フェン王国首都アマノキ 待機室
「なんたることだ…」
外交団のセオドアは、突如現れた正体不明の敵勢力に頭を抱えていた。
フェン王国首都アマノキ上空に現れた正体不明の部隊が首都アマノキと護衛艦隊に攻撃を実行、護衛艦隊が殲滅した。
殲滅したことは別に何も問題ではないが、フェン王国のゴタゴタに巻き込まれてしまうことを危惧していた。
突如現れた正体不明の部隊はワイバーンに乗っており、ワイバーンは山賊やそこらの組織が運用できるものではないというのは既に情報として上がってきているからどこかの他国と考えるのが妥当だろう。
アメリカ側として国同士の戦争に巻き込まれ、全力で戦えるほどまだ回復していない上、議会が何というのか、分かったものではない。
下手すれば大統領の政権に響くことになる。
だが、今回起きた出来事は予測できるものではなく、ワイバーンはどうやらワイバーンロードと呼ばれる列強にしか持っていない竜らしい。
つまりワイバーンの方向は西から接近してきたという情報は駆逐艦からでも確認されているところから見て、相手は間違いなくパーパルディア皇国だろう。
パーパルディアは第3文明圏の中で代表される列強国であり、そんな国との交渉が滞っている中でこんな出来事が起きては全てが水の泡となる。
胃が………また、胃腸薬を飲まないと…
こうなれば事態が悪化する前になんとかする必要がある。
しかし事態はかなり悪いものになっており、駆逐艦からの情報ではフェン王国に接近する艦隊を発見したとのこと。
現在、パーパルディア外交団へ回された潜水艦が追跡してくれているらしい。
潜水艦も派遣されているとは驚いたが、この際そんなことはどうでもいい。
事態は切迫していた。
本日の夕方、フェン王国側との会議が予定されていたが、外交団は急遽フェン王国外交部署に連絡を求める。
フェン王国側は、即時会談に応じた。
来賓室で待つアメリカ外交団、フェン王国は貧しい国ではあるが、外交のための来賓室は、豪華さは無いが、おくゆかしさ、趣のある部屋であり、非常に質が高い。
一時して、フェン王国騎士長マグレブが現れた。
「アメリカのみなさま、今回フェン王国を不意打ちしてきた者たちを、真に見事な武技で退治していただいたことに、まずは謝意を申し上げます」
騎士長は深々と頭を下げる。
「いえいえ、我らは攻撃してきた武装勢力を追い払ったわけで、貴国への攻撃を追い払ったのではありません。」
セオドアは牽制する。
「ではさっそく、国交開設の事前協議として実務者協議の準備をしたいのですが…。」
フェン王国は、もうアメリカを味方に引き入れたくて、たまらないようだ。
「失礼ですが、貴国は既に戦争状態なのではないのですか?状況が変わりましたので、我々の権限だけでは戦争状態にある貴国と、現時点で国交開設の交渉が出来ません。この件はまた本土の方で検討した後に進めしょう。」
「解りました。良い返事を期待しています。ただ1つ、これだけは、心に留めおいて下さい。
あなた方があっさりと片付けた部隊は、第3文明圏の国、しかも列強パーパルディア皇国です。
我が国は、パーパルディアから土地の献上という一方的な要求をされ、それを拒否しました。それだけで襲って来たような国です。
過去に、我々のようにパーパルディアに懲罰的攻撃を加えられた国がありました。その国は、敵のワイバーンロードに対し、不意打ちで竜騎士を狙い、殺しました。
