星と楓の異世界戦記(旧 2019年打ち切り)   作:ミュラ

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19迫る悪意

 

フェン王国首都アマノキ沖

 

 

 

そこにはアメリカのフェン王国外交団を護衛する5隻の駆逐艦が浮かんでいた。

 

「あれがアメリカの水軍か…マストも大砲も見えない船もあるがあれで戦えるのか?」

 

剣王シハンは直角的なデザインを持つビアトリクス級に対し、巨大な四角い形状に興味を抱いていたが戦闘能力があるとは思えなかった。

 

剣王だけではなく側近や軍事関係者も同じ印象を抱いており、むしろアーレイバーク級駆逐艦の方が城のように見え、強く見えた

本当はビアトリクス級の方が戦闘能力は上だが、現代兵器というものを知らないフェン王国側は何も口が出なかった。

 

「いやはや、クワトイネ公国から事前情報として聞いてはいましたが、これほどの大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは…。」

 

騎士長マグレブが同意する。

 

「私も数回、パーパルディア皇国に行った事がありますが、これほどの大きさの船は見た事がありません。」

 

「剣王、そろそろ我が国の廃船に対するアメリカの艦からの攻撃が始まります。」

 

剣王シハン直々に、アメリカの外交団に頼んだ

 

〔是非ともアメリカ軍の力を見せてほしい〕

 

その回答が今出る。

駆逐艦のうち四角いデザインを持つ船の艦首に付いている四角い箱が動く

 

「なんだ?あの箱は……?」

 

と思って片方だけの望遠鏡で観察する

 

アメリカの船から煙が吹き出る、僅かな時間の後、音が聞こえる。

ダン・‥…ダン・‥…ダン・‥…ダン・‥…

4回

直後、標的船は猛烈な爆発を起こし、水飛沫をあげ、船の残骸が空を舞う。

標的船4隻は、爆散、轟沈した。

 

「な!?どうやって攻撃したというのだ!?……大砲らしきものは見えなかったぞ…」

 

「わ、私もです…」

 

剣王シハン以下フェン王国の中枢は、自分たちの攻撃概念とかけ離れた威力を目の当たりにし、唖然としていた。

1隻からの攻撃で、4隻をあっさり沈める。しかも、とてつもない速さの連続攻撃で沈めた。列強パーパルディア皇国でも、そんな芸当は出来ない事をここにいる誰もが理解している。

 

「ふふふ……すぐにでも、アメリカと国交を開設する準備に採りかかろう。不可侵条約はもちろん、出来れば安全保障条約も取り付けたいな…。」

 

剣王は満面の笑みで宣言した。

剣王たちと外交団で準備を進めている間、イージス艦ジョージ・ロブソンのモニターを見ている乗員が西から近づく飛行物体の接近に気づいた。

飛行物体は350kmほどで、20機接近してきた。

 

「これは…CICから艦橋へ対空レーダー探知、西方から接近してくる飛行目標を探知。時速350Km、20機ほどです。」

 

「西は確かパーパルディア皇国という国があったな」

 

「はい」

 

「フェン王国の軍祭に招かれているのか?」

 

「わかりません、確認を取ります。」

 

その飛行物体はフェン王国首都アマノキ上空に至ったが、王国からの返答は無かった。

 

 

パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード部隊20騎は、フェン王国に懲罰的攻撃を加えるために、首都アマノキ上空に来ていた。

 

 軍祭には文明圏外の各国武官がいる。その目前で、皇国に逆らった愚か者の国の末路はどうなるか知らしめるため、あえてこの祭りに合わせて攻撃の日が決定されていた。

これで、各国は皇国の力と恐ろしさを再認識することだろう。そして逆らう者の末路、逆らった国に関わっただけでも被害が出ることを知らしめる。

 

ガハラ神国の風竜3騎も首都上空を飛行している。

風竜が皇国のワイバーンロードを見ると、ワイバーンロードは、不良に睨まれた気の弱い男のように、風竜から目を逸らす。

 

「ガハラの民には、構うな。フェン王城と、そうだな…あの四角い船に攻撃を加えろ!!」

 

ワイバーンロードは上空で散開した。

複数のワイバーンロードはアメリカ海軍のビアトリクス級に向けて急降下を開始する。

 

 

 

 

西側から飛行してきた、ワイバーンと呼ばれていた竜は、隊を2つに分けフェン王国王城に向け、急降下を始めた。

 

「おいおい…何のデモンストレーションだ!?」

 

誰もが疑問に思った時、急降下していた竜が口を開け、口内に火球が形成され始める。

 

「!!!!!!!!!!!」

 

 次の瞬間、10騎のワイバーンロードから放たれた火球は、王城の最上階に着弾し、木製の

王城は炎上を始める。

 

「!ジョージ・ロブソンへ謎の飛行物体が王城へ突如攻撃を加えた!他国か武装勢力と思われる!厳戒態勢!」

 

「了解!機関始動!戦闘システムを攻撃モードへ」

 

『イエッサー!』

 

「!!!!!本艦にワイバーン10騎が急降下中!!!」

 

