星と楓の異世界戦記(旧 2019年打ち切り)   作:ミュラ

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2未知の国家

アメリカ合衆国 首都ワシントンDC、ホワイトハウス

 

ホワイトハウスの大統領執務室で複数の政府関係者が集まっていた

その中でも窓際の高級な椅子にもたれ掛けるように金髪の痩せ形、青いスーツを身に纏う男性

 

アメリカ合衆国大統領、ハリー・ウイストン

 

彼は合衆国が転移する数ヶ月前に当選したアメリカ大統領だが、不運にも大統領として初めて転移騒動が起きたことで彼は今までにない苦難を待ち受けていた。

 ホワイトハウスの政府関係者も同様で何名も胃炎や精神病、過労で倒れていた。

 そんな彼らは転移してから数ヶ月経ったあと、調査隊を外海へ送り出し、大陸を発見、その後文明国の存在も確認された時はハリーや政府関係者は両手をあげて、歓喜した。

だが、そのあとの報告で一気に膠着する。

それは未知なる生物や文明レベルが低い国家

未知なる生物とはドラゴンだ。

ドラゴン?なぜ、架空の生物が?と最初は騒然としていたが、次々と入ってくる報告に驚愕する。

その後も調査を続行することへ方針は決まり、接触することを決断した大統領は直ちに護衛艦隊を引き連れて未知なる国家へ派遣する。

結果、その国はクワトイネ公国と言い、接触は大成功を納め、アメリカ合衆国とカナダ連邦へ使節団が派遣されることが決定された。

 

 

 

「諸君、いよいよ今週の金曜日にクワトイネ公国から使節団が我がアメリカ合衆国へ招待される。準備は整っているだろうな?」

 

「はい、歓迎の準備は整っております。

今回のクワトイネ公国と後に派遣される予定のクイラ王国の使節団には我が国の文化や経済力、軍事力を見てもらい友好国になってもらうため最大限の歓迎をさせてもらいます。」

 

「うむ…彼らには我がアメリカ合衆国とカナダ連邦にとって友好国となってもらう国だからな、異世界とはいえ、貴族を相手にするのは少々骨が折れるかもしれん、CIAからは?」

 

「はい、クワトイネ公国ならびにクイラ王国は第一陣報告書でも記載がありましたように人種に関してはほとんど白人が占めており、東洋人・黒人などの人種は極めて少数であります。

政治体制・経済・流通・生産体制は異世界報告書の4ページに書かれております。

 

CAIと海兵隊武装偵察隊などが調査した結果、中世ヨーロッパ時代に非常に酷似しており、政治体制も絶対王政が主流です。

この世界では文明圏以外の国家を蛮地か蛮族と評価されることが一般的ということで、我が国を蛮国と評価する人々もいるくらいです。

商人からの情報では文明圏は遥かに発達した文明を持っていると聞いております。

文明圏も第1・第2・第3文明圏が存在し、我が国が訪問した場所は第3文明圏ロデニウス大陸と呼ばれる東方に位置するようで第1・第2文明圏は遥か西側に点在していることです。

CAIや国務省としては文明圏についても近々発射される予定の軍事偵察衛星・軍事通信衛星・観測衛星などからこの星の全容を明らかにしたいという姿勢で進めております。」

 

「中世か、今後の外交方針として今まで通りで通じる相手であることを祈ろう……衛星についてもNASAと協力し、今週に第一陣で10基打ち上げる予定だったはずだ、それで多少わかるようになるだろ。

それで魔法や亜人族については、何かわかったかね?」

 

「クワトイネ公国を中心に見られるエルフ・ドワーフ・獣人族・龍人族などが確認され、彼らと友好関係を築き遺伝子情報などを解析する方針です。

魔法に関しては今の所研究成果はありません……魔法は我が国とカナダにとっても、元の世界にとってもおとぎ話でしかない力ですから、慎重に魔導師や魔法を扱う動植物を捕獲し、解析していきます。」

 

「そうか…それぞれの種族に関しては慎重に行うように、この世界では我々にどんな影響をもたらすのか、全く未知の世界だ。

今後も諸君の活躍に期待する。」

 

