星と楓の異世界戦記(旧 2019年打ち切り)   作:ミュラ

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26侵略

 

 

 

アメリカから遠く離れた地、恵まれた広大な自然を持つ国

 

アルタラス王国 王都ル・ブリアス

 

アルタラス王国はフェルアデス大陸の西側に位置する山脈や平野のバランスが取れた国土を持ち、文明圏から離れているが、文明圏外の国家として随一の国力と人口、軍事力、産業を持つ大国であった。

気候は非常に温暖な気候であり、アルタラス王国の建造物は基本的に丸みを帯びており、王城や民家も全て屋根が丸かった。

この国には世界有数の埋蔵量を誇る魔石鉱山が存在し、そこから良質な魔石を産出し、輸出することで莫大な外貨を稼ぐ、資源輸出国であった。

莫大な外貨を稼ぐことにより国は富み、人口50万人を抱える王都ル・ブリアスは人々の活気にあふれている。

他国との交易も非常に活発的であり、経済はここ数十年間好景気に沸いていた。

 

そんな大国の国王ターラ14世は苦渋に満ちた表情をしていた。

 

「これは…正気か?」

 

手元に目を通す外交文章には、とても外交とは思えない威圧的な文章で書かれた内容があった。

相手はパーパルディア皇国、アルタラス王国はパーパルディア皇国とも交易を結んでおり、アルタラス側は良質な魔石、パーパルディア皇国側は技術提供などの関係で今まではやって行けた。

しかし、目の前にある書類は全てをぶち壊す内容。

パーパルディア皇国からの要請文、毎年皇国から送られてくる要請文であるが、「要請」とは名ばかりであり、事実は命令書である。

何度も目を通す。

そこにはパーパルディア皇国からアルタラス王国への『要求』が書かれていた。

 

「これほどのひどい内容は今まで見たことがない…。」

 

パーパルディア皇国は前皇帝が崩御した後、現皇帝ルディアスが即位した。

皇帝ルディアスは国土の拡大、国力増強を掲げ、各国に領土の献上を迫っていると聞く。しかし、そこは無難な場所だったりと、双方に利がある場合が多い。

今まで屈辱とも言える内容でもこちらに利があったため我慢できた。

しかし、今回はどうだ!!我が国に全く利が無いではないか。

 

・アルタラス王国は魔石鉱山シルウトラスをパーパルディア皇国に献上すること。

 

・アルタラス王国王女ルミエスを奴隷としてパーパルディア皇国へ差し出すこと。

 

・アルタラス王国はシベラルト地方をパーパルディア皇国へ割譲すること。

 

以上3点を2週間以内に実行することを要請する。

そして、最後に記載された一文

「出来れば武力を使用したくないものだ」

 

魔石鉱山シルウトラスはアルタラス王国最大の魔石鉱山であり、国の経済を支える中核であり、世界でも5本の指に入るほどの大鉱山である。

魔石鉱山産業によって良質な魔石で他国へ輸出することにより外貨を得ることができた。

収入源である魔石鉱山シルウトラスを差し出す。

これを失うと、アルタラス王国の国力は大きく落ちる。

さらに、王女の奴隷化。これはパーパルディア皇国に全く利の無いものであり、明らかにアルタラス王国を怒らせるためだけにある。

初めから戦争に持ち込もうとしているようにしか見えない。

そして、シベラルト地方はアルタラス王国の最大交易港を有する地方であり、ここも失えばアルタラス王国は他に他国との貿易するための港湾設備はほとんどなく、あっても小規模な港しかない、つまり外貨の収入を大きく失ってしまう。

何故だ!!今まで屈辱的とも言えるパーパルディア皇国からの要請を飲んでいたのに、いきなり手の平をかえしてきたかのようなこの要求。全く持って不明である。

…パーパルディア皇国め、一体どういうつもりだ!?

国王は王都ル・ブリアスにあるパーパルディア皇国第3外務局アルタラス出張所に出向き、事の真相を確かめる事とした。

 

パーパルディア皇国第3外務局アルタラス出張所

応接室

 

「待っていたぞ、アルタラス国王!」

 

パーパルディア皇国第3外務局アルタラス担当大使ブリガスは椅子に座り、足を組んだまま1国の王を呼びつける。

王は立ったままであり、大使の他に椅子は無い。

そこに来客者への配慮は一切なかった。

 

(なんと無礼な…。)

 

国王ターラ14世は話を始める。

 

「あの文章の真意を伺いに参りました」

 

「その内容のとおりだが?問題でもあるのか?」

 

「魔石鉱山シルウトラスは我が国最大の鉱山です」

 

「それが何か?他に鉱山はあるだろう。それとも何か?え?皇帝ルディアス様の意思に逆らうというのか?蛮族風情が我が国へ喧嘩を売るとはいい度胸だな」

 

「とんでもございません。逆らうなど…。しかし、これは何とかなりませんか?」

 

「ならん!!!!」

 

「シベラルト地方も我が国の最大の貿易港であります。何故、ここを欲する?」

 

「そんなものルディアス様が望まれたからに決まっているだろ」

 

すでにこの時点でターラは怒り心頭であったが、なんとか表情に出ないように冷たい視線で質問を続ける。

 

「・・・我が娘、王女の事ですが、何故このような事を?」

 

「ああ、あれか?王女ルミエスとやらはなかなかの上玉だから、俺が味見をするためだ」

 

「は?」

ターラの頭は真っ白になる。

 

「俺が味を見てやろうというのだ。まあ飽きたら、淫所に売り払うがな」

 

「・・・それも、ルディアス様の御意思なのですか?」

 

「ああ!!!なんだ!!!?その反抗的な態度は!皇国の大使である俺の意思は即ちルディアス様の御意思だろう!!蛮族風情が!誰に向かって話をしていると思っているのだ!」

 

ターラ14世は何かが切れる音が頭の中で響く、これほどの怒りは人生で初めてのことで、無言で部屋を出ようとするとブリガスが罵倒する。

 

