星と楓の異世界戦記(旧 2019年打ち切り)   作:ミュラ

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12砲弾の咆哮

 

 

クワトイネ公国エジェイ要塞都市付近

 

ジューンフィルアは、2万の大軍が隊列を整えているのを眺め、満足していた。

 

壮大な眺めであり、兵の士気、錬度も高い。

 

補給状態も万全であり、支援部隊ももうすぐ到着する予定だ。

これなら万全の状態である城塞都市でも攻略は十分可能だろう。

アメリカなる国がいかに強くても、簡単にはやられはしない。

と思っていた時、頭の中で電撃が走るような感覚に襲われた。

 

!?・・・何か自分の勘が警報を鳴らしていた。不思議な感覚、敵はまだいない…。

何故だろう、確かな死の予感がする。いったい何なのだろうか?

早くその場から離れろと感覚が言っている…。

 

 ?

 

ヒューン・・・‥…

 

なんだ、この音は…何かが落ちる音?

と上空を見ると黒い点がいくつもの飛翔している。

黒い点は徐々に大きくなり、それが着弾すると同時に爆発する

 

ズドーン!!!バババババアアアーーーーン!!!!!!

 

「!?な、何だ!!?」

 

味方の陣営で大爆発が立て続けに起こり、味方が消滅する。そして、衝撃波によって近くにいた兵士は吹き飛ばされ、騎兵は馬ごと倒れる。

何かが弾け、兵がバタバタ倒れる。

爆発の影響により地面は揺れ隊列は崩壊した。

 

「バ……バ…バカなぁっ!?」

爆発は次々と立て続けに発生し、彼が司令を出すも全く意味をなさず、無慈悲にも砲弾が彼らを襲う。

 

 

 

 

 

クワトイネの将軍ノウは、城塞の城壁から見ていた

 

目の前の光景が信じられなかった。

 

「なんだ!?これは…。陣が…陣で火山が噴火したのか?」

 

ノウが目の前の出来事に驚愕しながらも次々と砲弾がロウリア軍の頭上に降り注ぐ

何かが空中と地上で爆散し、煙に包まれる敵、次々と大爆発し、そして小さな黒い花が咲く度に、敵がなぎ倒される。

敵は錬度も高く、隊列も極めて整っていた。整然と整列していた敵の姿が掻き消える。まるで蟻に火炎の魔法をかけたかの如く、文字どおり消滅する。

敵部隊は自身の体が燃え盛る炎を消そうと地面を転んでいた。

しかも規模は小さな範囲で爆発が起こるのではない。

爆音は住民にも悲鳴をあげるほど大きい。

広く、広大な範囲で展開していた敵が!強敵が…己の人生をかけ、長い時間をかけ、鍛えあげてきたであろう武技を発揮する事無く、一方的に虫のように殺される。

そこに華やかな戦いや騎士道は無く、ただただ効率的に殺処分される哀れな敵。

しかも僅か数分の間でだ。

いかなる精鋭部隊であっても大火力の爆発に処理されていく光景にノウは戦慄が走っていた。

 

「な……な…なんという高威力の爆裂魔法だ!!!なんという魔力投射量だ!!アメリカ・カナダ軍はすべての兵が大魔導師クラスなのか!?いや、大魔導師1万8000人でもこの威力は無理だ!アメリカやカナダは……神龍でも味方についているのか!?」

 

い、一体何が起こっているというのだ!?

 

ノウはアメリカ・カナダ軍に対するイメージを180度変えた、たった1万8000人名ほどしか援軍を派遣したのではなく、1万8000人だけでも十分すぎるほど圧倒的火力で薙ぎ払う彼らは一体何者だ……?