かの国は、パーパルディア皇国に攻め滅ぼされ、国民は、反抗的な者はすべて処刑し、その他の全ての国民は奴隷として、各国に売られていきました。王族は、親戚縁者すべて皆殺しとなり、王城前に串刺しでさらされました。
パーパルディア皇国、列強というのは、強いプライドを持った国というのを、お忘れなさらぬようお願いいたします。」
ぞっとするような話を聞いた後、外交団は、王城から港に向かった。
フェン王国の首都、アマノキの港は、文明圏外の各国の戦船が整然と停泊しており、壮観な風景であった。
しかし、その場に駆逐艦の姿は無い。
文明圏外の首都の港とはいえ、駆逐艦を停泊させるほどの水深は確保出来ないため、外交団の送迎は、駆逐艦のボートで行う。
ヘリを使用すれば移動は早いが、首都上空の飛行許可はもらっていないのと上空に飛んでいる竜が邪魔で飛行できなかった。
ボートはアマノキの港に停泊し、エンジンを切り外交団が来るのを待っていた。
港では、人々が目を輝かせ、こちらに手を振っている。
「とーちゃん、あの人たちがさっきの悪い奴らをやっつけたんだよね」
「そうさ!あの光弾の嵐、すごかっただろう!!」
「うん!すごかった!」
「おーーい!!」
「ありがとうね~!」
満面の笑みでこちらに手をふるフェン王国の人々、それに笑顔で手を振る外交団や海兵隊。
「人気者ですね、俺たち」
「この国にとって俺たちはヒーローだからな、仕方ないさ…だが、悪くもないな」
「うん?外交団が来たな」
外交団は握手や感謝を言われながらボートに乗船し、そのまま客船へ戻っていくのだった。
この出来事はすぐにホワイトハウスにも伝えられ、ハリー大統領は頭を抱えた。
これが全盛期のアメリカであれば、問題はない。
しかし、転移騒動からまだ1年も経っていない上、まだまだ国内国外問題が山積み…
いつ民衆の我慢が爆発するか、わからない状態で?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
余程の理由がないと無理だ…
とにかく、外交団を避難させないと…
と指示を出すが、フェン王国から外交団を乗せた艦隊は既にフェン王国へ向かってくるパーパルディア皇国所属の艦隊が接近しており、当初護衛艦隊はこれを探知していたが、軍祭に参加する艦隊だと思い、見逃していたのが仇となった。
全速力で逃げれば逃走は可能だが、パーパルディアは列強国であり、報告であったレーダーや通信機能を備えたワイバーンを保有している可能性が高い。
例え逃げきれてもフェン王国は無事では済まない。
フェン王国を守るわけではないが、パーパルディア外交団からの報告でも進行は思わしくなく、むしろバカにされている始末
これはアメリカ合衆国としてもこれから国交締結する国が危機に落ちた時に逃走したとなれば現在国交締結している国やこれから訪問する国への悪評となる可能性も捨てきれない。
ハリーは外交団を守るのとフェン王国へ外交として守ることで親米派となり、今後の外交工作が非常に進みやすくなると考え、
最近の報告ではクワトイネやクイラ、他国との国交を締結し、採掘された鉱石から未知の鉱石、魔法技術的にも研究が進んでいる。
復興も他国との貿易間の黒字や外国人問題の沈静化
そのおかげで私自身のキャリアにも未曾有の転移騒動から復興させた政治家になりつつある…
彼の頭の中であらゆる可能性を考え、米海軍本部へ繋げた。
「私だ、サミュエル大将、確かパーパルディア外交団の護衛からフェン王国へ向かう艦隊を追跡する潜水艦がいたな?」
『はい、現在フェン王国まで100km地点まで接近しておりますが…途中で戦闘があったもののまっすぐ進行しているようです。』