「おい!話は終わってないぞ!!」

 

無視して立ち去る。

 

「俺様を無視するとは後で後悔しても遅いからな?蛮国風情が」

 

国王は立ち去った。

 

 

王城―――

 

「あの馬鹿国の馬鹿大使をパーパルディア皇国へ送り返せ!!要請文も断る、国交を断ずるとはっきり書くと共に、パーパルディア皇国の我が国での資産を凍結しろ!」

 

国王は吼える。

 

「軍を召集し、王都の守りを固めろ!予備役も全員招集だ!!監査軍が来るぞ!!パーパルディア皇国に我が国の誇りを見せ付けてやれ!!」

 

今までパーパルディア皇国からの要求は屈辱とも言える内容でも飲んできたが、あれほどこちらを属国にする勢いの条件を飲んでいては、もはや国家の主権は存在しない。

パーパルディア皇国の監査軍に出血ダメージを負わせ、早期講和へ持ち込むしかアルタラス王国には生き残るすべは無い。

我が国には、豊富な富があったため、軍事力は文明圏外の中でもトップクラス、文明圏とも肩を並べるほどの軍事力を保有していた。

監査軍はパーパルディア皇国内でも、旧式兵器を運用する監査軍程度であれば十分対抗は可能のはず…

せめて、娘を逃す時間くらいを稼げねば…

国王は夕焼けへ視線を向けながら、決意した目で来るべき戦いに執念を燃やしていた。

 

アルタラス王国はその頃から国家総力戦の準備が始まり、軍備強化、常時軍の集結など軍事的行動を起こした。

 

 

 

パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

第3文明圏において、唯一の列強国であるパーパルディア皇国、皇帝ルディアスの住まう皇宮は、その威を示すため、柱の1本1本まで繊細な彫刻で作られており、見る者を圧倒する。

彫刻はルネサンス期に作られた圧倒的肉体美を追求した彫刻は超絶技術を象徴するかのような印象だった。

この世の天国を思わせる鮮やかであるが、繊細に整備された庭。

宮殿の内装は、豪華絢爛であり、この世の富を集めたかのようだ。

その光景はフランスのヴェルサイユ宮殿のようだ。

この皇宮を訪れた各国の大使や国王は思うだろう。

柱一本一本職人による高度な彫刻技術や石造技術力を持つ圧倒的人材資源。

天国と思わせるほどの美を追求した巨大な庭、建造物・庭など全てを維持する資金力

この世の富を集めたかのような宮殿の内装、そしてその規模。なんと凄まじい国力だろうか、と来客者は思うだろう。

皇都エストシラントは間違いなく東の文明圏、第3文明圏で最も繁栄した都市だろう。

訪れた商人や民たちは思うだろう。

何と凄まじい規模の都市かと。何と国民が豊かなのだろうかと。何と美しい町なのだろうかと。

都市部の商売地区でも建造物は3階、4階などは当たり前で高層建造物が立ち並んでいた。

全体の町風景だけでも非常に裕福で発展した都市と文明圏外の各国は称する。

そんな優雅で裕福な首都の皇宮で多くの政務関係者や軍事関係者が集まっていた。

とても派手な貴金属に色鮮やかな服装の姿の男が1名

 

 

「おもてをあげよ」

 

第3外務局局長カイオスは、冷汗をかきながら顔をあげる。

その先には27歳といった若さからは想像も出来ないほどの威厳を保つ若き皇帝ルディアスの姿があった。

非常にまずい状況であった。それはフェン王国だ。

フェン王国の第一次、第二次監査軍の派遣は事実上の大失敗により、第3外務局は完全に面目丸潰れであった。

今日まで第二次のみならず、第一次も原因追求に当たっているが、正確な情報がまだ集まっていない。

確証は取れていないが、フェン王国からの諜報員からの情報では我が国の監査軍を圧倒的な勝利によってアメリカ艦隊が撃滅したという未確認情報も入っていた。

アメリカそしてカナダ、第3外務局においてその名前は禁断の名前となっている。

各国との外交において特に東方の国は最近生意気な態度を取るようになった。

その時必ず出るのは「我が国はあのアメリカやカナダと国交を取っておりますから」だ。

そのおかけでアメリカ・カナダという名前を第3外務局員が聞くとイライラし、険悪感となった表情で睨みつけるため

アメリカ・カナダについては現在情報収集中である。

 

*フェン王国沖海戦からすでに時間が経っているが、情報が行き届かないのはアメリカのCIAがパーパルディア皇国に対して情報妨害しているからだ。

アメリカ側としてはパーパルティア皇国との国交は絶望的であると分析したが、パーパルティア皇国は第3文明圏の中でもトップクラスの国力と軍事力を持つ列強国である。

世界的にも世界5位以内に入るほどの文明力を持つパーパルティア皇国は周辺国家の小規模な紛争を起こさせないなど統治している背景がある以上パーパルティア皇国を滅ぼすことはアメリカとカナダ側にとってデメリットでしかないため、できれば、大規模な戦争はしたくは無いが、潜在的敵対国家となっているパーパルディアには徹底的な妨害工作を開始した。

これによって第3外務局はなかなか情報が集まらず、苦戦していた。

 

そして、今日だ。

 

皇帝ルディアスはカイオスに威圧するような目で見つめながら問いかける。

 

「カイオス、フェン王国への懲罰の監査軍の派遣、予への報告はどうした?まさか忘れはとは言わないだろうな?聞くところ2回も送ったそうじゃないか」

 

「ははっ!!監査軍派遣の報告を行わず、真に申し訳ございま…」

 

「この…たわけが!!!!!!!!!!!!!」

 

皇帝は怒りの表情で怒鳴りつける。

 

「っっっ…!!!」

 

