海を進む輪形陣の艦隊陣形で進む艦隊があった
中央には大型客船が2隻、その周りにはアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦4隻、ビアトリクス級駆逐艦4隻と合計10隻の編成で航行していた。
この艦隊は第三文明圏の2カ国と国交を締結させるための外交団を乗せた遠征艦隊であった。
本来であれば、護衛のみであれば沿岸警備隊か、2隻ほどの駆逐艦で十分ではあるが、異世界の事情から万一を考慮し、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦と最新鋭のビアトリクス級駆逐艦8隻も同行していた。
ビアトリクス級駆逐艦は2027年度以降に就役した新型ミサイル駆逐艦、本級はズムウォルト級駆逐艦が実質的に失敗作であること認識していたアメリカ海軍や政府は拡張方針である対中戦に備え、設計から更に発展させた結果ビアトリクス級はデザインこそ似ているが、中身が全く異なるミサイル駆逐艦となった。
ズムウォルトは本来の求めた性能は自分に迫るあらゆる攻撃目標をデータリンクと圧倒的ミサイルで防御し、主砲と対地ミサイルによる地上支援、攻撃を行うことこそがコンセプトであった
しかし、改装されたコンセプトは対地攻撃を主眼とし、あらゆる物量攻撃に対し適切な対処をするために艦隊防空、対潜、対艦攻撃を可能とするミサイルを搭載、ステルス性を活かした先制攻撃を目的とした。
そのため、最も問題であったTSCEI(Total Ship Computing Environment Infrastructure)次世代アメリカ海軍戦闘艦の標準型戦闘システムの技術的問題は2026年、AI技術向上や画期的戦術システムの開発によってコストが従来よりも下がったことで実現できたというのも実現可能となったポイントと言える。
他にノースロップ・グラマン社が開発していたMFEW(Multi Function Electronic Warfare)システムも搭載された。
搭載する兵装も
AGS 155mm砲2基、LaWS2基、Mk.57 VLS、スタンダードSM-2、ミサイル防衛用のスタンダードSM-3、対地攻撃用トマホーク、対潜戦用の垂直発射式アスロック(VLA)、20mm機関砲2基、無人機電子妨害用ミサイルECMMなどアーレイ・バーク級駆逐艦とは全く異なった駆逐艦となった。
一言で言えばアーレイ・バーク級駆逐艦は艦隊防空を主任務とする場合、ビアトリクス級駆逐艦は1隻で物量攻撃や対地・対艦攻撃を主任務とする艦艇と言えた。
さらに次々と登場する新型無人機に対し、自由電子レーザー兵器も搭載している。
そんな最新鋭艦隊でまとめられた理由には、外交においてロウリアのように舐められないようにわざと最新鋭艦を多く配置した
新世界では魔法やドラゴン、海獣なども存在する中ではあらゆる不測の事態に対処できるように過剰なまでに配置したとも背景にある。
客船の中ではそれぞれ担当する外交官たちや政府関係者が乗船しており、それぞれで話していた。
「まったくわざわざ国交を結ぶだけで我が軍の最新鋭艦を引っ張り出すとはな…」
「そうですかな?私は我が国の最高のボディーガードがいて満足しているがね……それにビアトリクス級は確かに最新鋭ではあるが、我が軍にはもっと新型艦があるはずだが?何でしたかな、クリミ…なんとかと言う戦闘艦だったな?」
「ヘンリー外交官、あの戦闘艦のことは機密ですよ
確かにこの世界でどんな事態が起きるのか、予測不能ですが、相手は中世の国家ですぞ?過剰と思いますがな」
「おやおや、君がそんなことを言うとはね、だが、今回の相手は文明圏の中でも列強国というらしいじゃないか
それなら我が国を舐められないようにしっかりと国交を安全に締結させるためには必要なことです。
この世界の列強も科学技術は進歩しているようですが、我が国から見ればまだまだです。
同時にこの世界は野蛮な国が多すぎる。
それなら相手と友好的に掴めるか、わからない状態で何も準備をしていないで進めるのは危険だろ?」