 

城塞都市エジェイの城内から、クワトイネの住民たちは、ただ唖然としてその光景を眺めていた。

「一体…何が起こっているというの?」

 

「この爆発は…」

 

「おお…神よ…」

 

 

 

 

 

爆発の中、ジューンフィルアは効率的に殺処分される大量の部下を見て絶望していた。

今まで戦ってきた戦友、歴戦の猛者、優秀な将軍、家族ぐるみの付き合いのあった上級騎士、共に強くなるため汗を流した仲間たち。

すべてが虚しくなるほど、泣きたくなるほど、あまりにもあっさり死ぬ。

何かが落ちてくる音と地面、空中で大爆発する爆音、どんなに能力と技能の差があっても、それを嘲笑うかのように平等に死んでいく。

しかも僅か数分という時間で戦力の7割は損失し、断続的に来る高火力の爆発は止まない。

彼らは近代兵器が生み出す地獄を目の当たりにし、呆然となりながらも逃げる。

しかし、砲弾は逃げる彼らにも降り注ぐ。

(そんなバカな…短い時間で戦力のほとんどが壊滅するなんて…なぜだ、なぜこうなった!?クワトイネにはこんなに威力の高い爆裂魔法を扱えるものも神龍の情報すらなかった!あれほど6年という歳月をかけた軍が、力が、技術の結晶が崩壊する、一体なぜだ…)

 

とジューンフィルアは砲弾が降り注ぐ中、状況を見ていた。

彼の手足は震えており、もはや恐怖で腰が抜けていた。

 

「一体…どこの奴らがこれほどの力を…」

と部下が言っていた言葉を思い出した。

 

「ま、まさか…アメリカ…カナダ軍か!?」

 

彼は何かを悟るように言う

 

 

 

 

しかし、砲弾の嵐は彼だけを逃がしてはくれなかった。

押されたような衝撃とともに、自分の体がバラバラになって飛んでいく姿、それが彼の人生最後の記憶になった。

耕された大地、その強大な魔導が去り、土煙が去った後、ロウリア軍に立っている者は馬を含めて1人もいなかった。

 

 

 

着弾地点より数キロ離れた地点

森の中に潜める、異世界にとって異質で異様な姿

全身に葉っぱや草を纏い、うつ伏せの状態で、双眼鏡やレーザー照準器を向けていた。

「こちら観測班、着弾地点の敵部隊は壊滅した、敵部隊は壊滅した。これ以上の砲撃は無意味と見る。」

 

『こちらHQ、了解、引き続き、着弾地点にいた敵部隊の観測を続行せよ、こちらから第25レンジャー部隊を送る。敵部隊が降伏するならば救助活動へ切り替える。』

 

「了解。」

 

「・・・酷いものだな…自分たちが何もできず、気づけば全てが終わっているのだから」

 

「今回の攻撃にはMLRSや対地ミサイルなども使用したからな、粗方敵部隊は生き残っているものはいないだろうよ」

 

「テロリストながらも同情するぜ…」

と観測班は敵部隊が壊滅する光景を一部始終見ており、敵ながらミサイルと砲弾の雨によって逝ってしまった者に同情する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノウは眼前の攻撃を目にし、何と形容していいのか解らなかった。

自分たちの戦闘概念からかけ離れた短時間の猛烈な攻撃により、強力な敵、ロウリア軍は消滅した。

 

「これが…アメリカ軍の…カナダ軍の…強さだというのか……。」

 

自分の兵はまだ1人もロウリア軍と戦っておらず、部下に死者は出ていない。

目の前のあり得ない光景に彼だけではなく、他の兵士、住民も呆然とし、焼け野原になった元ロウリア軍が居た地帯を見ていた。

砲弾が作り出した炎はまるで全てを焼きつくつかのように勢いよく燃え、かつて伝説の炎龍一体によって滅ぼされた大国が存在し、その国の都市部、自然、あらゆる種族は炎龍から放出される獄炎によって全て焼かれ、砂漠になったという

目の前の光景はまさしく伝説に似た地獄を作り出しており、それに恐怖する者や、戦慄が走った者、ただただその光景を見る者など。

本来喜ぶべきこの状況の中で、彼は1人敗北感を味わっていた。

 

「圧倒的ではないか…我々ではどうしようもない、たった1万8000人の力がこれならば、彼らが何十万といればどんな戦闘能力になるのだろうか…」

 

 

 

 

アメリカ軍トワトイネ駐屯地

 

「撃ち方やめえ!撃ち方やめえ!!」

と中隊長が叫び、自走榴弾砲やMLRSが攻撃をやめた。

「敵部隊の殲滅は完了したと観測班から連絡があった!これよりキルゾーン地点へ向かい、敵負傷者の救護をする。第25レンジャー部隊のD・F・Oチームは装甲車で向かってくれ、それ以外の部隊はクワトイネから攻撃許可を承認され次第、ロウリア軍地上部隊を攻撃する!

