっあぁ、そうか」
にしても、改めて見ると、しろがねの見た目は少しは変わった。
生前から加藤鳴海に憧れてか、医者になる為の勉強を行いながら、身体を鍛えており、筋肉質になっており、この世界になってからは、髪の色が白髪になった事以外は本当に変わっていない。
「おいターニャ、ターニャ?」
「うわっ、なんでもない。
さて、明日もこの世界について調べないといけないからな」
この事自体には嘘はなく、実際に調査は必要だ。
「そうだな、今日は少し疲れたからな。
本当は一冊は読みたかったけど、悪いが先に寝るわ、おやすみ」
「あぁおやすみ、良い夢を」
その一言と共にすぐにしろがねはあっさりと寝てしまった。
私が救出するまで、あの謎の連中と会話をしていたので、無理もない。
「さて、私もいつも通り!!」
そこで私は動きを止める。
「今のこの服ならば、はだけさせやすいんだがな」
そもそも日本の寝巻きというのは寝ている間に前をはだけさせてしまう事がよくある。
つまりはいつもは衣服越しでしか体感できないしろがねの身体を直接触れる事ができる。
「しかし、それには大きな問題がある」
奴は寝ている間も手錠をされている為、通常は腕を広げる事で起きる寝巻きのはだけが起きないと考える可能性がある。
そうなると、私は今後の夜には、しろがねからは油断のできない人物として、眼をつけられてしまい、一緒の部屋で寝られない可能性がある。
「実に難しい問題だ」
今日は和室の珍しさもあって、この寝巻きを着ているが、しろがねが着る可能性は低い。
つまり、今の私の中にある選択肢としては
①しろがねの寝巻きをはだけさせて、体温を感じながら一緒に寝る
②しろがねとの信頼関係を考慮して、そのまま寝る
「くっ」
これ程難しい選択肢があるとはな。
だが、この世界にいる限り、似た問題はきっとこの先は大量にある。
「ふっ、リスクのない選択肢などないさ」
これまでにも数多くの選択肢があった。
そのどれもが過酷で厳しかった、だが
「私は勝ってきた、ならば!!」
そう言いながらも、とりあえずは少し様子見を行っていく。
見ると、しろがねは寝返りをついていた。
「ふむ」
普段のベットは狭かったから、こういう自由に寝ころべるベットでの反応は違うのか。
「いや、待てよ」
私はふと、思いつき、しろがねの裏側に回り込み、帯を外す。
するとどうだ、奴は予想通り、寝ころびながら帯が外れ、寝巻きに僅かな隙間ができた。
「どうやら、物事はいつも冷静な者に勝利をよこすようだ」
そして、ここで行う選択肢は、ただ一つ!
「この作戦を実行する為に、まずは」
布団を引き、しろがねを転がし、私の布団の近くまで行く。
転がす時には、しろがねを刺激しないように、ゆっくりと、慎重に行い、違和感のない移動を行う。
理想の位置まで近づき、私はそのまま寝巻きに着替え、わざと前をはだけさせ、私はそのまま寝る。
暗闇の中で見えないが、寝返りを打ちながらしろがねが近づく音が聞こえ、そして
「はぅ」
予測通り、しろがねはそのまま私の方へ転び、同時に私は抱き着くと、確かにしろがねの肌を感じられる。
良いぞ、ここまでは計画通りだ。
普段は布越しで感じるしろがねの体温が、こうして肌と肌が触れ合い、熱が直接伝わってきて、私に温かみを感じる。
あとはゆっくりと「ふわぁ」えっ?
聞き覚えのある声で、私は目をつぶっていたが、しろがねの体温が感じられなくなり、細目で見てみると、眼を擦っているしろがねがいた。
「喉が渇いた。
んっ、びっくりした、寝ころんでここまで来てしまったか」
ちょっ待っ
「とりあえずは水を飲んで、寝なおすか」
待ってくれぇ!!
そんな、ここまで計画を立てて、ようやく味わえた幸福が、一瞬で終わるなんて!!
そのまましろがねは水を飲むと、そのまま元の場所に入り、そのまま寝る。
ここまでの計画を立てるのに時間を使ってしまい、再度行った場合、翌朝がつらくなってしまう。
どうするっ!!
①寝坊などしたら、調査に問題がある、ここは寝るしかない
②幸福を味わえるならば、眠気がなんだ!!
ここに来て、ここまでつらい選択肢が出てくるとはっ!!
「どうする、①にするか、②にするか!?」
①、②、①、②、①、②………
「おい、ターニャ」
選択肢を考えている間に、どこからか声が聞こえ、眼を見開いてみると目の前にしろがねがいた。
「はっ」
「おい、大丈夫か?
ずっと目が空いていたが」
「・・・」
その一言と共に、私は立ち上がり、窓の外を見ると、既に太陽は上がっていた。
「・・・」
結局は、私は、どちらも選択しなかった為に、得られなかった。
「・・・」
目はつぶっていたが、ずっと選択肢を考えていた為に睡眠をしたとはいえなくなり、眠気は未だに残っており、窓に僅かに映っている私の目元には隈ができていた。
「ターニャ」
「あぁ、そうだね、しろがね、とても良い朝だなぁ」
そのまま眠気と戦いながら記憶が曖昧な状態になりながら沸き上がる怒りを飲み込みながら、学校へと入っていった。
(((うっうわぁ、なんだか凄い威圧感だぁ)))
周りからどの評価をしているか、分からないが、今の私は眠気と戦っているんだ。
余計な事をした奴は殺す!!
「それでは授業を始めっ!?」
(くっ、やはりこの世界に来ても、殺気を隠さないか、デグレチャフ!!)
「・・・今日の晩飯はターニャが好きな物でも用意しとくか」
覚悟しておけよ、存在X!!
既に抑えきれない程の怒りを未だに見えない存在Xに向けて、私は改めて決心する。