星と楓の異世界戦記(旧 2019年打ち切り)   作:ミュラ

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28機械文明国家

 

中央歴1639年12月3日

 

第2文明圏 列強国ムー帝国ブータン港

 

ブータン港は、ムー帝国屈指の貿易港であり、様々な船舶が出入りする。

ブータン港湾にはムー帝国の企業所属の蒸気機関を搭載した輸送船や客船、貨物船などが停泊し、列強国からの帆船も停泊している。

そんな港湾である出来事が注目の的となっていた。

それは超大型船の出現だ。

 

ブータン港湾沖に現れた艦隊は計9隻

大体が200mほどであるが、2隻が異常に大きく1隻は平たい甲板を持つ軍艦、もう1隻はビルのような建造物が建っている船、この2隻の全長300mは余裕で超えており、ムー海軍は直ちに出撃準備に取り掛かった。

目の前に現れた9隻の軍艦と客船

見方を変えれば一つの海戦が可能な戦力でムーへ侵攻してきたとも見える。

ブータン市に住むムー住民はあまりの巨大船に驚愕しながらも港に集まっていた。

 

 

ムー海軍の駆逐艦が艦隊へ近づく、駆逐艦の乗員は圧倒的大きさに開いた口が閉じなかった。

 

「な、なんだ、この巨大な空母は…これほどの空母なんて今まで見たことがない!この艦隊はどこの所属だ?」

 

と艦長はそんな言葉をもらすが、ムーの駆逐艦が艦隊へ近づいても、護衛艦と思われる軍艦は何も対応はせず、ジッと静かだ。

 

 

すると大型船から小型艇が出てきたと思うと信じられないほどの速度でこちらへ近づいてきた。

駆逐艦の乗員も警戒はしつつ小型艇の乗員を駆逐艦へ乗船させる。

乗船してきた人々は青い斑模様の服装が二人、黒いスーツを身に纏った人物が二人

「初めまして、私はムー海軍所属のヒューラ駆逐艦艦長のマイセルである。貴殿が航行している海域はムー帝国の領海である。貴国の所属と要件をお聞きしたい。」

 

「はい、私はアメリカ合衆国、国務省から来ましたセオドア外交官と申します。」

 

「カナダ連邦、ヴェロニカ・ジョセフ外交官と申します。」

 

「我々はムーより第3文明圏フィルアデス大陸のさらに東方から来ました。今回の訪問はムー帝国と国交開設したいと思っております。」

 

「ほう、国交開設ということですか…わかりました。上の人間には私から伝えしましょう、その間ブータン外務省へご案内いたします。」

 

「ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。」

 

艦長は政府へアメリカ・カナダのことを伝えると順調に進んだ。

ムー政府はアメリカの艦隊の報告に驚愕し、政府・軍関係者に大きな衝撃を与えた。

艦隊に戦艦はいないが、300m以上の超大型航空母艦などムーにはない、せいぜい180mほどの空母が配備されているくらいだ。

 

しかも護衛艦と思われる戦闘艦の大きさは150m、200mを超えている艦艇ばかりだ。

ただ空母以外の艦艇で船体が大きい割に主砲が1門と2門程度しか付いていない貧相なデザインに疑問を抱くが、神聖ミリシアル帝国の魔導戦艦のようなデザインだが、武装が何も見当たらないまさに箱を並べたようなフォルムに大きな疑問を抱くのに十分だった。

 

 

300mクラスの船舶など現在のムーの造船技術では不可能だ。

ムーはもともと戦闘艦で主力とされるのは戦艦であり、空母はあくまでも補助艦に過ぎない。

現在ムー帝国が建造した最大級の船舶は230m級の客船であり、それは4つの煙突に世界の中でも最大級の豪華客船だ。

外交自体もムー帝国側が国交を快諾し、無事アメリカ合衆国とカナダ連邦はムー帝国と国交締結した。

ムー帝国側にとって贈り物で喜ばれたのはセオドア外交官らが用意した旧式ではあるもののテレビ、アメリカ産のコーヒー、タバコ、陶芸品、貴金属品などだ。

そして、ムー帝国側から是非首都オタハイトへアメリカ・カナダ外交官たちを招待したいということで、これを承諾し、首都へは自分たちへ向かうことになった。

本来であれば汽車で向かうのだが、ムー帝国側にとっても更なる技術調査のために空軍のアイナンク空港の使用許可を出し、アメリカの航空機の派遣を要請することになった。

 