「はっ、ありがとうございます。全力をあげて調査します。」

 

「・・・神は我々を試しているのかもしれないな、おとぎ話にしか存在しない、ディズニーのようなキャラクターも出るとはな…」

 

「現在も調査が進められていますが、更なる発見も多く存在するでしょう、何せこの世界は未知なる異世界ですから」

 

「うむ…全く、一体全体どうなっているだが…本日の会議はここまでだ。後は5時間後に行われる国家安全保障会議にて進めようではないか」

 

「わかりました。大統領閣下」

 

大統領はコーヒーを飲みながらようやく落ち着いた首都の様子を窓から眺める。

 

 

かつておとぎ話でしか存在しなかった生物の出現、魔法…そして亞人族…彼らはまるで我々が想像するような姿ではなく、どちらかというとジャパニーズアニメに登場するキャラクターに似ている…

さらにエルフも登場するとはな…

神は我々に一体何を求める?

存在しない生物、亞人族に魔法、中世の国家が支配する世界…

 

これではまるでアニメの世界だ…一体どんな試練が待ち受けているのか想像するだけで…う…また、胃が…

 

 

 

 

 

 クワトイネ公国 外務局―――

 数多くの国とのやりとりを行うこの場所は、現在、新たに現れた新興国家、アメリカ合衆国とカナダ連邦との国交を開くための事前準備のため、使節団派遣の事前準備を進めていた。

 

「ヤゴウ!アメリカとかいう新興国家に使節団の1人として行くらしいじゃないか!うらやまいしいな。俺も行ってみたいよ。」

 

 同僚の1人が話しかけてくる。使節団派遣は、別に珍しいことではない。

数多の国が存在するこの世界では、国の主権者が入れ替わり、国名が変わることは珍しい事ではなく、中程度の国家では良くあること。

さらに、大国家が分裂して中小国になることも珍しくはない。

ただ……。

治安が悪いことが多く、使節団に被害者が出ることも珍しくは無く、使節団派遣の任務にあたることは、皆が嫌がる仕事であった。

さらに、クワトイネ公国のあるロデニウス大陸は、第3文明圏の影響を多少は受けているため、文明圏からは「蛮地」と馬鹿にされるが、「蛮地」と蔑まれる中では、かなり上位の生活レベルを維持し、食事に関しては、文明圏に負けないほどの良い食事をしている。

文化に関しては文明国レベルであると自信を持って言える。

 

 大概では使節団派遣となる対象地域は、クワトイネ公国よりも生活水準が極端に下がる場合も多く、衛生面でも問題があり、疫病に感染する使節団も多く、治安も悪いことがほとんどである。

それで使節団が常に危うい状況と隣り合わせであり、死亡する使節団もいるくらいだ。

しかし、今回の使節団が派遣される対象となる国は、色々と注目を浴びている。

派遣される使節団に配布された事前資料に目を通すと、にわかには信じられない事が記載してある。

 

 

 

 事の始まりは、中央歴1639年1月24日の朝、わが国の第六飛龍隊の騎士、マールパティマが、公国北東方面の海上を警戒飛行中に、金属で出来ていると思われる飛龍を発見、しかし、全く追いつけずに引き離されたという。

さらに、その鉄龍を迎撃するために出撃した第六飛龍隊は、ワイバーンの武器、導力火炎弾の射程に捕らえる事無く引き離されたという。

報告書では、全く信じられない事に、時速900kmを超えていたとある。

しかも、相手はこちらよりも遥かに大きいにも関わらず。

最初の海からの接触は、300mクラスという、想像できないほどの金属製の帆が無い巨大船で来たという。

そのほかにも200mという大型艦も多数見られ、どれもこれもが我が国で見たことのないものばかりだ。

 

「信じられないな…。」

 

 ヤゴウは思考を巡らす。

 

 

