私は偉大なるグラ・バルカス帝国情報局所属の諜報員だ。
名前は言えないがコードネーム「ジェイ」
ここロウリア王国首都ジン・ハーク
王国はクワトイネ公国とクイラ王国へ攻め込み、2カ国とも併合する予定だ。
2カ国が滅ぼされればロデニウス大陸はロウリア王国のものとなり、のちに我が国が植民地とする。
情報ではロウリア王国は第3文明圏列強国パーパルディア皇国から軍事的支援を受けて、長年かけて戦力を揃えたと聞く
我々から見れば産業革命すら起こしていない野蛮な国にいくら帆船や前装式の大砲なぞ揃えても無意味であるが、この世界では違う。
私は今日も情報収拾を行う、噂程度であるが、何やらクワトイネ公国とクイラ王国は海からの大陸国家と国交を締結させ、著しい成長をしているらしい。
本当かどうかわからんが、商人経由なのだから本当だろう。
だが、なぜ、お世辞でも文明国とは言えない2カ国と国交だけではなくその国を成長させるのか
通常、技術というものは格差があることで外交・戦略上有利な立ち位置となり、輸出するとしても中心的技術ではなく、消費物資を少しずつ輸出する。
もし、本当に2カ国の国力を上げているとするなら代理戦争でロウリア王国を占領下に置き、割譲するのが狙いなのか
今日も俺は執事の格好で王家に仕える。
情報を集めるのなら一番手っ取り早い方法はその国のリーダーとなる組織の近くにいることだ。
王族や貴族の集まる場所で働くと自然と情報が集まる。
この国の防諜活動はお世辞にもうまく機能しているとは言えない。
諜報活動しやすい環境であるから、我が国から諜報員はあまり派遣されていない。
さて…今日は貴族の相手か…疲れるものだ
「あら~執事さん、私に紅茶のおかわりをもらえるかしら?早くしないと首を切るわよ~」
こう言って本当に斬首されたメイドや執事がいるというのだから怖いものだ。
「かしこまりました。少々お待ちを…」
と紅茶のポッドを持ち、紅茶のお代わりを注ぐ。
「ねえ……聞いたかしら?あの農業国がどうやらアメリカやカナダという国と国交を締結したらしいわよ」
「まあ…あんな野蛮な国と繋がりを持つなんて…なんて恥知らずの国ですこと」
「ええ、実は我が国も国交開設に訪問したらしいけど、王様は怒って追い出したわ~」
「当たり前ね、亜人と共存する国家とつながりを持つ時点で身の程知らずね…おまけに歴史もたった300年ほどの国らしいわよ」
「まあ……さ、300年?それはとんでもない新興国家ですこと…」
「ええ、当然貴族や王族すらいない国で国民がリーダーを決めるのですって、なんて愚かな行為をしているのでしょうね」
「低能である考えね、民衆に国家の王を決めさせるなんて、無知な民衆が自国のリーダーを決める仕組みは愚かな指導者を作る原因にもなっているだろうに、それを自覚しているのかしらね?」
「さあ、農業国と連携する時点で、彼らには正確な判断能力がないに等しくて?」
「貴族や王族が存在しない国なんて盗賊が集まった国なのかしら?」
と貴婦人方が話している間で、ジェイは考えていた
新興国家のアメリカ?カナダ?そんな国は聞いたことがない。
そんな国がクワトイネと繋がるとは運がない国だな…
この亜人を徹底的に迫害している国を敵に回すとはな
まあ、俺たちにとってどうでもいいことだが、できることなら近いうちに情報を仕入れておきたいところだ。
情報は最も戦略上重要だ。
情報一つで戦場や国家戦略に左右され、今の所ムー大国以外機械式飛行機は見られず、我々にとって最も警戒すべき国はムーと中央世界の国家だ。
中央世界なんて大層な名前だが、所詮は未開の国家。
魔法という力も1発の弾丸を防ぐ強力な魔法使いは少なく、大半が銃弾を防げない。
その上実用性のない能力で最初こそ警戒していたが、もう警戒していない。
ワイバーンという航空兵力もたった250から350Kmしか出ない低速な射程の短い火炎弾を打つだけの的に何もできまい。
今のうちにもっと探りを入れてみるか…と思案していた
すると廊下側が騒がしい
ジェイはそっとドアの側まで寄ると兵士が話していた。
「おい、あの話は本当なのか!?」
「あ、ああ…本当だ…クワトイネに派遣していた派遣軍が全滅しました…」
「まさか…ワイバーン部隊もか!?」
「は、はい…敵航空戦力の攻撃によって全て全滅したとのことです。」
ワイバーンが全滅?列強国でも介入したのか?
