「碧羽~! こっち終わったぞ~!」
「はーい! …って、お父さん! たたみ方雑っ! お母さんのお洋服はね、こうやって、丁寧にたたむの!」
あたしの目の前で、羽依里と碧羽が洗濯物をたたんでいる。
あたしは、それを眺めているだけ。
ぐでーっと、テーブルに突っ伏しながら二人を眺めている。
時折、そばに置いたコップから麦茶を飲む。
五月だというのに、妙に暑いからか、冷たいお茶が美味しい。
しかし、暇だ。することがない。
「ねえ、本当にあたしは何もしなくていいの~?」
「蒼はのんびりしてくれてていいから」
「お母さんは休んでてね」
二人に言われてしまうと、さすがに無理に手伝うこともできない。
今日は五月二五日、『主婦休みの日』という、主婦が家事を休み、リフレッシュに充てたり、子供やあまり家事を行わない夫が、家事にチャレンジする日だ。
と、言っても、うちは二人で駄菓子屋をやってるわけで、所謂共働き。
家事に関しても、昔からだが、羽依里とは分担して行ってきた。
今更、わざわざ、あたしだけ休まなくても、良いとは思うんだけれど…。
「お父さん~! これも、やり直し! お母さんに教わってたんじゃなかったの?」
「え~… 蒼はこれで良いって言ってたんだけどなあ…」
羽依里がこちらに視線を送ってくる。
「お母さん?」
「え、あ~…あはは…ごめんなさい! あたしもそうやるかも!」
「もう、二人して!」
碧羽は、しっかり者だ。
礼儀正しいし、頭の回転も速い。お店を手伝ったり、家事を手伝ったりもしてくれる。
初めての子供だったから、探り探りの育児だったけど、あたし達の愛の結晶は、立派に成長してくれているみたい。
「それ終わったら、夕飯の支度しましょうか」
「するー! ほら、お父さん! 次は料理だよ!」
「へへっ、お父さんに任せな! 昔は酷かったが、今じゃバッチリこなすぞ!」
「心配だなあ。お父さんの家系って『料理が出来ない呪い』がかかってるんじゃなかったっけ?」
碧羽は、あたし達のことを本当に良く知っている。
「あ、その呪いはね…実は解けてるのよ」
「え、そうなの?」
「まぁね~、でしょ? 羽依里?」
「その話はご飯のときにしてあげるよ。まずは夕飯作ろうぜ」
「聞きた~~い! 絶対だよ?」
「可愛い娘のためとあらば、必ず」
「やったぁ…えへへ!」
夫と娘が笑いあう。
そんな二人を見ていると、あたしも一緒に混ざって笑いたくなる。
せっかくの休みの日の趣旨は崩れちゃうけど。
家族三人で仲良くしたいものね。
それにアイツに料理を任せるのも、ちょっと不安だし!
「やっぱり、あたしも手伝う~!」
年季と変な染みの入った、お気に入りのエプロンを取り出して伝える。
【夫と娘と『蒼』の瞳-主婦休みの日- 終わり】