 ワイバーンは軍事力の中でも高い戦闘能力を持ち、ワイバーン1騎で戦局が変わるほど戦術兵器でもある。

最高の兵器であるが高価な兵器であり、竜騎士はエリート中のエリート、兵なら誰しも一度は憧れる空の覇者と言える。

歩兵よりは騎馬隊の騎士が格上であり、騎士よりも竜騎士は圧倒的に格上、ワイバーン1騎で1個騎士団を翻弄できる。

時速230kmクラスの高速で飛翔し、弓の届かない高空から、ワイバーン自身の人間とは隔絶した魔力によって放たれる導力火炎弾は、人間の作り出した武器とは比較にならない威力を有し、さらに、硬い鱗は弓をも跳ね返し、対人用の刃物を通さないほど強靭である。

 ワイバーンよりも強力な生物といえば、三大文明圏で少数作られているといわれる、ワイバーンロードくらいしか思い浮かばない。

いや、人間が制御できない存在であれば、各種属性龍や、古龍、神龍がいるが、人間が扱うのは、夢のまた夢、天災のような存在だ。

そんなワイバーンを超える「物」を実用化し、しかも異常に大きい飛行物を飛ばすなんて、第2文明圏のムーでも無理ではなかろうか。

 

しかも、それは金属でできており、中に人が乗っているとなればなおさらだ。

実物は見たことはないが、ムーでも金属は使用しているらしいが、木製と紙でできているらしく、とても、全身金属製の飛行物は到底夢の中でしかない。

 

 

中央世界には金属製の大型機も存在するとは噂であるらしいが、信じがたい…

 

 

信じられないが、アメリカの飛行物が経済都市マイハーク上空に達したのは事実であり、彼はアメリカという国に非常に興味を持ち始めていた。

 

(今回の使節団の派遣…。私は歴史に名を刻むかもしれないな…。)

 

「これより会議を始める」

 

不意に、彼の思考は号令により中断させられた。

 

 小さな会議室で、使節団の団長が説明を始める。今回派遣される使節団は5人、全て外務局の肩書きがあるが、軍務局の将軍ハンキも外務局への出向という形で、使節団に入っている。

団長が話し始める。

 

「今回の我々の一番の目的は、アメリカが我が国の脅威となるかを判断する事にある。知ってのとおり、我が国の防空網がアメリカの鉄龍によってあっさりと破られた。

今のところ、我が国に鉄龍を防ぐ手段は無い。

現在アメリカは我が国と国交を結びたいとの意思を示しているが、何を考えているのか解らないというのが正直なところである。

覇権国家なのか、もしくはロウリアのように亜人に対して極端な差別意識を持っているのか、何のために我が国と国交を結ぼうとしているのか、真意を調査する必要がある。

 のちにカナダ連邦というもう一つの国家も訪問する予定だ。」

 

皆が頷く

 

「アメリカ・カナダがどの程度の国なのかは不明だが、技術の高い軍事力を持っていると思われる。理解しているとは思うが、毅然とした態度で接することも必要だが、相手を刺激しないように、言動には十分配意すること。

 あと1点、アメリカは何が強くて何が弱いのかを調べ、我々が彼らに対して優位に立てる部分を探してほしい。

それでは、皆に配布されたレジュメを見てほしい」

 

新たに配布された資料に目をとおす。

 

使節団の片眉毛がつりあがる。

 

・・・・・国ごと転移??

 

説明が始まる。

 

「驚いたと思うが、彼らの言い分によれば、国家ごと突然この世界に飛ばされたと言っているそうだ。真意はなんともいえない」

 

 たしかにそうだ。アメリカ・カナダの主張する国土のある位置は、群島はあれど、海流や風が乱れる海域であり、かつては無人だった。

 いきなり新興国家が出来上がったとしても、突然の高度文明が育つとは思えない。

 

国ごとの転移か…まるで、ムーの神話みたいだ。

 

第2文明圏の列強国、ムーには、1万2千年前に「大陸大転移」が起きたといわれる神話が残っている。

正式な当時の政府記録として残っており、ムーの人々は信じているが、他の文明圏の人々は、ただの御伽噺として認識していた。

 

