星と楓の異世界戦記(旧 2019年打ち切り)   作:ミュラ

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17異界の漂流国家

 

 

北米大陸から遥か西方、大海腹の中、大陸と呼ぶには小さく、島にしては大きな陸地があった。

その陸地には近代的建造物が並び、煙突から黒煙を吐く

港には金属の大型船が点在し、その国は

 

グラ・バルカス帝国だった。

 

 

 

グラ・バルカス帝国(通称第8帝国)情報局

並べられた電気式受信機に、電子音が連続して鳴り響く。現代の者がそれを聞いたのであれば、信号形式は違えど、モールス信号と間違う事だろう。

電気式受信機に張り付いている局員が何かを受信した内容をメモし、局長へ近づく。

 

「閣下、ロデニウス大陸の情報について、現地から報告が届きました」

 

きらびやかではあるが、スッキリとした黒い制服の男が報告を始める。

 

「概要は?」

 

「はっ!ロウリア王国のクワトイネ公国並びにクイラ王国への侵攻は、アメリカ合衆国とカナダ連邦の介入により、失敗に終わり、王家は失脚し、民主主義国家に移行したことです!」

 

「!?ロウリア王国が敗北?何かの間違いではないのか!?」

 

「いえ、混乱の末情報をまとめるのにかなり時間がかかりましたが、間違いないです。しかし、アメリカ軍による素早い侵攻によってロウリア王国に派遣していた諜報員に何人もの行方不明者が出てしまいました。」

 

いつもは概要を聞くだけで納得し、仕事は部下に任せ、責任は自分がとる閣下と呼ばれた男の片眉がつり上がる。

おかしい...確かロデニウス大陸はロウリアが最も軍事力を持つ国のはず....

第三勢力の工作?それにしてもロウリア側には別の国が支援していると聞いているが、クワトイネとクイラにはどの国も支援してなかった

それに諜報員が行方不明だと?不自然だな…

 

「我々の分析では、ロウリア王国の圧勝となり、ロデニウス全域が、ロウリアになるはずとデータでは出ていたはず……。アメリカやカナダという国は聞いたことが無いが…詳細は?」

 

「はい、アメリカとカナダが参戦したことにより、戦局は一変しました。ロウリア王国の4400隻の大艦隊は、アメリカの艦隊に一方的に撃破されました。地上でも、ロウリア兵はアメリカとカナダ軍に戦死者を負わせる事無く敗れています」

 

報告は続く

 

「なお、アメリカ軍は驚異的な侵攻速度で次々とロウリア軍を撃破し、首都では大混乱となりました。目撃情報では1万トンクラスの重巡洋艦級、5000トンクラスの軽巡洋艦級、大型空母の目撃情報があり、巡洋艦の武装は100ミリから130ミリ程度の主砲と、多銃身の対空砲と思われる兵装が2つしか搭載しておらず、空母の艦載機は混乱の末、確定ではありませんが、ほとんど回転翼機しか見られなかったとのことで、カストロードエンジンらしきプロペラを2〜4発搭載している大型航空機の目撃情報もあります。」

 

何だと!?おかしい機械式兵器を使う国家はこの世界はムー帝国くらいじゃないのか!

まさか、我々同様転移国家なのか?

 

「何?巡洋艦に空母?大型航空機だと?

何かの誤報ではないのか?機械式航空機や戦闘艦を運用する国はムー帝国くらいで、他国は魔法か、魔導兵器くらいのはずだ。

戦闘機はいたのか?」

 

「戦闘機などの目撃情報はありません。

巡洋艦や空母などの目撃情報は多数寄せられているため、誤報はあり得ません。

巡洋艦や空母の形態も多少違いはありますが、我々が運用するものと似ているとのことです。」

 

巡洋艦や空母を保有する謎の東方の国家

恐らくここまでの情報だけでは転移国家と断定するのは早いかもしれないが、転移国家で間違い無いだろう。

事実、我々もムー帝国も転移国家なのだから。

転移した国家は共通しているのはどこの国も機械文明だというだ。

 

「・・・豆鉄砲が1門と多銃身の対空砲か、随分と歪つな旧式の兵器を使うのだな、対空砲に多銃身は弾幕を張るぶんには丁度いいかもしれんが、命中性能が極端に悪い。

そんな兵器を運用しているということは今までの敵は、これで十分だったのだろう。

回転翼機も海軍が開発していたな…大型航空機も4発ということも、もし本当なら部分的には帝国の技術を超えているのかもしれないな。

だが、報告書ではレーダーなどの電子装備がなく、部分的に魔法を使用している可能性もある、か…主砲が1門だけとは随分と平和な世界から来た転移国家だな」

 

