星と楓の異世界戦記(旧 2019年打ち切り)   作:ミュラ

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3魔法

 

アメリカ合衆国西海岸ロサンゼルス、ホテル食堂

 

使節団がロサンゼルスに到着してから、ロサンゼルスの発展具合、高層ビル街の摩天楼、広大な人工物で敷き詰められた巨大都市、走る自動車、ホテルの設備など驚愕する内容を言えばキリがない。

しかも大都市にも関わらず首都ではない。

これだけの大規模など中央世界でも存在しないだろう。

さらにロサンゼルスくらいであれば西海岸だけでサンフランシスコ、ラスベガスなど大都市は複数あるのだと

正直に言えばこれを聞いた使節団は頭を抱えた。

蛮国だと思い、派遣された国家を実際で見ると超大国であった。

もしかすると古の魔法帝国に匹敵する文明レベルではないか?

だとすればもし、この国が領土拡大の野心を抱いていればクワトイネ公国・クイラ王国・ロウリア王国なんて簡単に捻り潰されるだろう。

パーパルティア皇国がいい例と言える。

パーパルティア皇国は皇帝が変わってから領土拡張の野心が強く、幾多の国家が飲み込まれた。

いずれパーパルティア皇国はこちらにも地理的に考慮すれば十分侵攻する可能性が高い。

味方にしなければクワトイネはパーパルティア以前にロウリア王国に滅ぼされる可能性が高い。

 

ヤゴウとハンキはこれから行われる会談に不安を抱きながら

 

「なあ、ヤゴウ殿」

 

「なんでしょうか」

 

「この国をどう思う」

 

「そうですね…一言で表すとすれば、豊かと言えます。

 

圧倒的な技術力や国力、軍事力、文化、どれを比較しても比較対象になりません。

 

現にこのホテルは高級ホテルとは言え、温度が常に一定に保たれています。これだけの超巨大建造物の空間の温度を保たせるのにどれほどのエネルギー量が必要とするのか。想像すらできません。しかも、この建物だけではなく、ほぼ全ての建造物に空気が常に調節されています。

 

常に捻るだけで暖かいお湯や冷たい水の温度を調節する機械、膨大な清潔な水を常に供給する上水構造、トイレも勝手に流してくれるまで実現されています。

ここまででも驚愕の一言しかありませんが、夜間でも普通に物資を購入する無人の販売機械、物資を常に供給する流通。

 

これだけの広大な広さの都市を常に明るく照らし、治安も信じられないほど良いです。

我が国や他国でも誘拐・殺人・暴行・レイプなどがありますが、そういった事件が発生してもすぐに駆けつけてくる警察という警備隊組織

まさしく異世界から転移した国家です。

さらに空軍基地でも見せてもらった、あの鉄龍は練習用であれほどの能力を持っています。

戦闘用となれば一体どんな能力を持つのか、想像すらできません。

 

この国は魔法へ依存せず、科学だけで発展しましたが、逆に魔法へ依存しなくてもこれだけの文明を築ける。

個人的には絶対に敵に回してはいけない国家だと思いました。

下手をすれば古の魔法帝国並みの文明力を持つと思われます。」

 

 

 

「ちょ、ちょっと待て、この国の文明レベルが高いことはわかったが、流石に古の魔法帝国ほどは大げさではないか?もし、それが本当だとするとアメリカは中央世界よりも先進国になるぞ」

 

「はっきり申し上げますと中央世界よりもアメリカとの外交が重要だと思います。昨日見せて貰った鉄龍とはいい、300mの巨大船、アメリカにはもっと強力な兵器を持っている可能性すらあります。

今後としても決して絶対に敵に回してはいけません。

カナダも恐らくアメリカ同様の国力を持っていると見て間違い無いでしょう。」

 

「そうか、やはり同じ思いか…。あの練習型の鉄龍であれほどの性能を持つのだから、戦闘用はさらに高い性能だろう。

あれらが来られた日にはワイバーンの空中戦術は役にたたないだろうと私も思う。明日は首都に出発じゃな。この国は心臓に悪いよ」

 

「私はワクワクしていますよ。このような国が、近くに突然現れ、しかも自分たち以外を見下しきっている文明圏よりも高度な文明をもっている。その最初の接触国が我が国とは……。彼らに覇を唱える性質がないのなら、これは幸運です」

 

「ああ、クワトイネのために明日は何としても成功させねば我が国の命運に関わるだろう。」

 

ヤゴウとハンキは、深夜まで語り続けた。

 

クワトイネ側の使節団は当初アメリカやカナダを見下す姿勢もあったが、彼らの文明を見た瞬間、そんな考えなんてとうの昔に吹っ飛び、できるだけこちらに不利にならない外交へ持っていくことを決めた。