政府関係者はそのことを聞くと沈黙していたが、それでも少し不満があった。
相手と国交を結ぶのに砲艦外交マネなんてせずとも…
なんだか、歴史が150年前に戻ったようだ
しかし、この方針が後に間違っていなかったことが後に証明されるのであった。
当初、砲艦外交に議会は反対する声も上がっていたが、ロウリアの事例もしかり外交官の安全、あらゆる事態に対応するために必要性が高まったため議決された
現在、第3文明圏の中でも列強国であるパーパルディア皇国とそこから東側約210kmの位置に、縦150km、厚さ60kmの、まが玉を逆にしたような形の島国、フェン王国だ。
アメリカ合衆国から8900Km位置する国家
アメリカも列強国との繋がりを求めるためにパーパルディア皇国へ外交団を派遣した。
しかし、彼らの努力がある出来事で全て水の泡となるのはフェン王国にフェン王国外交団が着いてしばらくしてからだ。
パーパルディア外交団が目的地で到着するとそのままパーパルディア皇国の外務局へ馬車で向かった。
外交団たちは初めて乗る馬車にお尻を痛めながら到着するとそこにはイタリアのローマにあるような豪華な建造物が並んでいた。
パーパルディア皇国の外務局は3つの種類に分かれ具体的には
第1外務局は、皇宮の内部に位置し、第3文明圏の5大列強国のみを相手として外交を行う。
対外関係に細心の注意が必要であり、高度な政治判断が求められ、勤務員はエリート中のエリートである。
第2外務局は、皇宮の外側に位置し、列強国以外の文明圏に属する国家を相手にする。
国力を後ろ盾にし、無理な要求を押しつつ、国益をいかに引き出すかが求められる。列強保護国もいるため、一方的に高圧的に出るわけにもいかず、高度な判断が求められる。
エリートが属する。
第3外務局は文明圏以外の国、いわゆる蛮国相手の仕事である。
いかに高圧的に出て、相手から絞りとれるかが試される。
蛮国は量が多いため、外務局人員の6割がここに属する。
独自の皇国監査軍と呼ばれる軍に命じ、懲罰行動を行わせる権限を有する。
外務局というものは大きな権限が与えられた部署でもあった。
ある一室ではある男が怒鳴り散らしていた。
「皇国監査軍東洋艦隊はどうなっている!!!出港したのだろうな!」
「は、はい…只今出港したと連絡が…」
「よし、フェン王国に目にものを見せてやるのだ、あの国は我が国の『慈悲』とも言える租借案を蹴り、このパーパルディアの顔へ泥を塗ったのだ、絶対に成功させろ、いいな?」
「は、はい!!!!」
外交団も到着すると第3外務局へ誘導され、内容を伝えると受付担当官が出てきて、外交官と話し合いをしていた。
「無理ですね、局長様は只今別件で忙しいですので、手続きが済むまでお待ちください…それにあなた方の要求内容を拝見しましたが、あまりにも高度と言いますか、ハードルの高い内容が記載されておりますので」
「どういうことですかな?」
「例えばあなた方は……対等的通商条約や法外法権を認めないというのは難しいものですから」
「それがなぜ、難しいのですか?国と国の間では通常のことでは?」
「……我が国は列強国ですよ?それをご存知で言っておられるのですかな?」
受付担当官はため息を吐き、態度を強めた
「いいですか、今、世界において、治外法権を認めないことを我々が了承している国は、4カ国のみです。つまり、列強国のみなのです」
話は続く
「列強国でない、まして文明圏にも属していない、国際常識すら理解していないあなた方の国が、治外法権を認めない、対等の国として扱えとか、列強国のごとき要求をしている。…課長はあと2週間くらい後には空きますので、あと2週間待って下さい。ただ、私としては、これはかなりハードルが高いと言わざるを得ませんので考え直すことをお勧めしますよ」
これにアメリカ側は表情には出さないが、内心怒っているものもいた
「そうですか、では我々はまた、2週間後ほどそちらへ出向きます。」
と言うと外交団たちは客船へ帰っていったのだ。
「・・・なんですかね、あの態度は」
「分かっている、だが、これでも中世のヨーロッパと変わらない世界では仕方のないことだ。耐えろ…」