 話が続く

 

「技術がこの世界の国から比べると、隔絶しているな。この国も、我が国のように転移国家だろうが…。砲が1門、旧式の兵装を対空砲に使用している上、レーダーもない、しかも120ミリと豆鉄砲の艦を作るようでは、アメリカとカナダは恐れるに足りんな。多少の被害が出るかもしれんが、大局に影響は無いだろう

もっと細かい情報はないのか?」

 

「いえ…なにぶん諜報員の約7割以上がロウリア王国ジン・ハークで消息が途絶えておりなかなか情報が集まりません…」

 

「7割!?どういうことだ?なぜ、それほどの行方不明者が出た?」

 

「は、はい…恐らくロウリア軍とアメリカ軍の戦いに巻き込まれてしまったのでは?というのが、今の所の見解です。」

 

 

「そうか…よし、新たに諜報員を現地に派遣するのだ。」

 

「了解しました。」

 

男はその話題に興味を無くす。

 

「そういえば、レイフォル国艦隊とは、どうなっている」

 

「国家監査軍が、すでにレイフォル艦隊を補足しています。間もなく戦闘に入る予定ですが、提督は遊び心が過ぎるようで、蛮族に空母はまだ使わず、戦艦1隻のみを差し向けるそうです」

 

「1隻だけか……航空戦力がワイバーンや帆船しか持っていない国家には大丈夫だな……ふふふ、1隻が伝説を作るなんて相手は思いもしないだろうな」

 

 

 

 ムー大陸西方海上

第2文明圏列強国レイフォル

 

レイフォル艦隊43隻

艦隊は西へ進んでいた。

突如として現れた第8帝国と名乗る新興国家、周辺の蛮国を統合、制圧し、あろうことか第2文明圏全ての国に宣戦布告してきた野蛮な国、蛮族と放っておいたが、突如レイフォルの西側にある小さな島国、レイフォルの保護国、パガンダ王国を強襲制圧したため、レイフォル皇帝の逆鱗に触れた。

パカンダ王国は圧倒的な戦力で占拠された。

これに皇帝は怒り狂い竜母や100門級戦列艦を含む主力艦隊を差し向け、パガンダ王国沖合いに展開する敵艦隊の殲滅後、パカンダに展開する蛮族を撃滅することを指令された。

 

 艦隊にはレイフォル側にとって最新鋭とも言える艦艇を揃っており、最新型の前装式大砲を載せた100門級戦列艦、航空戦力を海上で展開することが可能な竜を運用する母艦などを含めた精鋭の艦隊は帆をいっぱいに張り、風神の涙と呼ばれる風を起こす魔法具を使用し、速力12ノットの高速(この世界にしては)で、南に向かっていた。

 

「将軍!偵察中の竜騎士から敵艦発見の報告が来ました!」

 

偵察中の、竜母から飛び立ったワイバーンロードから魔信を通じて報告があがる。

 

「敵は1隻のみですが……全長が260mを超え、信じられない大きさの大砲を搭載しているとの事です!!」

 

将軍バルの眉間にシワがよる。

 

260?そんな巨大船が一体どうやって浮くのだ?だが、敵艦がどんな敵であろうとも我がレイフォル艦隊に敗北はない!

たった1隻など数の暴力を前に無意味だ!

 

「艦隊上空に展開する護衛の3騎を残し、残りの竜騎士を敵艦攻撃に向かわせろ!艦隊進路も敵艦にとれ!」

 

「はっ!」

 

波をかき分け、艦隊は進路を敵へ向ける。艦隊の乱れない動き、錬度の高さは第二文明圏の国家として当然であった。

ワイバーンロードも竜母と呼ばれる母船から青空へ向かい、発艦していく。編隊を綺麗に組み、竜騎士たちは西へ向かった。

 