 

翌日

 

「みなさん、おはようございます。昨日は良く眠れましたか?」

 

 スミスが集まった使節団に話しかける。

 

「本日は、朝食の後、午前10時00分から首都での行事について説明があり、11時30分にホテルを出発、12時00分にロサンゼルス発の飛行機に乗ってもらい

16時20分にはワシントンDC、ダレスへ付きますその後は……」

 

説明が続く

アメリカに来て思う事は、時を刻む概念がはっきりしている事だ。

腕時計と呼ばれる精密な機戒が使節団に配られている。

秒単位で時を刻む事ができ、それが簡単に持ち運び出来るということは、軍において、

時差の無い一斉攻撃が可能ということだ。

軍の効果的運用という意味合いにおいて、これは凄まじい事である。

さらに驚くべきことは、今配られた時計は「でんぱそーらーうぉっち」と言うらしいが、

これは光ある限り動き続け、誤差は10万年に1秒しか無いという。

なんと形容していいのか解らない。

 

「スミス殿、ロサンゼルスとワシントンDCは、4200km以上離れていると聞いていましたが…。」

 

「はい、そうですが」

 

「今日乗る飛行機と言われる乗り物は、人を運ぶ鉄龍のような乗り物とは聞いておりますが」

 

ヤゴウは話を続ける。

 

「16時20分着というのはなんですか?そんなに、分まで正確に着くのですか?」

 

「はい、災害や事故が無ければ、時間どおりに着きます」

 

・・・どうやら、本当に我々の知識でアメリカを図ろうとしてはいけないらしい

4200kmも長距離で一体どうやっていくのだろうか、4200kmなんてワイバーンでも3分の1も飛行できない距離だ。

 

 そんなにも正確に着くものだろうか…

 

「解りました。ありがとうございます」

 

「いいえ」

 

 スミスは、満面の笑みで笑いかける。

 

 

 

キイイイイイ・・・・・・・・・ガシャアアアアアアン!!!!!ドン!!!

 

 

何かが激しくぶつかり合う轟音が響き、使節団は何事か、と動揺する中、ヤゴウは窓から通りを見た。

そこには赤い車?と細長い金属の筒状を乗せた大型の車が止まっており、付近には事故に巻き込まれたのか、複数の負傷者が見られる。

さらに赤い車から火が出ており、非常に危険な状態だということは認識できた。

 

「!?いかん!タンクローリーが爆発するぞ!早く使節団を避難させるんだ!!!」

 

とスミスは慌てるように避難させようとするが、ヤゴウや他の魔導師が緊急事態だと認識し、現場へ急行した。

それに焦るかのようにシークレットサービスや外交官は後を追いかける。

 

「ちょ、ミスターヤゴウ氏!危険です!すぐに退避をお願いします!もうすぐ消防車とレスキュー隊が来ますから!」

 

「今治癒せねば、あの者たちは助からん!スミス殿には悪いが救える命は救わないと手遅れになる!」

 

「し、しかし…」

となおも引き留めようとするが、魔導師やヤゴウはそんな制止を振り切り、負傷者の治癒に取り掛かる。

 

 

負傷者はうなだれており、頭に開いた傷口からは、脈打つたびに、激しく出血していた。

 

「いかんな…。,.vmtaiba,eo.,b,a;wsoe4igamoiseo」

 

 ヤゴウは何かを唱え始め、両手が淡い光を放つ。何もない場所から発生した光は太陽光よりも強く、一瞬見えない光景になったが、次の瞬間信じられない光景が広がっていた

 

「!!!!!!!!!!き…傷口が!!」

 

負傷者の頭の傷が、みるみるうちに塞がっていく。数ヶ月以上かかる再生が瞬間的に再生された光景にスミスやボディーガード、大衆が目を丸くしていた。

周囲には人だかりが出来ていた。

 

さらに魔導師も燃え盛る車に接近し、呪文を唱える。

炎の勢いは強く、タンクローリーに積まれている大量のガソリンに引火すれば大惨事になるだろう。

しかし、若い女性魔導師が燃え盛る炎に対し両手を向けた。

 

「gavato.to..yuhyuaro...」

 

水が出現し、水は燃え盛る炎の中心でパンパンに詰まった風船がいきなり爆発するように水が爆発し、周辺の火をあっという間に消した。

 

 

 

この光景に周りの野次馬も驚愕した声を出す。

 

「す……すごい!!!見たか!?今の」

 

「見た!!あの人が何かを唱えたら、傷が塞がっていった!!」

 

「oh……信じられない。まるで魔法みたいだ!!」

 

誰かが叫ぶ。

 