準備にかかれ!」

 

「イエッサー!!!」

 

とアメリカ軍兵士達は忙しくバタバタとそれぞれの役割へ走り出すのだった。

 

それを見ていた中隊長は砲撃された地点の方向へ視線を向けながら考える。

(思ったよりも短期間で全滅したな…予想ではもう少しかかるものだと思っていたが、近代戦争を知らない中世の軍団があれほど固まった結果、それが仇となって砲撃の餌食になったのは当然だろうが、2万という人間が僅か10分の間で全滅とは…)

 

 

 

 

 

 

 クワ・トイネ公国政治部会

 

エジェイ城塞都市防衛戦はすぐに政治部会へ報告された。

 

「・・・・い、以上がアメリカ・カナダ軍と、ロウリア軍の西方方面の戦いの報告になります」

 

・・・・・・・・・・・・

 

「・・・では、誰もアメリカ・カナダがどうやって高威力爆裂魔法を使用したか、見ていないのか?」

 

「はい、報告書のとおり、アメリカ・カナダ軍は駐屯地から攻撃を行ったとの事であります」

 

「何を言っている!アメリカ・カナダの駐屯地から、今回の高威力爆裂魔法が使用された戦場まで、13kmは離れているのだぞ!!13kmも!そんな魔法は古代魔法帝国の御伽噺でしか聞いたことが無いわ!!」

 

「しかもロウリア軍が占領した村やシュリアナート市を数日で解放しただと!?馬鹿も休み休み言え!」

 

会場がざわつく。

手を挙げて、首相カナタが会場を静まらせる。

 

「・・・手元の資料を見てほしい」

 

アメリカから安く輸入した上質の紙が議員に配布される。

 

なんだ、え、えらく上質な紙だな……と思いながら内容を見ると驚愕した表情になった

 

ロウリア……首都攻撃許可願い!?

 

「アメリカは我が国から発進した鉄龍で、ロウリアの首都の一部を強襲し、ロウリア王へ降伏勧告し、身柄を拘束するとのこと。併せてエジェイとギムの間に展開する敵、ロウリア王国クワトイネ征伐隊東部諸侯団と、ギムの西側を国境から我が国内を東へ進軍する本隊に対し、鉄龍と共に、地上部隊を投入して攻撃したいとの事。敵主力がギムから出ているため、攻撃がもしも成功すれば、我が国も軍を送り、ギムを奪還したいとのことです。」

 

 ザワザワザワザワ・・・場がざわつき始める。

 

「べ…別にいいじゃないか?得しかないし」

 

「いや、しかし他国の地上軍が侵攻するのは……」

 

「しかし、このままでは我が国は滅ぶ……今回はアメリカとカナダに頼る他ないのではないか?どのみちアメリカ・カナダへ頼る他生き残る道はないのだ、我が国は。」

 

「敵の首都…うまくいくとは思えないが…。」

 

「しかし、うまくいけば、今回の戦争が終わる……。もっとも被害の少ない方法だ。」

 

「それに地上部隊もアメリカとカナダ軍の援護があれば我が国は少ない被害でギムを奪還し、被害を拡大させることもなくなる。」

 

「うーん……戦後の処理が怖いものだが…」

 

「それに関して両国側は特に要求しないそうだ。賠償はロウリア側に要求し、ロウリア側の戦後処理を任せて欲しいと言われたくらいだ。」

 

「なるほど…」

 

「我が国からの要求についてはどうでしょうか?」

 

「それもあちらの方はロウリア側との交渉をさせてもらえる」

 

「ふむ…あれほどの力を持つ国に我が国やクイラ王国…いや、ロデニウス大陸全体が総力を上げてもアメリカとカナダ軍の足元にも及ばないだろう」

 

政治部会では、全会一致でアメリカ・カナダ軍の国内及びロウリアでの陸、海、空の戦闘許可を行った。

 