「アメリカ側の説明によれば、レジュメのとおり、今回はアメリカが移動手段と船舶を提供する。

出発は1週間後の昼、みな準備をしっかりしておくこと。

 そして、出発から5日後の夕方にはアメリカの西側に位置する都市、ロサンゼルス市に上陸し、宿で3泊する。ロサンゼルス市の宿で、アメリカで行動する上での常識を教えこまれる。アメリカの国務省によれば、アメリカの常識を知らずに勝手に外出すると、車と呼ばれる馬車のようなものに、踏まれて死んでしまう可能性があるらしい。

 上陸から5日後の昼には、ロサンゼルス市を出発、国内線の飛行機と呼ばれる輸送システムで、その日の夕方にはアメリカの首都ワシントンDCに付き、翌日アメリカ合衆国政府の人間と会談が行われる」

 

・・・・・?

おかしい、時系列がおかしい。配布資料によれば、出発から2日後の夕方にはアメリカの西側に位置する都市にたどりつくとある。しかし、アメリカとクワトイネ公国は、9000km以上の距離がある。船でたった2日で到着する距離ではない。

さらに、ロサンゼルス市からワシントンDCまでの距離も、4200kmを軽く超えているにもかかわらず、5時間ほどで到着予定とはどういった事だろうか。

ワイバーンを例え使用したとしてもワイバーンは最強兵器とはいえ、あくまでも生き物であるため途中で休ませるなど休息は必要である。

それで大体7日以上といったところだ。

 

 我が国の上空に現れた鉄龍でも、4200kmを超えるのは難しいはず、国内線は、飛行機で移動すると、配布資料にはある。

 

どうやら、我々の常識が通用しない国のようである。

 

会議は終わった。

 

1週間後―――

 

使節団の面々は、クワトイネ公国で一番大きいマイハーク港に集まっていた。

 

雲は高く、きれいな青空が広がり、少し涼しい。

 

スーツを着た男性が話し始める。

 

 「お集まりの皆様、本日は、アメリカへ使節団としてきていただけるとの事で、感謝の言葉を述べます。私は、皆様の今回の派遣を少しでも快適にお過ごしいただくため派遣された、アメリカ合衆国国務省のスミスです。

いわゆるお世話役になります。

不便な点があれば、どうぞお申し付け下さい。」

 

そんな中、1人憂鬱な顔をした使節団員が1名

 

「今から船旅か……。」

 

「ハンキ将軍、顔色が優れませんが、どうされましたか?」

 

「ヤゴウ殿、今は外務局出向の身、将軍はやめてくれたまえ」

 

「解りました。では、ハンキ様、どうされたんですか?」

 

「いや、今から船旅と思うと、気が重くてな…。船旅は良いものではないぞ。いつ転覆するかも解らないし、船の中は光が行き届かないので、暗く、湿気が多く、臭い。しかも、長旅になると疫病にかかる者も多く、食べ者が腐らないための保存食しかないため、塩辛いものしか食べられない。

  何よりも水の確保が非常に大変じゃ。喉が渇いても節約節約、まあ、今回はアメリカが5日で着くと言っているとの事なので、我慢は短くて住むが、正直5日というのは、外務局とアメリカ合衆国で、何らかのやり取りのミスがあったとわしは思っておるよ。

  ありえない速度でいかないと、無理じゃ。」

 

「私も、時系列がおかしいと思っています。ただ、鉄龍を飛ばしたアメリカであるので、もしかすると我々の常識では図ってはいけないのかもしれません」

 

間もなく時間になる。

 島の影から、島のように大きい白い船・・・?

 

 

!!!!!!!!!!!!!!!!!

でかい!しかも帆が無い!!

い、一体どのくらいの大きさなんだ!?300・・・いや、もっとか!?