イージス艦ジョージ・ロブソンの艦橋で悲鳴に似た報告があがる。

 

「いかんっ!迎撃用意!!!」

 

「了解!対空戦闘用意!」

 

 次の瞬間、パーパルディア皇国の皇国監査軍東洋艦隊所属のワイバーンロード10騎は、直下約500m付近にイージス艦ジョージ・ロブソンに向かい、導力火炎弾を放出した。

 

「迎撃するぞ!目標群β!LaWS起動!」

 

「了解!LaWS迎撃開始!」

 

ジョージ・ロブソンの後部に搭載しているLaWSが装甲板から顔を出し、頭上から降り注ぐ火炎弾へ照準する

次々と降り注ぐ火炎弾から直撃コースの目標をTSCEIが瞬時に選別し、レーザーを照射した。

レーザーは現代のような目に見えない光線ではなく、船から一瞬光の光線が放出された。

放出されたレーザーは火炎弾に見事に命中し、全てをあっという間に迎撃した。

レーザーエネルギーと火炎弾が持つエネルギーが衝突したため赤い色の光となって消える。

 

 

「全ての火炎弾、迎撃成功しました!」

 

「よし、頭上で飛ぶじゃじゃ馬どもをミンチにしてやるぞ!奴らに海軍式の礼を見せてやろうじゃないか!」

 

「イエッサー!!!!!」

 

すると攻撃目標は瞬時に他の艦にもデータリンクとして情報が伝わり、それぞれが攻撃目標を選択する。

 

 

「何!!迎撃しただと!!?」

 

 急降下から、水平飛行に移行したワイバーンロード10騎は、必中タイミングで撃ったにもかかわらず、そのほとんどを謎の光線が出たと思ったら、迎撃した。

 

「も、もう一度だ!大砲もマストも付いていない図体がデカイ屑船を沈めるぞ!全騎突撃!」

 

 ともう一度攻撃するためにワイバーンロードは再び上空から急降下した。

 

 

各駆逐艦は、護衛艦隊へ攻撃された時点で、「敵」として認識し、攻撃へ移る。

イージス艦の主砲が上空に展開する「敵」へ向く。

ビアトリクス級駆逐艦からも155mm主砲もステルスモードから解除し、それぞれに照準される。

各駆逐艦で的が重ならないように、振り分けられる。

FCS射撃管制システムにより、敵との相対速度が計算され、飛行する敵の未来位置で迎撃できるよう、寸分違わず、主砲の砲身が上空を向く。

 

次の瞬間、各駆逐艦の主砲が炸裂し、上空にいたワイバーンロードはすべて消滅した。

その間僅か5秒足らずでほぼ神業のように20騎のワイバーンロードは竜騎士ごと爆発した。

空に20個の黒い花が咲く

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

剣王シハン及びその側近たちは、開いた口が塞がらなかった。

ワイバーンロードは、間違いなくパーパルディア皇国のものだろう。

我が国が、ワイバーンロードを追い払おうと思ったら、至難の技だ。

1騎に対して一個武士団でも不足している。そもそも、奴らは鱗が硬く、弓を通さない。

バリスタを不意打ちで直撃させるか、我が国に伝わる伝説の剛弓、「ベルセルクアロー」を使うしか無いが、ベルセルクアローは弓本体が硬すぎて、国に3名ほどしか使える者はいない。

戦闘態勢にあるワイバーンロードを仕留めるのは、事実上不可能に近い。

文明圏外の国で、1騎でもワイバーンロードを落とすことが出来れば、国として世界に誇れる。

我が国は、ワイバーンロードを叩き落すことが出来るほど精強であると…。

 

 それを、アメリカは、いともあっさりと、怪我をして動けなくなったハエを踏み潰すかのように、自分は怪我を負わず、列強の精鋭、ワイバーンロード竜騎士隊を20騎も叩き落してしまった。

 

アメリカは文明圏外の武官が集まっている軍祭で、各国武官の目の前で、各国が恐れる、列強パーパルディア皇国の精鋭ワイバーンロード部隊を赤子の手をひねるように、叩き落とした。

歴史が動く、世界が変わる予感がする。

ワイバーンロードは、おそらく自分たち、フェン王国への懲罰的攻撃に来ていたのだろう。

アメリカをこの紛争に巻き込めたのは、天運ではなかろうか・・・。

「は、はは、ははは…」

 

剣王シハンは、笑いながら燃え盛る自分の城を眺めていた。

 

神は私たちを見捨ててなかった…これなら勝てる…!