「ほう…」
『戦闘はどうやらフェン王国所属と思われる海軍が数隻ほどパーパルディア艦隊と衝突後、フェン王国側を一方的に攻撃した後殲滅しました。』
そうか…既にフェン王国海軍が迎撃に出ていたのならやりやすい…
パーパルディアも帆船の戦闘艦を保有するだけで空軍からの衛星情報では蒸気機関を搭載した船や工場があるとあった。
産業革命を起こしてもまだ、初期段階でもフェン王国では到底敵わないだろう。
これは運が良い
フェン王国側はまだ本隊を出撃させていないなら、彼らが戦った後で我々が撃滅すれば好印象だろう
フェン王国はあくまで他国であり、まだ国交も結んでいない
アメリカ側からすれば国内問題を抱えたまま他国の揉め事に首を突っ込むほど余裕はない。
だが、今回の出来事は避けられない事態であった。
ならば、最大限にこちらへ有効活用しよう。
まだ、パーパルティア皇国との国交開設ができる状況の今は潜水艦が一番最も隠密に敵部隊へバレずに攻撃できる。
この世界には今の所潜水艦の存在は発見されていないのなら、うまく隠せるだろう。
「そうか、サミュエル大将外交団の安全を確保するためにパーパルディア艦隊を退却させることは可能か?」
『はい、可能です。』
「ああ、その艦には………」
大統領はしばらく大将と話した後受話器を置く
ため息を吐きながら椅子に座った。
大統領報告数時間前
フェン王国より100km地点海上
フェン王国、王宮直轄水軍13隻はパーパルディア皇国との戦争が首都の襲撃によって濃厚となったため出撃したのだ。
警戒にあたる水軍は、フェン王国の中では精鋭をそろえており、全てはパーパルディアに対抗するため
水軍は木製の船に、効率の悪そうな帆を張り、進む。
機動戦闘が必要な場合は、船から突き出たオールを全力で漕ぐ。
船には、火矢を防ぐための木製盾が等間隔に整然と置かれ、敵船体を傷つけるためのバリスタが横方向へ向かい、3機づつ設置されていた。
火矢を放つための油の壺も、船上に配置されている。
13隻の水軍を束ねる旗艦は、他の船に比べひとまわり大きく、船首には1門だけ大砲が設置されている。
水軍長 クシラ は西方向の水平線を睨んでいた。
「軍長、パーパルディア皇国は来ますかね…。」
「先ほどワイバーンロードが我が国に向かい飛んでいった…必ず来る!」
「・・・勝てますか?」
「ふ…列強国相手とはいえ、タダではやられんよ。うちはかなりの精鋭揃いだからな。
それに…。」
軍長は艦首にある大砲を見る。
「あれを見よ!文明圏でのみ使用されていると言われる魔道兵器だ!球形の鉄の弾を1km近くも飛ばして、船にぶつけ、その運動エネルギーをもって破壊する。これほどの兵器を船に積んだんだ!」
軍長は艦長に話す。
部下の前で不安は口に出来ない。しかし、軍長は知っていた。列強には、砲艦と呼ばれる船ごと破壊出来る超兵器が存在する上、我が国のムラサメ衆から超大型戦列艦建造にも乗り出していると…
フェン王国のトップシークレットだった。
おそらく砲艦は、このフェン王国最強の船、旗艦剣神のように、文明圏に存在する大砲と呼ばれる魔道兵器を船に積んだものだろう。
しかも、その最強クラスの船が、列強では普通に存在するのだろう。
水軍長クシラの頭の中は、来るべき列強パーパルディア皇国との戦闘に備え、フル回転を始める。
(どうすれば…勝てる)
「艦影確認!!!!艦数22!!!」
マストの上で見張りをしていた見張り員が大声で報告する。
ついに、来たか!