場所は変わって、フェン王国外交団ではフェン王国、首都アマノキに到着した町の風景や天守閣を備える城に懐かしさを覚えていた。
「オーマイガ……まさかジャパンと同じ文化を持つ国家と出会えるとは」
「oh……タイムスリップしたみたいだ」
「こいつはジャパニーズのEHIMEじゃないか!」
外交官たちが日本の江戸時代のような風景に魅了されているのと同時にフェン王国でも話題となっていた
フェン王国外交団を護衛するのはアーレイ・バーク級駆逐艦2隻とビアトリクス級駆逐艦3隻だからだ。
上空にはドラゴンも飛んでいて、見たことのない巨大な船に興奮している者もいた。
外交官たちはそのまま小型ボートで港まで行き、城まで向かった。
今日ではフェン王国が5年に1回開催する「軍祭」が行われるため、その親善として、3騎の竜が上空を飛ぶ。
軍祭は、文明圏外の各国の武官も多数参加し、武技を競い、自慢の装備を見せる。各国の、軍事力の高さを見せる事により、他国をけん制する意味合いもある。
文明圏の国も呼びたいが、「蛮国の祭りには興味が無い」のが本音らしく、「力の差を見せ付けるまでもない」といった考えもある。
上空を飛んでいた風竜に乗る兵士は眼下に見える巨大な灰色の船5隻と、巨大な黒と白の船が見える。
この艦隊はどうやら東の国、アメリカとかと言う名前の新興国家らしい。
周辺の他国もその巨大な船に圧巻された。
「まぶしいな…」
相棒の風竜が話しかけてくる。
風竜は知能が高い。
「確かに、今日は快晴だ」
太陽がまぶしく、雲の少ない日だった。
「いや、違う。太陽ではない。あの下の灰色の船から、放射線状の光が様々な方向に高速で照射されているのだ」
「船から光?何も見えないが」
「フッ……人間には見えまい。我々が遠くの同胞と会話をする際に使用する光、人間にとっては、不可視の光だ。何かが飛んでいるか、確認も出来る。その光に似ている」
「飛行竜が判るのか?どのくらい遠くまで?」
「個体差がある。ワシは120kmくらい先まで判る。あの船の出している光は、ワシのそれより遥かに強く、そして光が収束している」
まさか・‥…。
「まさか、あの船は、遠くの船と魔通信以外の方法で通信したり、見えない場所を飛んでいる竜を見ることが出来るのか?」
「あそこにいる6隻すべてがそのようだな……それにどうやらあのヘンテコな形をした船はワシが出す光を吸収しているようだ、あの艦隊は魔法ではなく何か別のもので動いているようだ。」
「す、すごいことだね…」
「ああ……とんでもない国なのかもな」
「アメリカか…すごい国だ」
上空では、このような会話が行われていた。
アメリカ海軍ビアトリクス級駆逐艦マイケル・モンスーア
「おいまじかよ……あのドラゴンで間違いないのか?」
「はい、間違いありません…生物からレーダー波に似た電波を発信させることなんてあり得ませんが、あのドラゴンから来ている電波は航空機の電子機器にも通用します。」
「信じられんな…。」
「これは帰ったら報告しなければならないことが増えましたね」
異世界で人工的にではなく、生物から電波を発信させるレーダー機能を備えていることで、アメリカ軍上層部はレーダー機能を備えたドラゴンを大陸国や文明圏列強などが大量に配備している可能性があると見て、魔法戦術を考慮した対異世界戦術を強化させるのと同時にステルスミサイルや対魔術戦闘兵器開発が進められるのだった。
一方フェン王城
「剣王、アメリカという国が国交を開くために交渉したいと参っております件はいかがいたしましょうか?」
通常の執務中、王の側近である剣豪モトムが話しかける。
「アメリカ?ああ、クワトイネ公国の大使から情報のあった、ロデニウス大陸の東方にある新興国家か。あの辺は、小さな群島で、海流も乱れていた…。
各島の集落が集まって国でも作ったのか?」
剣王は、小さな国をイメージしていた。
「いえ…それが…。アメリカが言うには、アメリカだけで人口3億8千万人いるそうです…」
「は?…今何と言った…」
「あ、アメリカの外交官からの情報ではアメリカ合衆国の人口3億8千万人はいるとのことです…」
「3億!?3億8万人!??そんなバカなことがあるか!!!