案内役となったのはムー帝国の戦闘機マリンであった。

 

 

アメリカ・カナダの外交官は配備され始めた新型MV-22D型とF-35D合計3機で向かった。

 

*MV-22D型はMV-22Bの発展型として開発されたジェットエンジンを搭載したオスプレイ。

 

 F-35D型 F-35系列の中で最新鋭機体。対無人機対策としてECMー34ーTを搭載し、無人機に対し強力な電子妨害と電磁波を発生させる電子妨害無効化システムを搭載した発展したのがF-35D型。

現在でもF/A-18E/FやF-35C型は現役であるが、徐々に新造艦にはF-35D型に変わりつつあった。

F-35D型はC型と比べ、若干大型化してしまったが、それでも無人兵器に対抗できるだけの妨害装置やミサイルポッドと呼ばれる

一度に6発の対空ミサイルを搭載できる格納型ミサイルポッドを2基外付け式で主翼へ搭載可能だ。

さらにステルス性をできる限り落とさないためにミサイルポッドの形状もステルス性を意識され、ミサイルポッドの登場によって戦闘機ミサイル搭載量が飛躍的に上がる結果となった。

ただし、F-35C型ではエンジンの出力問題があるため搭載すれば性能低下は免れない。

 

 

 

 

 編隊はアイナンク空港へ飛び立った数十分くらいで到着するが、案内していたマリンがまさかの追い抜かされるという事態になったため、編隊はそのまま上空で待機したのちに空港へ全て垂直降下した後着陸した。

その光景に空港職員や軍関係者は呆然とした表情で見ていた。

その中である技術者も呆然とした表情で見ていた。

外交官らはムーの外交官たちについて行ったが技術者はフラつきながらもMV-22D型へ近く。

彼は冷や汗をかきまくっていた。

目の前の機体はプロペラがない。

主翼に搭載している筒状がエンジンと思われるが、内部には羽がビッシリ敷き詰められており、見たことのない飛行機であった。

それがどれほど大変で技術を必要とするのか、技術者としてわかっていた。

彼はマイラス技術士官であり、この若さにして第1種総合技将の資格を持つエリートであった。

 

 

彼はアメリカ・カナダ外交団が来る前に外交官から彼らの技術力を調査して欲しいという依頼を受け、彼らの到着を見たが、驚愕することばかりであった。

最新鋭戦闘機マリンが追い抜かれ、彼らは圧倒的な速度で飛行していた。

耳には聞き慣れないエンジン音が響き、まるで神聖ミリシアル帝国の戦闘機のような音だった。

しかし、聞こえる音はキューンという一定感覚で安定した音が聞こえていた。

プロペラを採用していない彼らは独自のエンジンを作ることができるということ。

さらにこれだけ重たい機体をあれだけの機動力と垂直降下させるための出力は膨大であり、とても我が国では再現が不可能だ。

高出力の小型エンジン、確か我が国の航空分野においてプロペラ以外でのロケット推進式飛行機の論文を見たことはあるが、目の前のエンジンは明らかにロケットエンジンではない。

論文によればロケット推進は燃料を燃焼させて推進力を得るため、噴射口だけあれば良い。

だが、目の前のエンジンにはちゃんと空気取り入れ口が付いている。

ということは神聖ミリシアル帝国の魔光呪発式空気圧縮放射エンジンと同等ものである可能性が高い。

 

 

「な、なんという技術力!!!!」

 

1機の機体は筒状のエンジンを2基主翼の両端についており、プロペラが一切ない。

しかも我が国の長距離輸送機ラ・カオスほどの大きさで700Km/hは余裕で出ていた。

ラ・カオスは巡航速度280km/hほどしかなく、目の前の機体と比較されれば一目瞭然だ…

主翼の両端にエンジンをつけるということはそれだけエンジンの推進力と空気力学において十分耐えられる機体構造を持っていることになる。

700km/h以上という速度で垂直降下するためにエンジンの向きを変える。

言葉では簡単に聞こえても実際は高度な技術がなければ不可能だ。

 