「貴様が予への監査軍の報告を行わなかったことはどうでも良い。それは予が第3外務局に与えた権限なのだからな。

一々蛮国への決まった侵攻報告なぞ聞いていると朝から晩までかかるのだからな…」

 

皇帝は淡々と述べた後、怒りの篭る声を上げながら言う。

 

「だが、一番の問題は監査軍が2度も送ったのに関わらず失敗したことだ…」

 

カイオスの顔から滝のように汗が吹き出る。

や、やはり、漏れていたか…

 

「何処にやられた?まさかフェン王国か?2度も送っておきながら迎撃するなぞ、列強国の可能性が高いだろ?」

 

「ははっ!!目下全力で対象国の割り出しを行っておりますが、現在までの調査結果では、文明圏外の国と思われますが結果がはっきりしないため、まだご報告する段階にありませぬ」

 

「何?…まだ解らぬというのか…。」

 

皇帝の顔が怒に満ちる。

 

「旧式兵器を運用する軍隊とはいえ、我が国に泥をつける蛮国がいるとはな…カイオスよ、詳しく現時点でわかっていること申してみよ

もし、その報告に偽りがあれば貴様の首と一族全て処刑となる。」

 

「は、ははっ!!!」

 

カイオスは現時点で分かっている範囲内で可能な限り伝えた。

聞いている間皇帝は静かに目を閉じたまま聞いた。

アメリカ・カナダについては本当に情報があまりにも情報が不足していたため、今回は報告していなかった。

この時、カイオスを含めて第3外務局はフェン沖海戦やアルタラス王国での対応でキャパシティーをオーバーしてしまい、実はアメリカやカナダから国交締結のために外交団が来ていることを完全に見落とすという普通ではあり得ないミスを犯していることを知る由もなかった。

対応した外交官も受付のみで内情をよく分かっていなかった

そのせいで第3外務局は身近に情報があるのに関わらず杜撰な組織体制によって気がついていなかった。

 

「一度目が提督の精神病により失敗。二度目は謎の勢力によって壊滅した、か

お主、予をバカにしておるのか?我が国にそんな無能な提督はいないはずだが、どうやら海軍は随分生温い教育をしているようだな?」

 

高級な服装に派手な勲章をつけた小太りのおじさんが頭を何度も下げなら弁解する。

 

「も、申し訳ございません!!!」

 

「たわけが…まあ良い、海軍は我が国にとって重要な組織だからな、今後はより一層訓練を厳しくするように」

 

「は、ははっ!!!」

 

「カイオスよ」

 

「ははっ!!!!」

 

「各国は、皇国がフェン王国ごときに敗れたと見るだろう。我が国に逆らった国が判明したならば、本国艦隊がフェン王国もろとも叩き潰す。解ったな。」

 

「ははっ!!!!」

 

カイオスはおそるおそる話始める。

 

「皇帝陛下、もう一つ報告したいことがございます」

 

「何だ!!!」

皇帝はただでさえイライラした表情で怒鳴る。

 

「アルタラス王国の件ですが、予定どおり、魔石鉱山シルウトラスとシベラルト地方の献上を断ってきました」

 

「ほう…」

 

皇帝ルディアスの顔に先ほどイライラした表情からニヤリと口を笑わせる

 

「さらに、アルタラス王国は、国内での皇国の資産凍結と、国交断絶を伝えてきました」

 

「ふふふ…ここまであからさまに反逆を開始するとはな。予定どおりではあるが、蛮族風情に舐められたものだ。」

 

話は続く。

 

「アルタラス王国にはどうやら躾が必要だな…監査軍ではなく本国の軍で叩き潰せ。皇軍の準備は既にできているな?」

 

「皇帝の命があれば、いつでも出撃できる準備は整っております。陛下の御言葉一つで、すぐにでも出陣し、アルタラス王国を滅し、すべての魔石鉱山、領土を皇帝陛下に献上いたします。」

 

「そうか…では任せた。アルタラス王国の統治に関しては全て任せる。」

 

「は、ははっ!!!!」

 

植民地とした領土の全てを軍部に委ねるということはアルタラス王国民、資源、領土など全てを軍部が好きに使って良いということ。

その意味を正確に知った軍部代表は感謝の念を込めるように頭を深く下げた。

 

この日、列強パーパルディア皇国はアルタラス王国に対し、宣戦布告した。

 

 

 

アルタラス王国 王都 ル・ブリアス 王城~

王国内では戦争準備状態となっており、王国民も軍部に協力し、バリケードや備品製造などへ尽力していた。

既にパーパルディア皇国は総動員状態となっており、侵攻するのは監査軍ではなく本軍だ。

本軍が来るとなればこの戦争も根本的な戦略が変わり、できるだけ皇軍を出血させることで、講和へ持ち込むことが目標となった。

そんな戦争状態となった王都のル・ブリアス 王城の一角で年寄りが娘に語りかけるように二人で話していた。

 

国王ターラ14世は自分の娘である王女ルミエスに語りかけていた。

 

「ルミエス、今すぐにこの国から脱出するのだ。既に脱出の手筈は整っている。できるだけ遠くへ逃げるのだ。」

 

王の顔には焦りが見える。

 

「な、何故ですか?」

ルミエスは不安な表情へ父親に問う

 

「パーパルディア皇国が我が国に宣戦布告してきた…。この意味が解るな?来るのは監査軍ではなく、本国の皇軍が来るだろう。

皇軍が来るとなれば我が国に勝ち目はほぼないだろう。

皇軍がここへ侵攻するのもそう時間がかからないはずだ、その前に早く脱出するのだ…」

 

「民を見捨て、王女のみ逃げるなど…。王女として国民へ合わせる顔がありません!」

 

「頼むから聞いてくれ…

国力差を考えれば、長期的短期的に見てもおそらく我が国は負けるだろう。王族は皆処刑される。ルミエスよ。おぬしの行く末は、さらに酷いものとなる。頼むから、逃げるのだ」

 