「ま、まさか列強国が介入しているのか!どこだ…!パーパルディア……なのか?」
「い、いえ、パーパルディアではなく見たことない鉄のワイバーンに何か、音がするとそのまま人体が木っ端微塵になったとか、森が一瞬にして地獄の炎で焼き尽くされたとか断片的な情報ばかりで、まだ断定はできませんが、非常にまずいことになっています…敵部隊は既に我が国へ侵攻している噂もあります…」
「そ、そのことを知っている者はお前だけか?」
「い、いえ、すでに将軍と王には報告しています。」
「そうか…くれぐれも内密で頼むぞ…こんなこと民衆にもバレて見ろ…ロウリアは大パニックだ」
「し、しかし、大パニックになるのも時間の問題では?」
「馬鹿野郎!お前の脳は飾りか!?こんなことが民衆なぞに漏れてみろ、王族だけではなく俺たち兵士にも責任追求はくるかもしれない、とにかく今は誰にも言うな、いいな!」
「は、はい!」
と兵士達は動き始めそのまま奥へ入っていった
「あらま…なんて騒がしいのかしら?少し兵士の質が下がったのではなくて?」
「仕方がなくて?ここ最近では軍事力をつけるために民衆から無理やり徴兵したらしいから兵士の質が下がるでしょう。所詮烏合の衆でしかないですし」
「あらま、品のない民衆から集めた兵士なんて下品なだけですわね…そのままワイバーンの餌になればいいわ」
「あらあら、それじゃあワイバーンが可愛いそうよ」
「ほほほほ~」
と会話しているが、ジョイは考えていた
は、派遣した部隊が全滅!?ワイバーンすら全滅するとは一体どうなっている?
あれだけの戦力では圧倒的勝利に間違いないはずだ!
おかしい…何かがおかしい…
やはり第三勢力の介入が正しいだろう
そうでなければこの状況を説明できない
とにかく今の仕事が終われば探りを入れてみよう…
ジョイは執事としての仕事が終わるとすぐに行動した。
士官の部屋へ侵入するとそこから書類を探り、現在の戦局について探した。
書類はすぐに見つかった
これは…通信内容記録?
*****
通信記録2
『こちら3号!東南方面を現在調査中、未だ敵影は見られず、この…………うん?なんだ、あれは?…!?な、なんだこいt』
『本部!何者かわからない鉄龍から誘導火炎弾が追ってきてます!助けてくれ!助けてくれえええええええ!!』
『な、なんだ!?回避急げ!早く右へ旋回するんd』
・・・・・・・・
は?なんだ、この状況は…
一体どうなっていると言うのだ?おかしい、ほとんど悲鳴ばかりしかないじゃないか
他の書類は…あ、あった
と書類を熟読すると内容は簡潔にまとめると派遣された部隊はアデム副将以下全員全滅、クワトイネ側に支援しているアメリカ合衆国、カナダ連邦の介入が原因と思われる、また、アメリカとカナダ軍の扱う鉄竜や鉄像が現れ、それらはあらゆる攻撃が通じず、一方的に攻撃された、と言うことだ。
鉄竜?鉄像???一体なんのことだ。
だが、ロウリア側が海軍力だけで4400隻、ワイバーン部隊が350騎とこの世界の文明圏外では強力な軍事力と言える。
相手はクワトイネ公国やクイラ王国の持つ軍事力なんてロウリアと比較すれば天と地の差がある。
これほどの戦力を全滅させるとは両国ができるとは思えない。両国に支援していると思われるアメリカとカナダの仕業か?