水平線に艦影が見える。
望遠鏡と通して見えるその艦は、フェン王国王宮直轄水軍の船に比べ、遥かに大きく、先進的である。
デザインと機能性を兼ね備えたマストに風の魔法で吹き付けられる風を受け、フェン王国式船より速い速度で船は進む。
水平線から徐々に大きくなっていく敵艦隊は、フェン王国水軍長クシラの目を持ってしても優雅であり、美しく、力強い。
各艦の乱れない動きから、錬度の高さが伺える。
「総員、戦闘配備!!!!」
船員が慌しく動きまわる。
「・・・思ったより接近が早いな…。」
彼の想定する船速よりも速く艦隊は近づいてくる。
「くっっっ…初弾だ!最初に一番威力のある攻撃を行ない、その後魔導砲を放ちながら最大船速で敵に突っ込むぞ!!!!」
「各自、戦の準備を!!!旗艦剣神を最前列とし、縦1列で敵に突っ込むぞ!!!」
・・・たのむぞ…。
水軍長クシラは旗艦剣神の船首に1門だけ設置された魔導砲に願いを込めた。
「艦影確認、あの旗は…フェン王国水軍です」
パーパルディア皇国 皇国監査軍東洋艦隊の提督、ポクトアールは報告を受ける。
「フェン王国か…。ワイバーンロード部隊の通信が途絶している。新兵器を持っているのかもしれないな…。」
ポクトアールは声を張り上げる。
「相手を蛮族と侮ってはいかん!列強艦隊を相手にする意気込みで、全力で叩き潰すぞ!!」
艦隊は速力を上げ、フェン王国水軍へ向かって行った。
フェン王国水軍
「間もなく敵との距離が2kmに接近します」
報告があがる。
「あと1kmで敵の砲艦の射程に入るか…。」
水軍長クシラの額に汗が滲む。
「最大船速!!!オールを漕げ!!!」
各船からオールが突き出る。
太鼓のリズムに合わせ、一定のリズムでオールが漕がれ始める。
フェン王国水軍13隻は、速度を上げ、進む。
!!!!!!
「敵船、回頭しました!」
敵の艦隊が一斉に横を向く。
「何をする気だ!?」
水軍長クシラは、敵船の動きの理解に苦しむ。
パパパパパパッ・・・・・敵船が多数の煙に包まれる。
ドドドドドドーン…少し遅れて炸裂音が海上に鳴り響く。
「ま…まさか!!!ま…魔導砲!?」
ば、馬鹿な!?文明圏で採用されている魔導砲の射程距離は1kmのはず!
敵船との距離は2km…2倍の距離があるはず…
これが列強国か!!!
敵船はこちらの1門のみしか装備しない魔導砲に対し、数え切れないほど搭載した戦列艦が多数回頭していた。
シュボン!!!シュボンシュボンシュボン・・・・・
砲撃の落ちた場所に水柱があがり始める。
く…当たるなよ!!
水軍長クシラは神に祈る。
ドーーン…シュバーーーーーン!!!!!
旗艦剣神の後方を航行していた船に、敵の魔導砲が着弾する。
砲弾は炸裂し、船上に設置してある火矢を放つための油壺をなぎ倒し、撒き散らされた油に引火、船は爆発炎上を初める。
フェン王国の精鋭部隊が…鍛え抜かれた肉体、練習に練習を重ね、地獄のような訓練の後に得られた剣術が発揮される事無く船上で焼かれ、転げまわる船員
「く!…なんということだ!!!」
次々と砲はフェン王国水軍に着弾し始める。
多数の船は炎上してゆく。
「少しでもけん制しなければ!!魔導砲放てーーーーっ!!!」
旗艦剣神の船首に1門設置されている砲が、轟音と共に、球形砲弾を放つ。
次の瞬間、敵砲が旗艦剣神に着弾し、爆発!船上に大穴が開く。
「これが…列強かぁっ!!!」
砲艦の数、1艦あたりの砲数の差、砲の射程距離及び威力、そして艦の船速、どれもが桁違いであり、水軍長クシラは、力の差を思い知る。
これほどの差とは思わなかった。列強とは、文明圏内での規模のみの差で、「列強」と名乗っていると思っていた。
しかし、現実は違った。「質」、「技術」においても列強は文明圏を遥かに凌駕していた。
これでは、敵が1艦だったとしても勝てない。
水軍長クシラの意識は、燃え盛る旗艦剣神の弾薬室への引火と共に、永遠に失われた。
「フェン王国水軍の艦は13隻すべて撃沈しました。我が方の損失ゼロ、人員装備異常なし」
・・・・・
「・・・考えすぎだったか…。」
「敵はやはり蛮族でしたね、大砲を1発だけ撃ってきましたが、文明圏通常国の使用している、我が国からしたら、旧式の砲でした。艦隊の遥か手前に着弾しています」
「そうだな・・・進路をフェン王国首都、アマノキへとれ!!!」
艦隊は1隻の損失も、僅かな被害も出す事無く、さらなる敵を求めて東へ向かった。