さらに700km/h以上ということは神聖ミリシアル帝国が持つ最新鋭天の浮舟で500km/hほどしかない。

つまり、航空分野はどの国よりも先を進んでいることになる。

 

そして、護衛してきた戦闘機…

 

何と言葉を漏らせば良いか、わからない。

 

マリンのような主翼や尾翼、コックピットの位置などがまるで異なった形態、機尾には二つの噴射口、コックピット付近の空気取り入れ口

滑らかなライン、洗練された無駄のないデザイン

こ、これが戦闘機というのか…

 

全くどうやってこれほどのすべてのパーツが金属で作られた単葉機を作り出すことが出来ると言うのだろうか。

情報ではこいつは機体の上面の一部の扉が解放されたと思えば、筒状の何かが下へ向き、ゆっくりと着陸したという。

しかも安定していたとのこと。

 

筒状の何かとは恐らくエンジンだろう、つまり噴射口を下へ向けることができるということか!?

 

アメリカという国は恐らく神聖ミリシアル帝国以上の超文明国家なのかもしれない。

300m以上の大型艦なんて見たことがない上、神聖ミリシアル帝国でも存在しない。

マイラスが技術者として理解できるうちにアメリカやカナダがいかに超大国なのか、無意識に認識し、自分たちの常識がアメリカの航空機によって崩れ去るような音がした。

 

 

 

応接室へ向かうマイラスの足取りは重い。

向かう先はアメリカ合衆国やカナダ連邦の外交官がいる応接室だ。

 

彼らが持っている艦艇や飛行機械は、我が国で開発することは現段階では不可能だ。

あれほどの高性能を出そうと思うなら、生み出すのに数十年、実用化にさらに数年以上かかるだろう。

それだけ超越した超技術の塊…

航空機分野だけでも我が国は圧倒的不利である。

だが、彼らの艦隊には超大型空母が居ても、戦艦の情報はなかった。

 

我が国には高さ100メートルクラスの超高層ビルや、練度の高い優秀なエースパイロット。そして最新鋭戦艦ラ・カサミがある。

まだ、完全に不利なわけではないはずだ。

 

「どうなる事やら…。」

 

マイラスはアメリカ・カナダ外交官が滞在する部屋の扉をノックした。

 

コンコン

 

「どうぞ」

 

扉をゆっくりと開ける。

中には、黒を基調とする清潔感溢れる男性2名がソファーに座っていた。

 

「こんにちは、今回ムーの事をご紹介させていただく、技術者マイラスと申します。お二人にお会いすることができ、大変嬉しく思います。」

 

アメリカ・カナダ外交官は立ち上がり、挨拶をする

 

「こちらこそ、このような機械文明国家、ムー帝国のことについてご紹介をして頂けるとは感謝します。アメリカ合衆国国務省から来ました外交官のセオドア・アーノルドと申します。」

 

「カナダ連邦外交官、ヴェロニカ・ジョセフと申します。お会いすることができて、大変嬉しい限りです。」

 

丁寧な言葉遣いだ、大概では文明圏外の国と相手する場合、高圧的な態度、言葉遣いが荒いことが多い。

 

「丁寧なご挨拶ありがとうございます、具体的にご案内するのは、明日からとします。長旅でお疲れでしょうから、今日はこの空港のご案内の後に、都内のホテルにお連れします」

 

マイラスは、空港出口へ行く前に、空港格納庫内に外交官団を連れて行く。

格納庫に入ると、白く塗られた機体に青のストライプが入り、前部にプロペラが付き、その横に機銃が2機配置され、車輪は固定式であるが、空気抵抗を減らすためにカバーが付いている複葉機が1機、駐機してあった。

それは第一次世界大戦の戦闘機を連想させるデザインだった。

 

ピカピカに磨かれており、整備が行き届いた機体だと推測される。

 

マイラスは説明を始めた。

 