船体は黒く、構造物は白と黒のラインが並び、上部の突起物は赤い…

う、美しい・・・なんて、船だ

まるでお伽の世界の城みたいだ…あんな城をアメリカは作れるというのか…

 

使節団はかつて世界有数の豪華客船、クイーンメリー2を見て、感動していた。

中には使節団を送るクワトイネ公国の政府関係者に羨ましそう目線で使節団を見る人もいた。

世界有数の豪華客船と美しさを持つクイーンメリー2は異世界の人間でも十分魅了させるほどであった

 

*クイーンメリー2はアメリカ合衆国、カーニバル・コーポレーション傘下のイギリスの海運会社キュナード・ライン社が運用していたが、2020年、船籍をアメリカへ変え、アメリカとヨーロッパを結ぶ豪華客船として運行していた。

しかし、転移後航行先を失ったクリーンメリー2は港で停泊する日々であったが、アメリカ政府が今回のクワトイネ歓迎のために急遽貸切としたのだ。

 

 

極大に大きな船は、沖合で停船した。

スミスが説明を始める。

 

「今回は、あの沖合に停船中の船に乗って、アメリカ合衆国へ向かいます。本当は、この港に直接接岸したかったのですが、残念ながら、港の水深が不足しているため、あそこに停船しました。皆様には、小船に乗って、移っていただきます」

 

やがて、その船から、小船が3隻現れ、これまた信じられない速度で港に向かって爆走してきた。

その船にも、帆は無かった。

「スミス殿、スミス殿」

 

ハンキが呼びかける。

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「あの……。あの船は、見たところ帆が無いようであるが、どうやって動いているのじゃ?小船に関しても、オールが無いようじゃが、どうやったらあんな速度で走れるのじゃ?ま、まさか、第一文明圏の魔導船みたいな物か?」

 

「第一文明圏の魔導船というのが、どういうものか存じ上げませんが、クイーンメリー2はディーゼル機関によって動いています」

 

「でぃーぜるきかん?」

 

「はい、いわゆる科学の技術です。重油を爆発させることによって、そのエネルギーを吸収し、スクリューを回すことによって、推進しています。」

 

「うーむ、科学……良く解らないが、すごいのう。」

 

じゅうゆ?すくりゅー?わからないものだ…

 

やがて、皆は小船に分乗し、大型客船に向かった。

大型客船に乗船する。

客船内部に入ると、皆が驚く、

 

明るい。光の精霊でも飼っているのだろうか。

 

「こ…この船、鉄で出来ている、いったいどうやって浮いているのだ……。しかも中が明るいし、広い。そして清潔感があり、豪華だ…」

 

こんな豪華さは王宮レベルだ・・・

 

 各々に割り当てられた部屋へ案内され、一堂はくつろぎのひと時を過ごした。

 

その日のヤゴウの日記より

 

 

 なんという事だろうか、私は驚きを隠せない。このような大きな船は、見た事が無いし、聞いたことも、文献で読んだ事もない。

しかも、中は快適で、明るく、信じられない事に、温度が一定に保たれている。

このような大きな船にも関わらず、海上を矢のような速度で進んでいく。

さらに中には様々な娯楽施設もあり、全く揺れない、私が経験した中で最も優雅で圧倒されている

このような物を作り出してしまう国、アメリカとは、いったいどのような国なのであろうか

 

 外務局の中には、新興国家の蛮国に違いないと言う者もいたが、いまのところ、言いたくはないし、認めたくもないが、彼らから我々は、蛮族に写っているのではないだろうか。

少なくともこんな巨大な船を作る国家は少なくとも蛮国ではない。

蛮国でこんな技術を有していれば今頃世界は大混乱となっているだろう

もしかしたら、アメリカは文明圏の列強国に匹敵する力を持っているのかもしれない。

 

一体本国ではどうなっているのか

 

5日後―――

 

「皆様、ロサンゼルス市が見えてまいりました。ロサンゼルス市は、カルフォニア地方、西海岸の中でも有数都市になります。あそこに見えるのがロサンゼルス港であり、ロサンゼルス港からは、リムジンバスで、ホテルまで移動していただき、アメリカについての基礎知識を学んでいただきます。」

 

ロサンゼルス港が見えてきた。人工物が広がり、高層建築物が立ち並び、都市高速が走っている。

港には大型船が出入りし、全てにおいて開いた口が閉じないほど、驚愕した。

 

やがて、リムジンバスに乗り、ホテルへ移動する。

船の上で、スミスから、車と呼ばれるものが、内燃機関によって動いているということを聞かされていたが、まさかこんなに量が多いとは思わなかった。

 