「しかし…」

ルミエスは父親に言われるまで最後まで徹底抗戦するつもりでいた。

愛する国家を守るのは王族としての務めでもあり、国民が立ち上がるときに逃げるなど恥知らずにもほどがある。

しかし、ターラは娘に言い聞かせるように優しく言う。

 

「私は国王としては最低であろう。自分の親族だけ逃がして助からせようなど…。だが、1人の父親として、ルミエス、娘には助かってほしいのだよ。お父さんの言うことを聞きなさい。これは国王としての命令でもある。」

 

「わ‥解りました……。」

 ルミエスは目に涙を溜め、悔しそうな表情で拳を作り、震えながら答える。

 

「港湾の倉庫街に偽装商船を手配している。そこの乗員は我が国の兵士だ。

商船を装って、この国にパーパルディア皇国が来る前に脱出するのだ。

人員や必要なものは大丈夫だ。この国を出た後東方へ行くのだ。

 東方にはロデニウス大陸へ向かい、アメリカ合衆国やカナダ連邦に保護してもらうのだ。

その両国はクワトイネ公国やクイラ王国をロウリア王国から守り、ロウリア王国に勝利した。

フェン王国沖海戦でもアメリカ海軍はパーパルディア皇国の艦隊を撃破したらしい。

ロデニウス大陸の北西部にバートニア州というアメリカ領土がある、そこへ行くのだ。

 

パーパルディア皇国と敵対しているのであれば保護してもらえるはず。

アメリカ人やカナダ人は非常に優しい民族だ。

そして、ここへは戻るな、戻ればルミエス、お前は奴らに捕まり死より恐ろしい運命となる。」

 

「…わ、解りましたわ。お父様」

 ルミエスは涙を落としながら、ターラに抱きつき、そのまま別れた。

その後、国王の命令のもと、アルタラス王国 王都から脱出し、その後、王女の姿を見たものはいなかった。

それから数日後、アルタラス王国へ接近する大規模艦隊を感知したのであった。

 

 

 

アルタラス王国北東方向約130km沖合い 洋上

 

 

パーパルディア皇国 皇軍 

100門級戦列艦を含む砲艦211隻、竜母12隻、地竜、馬、陸軍を運ぶ揚陸艦101隻。合計324隻の大規模艦隊であった。

その戦力は中央世界と比較すれば貧弱な戦力であるが、第3文明圏の中でも圧倒的な戦力を保有している。

皇軍はアルタラス王国を滅するため、南西方向へ向かっていた。

将軍シウスは海を眺めていた。

非常に戦略に優れた戦略家であるシウスは数々の戦記を残す冷血な無慈悲の将軍が彼の評価だ。

 

「将軍、間もなくアルタラス王国軍のワイバーンの飛行圏内に入ります」

 

報告があがる。

 

 

「まだ来ぬか…。対空魔振感知器に反応が出たら、竜母から100騎程艦隊上空で警戒させよ。細かい運用面は任せる」

 

「了解しました」

 

と水兵はすぐに下がる。

 

 先ほどの兵士が言っていた対空魔振感知器とは魔素を利用して飛行するワイバーンを視覚外で発見するために開発された対空レーダーに感があれば、ワイバーンロードを艦隊上空で警戒任務にあたるよう支持する。

(構造とすれば電波の代わりに魔素が魔法陣から発信することによりあらゆる方向へ飛ばすことで対空目標を感知することを可能とする魔導機械の一種だ。)

ワイバーンロードは、各竜母に20騎ずつ配備されている。

アルタラス王国海軍は、すでに皇軍から50km先の水平線に目視できる距離まで迫っているだろうが、アルタラスのワイバーン部隊が来るのはまだ先であろう。

*(この惑星は地球より大きいため、水平線は19kmではなく、より遠くまで目視できる。)

敵に竜母は無く、本国から洋上にワイバーンを飛ばしてくることとなるだろう。

 

効率よく合理的に最大にして効果を発揮させるために彼は来るべき戦闘に見据えていた。

 

 

 アルタラス王国 王国海軍

 

「我が国を乗っ取るとはイナゴどもめ!!!」

 

怒気をもって、海軍長ボルドは吼える。

遠くにはパーパルディア皇国軍の艦隊が見えた。

その数は非常に多く、どれもが最新鋭艦だ。この時点で通常の国は降伏するのだが、我が国は違う。

魔石鉱山によって潤沢に富を築けたおかげで軍備強化を進めることができた結果、文明圏外の中でもトップクラスの規模と優秀な性能を持つ兵器を保有した。 

文明圏の国は自国に武器兵器開発能力がなければ、高値で売られてしまうが、文明圏の国には武器輸出国は多く存在する。

我が国には魔石鉱山によって良質な魔石を輸出し、それを文明圏の国が購入、加工される。

入手した資金で最新お風神の涙を帆船に使用することにより列強並みの加速性能を手に入れることができた。

相手はパーパルディア皇国軍であるが、少しでも対抗することが可能であろう。

そろそろワイバーンの戦闘行動範囲にもあったはず。

 

「よし、本国からのワイバーンの戦闘行動半径の中に敵船団が入ったな…。よし、空軍基地にワイバーンを一気に送り、敵船団に攻撃を加えろ!!!」

 

ボルドは魔通信用器具を手にとり、艦隊に指示を出す。

 

「間もなく我が艦隊も戦闘に入る!!総員第1種戦闘配備!!!!いいか!!!肝に命じろ!!!王国の興廃この一戦にあり!各自奮闘努力せよ」

 

命は下された。

 

 

 

 

 

アルタラス王国上空高度10000m

 

雲一つない青空に黒い飛行物体が飛んでいた。

 

その飛行物体は後退翼を備え、黒い機体、そして生物とは思えない生気を感じられない無機質

 

アメリカ軍が飛ばした無人ステルス偵察機RQ-8

 

