「新しい家へようこそ、我が子よ。ルインズの歩き方を教えてあげるわね。」
地面に、規則的に置かれた6つのボタンがある。トリエルがそのうちの4つを押して壁にあるボタンを押すと、ガシャンと奥の扉が開いた。
「ルインズにはパズルが沢山あるの。昔ながらの気晴らしと鍵の合わせ技ね。部屋を進むにはパズルを解かないといけないの。よく見て慣れていってね。」
壁には張り紙があり、『恐れを知らない者だけが進める。賢い者も、愚かな者も。どちらも中道は歩かない。』と書かれている。どうやらパズルのヒントのようだ。
トリエルに連れられ次の部屋へ入った。
「ここを進むには、いくつかスイッチを押すのよ。心配しないで、私がスイッチに印を付けておいたわ。」
『道の上を通るべし。』という張り紙の通りに道を進んでいくと、壁にいくつもの矢印で強調されたスイッチを見つけた。よく見ると『このスイッチを押してね ートリエル』と書かれてある。
スイッチを押して奥に進むと、また同じようなスイッチの横に『このスイッチも押してね。 ートリエル』などとご丁寧に書いてある。2つのスイッチを押すと、奥の扉が開いた。
「よく出来ました!お利口さんね、我が子よ。」
「へへ…」
「さあ、次の部屋へ行きましょうか。」
今度はマネキンが一体置いてある部屋のようだ。
「モンスターたちは人間を見つけると、襲ってくることもあるわ。その時のために準備をしておかないとね。」
「襲ってくるの?戦わないといけないの?」
「心配しないで!大丈夫よ。モンスターに遭遇すると戦闘が始まるの。戦闘が始まったら仲良くお話すればいいのよ。時間を稼いでくれたら私が仲裁するわ。このダミーで練習してみましょうか。」
どうやらダミーというマネキンと戦闘の練習をするようだ。ダミーに近づくと、ソウルが赤く光った。
※ダミーと遭遇した。
※ダミー ー ATK 0 DFS 0
※綿の心臓とボタンの眼
※目に入れても痛くない位可愛い
「………」
※ダミーは今にも倒れそうだ。
※あなたはダミーに話しかけた。
※…ちぐはぐな会話だ。
※トリエルはあなたを見て喜んでいる。
※あなたは勝利した!0 XPと0 goldを得た。
「わぁ、良いわね!よくできました。」
「これで、いいの?」
「ええ。次はこっちよ。」
本当にただ話しかけるだけでいいのか不安だったが、心底嬉しそうなトリエルを見て少し安心した。
「パズルはもう一つあるわ…解けるかしら?」
不安そうなトリエルの後ろを歩いていく。
※フロギーが襲ってきた!
※フロギー ー ATK 4 DFS 5
※この敵にとって人生とは難題そのものであるようだ。
※あなたはフロギーに話しかけた。
※前を歩いていたトリエルが振り向いてフロギーに睨みを効かせた。
※フロギーはすごすごと去っていった。
※あなたは勝利した!
※0 XPと0 goldを得た。
「その調子よ。」
先に進むと、下から針が出てとても歩けそうにない通路があった。
「これもパズルね、だけど…少しの間私の手を握っていてね。」
トリエルに手を引かれ針の上を歩くと、なぜかトリエルが進む先だけ針が引っ込んで怪我1つなく渡り切れた。
「これは今のあなたには少し危険すぎるわ。」
しばらくしたらここも1人で歩けるようになるのかなぁ、なんて考えてるうちに次の部屋に着いた。
「ここまで本当によくやってきたわ、我が子よ。けれど…ちょっと辛いことをしないといけないの。」
「辛いこと?」
「…この部屋は一人で進んで欲しいの。許してね。」
そういうと返事する間もなく足早に去っていった。
急展開にドキドキしながら未知の通路を進んでいく。冒険の始まりだ。
数十秒ほど進むと柱の影からトリエルが出てきた。
「心配しないで、我が子よ。大丈夫。そばに居たわ。」
あまりにも早いエンディングに拍子抜けしたが、トリエルは続ける。
「私を信じてくれてありがとう。」
「ちょっと大げさじゃないかな」
「このお稽古には大きな意味があるの。…あなたが一人でいられるかどうかテストするためよ。私は今から用事があるの、だからあなたは待ってないといけないわ。ここにいてちょうだい、一人で探索するのは危険だわ。」
「ここで待ってればいいんだね。」
「ええ。あ、そうだ。携帯電話を渡してあげましょう。もし何があったらいつでも電話してね。いい子にしてるのよ、わかった?」
「うん。わかった」
「いい子よ、我が子。」
そう言うとトリエルは去っていった。
※ダイヤル中…
「トリエルです。」
「トリエル、こんにちは」
「こんにちは、我が子。」
「………」
「………」
「………」
「ただ挨拶したかっただけなの?うふふ、こんにちは。満足したかしら?」
「うん、ありがとう!」
※ガチャン…
※ダイヤル中…
「トリエルです。」
「トリエルのこともっと教えてほしいな」
「私のこと?うーん、あまり話すようなことは無いけれど。私はただの、心配性のおばさんよ!」
※ガチャン…
※ダイヤル中…
「トリエルです。」
「こんにちは、ママ」
「えっ…?あなたいま、私のことをママと読んだの?」
「そうだよ、ママ」
「あらあら…えっと…私のことをママと呼ぶことであなたは満足するの?
」
「うん」
「それなら、お好きなように呼んでくださいな!」
※ガチャン…
※ダイヤル中…
「トリエルです。」
「こんにちは、ママ!」
「こんにちは。どうしたの?」
「………」
「一人にしてごめんね。退屈よね。もう少しだけ待っててくれる?」
「わかった…」
「急ぐからいい子にしててね、我が子。」
※ガチャン
彼は退屈に耐えきれず歩きだした。少しの罪悪感は、少年の冒険心には遠く及ばなかったようだ。
【戯けてカサカサと木の葉の上を通りあなたは決意で満たされた。】