グラ・バルカス帝国国家監査軍所属の超弩級戦艦グレードアトラスターは単艦で東に向かっていた。

海上を鋼鉄の要塞が海をかき分け、進む姿はあらゆる人間を圧巻させるほどの雄姿であった。

船体の甲板には金属製の重厚な46cm砲3連装が3箇所に設置され、計9門の主砲は誇らしげに水平線を向く。

重厚な46cm砲の他に小さい砲身を上空へ向け、測定器、見張り番など中央部に沿って山のような形状をした艦橋。

空へと向けられた3連装高角砲は、ハリネズミのように設置され、高角砲の弾は、グラ・バルカス帝国で最近開発された、近接信管が使用されている。

 

 この近接信管の開発により、砲弾が直撃しなくても、飛行物体が近くに来るだけで砲弾自身の出すレーダー波の反射により、砲弾が破裂し、その破片で飛行物体を撃墜する。

 

 数年前までは、帝国でも時限式信管が使用されていたが、この近接信管の導入により、レーダーとの連携によって砲弾の命中率は20倍と、飛躍的に向上した。

主砲の46cm砲はレーダー照準射撃を導入しており、命中精度も向上、威力もこの世界のどの大砲よりも大きい。

主砲の最大飛距離は、40kmも飛翔し、前世界においても、この世界においても、最大最強の戦艦に違いない。

重要区画の装甲は、46cm砲の直撃にも耐えうる装甲となっており、不沈戦艦との異名もある。

 

グラ・バルカス帝国国家監査軍所属の戦艦、グレードアトラスター艦長、ラクスタルは、前方に広がる海を眺めていた。

 

「対空レーダーに反応、艦長、レイフォル艦隊から多数の飛行物体がこちらへ向かって来ております」

 

通信士から報告が入った。

この世界の航空戦力、ワイバーンという竜だ。

先の戦闘でパカンダ王国から飛び立ったワイバーン部隊と我が帝国の戦闘機部隊が始めて空戦を行なった結果、一方的な戦いとなり、竜は全滅、こちらには損害なし。

我が国の最新型の艦上戦闘機『アンタレス』に、手も足も出なかった戦いとなった。

アンタレス型艦上戦闘機は以前の主力機と比べて主翼を複葉から、低翼の一枚が採用され、エンジンも信頼性の高い1000馬力級を誇るものだ。

さらに洗練された機体と、ネジ一本までネジの軽量化を克服した結果、時速550kmという高速性能と世界一(前世界基準)の旋回能力を得た。

攻撃性能も20mm機銃と、長年使用された信頼性の高い7.7mm機銃を二門ずつ搭載しており、20mmの弾数が少ないが、申し分ない能力だ。

対してパカンダ王国から飛び立ったワイバーンという竜は、時速230km前後しか出ておらず、勝負にならなかった。

竜の武装と思われる攻撃方法は口から火の弾を出すのと、乗り手が弓矢を放つくらいだ。

いずれも単発であり、弾速が遅く、射程距離も短かった。

あれほどの性能しか出せない航空戦力を運用する国家が中心ならば負けることはいないだろう。

近々開発中のロケット兵器も有効に使用することも可能だろう。

 

「敵機の速度は時速350kmです」

 

ほう、パカンダ王国のワイバーンよりも100kmほど早いとはな、腐っても列強というわけだな。

まあ、外交官を殺害するような野蛮な世界とはいえ、品種改良くらいは行っているだろう。

だが、それでもこちらの勝利には変わりは無い。

 

「350kmか、少し早いな、これならうちの航空部隊も退屈はしないじゃないか?ははは!」

 と笑い、ニヤリと口を歪ませ、通信士へ問いた。

 

「航空部隊には念のため待機させますか?」

 

「いや、必要ない……たかだか100km程度しか早くなった敵に怯えなくてはならない?敵は竜だ。あとどれくらいだ?」

 

「あと8分で、目視圏内に入ります」

 

よし

 

敵に、艦攻や、艦爆はいない。しかし、こちらも上空支援は一切無い。

多数の高射砲や、近接信管を装備しているとはいえ、不安はある。

 

「間もなく見えます」

 

東の空に、けし粒のように黒い点が見え始める。

速度が遅いため、なかなか大きくならない。

 

ようやく来たか……やはり動きはかなり鈍重なようだ。

 

「対空戦闘用意!各員位置に付け!」

 

「対空戦闘用意!!!」

 

戦艦が、本格的な戦闘配備に移行する。

各員が対空銃座、高角砲へ位置につく。

 

 

「艦長、まずは対空主砲弾を試してみてはいかがでしょうか?」

 

対空主砲弾は、今まで時限式信管を用いた46cm砲の射撃であったが、現在は新型の近接信管が開発されたことで、優先的に最新型であるこの戦艦へ搭載されている。

近距離戦闘では当然、使用することはできないので、使用するときはある程度距離が必要であった。

あまりにも距離が近いと自分も爆発影響範囲に巻き込まれるからだ。

敵機との距離は、およそ30kmか、相対速度を考慮すれば、そろそろだな……

 

「よし、第一、第二主砲砲塔へ主砲弾、対空弾装填、発射用意!一斉射撃を行う。砲術士!前方目標群へ照準!