「この鉄龍は、我が国では航空機と呼んでいる飛行機械です。

 これは我が国最新鋭戦闘機「マリン」です。最大速度は、ワイバーンロードよりも速い380km/h、前部に機銃・・・ええと、火薬の爆発力で金属を飛ばす武器ですね。を、付け1人で操縦出来ます。メリットとしては、ワイバーンロードみたいに、ストレスで飛べなくなる事も無く、大量の糞の処理や未稼働時に食料をとらせ続ける必要も事もありません。空戦能力もワイバーンロードよりも上です。」

 

と説明する。

 

アメリカ人やカナダ人は目を輝かせて見ていた。

「これは…懐かしきレトロなレシプロ機だな」

 

「複葉機は男のロマンを感じますな~これに美女と一緒に乗って空を飛びたい」

 

「…よし、君は少し黙っておこうか」

 

セオドアというアメリカ外交官がまるで懐かしそうに見ているのに対し、ヴェロニカというカナダ外交官は美女と飛ぶ光景を想像しながら顔がにやけていた

「レトロ」?それに懐かしいということはレシプロエンジンは既にあるのか?

少し探りを入れてみようか

 

「我が戦闘機に関心を持って頂き嬉しい限りです。

マリンには最新型のレシプロエンジンを搭載しておりますが、アメリカやカナダには内燃式レシプロエンジン以外にどういった選択肢がありますか?蒸気機関もレシプロといいますよね?まあ、蒸気機関は重くて出力が弱く飛行には適さないのですが」

 

マイラスの問いに、セオドアが答えた。

 

「そうですね…アメリカやカナダには、ジェットエンジンと呼ばれる航空機に適した小型高出力エンジンがありますので…。もちろん、レシプロエンジンもありますよ」

 

ジェットエンジン…先ほどの筒状のエンジンがそれなのだろう。聞いたことがないエンジンだ…やはりこの両国は凄まじい技術力を保有している。

 

「ほう…アメリカやカナダにも航空機に適したエンジンがあるのですね。是非構造を教えてもらいたいものです」

 

「構造自体を教えることは可能ですが、我が国やカナダでは新世界技術流出防止法が出来ましたので、限定的になります。

小型高出力化や、エンジンの燃焼温度に耐え得る材料の素材や製造方法については公開することはできませんので、それでいいのであれば大丈夫です。」

 

「なるほど…設計図などは見ることは可能なのでしょうか?」

 

「簡単な設計図であれば見ることができますよ、実は我が国から貴国へ贈り物がありますので、後で見ていただければ貴方も喜ぶでしょう。」

 

「簡単な設計図が見ることはできるのですね、贈り物とは興味深い…。個人的には是非アメリカやカナダと国交を結べる事を願いますよ」

 

情報を探るためにマイラスはさらに探る

 

「あなた方を護衛してきた戦闘機と思われる航空機はどのくらい速度が出るのですか?」

 

航空機は速度が重要だ。速度が上がれば、一撃離脱戦法により、速い方が圧倒的に有利である。

 

セオドアとヴェロニカはお互いにアイコンタクトを取る

 

「F-35D戦闘機であれば最高速度マッハ2.3ほどです。音速の2倍程度ですかね、他にもマッハ2.5ほどの戦闘機もいます。」

 

!!!!????

 

なん、だと!?

お、音速を超えるのか!?どうやって!?今まで我が国でも音速を超える人工物体は存在しない。実験では将来的にロケット推進技術で音速を超えることは可能ではないか?と言われているが、速度面で圧倒的差がありすぎる。

 

「ははは・・・是非見てみたいものです・・・では、こちらへ・・・」

 

マイラスは、アメリカ・カナダ外交団を、空港外へ案内する。

ムーの誇る自動車に乗せてホテルへ向かおうとしたが、もう嫌な予感しかしない。

一体なぜ、これほどの技術を持つ国家が今まで存在しなかったのか…

これほどの技術があるならば正直にいえば中央世界以上の技術があると言わざるおえない。

 

 

空港外には、アメリカ・カナダ外交団を乗せる車が待機していた。馬を使わず、油を使用した内燃機関を車に積むまでに小型化した列強ムーの技術の結晶。

そのデザインもイギリスのロールス・ロイス・シルバーゴーストとよく酷似している。

 

アメリカ・カナダ外交団は、驚く事無く、車に乗車する。

車は出発し、動き始める。特に驚いた様子はない。

やはりアメリカやカナダにも車があるのか…?