RQ−45ブラックバードはRQー4グローバルホークの発展型の無人偵察機。

敵地上空へ強行偵察任務を行い、レーダーに探知されずに特殊部隊の地上支援攻撃、偵察支援、情報収拾などに使用される。

対中戦争に備えてアメリカ空軍が先進国の持つ優秀なレーダーやミサイルを回避するステルス偵察機に着手し、完成したのが垂直尾翼を持たないB2爆撃機のようなデザインとなった偵察機。

 

武装として対空ミサイル6基を武装するなど防衛能力を備えている。

 

アメリカは異世界の詳細なデータを観測するため秘密時に軍事衛星と航空機、潜水艦を使って、各国の国土・発展具合・規模・環境などを調査する。

それを受け持っているのはCIAだ。

CIAは特殊部隊から無人機などを保有するアメリカ合衆国の諜報機関でもある。

異世界の各国に対空レーダー、ソナーなどを持っていれば領空・領海侵犯したことがすぐにわかるが、この世界ではそんなものは持っている国の方が少ない。

 

例え持っていても探知することはほぼないだろう。

そもそも、現在の情報では中央世界にも潜水艦や音速を超える航空機情報はないからだ。

なぜ、アメリカCIA所属の無人機がアルタラス上空を飛行しているのか、というと、潜在的敵国パーパルディア皇国の軍事力や戦術、戦力を詳しく知るため。

ルミエス女王は偽装商船に乗って、バートニア沖で沿岸警備隊により保護され、アメリカ合衆国の証人保護プログラムで現在CIAが保護している。

ルミエスによれば王国はパーパルディア皇国からの要求を拒否し、パーパルディア皇国が宣戦布告したため、戦争状態となったということ。

 

未だアメリカやカナダとパーパルディア皇国は外交上敵対国家となっていないため表立った軍事的行動や外交は展開できない。

そもそもパーパルディア皇国の外交団によればパーパルディア皇国からの返答は良くないらしく、待機状態が続いている。

これではアメリカやカナダ側としても何もできないことである。

 

なので、パーパルディア皇国の軍事力と戦術、戦力など実力を把握するために偵察機を飛ばした。

 

それをモニター室で複数のオペレーターと司令官が暗い部屋の中、表示されるモニターを見ながら指示を出す。

 

「ホーク1目標上空へ到達しました。現在アルタラス王国沖にパーパルディア皇国の艦隊と思われる大規模艦隊がまっすぐ王国へ向け、進撃中。

王国海軍も複数の艦隊が見られます。あと30分で接触します。」

 

「わかった。ホーク1はそのまま上空にて待機、ホーク2は首都 ル・ブリアスへ飛行中せよ」

 

「了解しました。」

 

他国との戦争を見るのはこれで何度目になるか…我々は存在上幾多と合衆国の権益と国民を守るために日々情報収拾を行う。

あくまでも我々の任務は情報収集や破壊工作、要人確保などだ。

例え目の前で救える生命があったとしても優先順位を変えてはいけない。

これは諜報組織としては当然のことだ。

正直、あまり気持ちが良い仕事ではないのかもしれない。

だが、情報は戦略や方針を左右する重要な要素だ。

こうして偵察しているが、見方によってはアルタラス王国を踏み台に相手の情報を得る。

まるで、かつて第二次世界大戦でイギリス軍が実行したドイツ軍の情報をあぶり出すために街一つ生贄に実行した作戦の関係者と似た感覚になるな…

と頭の隅で思い出すか、のように画面を見つめたまま流れて行く情報を見る。

 

戦闘が始まったようだ。

 

 

 

 

アルタラス王国海上 竜騎士団 騎士長 ザラム

 

 竜騎士団120騎は、アルタラス王国空軍基地から北東方向に展開するパーパルディア皇国 皇軍 に一撃を加えるため、編隊を組んで飛行していた。

敵は王国に幾多と屈辱的な要求をしてきており、今まで幾度となく飲んできたが、今回は魔石鉱山シルウトラス、シベラルト地方の献上と王女の奴隷化を申し出てきたらしい。

王女は性格も良く、美人で品性があるため、国民からの人気も高い。

魔石鉱山シルウトラスやシベラルト地方を王国が失うと、国が立ち行かなくなるのも、誰もが理解している。

一般公開されたパーパルディア皇国からの要請文を読んだ国民は激怒した。

 

「たとえ国滅ぶ事となっても、横暴な列強に一撃を!!」

 

と彼らの心は一つとなり、例え祖国が滅ぶことがわかっていても国家として戦争することを決意したのだ。

国民だけではなく、軍部も同様で、パーパルディア皇国にはせめて出血ダメージを負わせ、何とか講和へ持ち込むことが最優先だった。

ザラムは魔通信に向かって指示を出し続ける。

やがて…。

 

「見えた!!!!!!」

 

 パーパルディア皇国の艦隊が目に入る。

 見たことのない大艦隊だ。

 

「指示どおり、散開!!後は12士長の支持に従え!!」

 

アルタラス王国竜騎士団は散開して、パーパルディア皇国軍へ向かっていく。

 

「!!!!!!!!」

 

ザラムは気がつく。

 

「斜め上空後方!太陽を背に敵が突っ込んでくるぞ!!注意セヨ!!」

 

 敵のワイバーン部隊が急降下し、太陽の背にして突っ込んでくるため魔通信を傍受するまで気づかず、そんな獲物へ食らいつくようにパーパルディア皇国のワイバーンロード部隊は導力火炎弾を放ち、アルタラス王国竜騎士団120騎のうち、60騎以上が命中し、落ちてゆく。

 

 

「畜生!!」

 

アルタラス王国の竜騎士団も、敵ワイバーンロードに食いつこうとするが、速度差で直ぐに避けられる。

導力火炎弾の射程圏外に逃れた敵は、再度上昇し、有利な上空から再度導力火炎弾を放ち、一方的な戦いで全滅した。

 

 

「く、速い!もう全滅してしまうとは…さすが列強国ということか…。」

 

部下に不安な顔は見せない海軍長ボルドであったが、内心は不安に満ち溢れていた。

 

「敵艦隊との距離あと2km」

 

部下からの報告が入る。

 

「敵艦隊転進!」

 

敵艦隊が我が軍に対し、横腹の砲門が全て解放された状態でこちらへ向けていた。

!?