「?魔法ですが、何が珍しいのですか?」

 

オオオオオオオオオオオォォォォォォ

 

何気なく答えた言葉に、周囲が沸き立つ。きょとんとするヤゴウ。周囲は喧騒に包まれた。

 

 

 

 

 

凄い…あれが魔法か

とスミスはヤゴウたちを急いで車へ誘導する最中に考えていた。

魔法はかつて伝説の空想上でしか存在しなかった。

だが、この世界に転移してから合衆国は空想上でしか存在しない生物や魔法と対面することになり、逆に合衆国が空想世界へ転送されたのではないのか?とディズニーのような展開を思い浮かべてしまう。

空想上でしか存在しない魔法を目の前で見ることができたスミスはある意味興奮していた。

子供の頃はディズニーの魔法や日本のアニメや漫画も見て一時は魔法に憧れた。

当然、アメリカどころか、空想上しか存在しない魔法を実現することなんて不可能なものを夢見ていたが、大人になるにつれ薄れた。

しかし、この世界に来てから見ることができない魔法を実際に見たことで、彼は魔法に対して興味を一層強く抱いた。

 

(合衆国でも魔法に対して調査されているが、まだまだ未知の領域が多く、うまくいけばクワトイネから魔法を扱える者を派遣してもらいたいものだ…我々でも魔法を扱うことが果たしてできるのだろうか…?)

 

と気分を高揚させながら使節団を急いでチャーター機へ乗せ、離陸する。

 

 

 

そんな遠くへ飛行する飛行機を眺めながら黒いスーツを見にまとう人々が車から見ていた。

 

 

「おい記録は撮ったか?」

 

「はい、バッチリと」

 

「まさか魔法を早速使ってくれるとは思わなかったが良い資料が撮れた」

 

「本当に魔法が存在するですね…」

 

「よし、それをペンタゴンへ送れ」

 

「了解です。」

 

 

アメリカやカナダ政府は最初に接触した調査隊の調査によりドラゴンの存在、中世のヨーロッパ、異種族などファンタジーの世界に出てくるような単語ばかりで最初は驚愕した。

接触した外交団からクワトイネ側からワイバーンを着艦するとき、風を操ってミニッツ級に着艦した時はすぐに政府に報告した。

これに魔法の存在を認識した合衆国はすぐに魔法について調査を進めるのと同時に機会があればクワトイネ使節団から情報を得るようCIAに調査させていた。そして交通事故で起きた魔法は何もない場所から何十リットルという水が発生したと思えばあっという間に消し飛び、けが人も治療した。

CIAが録画した映像資料にCIA上層部は仰天することとなった。

 

 

 

 

飛行機の中にて

 

「いやはや、驚きました。資料には書いてありましたが、実際に魔法を見ることが出来るとは…。その上負傷者の手当に消火まで貴国には感謝の言葉をかけます。」

 

スミスが褒め称える。

 

「アメリカでは、回復系の魔法は珍しいのですか?」

 

ヤゴウは、褒められて悪い気はしなかった。今までは驚いてばかりだったが、初めてアメリカ人を驚かすことが出来、内心少し自慢してやりたい気分になっていた。

 

「いえ、回復系もなにも、魔法そのものが我が国にとっておとぎの世界でしか存在しないものですから」

 

「え!!!!!!!!!」

 

スミスの何気ない一言に、使節団の一同は口をそろえて驚く。

 

「しかし、あの鉄龍やこの大型鉄龍との地上のやりとりは、魔信でなければ、なんなのですかな?」

 

ハンキが問う

 

「あれは電波を使用しています。…何といいますか、前にも一度ご説明申し上げたかもしれませんが、アメリカの発展は、すべて科学によるものです」

 

「全てかがく?」

 

「はい、アメリカは物理……。物の理ことわりをとことん追求しています。これにより、作られた物により、アメリカは国を維持しています。

カナダも同様です。」

 

使節団にとって、国家機密級の発言をさらっと言われた瞬間だった。

アメリカに魔法が無いのなら、我が国の魔法技術を良い条件で輸出できる。

例えば、簡易式の外科を開設し、小さな傷や肩こりを治すことも出来るし、今回のような事故による救急外来でも需要はあるだろう。

一時的な傷の回復は、魔法が相当効果的だ。

また、魔法学校を開設して、授業料をとることも出来るだろう。

 

クワトイネ公国を発展させる上で、アメリカが科学のみに頼っているのは重要な発見だった。

戦闘に使えるほどの個人の魔導士を大量にそろえるのは、そもそも素質の問題があり、魔法技術、人的資源がものをいうが、アメリカの言う「科学」で、理を知っていれば作ることが出来るのなら、我々にもある程度の模倣ができる。つまり、「国力」の基本値を上げることが出来る。