 

「どうですかな?我が国の内燃機関を極限まで小型化に成功した自慢のパファリア社製の車ですが」

 

「とてもレトロな雰囲気を持っていて美しい自動車だと思います。貴国は素晴らしい自動車を作りますな」

 

「それはありがたいものです。両国にも自動車はあるのですか?」

 

マイラスは尋ねる。

 

「はい、乗用車であれば、1年前のデータですが、アメリカだけで約2億9879万台以上が走っています」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・は?

 

 

マイラスの目が点とし、間抜けな声を何とか飲み込む

 

 

 

 

…に、に、2億???????

 

一体どれだけの人口なんだ!?

 

ちょっと待て、この世界最大の人口を持っているじゃないか!?

 

 

「そ…そんなに走っていると、道が車で一杯になってしまいますね…」

 

「我が国は、前世界においても、信号システムが世界一進んでいましたので…。国交が樹立出来れば、自動車と共に是非信号システムについても輸出したいものです」

 

「そ、そ、そ、そうなのですか…ちなみに先ほど2億台以上の車両が走っていると仰いましたが、貴国の人口はどのくらいいるのですか?」

 

「はい、アメリカ合衆国は3億7250万人の人口ですね」

 

「カナダ連邦は4564万人ほどです。」

 

ああ、そうですか…

 

もう嫌だ、この二人、胃が痛くなってきたよ

 

カナダだけでも文明国以上の人口じゃないか…

 

マイラスは精神的に疲れてきた。

整地された道をホテルへ向かう。

やがて、高級ホテルが見えてきた。

車はホテルに横付けされ、皆はホテルへ入る。

 

「本日はここまでです。また明日、我が国の歴史と海軍についてご説明いたしますので、本日はゆっくりとお休みください。我が国から盛大におもてなしをさせてもらいますので」

 

「こちらこそありがとうございます。明日もよろしくお願いします。」

 

マイラスは、両国の外交団にこう伝え、ホテルを後にした。

 

もう、今日は早く寝たい、あんな超大国の外交官相手に精神が持たない…

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

アメリカ・カナダ外交団は、ムー歴史資料館にいた。簡単にマイラスは説明を始める。

 

「では、我々の歴史について簡単に説明いたします。まず、各国にはなかなか信じてもらえませんが、我々のご先祖様は、この星の住人ではありません」

 

「!?」

 

「・・・」

 

セオドア外交官は驚きのあまりポカーンとした顔をしている。ヴェロニカ外交官は意味深の目線を向ける

マイラスは話を続ける。

 

「時は1万2千年前、大陸大転移と呼ばれる現象が起こりました。これにより、ムー大陸のほとんどはこの世界へ転移してしまいました。これは、当時王政だったムーの正式な記録によって残されています。

これが前世界の惑星になります」

 

マイラスは、地球儀を取り出す。外交官のセオドアは、見覚えのある地理配置に驚愕する。

 

「これは…!」

 

「!!!」

 

ふふん、アメリカ・カナダめ、前世界が丸い事に驚いているな。

流石にいくら超大国でもこれは知らまい

 

「前世界は丸かったのです。この世界も、水平線の位置からして前世界の2倍強はありますが、丸いはずです」

 

「地球だ!!!!」

 

「へ?」

 

「これは…地軸の位置が少し違うのか?しかし、この配置は紛れも無く地球だ。む?南極大陸がこの位置にあるということは、氷に覆われてはいなかったということか…」

 

「しかし、この大陸はなんですかな?これは存在しないはず…」

 

?何を言っているのか、わからないが説明してやるか…

マイラスは、南極大陸を指示し、説明を始める。

 

「ちなみに、この大陸はアトランティスといいまして、全世界では、ムーと共に、世界を2分するほどの力を持った国家でした。ムーがいなくなった今、おそらく世界を支配しているでしょうね」