 圧倒的広大な人工物の景色に使節団は言葉を失い、ロサンゼルス市のダウンダウンLAへ近づくと今まで見たことのない高層ビル、石の建造物が並び、クワトイネ公国の首都が田舎でしかないレベルと認識せざるおえないほどの文明力

話を聞くと、国民1世帯1台は、ほぼ車を持っており、20代そこそこの日雇い労働者であってもグレードの差はあれ、車を購入する事が出来るという。

呆れるほどの豊かさ。

 

ホテルにおいて、アメリカの基礎知識を学ぶ。信号システム、自動販売機、自動改札機、鉄道システム。

彼らの説明によると、色々不思議なように見えるが、これは科学であり、仕組みが理解できれば誰しもが作れると言っている。

魔法と違い、誰でも扱うことができるという点は画期的と言えるだろう。

今まで職人によって作られる日用品や武器などはこの科学という仕組みを理解することができれば、もしかすると将来的に計り知れない国益を生むこととなるかもしれない・・・

 

なるほど、信号というのが無いと、あの車たちが好き勝手動いたら、車は動かなくなるだろう。

 

「スミス殿、スミス殿」

 

ハンキが話しかける。

 

「何でしょうか?ハンキ様」

 

「ここは、ずいぶん発展しているようだが、首都はまだ発展しているのかね?」

 

「そうですね、首都はロサンゼルスよりは規模は小さいかもしれませんが、歴史的な建造物や遺産などを見学することができ、アメリカという国を理解することもできるでしょう。

街並みもワシントンの方が自然豊かでとても綺麗ですよ。」

 

うむ…それは意外なことを聞いたな……通常、国家は首都を中心とし、栄え商業・交易などや軍事的に重要な場所などで発展するものである。

しかし、アメリカという国は少し変わった一面も持つものだな……いや、首都をあえて政府組織を中心とする街にすることで万が一侵略を受けても被害を少なくする構造なのかもしれない…

 

「スミス殿、このロサンゼルスはアメリカで最も栄えている街なのかね?」

 

「いえ、ロサンゼルス以外でもアメリカ合衆国の有数都市はいくつかあり、その中でもニューヨークが最も栄えております。」

 

な・・・だと・・・このロサンゼルスよりも大きく、栄えている街があるだと!!!!!!!????

 

この街を例え文明圏の国家が全力をあげて作り上げてもここまでの栄えた街を作るのは不可能だ!

 

何もかも次元が違う…

 

最早見た時から思っていたが、こんな国が蛮国な訳がない、下手すれば中央世界以上の文明だ…

 

 

「うーむ……。スミス殿、アメリカ軍を見学したいのじゃが、無理じゃろうか?」

 

「そうですね、少々お待ち下さい。」

 

 スミスが、光る小さな板のような物を出し、独り言を言い始める。通信用魔法具のようなものだろうか、異常に小さいが…。

 

「ハンキ様、アンドルーズ空軍基地で訓練が行われますので、それでよければ手配できますが。」

 

「おお、すまんのう、たのむ、たのむ」

 

 ハンキは、アメリカ軍見学の機会を得て、上機嫌であった。

 

「他にアンドルーズ基地に行きたい方はおられますか?来賓席を手配いたしますが。」

 

「私も行きます」

 

 ヤゴウが手を上げ、結局翌日は、ハンキとヤゴウで航空祭へ行くこととなる。

 

翌日――

 

ハンキとヤゴウは、アンドルーズ基地の来賓席にいた。

 

(正直、高速道路では、目を回しそうになったが、やっと鉄龍基地で、龍たちのデモンストレーションが見られる)

 

やがて、訓練が開始された。

 

横にいるアメリカ軍人が護衛としているが、目の前には様々な鉄龍がいた

 

 そこにはまさしく政府専用機エアフォースワンやステルス戦闘機F-22、双発戦闘機F-15、輸送機C-130などが待機しており、大中小置かれる飛行機に驚愕していた。

 

こ、こんなにアメリカ軍は鉄龍を保有するというのか!?それに大中小とあるが、それぞれに役割があるだろうか?