甲板に出ている乗員は直ちに艦内に避難せよ。」

 

「了解!」

 

外部の者が避難し、主砲が動き始める。

前部の2基の主砲(全6門)が、ゆっくりと空を向く。重厚感あふれる動き……。

 

敵との相対距離を概算で計算し、レーダー照準で、主砲が空を向く

 

ついに照準が完了し、今かといまかと待っていた。

 

「発射準備完了しました。」

 

「よし……第一陣、主砲撃てええええーーーーーーーーーーっっっ」

 

6門の砲が一斉に射撃する。

 

ドドドーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!

轟音―――

空気が震える

主砲から発射された爆煙が一瞬景色を赤く染めた。

 

 

 

レイフォル軍竜母機動部隊 攻撃隊 40騎

彼らは敵の巨大艦に攻撃を加えるべく、飛行していた。

強襲に備えるべく、死角を無くす密集体系・・・20騎が飛行し、その後方上空をさらに20騎が飛行する。

 

「!……!?」

 

誰かが異変に気付く。

空に黒い点が多数見える。

 

(何だ?あれは)

 

 爆発、轟音・・・。

 

一瞬のうちに、密集して飛行していた40騎中20騎は、46cm近接信管弾6発の直撃を受ける。

空に信じられないほど大きな火炎で出来た花が咲く。

 

突然、前方低空を飛んでいた20騎が消滅する。

混乱・・・。

 

!?バカな……一瞬にして20騎が全滅だと!?

 

「散開しろぉぉぉぉぉぉぉ」

 

これほど大きな爆裂魔法を使用する相手に、密集は危険と判断する。

前方に、巨大な艦が目視範囲に入る。

デカイ!帆が無い!

なんだ、あの巨大な大砲は!

まるで鋼鉄製の要塞のようだ…

 

「突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

 恐怖を振り払い、栄えある列強レイフォル軍の精鋭、ワイバーンロードの部隊は、グラ・バルカス帝国 国家監査軍所属 戦艦グレードアトラスターに向かっていった。

 

すると目の前の巨大な艦から多数の煙が出ると光弾が見えた。その数は圧倒的な弾幕であった。

 

「量が……。多すぎる!!!!!!!!」

 

まるで雨、光の雨だ。

光の雨の中を、敵艦に向かって突き進む。

一騎、また一騎と、撃墜されていく。

どうやら、光の雨は、当たっても死ぬが、近くに掠っただけで爆発するだと!?

反則すぎる!!!!

爆裂魔法を込めた魔導弾なのか!?これほどの弾幕を展開できるほど大量に用意しているとは!

 

 

くそ……くそ!……くそったれえええええええええ!!!!!

 

 

10分後―、その空を飛んでいる者はいなかった。

 

 

「つ……通信途絶、攻撃に向かった竜騎士隊は、全滅しました…」

 

「な、何だとぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」

 

 通信士の言葉に、将軍バルは吼える。

 

「文明圏外の蛮族風情に……。しかも、たった1隻に、栄えある列強レイフォル艦隊がおめおめと、やられるわけにはいかんのだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!戦列艦の肥やしにしてくれるわぁ!」

 

蛮族どもが…いったいどんな不意打ちで攻撃したというのだ?大量の爆裂魔法を空中で爆発させた?だが、この借りは大きいぞ…

 

 

 

 

 

「敵艦隊間も無く、射程圏内に入ります。」

 

敵航空戦力を全滅させたのち敵艦隊との会敵を待っていると通信士から連絡が入った。

 

「よし、射程距離ではあるが、まだ有効射程範囲ではないな?なら命中率は悪いはずだ。そうだな…通信士、敵の大砲は2kmほどしか射程範囲はないんだな?」

 