同時に彼らはアメリカとカナダの実力を理解した。

その実力は決して蛮国が作り出せる軍事力ではなく、超大国の軍事力ということに

彼らによればまだ、全力も出していないという。

2万の攻略部隊と数千人の偵察部隊を数日で壊滅させたアメリカ・カナダ部隊のほとんどの艦隊20隻以上、陸上部隊2万、航空作戦動員数100機以上の戦力はアメリカ軍の一部であって全力であれば10倍ほどの戦力も動員可能だと

まさしく魔法帝国並みの国力と軍事力であった。

 

 

 

 

ロウリア王国クワトイネ征伐隊東部諸侯団

ギム東側20km地点

 

クワトイネ征伐隊東部諸侯団野営地でイライラしながら、椅子に座っている将校が居た。

 

 

 

「先遣隊に連絡は取れないのか!?どれだけ伝令を送っていると思っている!!!!!!!」

 

副将アデムが、軍の通信隊を怒鳴りつける。

 

「導師から、魔通信を送っていますが、返信がありません。」

 

昨日から先遣隊が消息を絶っている。

先遣隊とはいえ、2万もの軍、1師団としては非常に多い大軍だ。通信を送る前に全滅するなんて事は考えられなかった。

例え、全滅するとしても通信を送る時間は確実にあるし、誰一人帰ってこないなんてあまりにも現実離れしている。

それもたった1日で…

 

「偵察隊はどうなっている?」

 

アデムは偵察隊として、ワイバーン12騎をエジェイへ向け放っていた。

 

「間もなく先遣隊の消息を絶った付近の上空です」

 

くそ、一体どうなっている、先遣隊の中には精鋭部隊も混じっている決してトワトイネごときに敗北するような部隊ではない。

城塞都市エジェイはトワトイネ軍の精鋭部隊が集った難攻不落と呼ばれているが、それでも攻略は十分可能だ。

補給体制もしっかり兵站に不足はないし、士気も上がっていたはず。

おかしい…何かがおかしい…

それに度々報告される第三勢力による軍勢はアメリカ・カナダ連合軍の可能性が高いだろう…

本国からアメリカ合衆国やカナダ連邦が宣戦布告してきたとは聞いたが、どうせ、烏合の衆団が集まったところで何もできまいと高を括っていた…

 

占領下にあった部隊との通信途絶、先遣隊の消息不明状態

情報が一切入って来ない…

 

 

まさか、これも奴らの仕業か?

 

アデムは心の中の違和感を感じながら報告を待った。

 

 

 

 

 

ロウリア王国クワトイネ征伐隊東部諸侯団所属、ワイバーン小隊 竜騎士ムーラ

 

「そろそろ…か」

 

エジェイ周辺の偵察隊12騎は、それぞれ分かれ、様々な方向に向かっていた。ムーラはその中でも先遣隊が消息を断った付近が割り当てられていた。

今日は少し涼しく、晴れた空ではあるが、雲が多い。少し飛び辛いが気分は良い。

先遣隊が消えた。

彼の任務は状況の確認…。

先遣隊は占領下にあった村、町のみならずエジェイ攻略部隊すら連絡が取れない状況であった。

僅かに生き残った仲間によれば、敵はなぜか、自分隊を見通した動きをしており、恐ろしく不気味で夜間でも100発100中ほどの命中精度を持つ軍勢だった。

 

「ん?」

 

何か、人の鎧の跡が見えた気がした…上空に達する。

 

「な……なんだ!!!これは!!」

 

まるで隕石が落ちた後のようなクレーターが多く点在し、多くの場所で人間か、軍馬、装備、攻城兵器の残骸などが放置され、そこにはロウリア王国の悪魔の象徴である漆黒の鳥類がその残骸を目当てに啄ばんでいる。

そこらで火災が発生し、炎は一向に消える様子はなく、あたりの上空には黒煙で黒く染まっている。

そして、燃えた後の灰が降っており、彼がいる地点にも降り注いでいる。

彼はこの世の地獄を見たかのように呆然とした表情で、燃え盛る地上部隊の居た地点を見ている。

 

 

 

 