 

魔法がないアメリカにとって魔法は飛びつかないはずがない、彼らの技術を導入しつつ交渉せねば・・・

 

「スミス殿、物のことわり.…科学や物理を技術輸出してくれることは、可能だろうか?」

 

「我が国とカナダには最近、新世界技術流出防止法という法律が出来ました。中核的な技術の輸出は禁止されていますので、難しいとは思いますが、制限付きで物理だけなら、そのへんの本屋で売っています。ただ、翻訳作業が全く進んでいないので、あなた方の言葉に翻訳するのは、難しいと思います。合衆国との国交が締結されれば後に翻訳が進み次第買うことができるでしょう。」

 

この世界は、不可解なことが多く、言葉に関しても、言葉は通じるのに、文字にすると全く違う言語、文法になる。アメリカやカナダはこの世界に転移して間が無く、又、現時点どの国とも使節団派遣のレベルであり、国交が無いため、翻訳作業は様々な分野で急ピッチに進められている。

幸い言語の壁がないことで、お互いの翻訳作業はかなりの進行速度で進んでおり、クワトイネ以外でも接触した異世界も言語の壁はなく、全て英語であった。英語は地域によって異なるがクワトイネはアメリカ英語に近い。

ヤゴウは、物理、科学の本をなるべく多く持ち帰る事を心に決めた。

 

ただし、アメリカは異世界との圧倒的技術格差があることに気づき、なるべく中核的な技術や軍事技術、歴史資料、武器の資料、科学の発達について書かれている書籍について制限をかけた。

少しでも中国のように急激な発達しないよう制限するつもりでいた。

インターネットも後少しで復旧する見込みであり、インターネットのWikipediaや中核的技術に間する内容は規制をかける予定であった。

2020年、急激な成長によって国力と軍事力がついた中国は南シナ海・東シナ海・インドの一部などへ武力を用いた実効支配を本格化させ、結果アジアへ派遣していたアメリカ軍と軍事衝突を繰り返した。アメリカやカナダ側としても圧倒的技術格差があるのならば、技術については慎重に取り扱っていた。

 なぜなら一つの情報で日常だけではなく戦場も変える代物など多くあるのだから。

もちろん、情報は存在する限りいずれ知られるだろうが、タイミングの問題であった。

現在アメリカやカナダが友好を目的とした外交でも相手が情報を持っているのといないでは外交のやり方が異なる。

簡単に言うなら、相手の情報を知っていると当然その情報を元に外交を進めるのだから、優位的に外交を進めたいアメリカやカナダ側にとって不都合になるからこそ、慎重に進めている。

 

 

 

飛行機は順調に走行していた。

 

「ハンキ様、それにしても、飛行機は速いですね」

 

「そうじゃな、これほどの速度で飛行しているのに、中はほとんど揺れず、快適そのものじゃ。しかし、これほどの速度で飛行するなら、事故が怖いのう」

 

「飛行機は人為的事故以外で事故を起こすことは滅多になく、快適な空間で旅ができる安全な乗り物とのことです。」

 

「うーん、信じられんのう。そう聞いてもやっぱり不安じゃ」

 

そんなことを話しながら、飛行機は進んだ。

 

 

ヤゴウの日記

 

鉄龍…いや飛行機はとんでもない速度で飛行しているのに関わらず快適で空中で食事をすることになったことに驚愕した。

アメリカの飛行機は超大型であり、これを作ることは我が国にも、文明圏の国家でもほぼ不可能だろう。

ロサンゼルスという大都市とはいい、この国は異常だ…

飛行機はワシントンDCへ到着した。

ワシントンにはロサンゼルスと違い、緑豊かで我々がよく目にする建造物もあるが豊かである。

一見ロサンゼルスほど巨大なこうそうびるというものが少ないが、政府組織だけなら十分すぎるほどである。

ここにはアメリカを代表する歴史や文化が充実しており、いい街だと思った。

映像で見せてもらったニューヨークというものは信じられないものであった。

ロサンゼルスよりも人の数、鉄龍が飛び交い、天を貫くビルが多くあった。

我が国の有名な山脈エージェイ山(海抜高度539m)を凌ぐ建造物がアメリカには多く存在する。

もはや文明圏列強の首都を遥かに凌ぐ規模であり、何もかもが次元が違った。

しかも彼らの話によれば転移してから接触した国は我が国が初めてらしく我が国の国益に叶うよう、最大限の努力をするつもりだ。

私はこの歴史的瞬間に立ち会えることに非常に感激してやまない。

初めてのこの歴史的瞬間は我が国にとって将来大国へ仲間入りできる機会を有効に使わなければならないだろう。

 

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