 

見たことがない軍用機にハンキとヤゴウは冷や汗を流しながら見ていた。

 

「ただいまより、アメリカ第42飛行団による訓練が行われます。右側の空をご覧ください。訓練中のF-15Dが3機時速900Kmで飛行してきました。」

 

!!!!!!!!!!!

 

「スミス殿!今900kmといったか?聞き間違えではないか?」

 

ハンキが興奮して話しかける。

 

「はい、時速900km言いました。」

 

右を見る。

 

無音で、飛行物は、近づいてきた。来賓席に、近づいた時、ようやく音が聞こえ始める。

 

「音速に近い!!!」

 

ハンキが吼える。

 

ゴオォォォォォォォォォ

 

戦闘機F−15Dは垂直に近いのではないかと思うほどの上昇を始める。主翼上部には一部剥離した空気が白い雲を作り、翼端では、主翼下部から上部へ回り込む空気により、白い航跡を引く。

雷鳴のような轟きがあたりを包み、エンジンの後ろからは、赤い炎が二つ見える。アフターバーナーの点火。

その飛行機は、短時間のうちに、青空に消えていった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

ハンキは絶句している。

 

「左の空をご覧下さい。先ほどのF−15Dが戻ってまいりました」

 

「え!?もう?」

 

「F−15Dは時速600kmほどで侵入し、皆様の前で旋廻します。この間、パイロットは旋回中、大きなGがかかります」

 

F−15Dは二人の前で大きく旋廻する。

 

 い、今までのワイバーンではない、ワイバーンすら可愛く見えるほどの圧倒的機動力、スピード、加速力、旋回能力どれをとってもワイバーンは追い抜くことは不可能だろう

 

「これほどの機動が可能なのか……。」

 

そのまま上昇

 

「あの体制から、これほどの上昇力があるのか」

 

「なあ、スミス殿、あの鉄龍は、とてつもなく早いが、いったいどのくらいの速度が出るのじゃ?」

 

(・・・Fー15Dの戦闘機性能は機密ではなかったな?)

 

(はい、既に書物に乗っている程度であれば問題ないとのことです。一応ホワイトハウスからは規制が掛かっておりますので簡単なものであれば)

 

「F15Dは、我が国の主力戦闘機の訓練用でありますが、速度はマッハ2.5ほど出ます。音速の2.5倍ですね。音速を超えると衝撃波がでるため、今日の飛行は、時速900kmくらいに押さえていたみたいですが」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

く、訓練用・・・これが戦闘用だとどれほど違うのか、想像すらできなかった・・・

 

その日のハンキの日記より

 

 

 この国の町にあふれる高層建築物、そして巨大な上空道路、鉄道と呼ばれる大規模流通システム。

夜でも明るい夢の都市、常に綺麗なお湯や水が出る浄水システム

これらの凄まじいまでの建造物群を作るアメリカという国が私は恐ろしい。

しかも、ここは、アメリカの首都ではなく、一つの都市に過ぎないという事実。驚愕よりも上の驚きを表す言葉がほしいくらいである。

豊か過ぎる国アメリカ、彼らはその強力な国力にふさわしい、凄まじいまでの軍事技術を有している。

戦闘用の鉄龍は、音の速さの2.5倍で飛行し、上昇力もとてつもない。

戦闘行動半径は、1000kmを超えるという化け物だ。

彼らから見れば、我が国のワイバーンは、止まっている的に見えることだろう。

案内役のスミスに聴取したところ、鉄龍は海上攻撃や、陸上攻撃の支援にも使用可能だそうだ。

マイハークに進入した鉄龍には脅威を感じたが、彼らの実力はそんなものではない。

戦闘用鉄龍であれば、マイハークに進入した鉄龍は、すぐに落とせる。つまり、彼らのマイハークへの侵入は、本当に哨戒活動であったと推測できる。

彼らとは友好関係を構築しなければならない。

彼らを敵にまわすということは、文明圏の列強国を敵にまわすよりも恐ろしい事である。

彼らと敵対してはならない。

 

もし、敵対することになれば我が国は文字通り破滅するだろう

 

 

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