「はい、間違いありません。ただ、列強を名乗るだけあって、砲弾はきちんと炸裂します。球形砲弾ではありません、ただ、火薬と違う原理で炸裂するらしいのですが、詳細は良く解っていません。威力は、黒色火薬レベルの爆発です」

 

「・・・我々よりも、100年以上文明が遅れているな……。我々を蛮族と思って見下しているようだが…。敵の指揮官が哀れだよ。」

 

「ほぼ命中距離の、5kmまで近づいてから横を向け、全砲門にて敵を討つ。指揮所は射撃管制を行い、的が重複しないようきちんと振り分けろ。

 各主砲、副砲で、レーダー照準射撃を実施せよ」

 

命令は下された。

 

 

 将軍バル配下のレイフォル艦隊43隻は、風神の涙を使用し、帆をいっぱいに張り、最高速力でグラ・バルカス帝国の戦艦、グレードアトラスターに向かっていった。

ワイバーンロードからの位置情報から敵艦の現在地を割り出し、進む。

 

「間もなく敵艦が見えてきます」

 

バルは目を見開き、水平線を睨む。

おのれ・・・レイフォルのワイバーン部隊を全滅させるとはいったいどんな卑劣な手法で葬ったというのだ・・・

だが、そんなことはいい、いかなる敵艦であろうと撃滅には変わりはない!

 

「!見えたっ!」

 

!!!!?報告よりも、ずいぶんと位置情報として見るに、近くに見える。

遠近感が狂うほど敵艦は大きい。

しかし、300年無敗を誇ったレイフォル艦隊、100門級戦列艦を含む43隻にかかれば、いかに大きかろうと、1隻ではどうにもならない。

艦隊は、砲艦を全面的に押し出し、横1列に並んで進む。

おそらく敵艦は我々を甘く見ているためにたった1隻しか来なかったようだが、そんなことを無駄であると思い知らせてやろう…

 

「我が国の精鋭兵が扱う、炸裂式魔法が付与された大砲の弾の味をしっかりと味わってもらおう」

 

艦隊は、帆いっぱいに風を受け、海を割って突き進む。

敵巨大艦までの距離、あと6km

敵艦が旋廻し、横を向き、こちらに腹を見せる。

艦に3箇所付いている巨大な砲塔、そして艦尾に1箇所、艦橋横に1箇所付いている2番目に大きな砲塔が旋廻し、砲がこちらを向く。

大きい…!巨大な大砲だ……なぜこちらを…………!?

 

「ま…まさか、この距離で届くというのか?」

 

敵艦が煙に包まれる。

 

「敵艦発砲!!」

 

「まだ届かんよ、子供だましだ!」

 

レイフォル艦5隻の前後に水柱が上がる。うち3隻の付近に上がった水柱は、とてつもない高さに達する。

 

「な……なんという威力!」

 

冷汗

 

「もうこんなに近くまで砲撃が補正されているというのかぁっ!」

 

敵の副砲が再度噴煙をあげる。

装填が早い!!!!

さらに、2隻の戦列艦の横に水柱が上がる。

 

「!!!戦列艦ガオフォースに被弾!!!!!!!!」

 

80門級戦列艦ガオフォースに放たれた3発の副砲のうち、1発が被弾する。

 

「か…………。」

 

戦列艦に着弾した15cmの副砲の弾は、戦列艦ガオフォースの対魔弾鉄鋼式装甲を易々と突き破り、運の悪い事に、弾薬室で爆発した。

 

 ドーーーーン

 

黒煙が上がる

 

「戦列艦ガオフォース轟沈!!!」

 

「なにぃ!!!……おのれぇ!!艦隊は全速で前進せよ!」

 

再び敵の主砲が放たれる。

今度は3隻が狙われたようだ。水柱が上がり、内2隻は煙が混じっていた。

大きな水が引いた後、煙が混じった2隻の姿は海上にはなかった。

 

「戦列艦トラント轟沈!!!………せ……戦列艦レイフォル轟沈…………」

 

!!!!!!!!!!!!!!!!!!

衝撃が走る

戦列艦レイフォル、国名を頂くこの艦は、レイフォル無敵の象徴だった。

100門級戦列艦であり、最新式の対魔弾鉄鋼式装甲を持ち、国内では世界最強と謳われていた…。それが、蛮族どもの超巨大戦艦の超巨大砲により、我が方の射程圏のはるか外側からの攻撃により、あっさりと、たったの1撃の被弾で爆散、轟沈した。

しかし、現実はゆっくりと絶望する暇を与えてはくれなかった。

さらに砲撃が続く。

歴戦の猛者たち、最高の艦と最高の乗組員たちが、ただの一撃も加える事無く、一方的に砲撃を受け、消滅していく。

レイフォル艦隊は風神の涙を使用しているにも関わらず、敵の超巨大戦艦の方が、圧倒的に速い。

!!!!!射程距離に入れない!!!!! 