もし、それが本当なら世界の半分以上の人口が存在していることになるぞ!!!」
剣王は全く信じていない。
「それが…クワトイネ公国経由の情報でも、同様の情報があります。両国とも、すでに国交を結んでおり、すでにそこにあるのは群島ではなく、一つの巨大な大陸から、列強をも超える超文明を実現していると……。」
「……列強を超えるのは、言い過ぎとしても、クワトイネ公国がそこまで褒めるのであれば、それなりの国家なのだろうかもな
剣王と他の側近はアメリカの外交官と会うことにした。
「これはかつての日本の数百年前のような光景だな…」
「セオドア外交官、これは身を生き締めないといけませんな…」
「ああ、精神意識も日本人と同じと言うのなら付き合いやすい、そうであることを祈るか…」
今では同盟国日本も一緒に転移しなかったが、セオドア個人としては日本も一緒に転移して欲しかったと思っていた。
日本はアメリカに依存していた分、アメリカも日本に依存していた。
例えば日本製の精密機械は一部にも米国の生産される電子部品に使用されている。
アメリカ人にも日本文化(主にアニメ・漫画・ゲームなど)を積極的に取り入れる現代のジャポニズムも2023年から大流行した、一部の国民は日本も一緒に転移しなかったことに絶望したものもいる。
当然、転移した外国人の中にも日本人も絶望した人も多くいた。
この国にはそんな日本に存在する文化と非常に酷似しており、全体の文明力は低い。
だが、国民の精神レベルは高く、街中でも例え貧しくても、挨拶するほど礼儀が正しい。
そんな国民性を見て、外交団は日本のような印象を抱いていた。
「剣王が入られます」
声があがる。外交官は立ち上がって礼をする。
「そなた達が、アメリカ合衆国の使者か」
剣王は浴衣のようなデザインの服装と身体がピタリと揺れてない様子
(あの王…重心が全く乱れていない上、常に精神を尖らせている…かなりできるな…)
とボディーガードとして付いていた海兵隊アレン上等兵は思った。
「はい…貴国と国交を開設したく思い、参りました。ご挨拶として、我が国の送り品をご覧下さい」
剣王の前に並べられたアメリカの陶磁器や高級服、超高級品の指輪・ネックレス、ワイン
剣王は今まで見たことのない正確に作られた陶磁器や高級貴金属品などに興味を示し、ヨーロッパの有名なマイセン陶磁器にも劣らない品質を持つティーカップや皿を見ると魅了された。
ティーカップや皿、ガラス製品には動植物や建造物の絵が描かれ、陶土の色や釉薬は非常に綺麗な白色、青磁などが含まれていた。
余談だが、アメリカにはヨーロッパから入った文化の中で陶芸はアメリカで採掘される土などを使用した独自のアメリカの陶磁器も存在する。
「これは美しい……」
事前に聞いた、アメリカからの提示条件と、アメリカからの書類に間違い無いか確認する。
「失礼ながら、私はあなた方の国、アメリカを良く知らない」
話が続く
「アメリカからの提案、これはあなた方の言う事が本当ならば、すさまじい国力を持つ国と対等な関係が築けるし、夢としか思えない技術も手に入る。我が国としては、申し分ない」
「それでは…」
外交官の顔が明るくなる。
これで国交が無事締結される可能性が高いからだ。
それを遮って剣王は話す。
「しかし、貴国が国ごと転移する話や巨大な建造物どれも信じがたいものばかりだ。」
「…それは、我が国に使者を派遣していただければ」
「いや、我が目で見て確かめたい」
「え?…と、言いいますと?」
「貴国の実力を見て見たい」
!!!!???
「ちょうど確か港に水軍の船があったな?今年我が国の水軍から廃船が4隻ほど出る。その4隻を標的艦として攻撃して見て欲しいのだ。」
剣王は暗に実力を見せろと言ってきた。
これにアメリカ側はまさか相手から「実力を見せろ」と言われるとは思っておらず、外交としてはどうだろうか?と思っていたが、護衛として連れてきたアーレイ・バーク級やビアトリクス級を見せるのに手っ取り早いと手段と考慮し、承諾されたのだった。