 

「ちなみに…」

 

 と言って、マイラスはユーラシア大陸の横にある4つの大きな島が集まっている場所と巨大な大陸を指差す

 

「この国は、ヤムートといって、我が国の友好国だったそうです。そして、もう一つのこの大陸にもアステカ国家も友好国でした。

しかし、転移で引き裂かれたため、おそらく今はアトランティスに飲み込まれているでしょうけど・・・」

 

「少しよろしいでしょうかな?」

 

セオドアがマイラスの発言に割って入る。

 

「?どうぞ」

 

「アメリカとカナダを説明するのに、一番良い方法が出来ました」

 

「はい?」

 

「我々も転移国家です。同一次元にあった星かは不明ですが、おそらくあなた方の昔いた星から転移してきたとおもいます。

あなたが指差したこの大陸が我が国です。そして・・・」

 

セオドアはバッグから地図を出す。

 

「これが現在の北米大陸地図、そしてこれが私たちの過去にいた世界の地図です」

 

北米大陸地図、そしてメルカトル図法を使用した世界地図がマイラスに見せられる。

その地図には、たしかにムーのいた、ムー大陸の存在しない前世界地図があった。

マイラスの脳裏に衝撃が走る。セオドアが言葉を続ける。

 

「我々の元いた世界にも、1万2千年前に、突如として海に沈んだ大陸があると、言い伝え程度ですが残っています。

あなたが今アトランティスと呼んだ大陸は、南極になってしまっているようですね。もしかしたら、地軸がずれたのかな?」

 

「貴方が言っておられたアステカ文明もありました」

 

 

!!!!!

 

「は、ははは…まさかの歴史的発見ですね。あなた方アメリカとカナダとは、個人的には友好国となってほしいものです。まさか、そんな事が…。

後で、すぐに上に報告いたします」

 

せ、正確だ…一体アメリカとカナダはどんな技術を使えばこんな精巧な地図ができるというのだ!?

航空写真でもこれほど精巧な地図作成はできない!

これも報告する必要があるな…

 

その後、マイラスは簡単に歴史を伝えた。

 

転移後の混乱、周辺国との軋轢、魔法文明に比べての劣勢、機械文明としての再出発、そして世界第2位の国家へ。

ムーの歴史は、転移してからは苦難の歴史だったようだ。しかし、単一国家独力で車や飛行機を開発しているのは驚きの限りである。

 

 

セオドアは個人的にムーを評価していた

転移してから周りが魔法文明の中競争相手もいない戦乱の中、科学を発展させて、独自でたった一カ国で蒸気機関を開発し、1900年代ヨーロッパやアメリカ、日本などで苦難な道を辿って発展させたのを一カ国で開発しているなんて、もし、ムーが後数十年すればいずれジェットエンジンや宇宙へ行くことも不可能ではないのかもしれない。

優秀な民族だ。

やはり、ムー帝国は北米大陸条約機構に加盟して欲しいものだ。

もし、ムーが加盟し、西方方面を確保できれば、中央世界に十分に経済的にも戦略的にも対抗できる。

これは報告内容が増えたものだ。

 

 

 

一通り説明が終わり、アメリカ・カナダ外交団を海軍基地へ案内する。

両国に対してムーの…列強で最強かもしくは2番目の海軍力を誇るムーの姿を見せ付けてやらなければならない。

マイラスは、ロウリア王国で魔写されたアメリカの艦船を思い出す。

全長は我が国の最新式戦艦ラ・カサミよりも長いが、回転砲等の砲が1門しかついていない。しかもおそらくは12か13センチクラスの砲だ。

それに対して戦艦ラ・カサミの主砲は30.5センチメートルの2連装が2基、計4門だ。

砲撃の威力は口径の3乗に比例する。撃ち合えばよほどの事が無い限り勝てるだろう。

いかに超大型空母がいたとしても飛行機で戦艦を撃沈することはできないからだ。

いかに航空母艦が大型だろうが、所詮は洋上に浮かぶ箱舟

戦艦の前にはただの的でしかない

今回は自信満々に案内できそうだ。

 

港には、ムー国海軍の最新鋭戦艦ラ・カサミが停泊していた。

 

「!?これは…戦艦」

 

「やはり戦艦というものはかっこいいものだな…」

 

セオドアとヴェロニカはそれぞれの感想を述べる。

セオドアは目を見開いていた。

 

うん?戦艦というものはかっこいいもの?ということは戦艦を保有しているのか?