 

 

『すごいものだな…あの船は…』

 

風竜は感嘆の声をあげる。

 

『あの船から、トカゲどもに、人間にとっては不可視の光を浴びせ、船の砲はそこから反射する光の方向を向き、トカゲどもの飛行する未来位置に向かって撃っている…あの光線も我らが出す火炎弾よりも高温で早い……あの船は、見た目以上の技術の塊だな』

 

「そ…そうなのか?そんなにすごいのか!?」

 

『古の魔法帝国の伝承にある、対空魔船があるが、あの船はそれ以上なのかもしれないな』

 

「え?そんなにすごいのか…。帰ったら報告書が大変だな」

 

『特にあの四角い船からは不可視の光はあの2隻の城のような船よりも強く、正確だ…あんなことは我らでもとても不可能だ』

 

「風竜でも不可能なことを人間が!?」

 

『どうやら、想像を絶する船を作り出したようだ…あのアメリカとやらは…しかもあの艦隊からは魔力が一切感じられなかった』

 

「!?」

スサノウは絶句する

魔法を一切使わないで正確に対空目標を撃墜することなんて神でもない限り無理だ!

一体何者だ、あのアメリカという国は…

 

『魔力を一切使わず、技術のみで不可視の光を当てるとはあの国に興味が湧くな…』

 

 上空では、ガハラ神国の風竜騎士団長スサノウと風竜の間で、そんな会話が行われていた。

 

 

 

 パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊をあっさりと片付けたアメリカ海軍の活躍を見て、文明圏に属さず、軍祭に参加した各国武官は放心状態となっていた。

 

「な…なんだ!!!あの凄まじい魔導船は!!!」

 

「なんという恐ろしい力だ!!常軌を逸しているぞ!!」

 

「あの列強ワイバーンロードをあっさりと叩き落とした!!いったい…何なのだ!あの船たちは!!」

 

「アメリカという新興国家らしいぞ」

 

「まさか…古の魔帝の流れを汲む者たちでは!?」

 

 海岸から海を眺めていた文明圏外の国々の武官たちは、自分たちの常識とかけ離れた力を持つ灰色の巨大船に恐怖を覚えると共に、味方に引き入れる事は出来ないかを考え始めていた。

パーパルディア皇国を遥かに超える力を…もしかしたら、あの船の国は持っているのかもしれない。

フェン王国の軍際に来たのであれば、フェンとは友好関係にあるという事だ。

フェン王国と良好な関係を築き、あの船の国と仲良くなれば、もしかしたらパーパルディア皇国の属国化を防げるかもしれない。

奴隷としての国民の差出や、領土の献上等、もしかしたら…。

 

 フェン王国がパーパルディアの領土租借案を蹴った時は、フェンが焼き尽くされるのではないかとも思ったが、あの船の国と友好関係にあるのであれば、フェンが強気に出るのも理解できる。

 

後にフェン沖海戦と言われた海戦後、文明圏外の国を中心に、アメリカへ、旧ロウリア領バートニア州へ多数訪れることになった。

 

 

 

 

 

 パーパルディア皇国、皇国監査軍東洋艦隊竜騎士レクマイア

フェン王国懲罰の命令は、簡単な仕事だと思っていた。

栄えある列強パーパルディア皇国のワイバーンロード部隊にかかれば、フェンのような蛮族の国など、自分1騎で1個騎士団を相手にしてもおつりが来る。

軍祭などという、各国武官や船まで招いての祭りが行われているのであれば、蛮族どもにパーパルディアの力を再認識させる機会にもなる。

フェン国という蛮国に、パーパルディアに反目する国の祭りに参加していると、痛い目を見るということを解らせるために、目立つ四角い船を狙った。

しかし、その船は必中距離で放った導力火炎弾のほとんどを、見たことがない光線で迎撃してきた…

その光は弓をも跳ね返すワイバーンロードの硬い鱗を引き裂き、相棒に大きな傷を負わせた。

自分は海へ落下し、海上から上空を見上げたところ、仲間たちはさらなる悲劇にみまわれていた。

仲間たちは、他の超巨大船から放たれた大砲によって、木っ端微塵に吹き飛ばされていた。

 

大砲が空を飛ぶ物に当たるということも、理解しがたい現実であるし、この世で自分たちの敵となりうる存在は、列強しか無いと思っていたが、自分たちがなすすべもなく破れた相手に興味も持った。

 海に浮いていると巨大な船から黒いボートが出てきて、それがものすごい速度で自分に近づいた後、自分は降伏し、何かを投げてくれて、そのまま救助された。

 

 

「竜騎士隊との通信が途絶しました」

 

!!!!!!!!!

艦隊に衝撃が走る。

 

「いったい何があった…。」

 

提督ポクトアールは嘆きたくなった。いやな予感がする…。しかし、これは第3外務局長カイオスの命令である。

国家の威信をかけた命令である。

実行しない訳にはいかなかった。

皇国監査軍東洋艦隊22隻は、フェン王国へ懲罰を加え、今回ワイバーンロードを倒した皇国にたてつく者に対し、各国武官の前で滅するため、風神の涙を使用し、帆をいっぱいに張り、東へ向かった。

 

アメリカへ襲いかかる戦火は広がろうとしていた。

 

そんなことも知らずパーパルディア皇国へ外交団護衛艦として回されていた艦隊は駆逐艦ばかりであったが、水上艦だけではない。

皇国監査軍東洋艦隊の後を追う海底に潜む巨大な鉄の塊

それは鋼鉄製の一つのスクリューで進む、海中に潜める機械の怪物が迫るのであった。

 

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