転生したかったけどこんな転生は望んでない 作:深淵のデカダンス
突然だが、私は神により転生させられた。俗に言う神様転生というやつだ。
創作でよく見るようなトラックに轢かれて死亡とかではなくて、ただの不治の病によって病室で死んだのだが、気づいたら何もなく、光の塊だけが存在する空間にいたのだ。
奴、自称神を名乗る光の塊は神の気まぐれで他の世界で生き返らせてやると言う。拒否権はないとも言っていた。
拒否権のあるなしは関係なく、ずっと病室で何もできず死んだ私にとって生き返る事ができるのは天啓だった。
私は勿論、承諾した。光の塊は特典を付けてやると続けて言った。
どんな特典かは笑ってばかりで教えてくれなかったが、今思えば笑っていたのではなく、嘲笑っていたのだと理解できる。
とにかく面白い特典だと言っていた。その時の私をぶん殴ってやりたい。あの時はよくもあのクソを救世主だと、真の神だと思ったものだ。
そして、転生したのは異形や異能を持った人間のいる世界だった。そう、皆さんご存知僕のヒーローアカデミアの世界である。読書は動けない私のバイブルだったので、小説、漫画、詩文、学術書などいろいろなジャンルを読んでいた。そのため、ヒロアカも勿論読んだことはあった。うろ覚えだが、ヒーローがヴィランを取り締まる話だった気がする。
最初は漫画の世界とはいえ、転生したのを喜んでいた。緑谷という一家に長男として生まれ幸せな生活をしていたが、この世界で人間が一人一人が持つ個性が発現してからその生活は壊れてしまった。母さんの「ものを引き寄せる個性」が遺伝していたのだろう。私の個性は制御不能なロクでもないものを己に引き寄せる個性だったのだ。
──それで私は父親を殺してしまった。
そしてほら。今もまた、殺そうとしている。
★★★
薄暗い路地裏の段差に、何の特徴をないフードを被った男が1人で座っていた。ただだ平凡な見た目をした男だ。この個性社会の中で、これほどまでに平凡な男はむしろ浮いて見えるだろう。
その男に、突如現れた黒い霧の中から声がかけられる。
「こんばんは。初めまして。ヴィラン『ナイアーラトテップ』」
黒い霧から現れた男、黒霧は平凡な男──ナイアーラトテップに声をかける。しかし、ナイアーラトテップは1人でブツブツと呟いているだけで、反応を返さない。黒霧はそれに構わず、話を続ける。
「今回は貴方をスカウトしに来たのです。我々ヴィラン連合に。どうでしょうか、貴方ならば参加していただけると思っているのですが──」
ナイアーラトテップは黒霧に対して一向に反応を返さない。返事を返さないどころか、視線すら向けず、おそらく関心すら向けていないだろう。黒霧も流石に怪訝に思ったのか、ナイアーラトテップの肩を軽く叩いた。
「ナイアーラトテップ。話を──グゥッ!!!」
黒霧が肩を軽く叩いた途端、黒霧は宇宙のような紋様と青い炎を纏うナイアーラトテップの手に万力のような力で首を絞められていた。
「ああ。うるさい。うるさいですねぇ、まったく」
黒霧が男に目を向けると、平凡な男の見た目がバキバキと恐ろしい音を発しながら少しづつ変わっていた。
髪は伸び、色は黒から白に染まっていく。平均的な男性の肉体は豊満な女性の体に。残りの手足全てに宇宙のような紋様と青い炎が現れていく。そして彼、いや彼女の頭上には光輪が形作られていく。
「ナイアーラトテップ。貴方は、一体……」
黒霧の呆然とした声が誰もいない裏路地に響く。その呆然とした表情を見て、彼女はクスリと笑った。
「私の正体なんてどうでもいいじゃないですか」
其れは神魔が成り果てた、人類を最も広範に救う大災害。
「そんなことより、私の無限の愛に溺れましょう?」
宇宙の全人類一人一人に、無限の甘美なる堕落を、誘惑を。彼女は宇宙を燃やすほどの愛欲を人類に振りまく獣。
「私の愛はとても気持ちいいですよ──」
その名をビーストⅢ/L。七つの人類悪の一側面、『愛欲』の理を持つ獣である。
(すみません、オールフォーワン、死柄木弔……)
黒霧は薄れゆく意識の中、深き無限の堕落へとゆっくりと、ゆっくりと落ちていった。
★主人公が自分の中に引き寄せたロクでもないもの1人目★
堕落の獣 カーマ/マーラ
出典:FGO 期間限定イベント 徳川廻天迷宮 大奥
七つの人類悪の一つ、『快楽』の理を持つ第三の獣の内『愛欲』を担う片割れ「ビーストⅢ/L」。
全てに愛を与える、全ての愛を奪う獣であり、欲望を持つ者を愛の果てに必ず堕落させる絶対的で究極的な溺愛のスキルを持つ。その上、宇宙を埋め尽くすほどの無数のカーマ/マーラが存在し、本体と同等の戦闘力を持つ。
黒霧さんには気持ちよくなってもらいました(小並感)
まあ、魔性菩薩の餌食になるよりは、マシかもしれないから…(震え声)
主人公の個性は「神の器」です。イメージは多重人格みたいな。なお、みんな主人格の主人公くんちゃんの言うこと聞きません。ロクでもない奴らだからね、仕方ないね