 

 

「こいつは旧大日本帝国海軍の三笠にそっくりだ、アメリカのアイオワ級やサウスダコタ級、アラバマ、テキサスを思い出すものだ…」

 

「我が国にはハイダしか博物館船はいませんからね…戦艦は羨ましいものですな」

 

うん?そっくり?やはりアメリカには戦艦を保有しているのか?しかもアイオワ、サウスダコタ、アラバマ、テキサスだけで4隻の名前が出た。

ならば我が国に訪問した艦艇は本気ではないということか?

となればどうして主砲が1門の艦艇を建造する?

情報がもっと欲しい…

 

「ほう、両国にも戦艦があるのですか?」

 

「そうですね、我が国には約30年以上前までは、立派な戦艦を保有していました。しかし、時代の流れに伴い戦艦は建造されなくなりましたが」

 

「我が国には戦艦はないですね」

 

戦艦を保有していたのに時代の流れに伴い建造されなくなった?どういうことだ?

どうして、わざわざ主力艦である戦艦を建造しない?よほど平和な世界になったから必要なくなったからか?

だとしてもたった1門の主砲で何ができる?

いくら30年とはいえ、アメリカは未だ戦艦を建造能力はあるのか?

あれほどの300mを超える超大型艦を建造できるのなら、我が国の戦艦を建造することは可能なはずだ。

アメリカ軍の正規空母は超大型航空母艦だ。

護衛艦は巡洋艦ばかりの艦艇だった。

通常ムー帝国では排水量と特性で判断している。

3000tクラスで駆逐艦、5000tクラスで軽巡洋艦、1万tクラスで重巡洋艦、飛行甲板を有する艦艇は航空母艦

25㎝以上の主砲を搭載する艦艇は戦艦とそれぞれで区分わけされていた。

アメリカ艦隊は明らかな超大型空母と重巡洋艦ばかりの編成で駆逐艦や軽巡洋艦らしき艦艇はなかったように見える(ムー帝国基準)

恐らくあの空母も6万…7万トンを超えるだろう

 

「となればアメリカは我が国同様転移した今では配備する予定はあるのですか?」

 

アメリカのセオドア外交官は少し難しい表情を作る。

 

「戦艦は我が国でも議論になりましたが、現在のところでは配備予定はありませんね、アイオワ級もサウスダコタ級もとても戦闘には耐えられませんからな、今では記念艦となっています。」

 

「そうなのですか…この世界では弱肉強食なのですが、戦艦を建造する必要はあるのではないのですか?」

 

「そうですな、我が国としてもコストパフォーマンスを考慮すれば戦艦の必要性が増していますが我が国には戦艦を建造するための技術がすでにロストテクノロジーとなっていますからね」

 

なるほど…

 

「そうですか…ところで、先ほど日本の艦に似ているとおっしゃっていましたが、日本という国は?」

 

「日本は転移する前の我が国の最大の同盟国でした。今では一緒に転移していないので、この世界には存在しませんが、日本では三笠と呼ばれる戦艦がありました。約140年前に日本が大日本帝国と呼ばれていた時代に存在した連合艦隊の旗艦です。この艦があそこに停泊している戦艦にそっくりに見えましたので…。

日本は先ほど歴史のご説明の中にありましたヤムートという国の末裔となる国です。」

 

「!?な、なるほど…」

 

大日本帝国海軍 

戦艦三笠 1900年に進水し、1903年連合艦隊の旗艦となる。

1904年から日露戦争に加わり、旅順口攻撃や旅順口閉寒作戦に参加、そして黄海海戦にも参加した。

1905年には、有名な日本海海戦で、当時世界最強といわれたロシア海軍のバルチック艦隊と交戦した伝説的な艦であり、現在は記念館として、人々を楽しませている。

 

「なるほど…先ほどアイオワやサウスダコタなどが名前で出ましたが、どんな戦艦ですか?」

 

「そうですね、この画面を見てもらってもいいでしょうか?これがアイオワ級です」

 

セオドア外交官はスマホを操作し、画面を展開すると見せる。

 

!!!!!!!!!!