気になることは多くあるが、見つけた書類を記録せねば…とジョイは記録したのちに寝室に入り、隠し部屋に設置されていた無線機に本国へ情報を送った後に寝静まった。
次の日では猛烈な音と振動で叩き起こされた。
「な、なんだ!?」
ドアの外では慌てている様子で騒動が起きていた。
「敵が来襲したぞ!外壁に兵士を回せ!」
「敵の鉄竜が現れた!対空準備しろ!!!」
「うわああ~!!!城門が破壊された!バリケードを立てろ!」
ま、まさか敵が来襲したのか!と外を見ると何かがバババババババと強烈な音を鳴らしながら何かが通った。
アメリカ軍のAH-1Zヴァイパー、MH-60Rシーホークが飛んでいた。
あ、あれは…我が国で開発中のオートジャイロ!?
なぜ、あれが…
もう相手は実用化させていると言うのか!?
相手は蛮国ではないのか!?
あんなもの、この世界には存在しないはず!
なぜ、こんなものが…
と彼の脳の裏に先日の出来事が思い出され、一カ国の国名が思い浮かぶ。
!?
あ、アメリカ…あれらはアメリカ軍なのか!?
ロウリア上空にはAH-1Zヴァイパー、MH-60Rシーホーク、ブラックホークは何十機も首都の周りを飛行していた。
外には何かが囲んでいた
うん?あれは…と持ち前の双眼鏡で見る
だんだんと手が震えていた
ま、ま、まさか…この世界には戦車があると言うのか!!!!???
おかしい、産業革命すら起こしている機械文明はムー大陸のムー帝国にしかないはずだ!
ムー大陸でも戦車は確認されていない。
巨大な主砲、重厚な斜めの装甲…
あんなもの我が軍の戦車よりも巨大な戦車だ…
しかも2種類の戦車があるな…もう一つはさっきの戦車のような傾斜した装甲ではなく垂直だ…
これも超重量に見えるのに関わらず50kmを超える速度で快速に走っていた。
あれほどの巨大な主砲…70mm?いや、100mmある…
駆逐艦の主砲を戦車に載せているのか!?
あれほどの戦車を開発する能力を持っているアメリカとカナダは一体どんな国なんだ…
それにここからではよく見えないが銃声の連続音が聞こえるということは侵攻軍には独自の連射式銃を持っている可能性がある。
まさか、ロウリア王国で知ることができるとは…
詳細をもっと知れれば良かったが、周囲はあまりにも大混乱となっており、よくは調べられなかった。
これはまずいかもしれない…ほかの工作員の話では海上では1万トンクラスの巡洋艦や空母を発見した話もあった
それも信じがたい情報ではあったが、これほどの兵器が登場すれば嫌でも現実とわかる。
ジョイが見た戦車はアメリカ陸軍が運用するエイブラムス戦車M1A3型最新鋭主力戦車とカナダ陸軍が運用するレオパルド2A10型主力戦車であった。
一体あれほどの軍勢をどこから、と上空を見ると何か飛んでいた
エンジンが二基主翼の両端に搭載し、エンジンは今まで聞いたことのないエンジン音
筒状のエンジンから高音が響き、航空機は何かを吊るしていた
それは何か巨大なものだった
あれは....戦車!?
こいつら、まさか飛行機に戦車を運ばせていたのか!
そして、航空機から空中の状態で戦車が投下され、落下傘と思われるパラシュートが開き、ゆっくりと地面に着地する
な、なぜ、我が国ではまだ、研究段階の落下傘がある?
アメリカとカナダという国はもしかすれば我が国を凌駕する技術と軍事力を持っているのかもしれない。
飛行機から物資や兵員を降下させ、その地域の迅速な制圧構想は我が国にでも研究されていたが、まさか実戦で見られるとは...
急いでこの事を本国に報告せねば...!
すぐに彼は情報をまとめて城を走った。
丁度城の出口に差し掛かるところで彼の足に突如痛みを感じさせた。
「うがっ!?」
と前へ倒れるように倒れたジョイは足を押さえたまま撃った本人を見ると驚愕していた。
そこには旅人の格好の男性が数人
手には拳銃が握られており、顔には泥を被ったかのような汚らしい格好していた。
*一般的にはそれを迷彩と呼ぶ
「な、なんだお前は!?私はこの城の執事だけだ!私を捕まえても何も得られないぞ!」
拳銃だと!?こいつらまさか、アメリカかカナダのスパイか!?早すぎる…まさか、私の正体を知ったのか!?