 

「まさか…魔導砲がもう届くのか!?」

 

パパパパパパパッ!!!・‥…敵艦の一部が煙に包まれる。

ドドドドドドドーン…少し遅れて発砲音。

 

 

 

「まずい!!」

 

敵艦隊は次々とこちらへ砲撃し、こちらはまだ射程圏外であった。

(く…魔導砲の性能がここまであるとは…!このままでは全滅してしまう!何とか敵艦に攻撃せねば…)

 

「面舵いっぱい!!敵から45度の角度を取り、接近しつつ攻撃に最適角度を維持せよ!敵の魔導砲が来るぞ!!!風神の弓を使用する!!!!」

 

艦隊がゆっくりと曲がる。敵の魔導砲が飛んできている事を思うともどかしいほどの遅さである。

シュパンシュパンシュパンシュパン・‥…

水柱があがる。

敵の攻撃の第1波の到達である。

 

・・・・ドーン

 

「戦列艦シディ被弾!!!!!」

 

戦列艦シディに敵砲弾が被弾し、猛烈な爆発を起こす。これが噂に聞いている炸裂砲弾か…。

我が砲の砲弾よりも、射程距離も威力も数も上のようだ。

今回の第1波攻撃は、ほとんど洋上に着弾する。

今後、砲撃数も命中数も増えていくことだろう。

 

「風神の弓発射準備完了!!!!」

 

「風神の弓、発射!!!!!」

 

風神の弓とは列強国の風神の涙がもたらす風を矢の推進力に使用することで重たい矢でも射程を伸ばした状態で攻撃することを可能とする対艦攻撃平気だ。

一つ一つに純度の高い魔石を使用することで爆裂魔法を生み出し、着弾した場所を爆発させる。

しかし、一つ一つのコストが非常に高く、まさに決戦兵器でもあった。

通常の文明圏艦隊を相手にした場合は、敵の射程距離の倍以上先からアウトレンジで攻撃可能なアルタラス王国の切り札。魔石鉱山の盛んな富める国ならではの兵器である。

 

ヒュイィィィィン・‥…

 

船上に風が吹き荒れる。

 

シュンシュンシュンシュン

 

風神の弓は、侵略者に対して連続で発射された。

 

 

パーパルディア皇国 皇軍

 

艦隊は次々とアルタラス王国海軍へ砲撃を開始しているが、思ったよりも命中精度が低い。

既に砲撃を開始してから5分以上は経っているが、一向に命中しない。

そして、ようやく砲弾が命中したのか、敵艦の前方に居た戦列艦が爆発する。

 

「敵船1隻に魔導砲命中、火災発生!!!」

 

「命中率が悪いな…。まあ、初弾だとこんなものか。」

 

 艦隊の数は多く、風神の涙や魔導砲を満足に開発できないような国にこちらの船を超えることはなく、この海戦は一方的な戦闘となり、終結すると楽観的な意見が上層部や幹部の多くが考えて居た。

 

「敵船、角度を変えて侵攻」

 

「何をするつもりかな?」

 

「!!敵船団、横を向けた艦から順次バリスタを発射しています!!!」

 

「バリスタ!?あんなに射程距離の短いものを、ここで発射してどうする!?」

 

幹部連中が困惑する。

 

「!!!矢が…飛んできます!!」

 

「なにぃ!!!!」

 

100門級戦列艦旗艦シラントを矢は飛び越え、約50m離れた海上に矢は落下する。

矢の前部に設置された、爆裂魔法が起動し、爆発、水柱が上がる。

 

「魔力探知、おそらく、風神の涙と爆裂魔法が付与された矢と思われます」

 

報告があがる。

 

「なんと…富が裕福に存在するアルタラス王国ならではの戦術だが、もったいない兵器の使い方だな」

 

矢は次々と飛んでくる。旗艦に狙いをつけたかのように、周囲に水柱があがる。

 

ドーンドドドドドドーン

 

旗艦シラントに、連続して10本の風神の弓が命中した。

 

 

アルタラス王国海軍

 

「100本準備していた風神の弓は、すべて撃ちつくしました」

 

「よし、それでは、敵艦隊に進路を向けよ!!!一気に魔導砲の射程圏内に距離をつめるぞ!!!…しかし……敵旗艦に10発も命中させるとは、王国軍の錬度は衰えていないな…」

 

敵旗艦に集中させて攻撃、撃沈し、指揮系統が破壊され、敵が混乱している間に距離を詰めていっきに叩く…つもりだった。

 

敵の旗艦周辺に蔓延していた煙が晴れる。

 

「!!!!!!!!!!!!」

 

衝撃が、海軍長ボルドを駆け抜ける。

 

「敵艦健在!!!!あっ…敵艦隊発砲!!!!」

 

通信士の悲鳴のような声があがる。

爆裂魔法の付与されたバリスタは、我が国の艦が食らえばダメージはタダではすまない。10発も着弾すれば、船の大半は破壊されるだろう。

しかし…。敵の旗艦は上部構造物の一部は破壊されていたが、内部は全くの無事らしく、何事も無かったかのように、航行し、我が方に攻撃を開始している。

風神の弓は、パーパルディア皇国の誇る旗艦シラントの対魔弾鉄鋼式装甲により、いともあっさりと跳ね返され、致命傷を負わすには至っていなかった。

皇国の砲弾は、第1波に比べ、圧倒的に数が多い。

 

「戦列艦ベシアル被弾、轟沈!!戦列艦ブ―デッヒ被弾、轟沈、戦列艦パケラ被弾、轟沈!!」

 