一隻、一隻と撃沈されていく。

 

「ちくしょう!ちくしょう!」

 

 大将旗を掲げる、100門級戦列艦ホーリーに乗艦する将軍バルは、ワナワナと震えていた。

自分以外の全ての艦は撃沈された。

敵艦は、現在自分の艦の周囲を旋廻しつつ、全砲門をこちらに向けている。

 

「・・・・・降参の旗をあげよ」

 

命令が下る

戦列艦ホーリーのマストに、この世界で降伏を宣言するための、降伏旗が掲げられる。

 

「敵艦、近づきます」

 

巨大戦艦が近づいてきた。

 

「おのれぇ。おのれぇ。蛮族どもが近づいてきたら、全砲門をもって、敵巨大戦艦を撃沈せよ!!」

 

「え!?し…しかし、降伏後に攻撃など……。栄えあるレイフォルの名を汚します!」

 

参謀が反対する。

 

 パーーーン・・・・・ドサッ…

 

「たった今敵艦からの発砲により、参謀は戦死した…。解ったな」

 

将軍バルは、参謀を射殺し、撃った銃を捨てると艦長に迫る。

 

「なーに、心配するな。我が方の炸裂主砲を、至近距離で食らえば、浮かんでいられる船など、この世にはない・・・。どうせ敵は一隻しかいない。誰もしゃべらなければ、この戦法をとった事など、解らんさ」

 

バルは近づく敵艦を睨む。

 

「砲撃用意」

 

バカな敵は、まんまと近づいてくる。距離は300mを切った。

ほぼ必中距離

 

「バカめ…俺の艦隊を散々壊してくれた代償は高くつく」

 

「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!」

 

 100門級戦列艦の片側、50門の砲が一斉に火を噴く。海軍の軍隊は水軍、攻撃方法は船を接近させてのバリスタ、火矢、切り込みが通常のこの世界において、砲撃により、敵艦を船ごと破壊するために造られた艦、他とは隔絶された技術で造られた栄えある列強レイフォルの主力艦は、敵の巨大戦艦に向かってその力を行使した。

 

敵の巨大戦艦に砲弾は着弾し、大きく爆発した。

砲撃による噴煙と、着弾した敵の船にあがった炸裂弾による噴煙、辺り一帯を、煙が支配する。

 

「全弾命中!!!」

 

「ガーーーーっはっはっはっはっはーーーー!!!ざまあみろ!!このレイフォルに蛮族ごときが逆らうからだハッハッハッハッハッ…………ハ?」

 

煙が晴れる。

 

敵の…旋回砲塔が……ゆっくりと…こちらに向かって……回転し始める……。

 

「敵艦健在!!!!!」

 

通信士の悲鳴のような声があがる。

 

「ま…全く効いていないのか?…………ば、化け物めぇぇぇぇぇぇぇ」

 

戦艦グレードアトラスターの46cm砲9門の至近距離からの一斉射により、レイフォル艦隊最後の戦列艦ホーリーは、この世から消滅した。

 

 

 

 

 

「・・・降参の後に砲撃とは……。列強といっても、この程度か…ちょっとお仕置きが必要なようだな……。残弾は?」

 

「各砲門70発程度です」

 

「そうか…。敵の首都は、海に面していたな?」

 

「はい、ここから東へ350kmほど先ですが……。」

 

「砲撃でお仕置きだ」

 

「了解」

 

翌日、レイフォル国の首都 レイフォリアは、僅か数時間という時間の間で戦艦グレードアトラスターの全弾射撃によって、灰燼に帰した。

皇帝は死亡し、軍は降伏、グラ・バルカス帝国は、レイフォルを自国領に編入、入植が始まることとなった。

戦艦グレードアトラスターは、たった1艦でレイフォル艦隊を撃滅し、その足で、レイフォル首都 レイフォリアを焼き尽くし、降伏に追い込んだ世界最大最強の船として、恐れられる事となり、伝説となる。

この世界の歴史にとって、それは激震となった。

 

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