 

な、なんだ、これは…

こんな小さな黒い板に精巧な絵が表示しているだと!?

どんな技術を使っているんだ!!!

それにこの戦艦は…第八帝国の戦艦グレードアトラスターよりスマートだが、巨大だ…

これが記念艦だと!?

どう見てもラ・カサミ級よりも強力な主砲が三連装…

だが、なんだがすっきりしている…

 

「今ではすっかり博物館となっていますからな~」

 

これほどの技術がありながら建造しないなんて宝の持ち腐れというのはこのことだろう。

それが今ではたったの1門の砲と旧式のガトリングを搭載するようじゃ莫大な維持費がかかる金食い虫の戦艦は必要ない世界だったのかもしれない。

 

 

戦闘艦の中でも最も戦闘能力が高い戦艦は高い技術能力を必要とする。

技術は伝承しなければロストテクノロジーとなって消えてしまう。

戦艦が建造されなくなって90年以上も経過しているなら航空分野では脅威になるが、海上分野ではこちらが勝利するだろう。

だが、良い情報を得た。あれほどの戦艦であればグレードアトラスターに対抗することが可能だろう。

是非とも記念艦となっている戦艦を調査せなば…

 

 

ムーの技術士官マイラスの案内が一通り終わり、ムー首脳陣に報告が上がる。

報告内容は上層部や首脳陣にとって頭を悩ませるものであったが、相手が友好的な態度で国交を締結したいということなので、ムー帝国は国交を締結する。

この裏には脅威になりつつあるグラ・パルカス帝国に対抗するためにできるだけ戦力と技術が欲しいムーの思案もある。

 

 

 

 戦艦の配備にはアメリカ軍部でも戦列艦やワイバーンに対しミサイルを使用することは明らかコストパフォーマンスとして費用対効果を考慮すれば全く採算に合わず、むしろオーバーキルで、それなら砲弾でもいいのではないか?と意見が出たが、小口径・中口径しか持たないイージス艦や巡洋艦しか持たないアメリカ海軍は一時期アイオワ級を復活させる話も出たが、アイオワ級は退役してから30年以上は経っており、たとえ配備できたとしても戦闘には耐えられないと判断された。

 

海軍の中でも戦艦を建造すべき、とパターソン中将派が推し進めていたが、上層部が現在建造しているビアトリクス級駆逐艦や現用艦で十分事足りると判断され、白紙となった。

一応アメリカにはアイオワ級戦艦、サウスダコタ、テキサス、アラバマなどが記念艦として現存するが、それはあくまでも記念艦であって、戦闘に出しても十分な戦闘能力を発揮せずに運用に支障が来たすことが予想され。戦艦の配備計画は保留となっていた。

 

 

アメリカとカナダはムー帝国へ技術的支援を行う代わりにムーにNATOへ加盟、安価で資源輸出、魔導機械に関する情報・研究などを譲歩することになり、ムー帝国へ基礎工作機械(旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、歯切り盤、研削盤、プレス機など)の輸出、バートニア州への留学・研修、工業力向上に協力となった。

 

また、アメリカから贈り物として送られた物にムー帝国は驚愕し、この贈り物によって後の戦いに大きく影響することになる。

 

 

 

余談であるが、ムー帝国はアメリカからの輸出として石炭や石油も求め、アメリカやカナダ側は広大な大陸であれば原油や石炭鉱はあるのでは?と首を傾げるが、ムー帝国は産業革命時から多くの石炭を採掘し、原油も算出しているが、これから増える需要に供給側が新規の鉱山開発などに手間取ってしまい、工業化を進めるためにアメリカから輸入することが決定した。

アメリカ側としても原油はともかく石炭は有り余っている状態なので、承認した。

 

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