「戦列艦オシア、ワイバーンロードの火炎弾により被弾、火災発生!!!」

 

悲劇的な報告が続く。

 

「ち…畜生!!畜生!!!!」

 

海軍長ボルドは燃え盛るアルタラス王国軍の主力海軍を見ながら、ワナワナと震える。握り締めた拳からは、血がしたたる。

敵艦隊の攻撃可能艦の数は増え続け、砲弾数の着弾も徐々に増え、猛烈な数となり、戦場は凄惨を極める。

 

「あっ!!!!!」

 

ドーーン

 

海軍長ボルドの意識は、飛んできた砲弾により、強制的に終了した。

 

 

「敵、艦隊全滅しました」

 

「我が方の損害は?」

 

「旗艦シラントに10発ほど、敵の爆裂魔法の付与された矢が着弾しましたが、対魔弾鉄鋼式装甲により、ほとんど跳ね返したため、シラントは小破です。人的被害としては、シラントに乗船していた従軍記者が、着弾に驚いて足を捻って捻挫しています。それ以外は人員装備異常なし」

 

「竜騎士隊の被害は?」

 

「被害なし」

 

 第3文明圏最強の国、列強パーパルディア皇国軍は、アルタラス王国海軍を撃破し、アルタラス王国 首都ル・ブリアスを落とすため、揚陸地点のあるル・ブリアス北側約40km地点へ向かった。

 

 

 

 

 

アルタラス王国首都 ル・ブリアス 北側約40km地点

 

海岸と荒野が広がるこの場所は、人が隠れる場所は何処にもなく、水も出ず、魔石鉱山も無いため、人々に放棄された土地である。

しかし、海岸線は広く、揚陸するには適していた。

パーパルディア皇国軍は、入念なワイバーンロードの上空偵察の後、さしたる苦労も無く、同場所に橋頭堡を確保、野営陣地を構築した。

 

アルタラス王国 王都

王ターラ14世は、出陣の準備をしていた。

アルタラス王国海軍はすでに無く、上陸を許してしまった。魔通信が途切れるまでの内容を精査した結果、さしたる損害も与えられずに全滅してしまったようだ。

王国のために殉職してしまった兵たちのために祈りをささげる。

家族もいただろう。親の介護を抱えた者もいただろう。婚約者がいた者もいただろう。

しかし、王国のために殉じた。

王は思う。

今回の敵を退けた暁には、殉じた兵たちの家族のために何かしてやらなければ…。

しかし、強大な敵はほぼ無傷で王都の北側に迫っている。

列強が敵に回っているため、味方してくる国はいない。

王は、必勝の決意を固めるのであった。

 

 

 

アルタラス王国軍その数約2万

 

王軍は、王都ル・ブリアスの北方約10km地点に展開していた。

軍事目標は、王都北方約40km地点に橋頭堡を確保しているパーパルディア皇国軍陸戦部隊約3千を滅する事にある。

陸戦隊約3千に対し、2万もの超大軍を準備する。

通常であれば、オーバーキルである。圧倒的な戦力差の前では、少々の戦略の差など大局に影響は無い。しかも、遮蔽物の少ない荒野に敵は布陣している。

相手が通常国であれば、勝ったも同然である。

しかし、相手はこの世界に5カ国しかいない列強である。

 

「今回は勝つだろうが、油断は出来ないな……。」

 

アルタラス王国、国王ターラ14世は決意を固めるのだった。

 

 

パーパルディア皇国軍 陸戦隊

 

皇軍は海岸線沿いを南に侵攻していた。

3000名もの精鋭部隊、前方に地竜と呼ばれる像の2倍近くの大きさの竜が32頭、パーパルディア皇国にしか住まないと言われる竜である。

昔、皇国の拡大期、この地竜を操ることによって戦略的な運用が出来るようになった。矢はもちろん、バリスタさえも通さない硬い鱗を持つ地竜の登場により、皇国の陸軍は他国を圧倒し始める。

皇国が圧倒的国力を持ち、文明3大流のうち、ハイエルフを祖とする第3文明圏の頂点に登り、列強と呼ばれるようになったのはこの地竜の運用があってこそだ。

ワイバーンほどの機動力は無いが、それを上回るほどの硬い鱗を持ち、射程距離は短いが、拡散し、効果範囲の導力火炎放射を行い、何よりも地上のその場所に長い間居座る事ができる。

ワイバーンでは、そこに居座る事ができないため、いわゆる制地権を確保するには地竜をおいて他にない。

地竜~像の2倍程度の大きさの体を持ち、全体的に丸く、亀のように三角の頭が出ている。

又、パーパルディア皇国は人間で運べる程度の大きさの炸裂式砲弾の入った大砲を配備している。

馬に引かせるタイプの大砲も配備している。

歩兵にはフリントロック式のマスケット銃が支給され、球形の弾を放つ。

上空には竜母から発艦したワイバーンロードが舞い、進路上の敵情報を地上に送る。

 

「敵は約2万もの大軍、アルタラス王国の主力です」

 

「2万か…。国力に対して随分と頑張ったものだな」

 

「はい…。しかし、これを破ると、アルタラスは皇国の属州となります」

 

「ふふふ…責任は重いな」

 

陸戦隊長バフラムは不適な笑みを浮かべた。

 

 

 

アルタラス王国 ルバイル平野

草1本生えていないルバイル平野、遠くまで見渡せるこの荒野でアルタラス王国軍2万とパーパルディア皇国軍陸戦隊3千が距離約2km離れて向きあう。

国王ターラ14世は必勝の信念を持って吼える。

 

「全軍突撃!!!パーパルディア皇国の伸びすぎた鼻をへし折ってやれ!!」

 

ウォォォォォォォ!!!!!!!