「ま、まさか…全……滅だと?」

 

 

 

 

「HQ、こちら監視部隊、スーパーコブラ7番機

敵機、先遣隊の跡地へ接近を確認。敵偵察隊と思われる。

これより短距離対空ミサイルで攻撃する。」

 

『HQ、了解』

 

「悪く思うなよ……偵察に来たお前さんの運がなかった。よし、ボブ、攻撃用意!」

 

「了解、対空ミサイル用意!」

 

とアメリカ軍のスーパーコブラがムーラの乗る竜へ照準するのであった。

 

 

 

 

 

そんなバカな……。

先遣隊は2万名もの部隊が居たはず、それが通信もなく全滅・・・

何がどうなっている……

と頭の中で混乱していたときだった。

グワァッ!グワァッ!

相棒のワイバーンが警戒の鳴き声を発する。

ワイバーンは東の方向を見ている。

バタバタバタ……

微かな音、空気を叩く音が微かに聞こえる。目を凝らす。竜騎士の視力は抜群に良い。

 

「あの竜は何だ!?」

 

遠い…けし粒のような大きさの黒い点が見える。何か、魂の無い者、竜というよりはむしろ生き物ではない何か。

 

「!!!!!!!!!!!!」

 

突如としてその竜から煙が吹き上げ、小さな火炎が音速を超える速度で自分に向かってくる。

 

「導力火炎弾か!」

 

遠い……そして速い!自分のワイバーンの導力火炎弾よりも遥かに射程距離は長いようだ。これほどまでに遠いとは、ワイバーンロードをも凌駕しているかもしれない。

しかし…。

ムーラは飛び立つ。いくら遠くから速い攻撃を受けても、気付いていれば避けることができる。こういった攻撃は、不意打ちでこそ効果がある。

敵の目は悪いようだ。

そのまま導力火炎弾の進路とは別の方向へ飛行するが……

 

「!!!ついてくる!!!」

 

敵の火炎弾は曲がって自分についてくる。

 

「こ、こいつまさか誘導魔法か!?」

 

火炎弾は猛スピードで自分に接近してきた。

湧き上がる恐怖

 

「うわぁぁぁっぁぁぁ!!!!!!!!!」

 

全力で飛び立ち、ワイバーンで後ろに付かれた時の戦術、ジグザグ飛行を行う。敵の火炎弾は、その度向きを変える。そんな攻撃は聞いたことが無い。

 

「こちら偵察隊ムーラ!!!先遣隊の残骸を発見!先遣隊は全滅した模様!!!!!

導力火炎弾がついてくる!!来る!来る!!?な、なぜ、列強国でも研究段階であった誘導魔法がある!?」

 

 ムーラは魔通信具に向かって叫ぶ

 

「ち…ちくしょう…」

 

顔に叩きつけられる合成風、死の予感、脳の中を様々な思考が廻る。

 

(「いってらっしゃい」妻は、戦に行く時、笑顔で送り出してくれた。「ほら、お父さんにいってらっしゃいは?」「あっ、あっ」1歳になったばかりの娘が笑顔で抱きついてくる。「これ…お守り、持っていって」良く解らない軽い金属性の物体を渡された。いつもお守りとして腰に着けている。)

 

「こんなところで死んで……たまるかぁぁあ!!!!」

 

急上昇、導力火炎弾は、やはり軌道修正し、自分に向かってくる。急降下…。

ふと急激な機動に腰に着けた妻からもらった大切なお守りが外れる。

そのお守りが偶然にも火炎弾が迫る。

 

ダーーーン!!!!!!!!

 

ムーラの後ろで火炎弾が何故か爆発した。

 

(た、助かった…導力火炎弾は明らかにこちらに追尾してきた…確か我が国の魔導研究の中で対象物の生命反応へ魔術により誘導する誘導魔法があったがクワトイネはまさか実現させているのか?いや、あり得ない。

少なくとも我が国よりも技術・国力の差がついているクワトイネが実現するとは思えない…

クイラ王国も同様だ。

もしかすると海軍が話していた第三勢力とやらの仕業なのか?)

 

 

 

彼とワイバーンは西の空に向かって帰って行った。

 

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