「少し黙ってもらおうか、お前さんがどこかのスパイだったと言うことは既に知っている、何やら珍しいものを持っているらしいじゃないか?」
「し、知らん!私は執事だ!人違いだ!」
「ほう、往生際が悪いようだな、お前さんの持っているカバンを調べたら面白いものが出るじゃないか?」
!!?
「くっ!」
「大丈夫だ。眠ってもらうぞ」
「クソ!こんな場所で捕まってたまるか!さてはお前はアメリカ合衆国かカナダ連邦の諜報員だな?なら、話は早い。私もお前たちのことは興味を持っている。我が国まで来てもらう」
とジョイは懐から拳銃を取り出す。
それは旧日本軍が使用した九四式拳銃に非常に酷似していた。
男性はやれやれとCQCの構えを取る
胸のソーバックからナイフを取り出し、手に持っている拳銃オペレーターと一緒に構える。
「?なんだその構えは?ナイフと一緒に構えるとは、お前も知っているだろうが、ナイフより拳銃の方が有利なんだぜ?」
男性はニヤリと笑う
「!何がおかしい!」
とジョイは拳銃を撃つが、男性は体を捻り、素早く避けると一気にジョイに接近する!
「!拳銃相手に接近するとは、貴様は馬鹿のようだな!こいつは連射できるぞ!」
と拳銃を男性に向けるが、男性は近くにあった木箱や柱の物陰に隠れながら接近してくる
「クソ!死ね!」
と拳銃を男性に照準すると引き金を引くが、弾丸は出なかった
「!?」
銃声がなかったことを確認した男性は一気にジョイに近づく!
「馬鹿め!拳銃は一つとは限らないぞ!」
と新たに拳銃を出すが、その前に接近され、そのままジョイの首元にナイフが突かれる。
「!?」
「拳銃に頼るのは結構だが、近接戦闘では拳銃よりナイフの方が機動力に優れる。」
ジョイはナイフに突かれたまま動けず、拳銃を手放す。
「7発」
「?」
「そいつの装弾数は7発、残弾数をしっかり身体で覚えることだな」
「!?拳銃の性能まで知っているとはな…負けたよ」
「悪いが、暫く眠っててもらうぞ」
「好きにしてくれ」
とジョイ言うと男は別の拳銃へ持ち変えると首元へ撃ち込む。
男性はドサリと倒れた後、そのまま寝てしまったようだった。
「こちらSEALs a群、ネズミを捕まえた、回収班を頼む」
『こちらシーウルフ、了解した、すぐに向かわせる。
ご苦労だったな、どうだ?一足先に敵地へ侵入した感想は?』
「やめてくれ、普通に宿屋や屋台で売られている食事は軍の物資徴収でロクな味付けされていなかったんだ。
ジャングルの方がまだ、美味い食事にありつける」
『そうか、詳しい報告は本国で行ってくれ、回収班は1時間後に来る予定だ。アウト』
と男性たちは通信を切り、タバコを口に咥えるとそのまま倒れた男性を抱えて奥へ入って言ったのだった。
数十分後、ジョイ以外でも多数の諜報員が行方不明になる出来事が起きて、ある国が情報収集に苦労することとなったことは今後の未来に影響するのであった。
SEALsの目的は偶然偵察機や早期警戒機が受信した未確認電波が原因だった。
電波を一切発信しない封止状態のアメリカ側は偶然受信したことに疑問を抱き、受信された電波は全く知らない暗号ではあったものの、解析した結果第二次世界大戦ごろに使われた通信機器とわかった。
ペンタゴンやCIAはもしかすると電波を出す機械を既に開発し、実用段階の国家が存在するのでは?と疑問から確信に変わり、ちょうど発見された場所がロウリア王国であったため、対ロウリア戦に向けて作戦も準備段階、そこでCIAとペンタゴンは海兵隊のSEALsを出動することで電波の発信源を特定し、他国のスパイを捕獲することに成功した。
この結果にCIAやペンタゴンは歓喜し、貴重な情報源を確保できたことで、より詳しい情報が得られるのであった。