土煙があがり、アルタラス王国の槍、剣を持った騎兵隊が先陣をきる。

その時だった。

 

ヒュルルルルルルルルル・‥…

ドンドンドンドンドンドン

味方の陣で爆発が起こる。

 

「なっ!!何だ!!!!!」

 

「まさか、魔導砲か!!!固定砲や船のみではなく、人が運べるまでに軽量小型化したというのか!!?」

 

爆発のあった近くの兵は10人単位でなぎ倒される。

しかし、爆発の間を縫うようにアルタラス王国兵は皇軍に向かって進む。

人海戦術!!!!!!!

皇軍との距離をつめる。

しかし、それを阻むように、ワイバーンロードによる上空からの導力火炎弾の嵐が吹き荒れる。

度重なる爆発も、アルタラス王国軍の圧倒的な人海戦術に対し、焼け石に水だった。

導力火炎弾によって、焼かれる兵、しかし面制圧は出来ないため、弾の当たった箇所の兵が倒れるのみである。

 

ウオォォォォォォォ!!!!!!

 

凄まじい土煙をあげ、アルタラス王国軍はパーパルディア皇国軍に迫る

アルタラス王国軍の前方には、横一列にならんだ地竜の姿が見える。

大きい…。

しかし、あるのはたったの32頭、竜と竜の間の間隔も50m近くあり、大きい。間を抜ければ問題なさそうだ。

 

「数で圧倒している!!踏みつぶせ!!!」

 

騎兵は弓を持ち、地竜にねらいをつける。

 

「大きい的だな…。くらえぇぇぇぇ!!!!」

 

パシュパシュパシュ!!!

 

風を切り、弓は地竜に向かい飛んでいく。

 

カキン!!カキン!!!カキン!!!!!

 

当たった弓のすべては、地竜の硬い鱗に跳ね返される。

 

「ちっ!!!では、地竜の間を抜け、後方の敵に突っ込むぞ!!いけぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

地竜と地竜の間は50m近く離れている。密度は無いに等しい。

間を抜ければ、約300m後方に敵の部隊がいる。無意味な見掛け倒しの地竜は無視し、敵を倒す!!

軍は地竜に向かって突撃する。

 

ウオォォォォォォォ!!!!!!

 

その時だった

横1列にならんだ地竜の口内が光始める。

 

「まさかっ!!!導力火炎弾か!!!」

 

横1列に等間隔に並んだ地竜、射程距離は短いが面制圧が可能な導力火炎放射を発射した。

火炎は口から拡散し、広範囲に地面と敵を焼く。

地竜は首を振りながら、攻撃範囲をさらに広げる。

アルタラス王国軍は地竜の火炎放射の中に突っ込む形となった。

 

グアァァァァァァ!!!!!!

 

火だるまとなって、転げまわる兵と馬、火炎の制圧範囲が広すぎるため、アルタラス王国軍は一時進軍を停止する。

地竜は少しづつ進みながら、火炎をばら撒き続ける。

後方の軍によりすぐには下がれない前方の軍は、どんどん焼かれていく。

しかし、火炎放射前に竜を抜けた騎兵が300ほどいた。

騎兵はパーパルディア皇国軍に迫る。

 

パパパパパパパパーーン

 

敵の歩兵たちの陣から、白い煙が上がる。

騎兵たちがバタバタ倒れる。

 

「な…何が起こった!!!!」

 

パパパパパーーン

 

さらなる攻撃、攻撃は続き、地竜の間を抜けた騎兵たちは、歩兵のマスケット銃の一斉射撃により、全滅した。

アルタラス王国軍の進軍は完全に停止する。

そこにさらなる悲劇が起こる。

王国軍陣地の中で、猛烈な爆発が連続して起こる。

 

「まさか!!!!」

 

王は海の方角を見る。

パーパルディア皇国の砲艦約100隻が陸地に向け、陸戦隊の支援のため、アルタラス王国軍に艦砲射撃を開始する。

100門級戦列艦を含む砲艦100隻による艦砲射撃は、アルタラス王国軍の展開する陣地に砲弾の雨を降らせる。

同攻撃は面制圧射撃となり、アルタラス王国軍は総崩れとなった。

 

 

この攻撃によりアルタラス王国軍は事実上壊滅状態となった。艦隊は陣地が跡形も無いほど砲撃し、全軍を指揮していたターラ14世はこの世を去った。

その後パーパルディア皇国はアルタラス王国を占領、完全なる属国となった。

占領後、アルタラス王国で女性はパーパルディア軍による強姦、輪姦、誘拐の対象となり、男性は兵士たちの娯楽として暴行、リンチ、銃殺するなどの光景が頻繁に起こった。

国民の大半は奴隷か労働力として生き残ることができたが、アルタラス王国民にとって長い地獄が始まることとなった。

アルタラス王国の王族や一族、親戚縁者全員が例外なく串刺しとなった。処刑する妊婦も胎児を腹から引き摺り出し、処刑するなどの徹底的な処刑が行われた後、王城前の広場に見世物にされた。

 

CIAはアルタラス王国で起きた出来事や戦闘記録を全てホワイトハウスやペンタゴンへ送った。

また、アルタラス戦争で使用された地竜やマスケット銃などは脅威度として低いが、海戦で使用された魔法による攻撃方法は今後のパーパルディア皇国との戦闘において脅威となる可能性が高いと見ていた。

また、一連の流れを全て見ていたCIA関係者の中にはあまりの残虐に気絶した者も出たほど、現代人には恐ろしいものであっただろう。

こうした処刑は現代こそ先進国の中では表に出てこなくなったが、数百年前は当たり前のように行われていた光景であった。

列強国すら、残虐と思える光景でも日常的に行われていることから、アメリカ政府関係者は自国の常識や倫理が全く通用しないことを改めて知る。

 

 





む〜…この場面やクワトイネ疎開もそうですが、本作はあくまでも日本がアメリカに変わったということだけなので、ストーリー自体それほど変わらないよう残していますけど、やっぱり変えるべきなんですかね…?
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