星と楓の異世界戦記(旧 2019年打ち切り)   作:ミュラ

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5戦乱

 

中央暦1639年

 

アメリカとカナダという国が転移してから、数ヶ月が経とうとしていた。

 

彼らと国交を結んでから2ヶ月、クワ・トイネは、今までの歴史上最も変化した数ヶ月であった。

アメリカ合衆国とカナダ連邦は、クワ・トイネ公国と、クイラ王国両方に同時に接触し、双方と国交を結んだ。

 

アメリカ・カナダからの、食料の買い付けや工業進出などには、食料はともかく土地は余っているクワ・トイネは、アメリカからの要求に応える事が出た。

 

カナダの要求も食料は問題なく輸出することが可能だ。

 

クイラ王国にあっても、元々作物が育たない不毛の土地であったが、両国によれば、資源の宝庫であるらしく、戦略資源である原油・ウラン・レアメタル・レアアースなども埋蔵され、未知の鉱物も発掘された、クイラ王国は、大量の資源をアメリカに輸出するための施設建設ラッシュが開始されていた。

 

一方、アメリカ・カナダは、これらを輸出してもらう変わりに、インフラや企業進出による膨大な雇用を輸出してきた。

大都市間を結ぶ、石畳の進化したような継ぎ目の無い道路、そして鉄道と呼ばれる大規模流通システムを構築しようとしていた。これが完成すると、各国の流通が活発になり、今までと比較にならない発展を遂げるだろうとの、試算が議会から上がってきている。

両国では今まで中国などへ進出、日本・ヨーロッパなどの電子部品、精密機械に頼っていた大企業や多国籍企業などは大打撃を受け、これよりアメリカとカナダ全体の経済が大混乱となった。

大混乱となった国内では何とか州軍を出撃させるなど落ち着きは取り戻しているが、かつて地球時のアメリカ合衆国を再建するには莫大なコストと労力が必要となった。

ましてや、発展途上国どころか、産業革命すら迎えていない欧州の暗黒時代のような国家へ精密機械や工業品を売りつけてもインフラや発電所、工業品を扱ったことがない彼らにとって無用な存在であった。

政府はクワ・トイネ公国やクイラ王国をサウジアラビアのように莫大な富を大量に使わせるために近代的な国家建設に全面サポートをする計画も立っていた。

 

コストや多大な労力を必要とするが、それでも何もしなければアメリカ・カナダの経済はリーマンショック並みにダメージを受けている状態でさらに悪化し、世界恐慌以上の大打撃を負う事になる。

そうなればアメリカやカナダはゆっくりと国内から衰退し、再建に更なる時間がかかってしまうことは間違いない。

それだけは何とか避けるためにも両国は必死であった。

アメリカ同様転移したカナダも大混乱となっているが、政府はアメリカに追従する姿勢で方針を決めている。

莫大なインフラを輸出することで効率よく天然資源や物資をクワ・トイネとクイラから輸入できる。

両国へ柔軟に交通網を構想すれば将来的にアメリカは再建するだけではなく成長する見込みが十分考えられた。

 

 

アメリカの駐留軍と中東へ派兵した軍の損失は、いくら超大国と呼ばれるアメリカでも顔色が真っ青になるものである。

アメリカ軍全戦力のうち32%、総兵力29%少ないと見えるが兵力の140万人のうち24万人以上ほどである。

原子力艦艇も空母5隻、潜水艦14隻以上を損失した。

他にも金融業界など大混乱となっている。

 

まさしく転移現象はアメリカ合衆国全体を恐怖へ叩き落とす現象であった。

 

*転移した範囲は北米大陸アメリカ合衆国・カナダ・ハワイ諸島・アリーシャン列島・グリーランドのみが転移しただけであり、アジアと中東を中心に駐留していた戦力を全て失ったこととなる。特にもっとも被害が大きいのはアメリカ欧州海軍第6艦隊、中東へ展開した第5艦隊、日本へ派遣していた第7艦隊の5割以上失った。つまりアメリカ海軍で即時作戦行動を可能とする艦隊は第1艦隊から第4艦隊。

幸いの点は消失した艦隊はいくつか、対中国戦争によって国内へ集結したことで、全ての第5艦隊から第7艦隊全てを失うことはなかったことで残存する艦艇を集めた第5艦隊編成にも加わることになった。

しかし、これによってアメリカ海軍は再建に奮闘することになる。

 

 

 

異世界国家側は各種中核的技術の提供も求めたが、両国には新たに、「異世界技術流出防止法」と呼ばれる法律が出来たため、中核的技術は貰えなかった。

また、武器の輸出も求めたが、前述の「異世界技術流出防止法」で「軍用兵器」輸出は禁止されている。

近代兵器は機密と戦略的に禁止されているが、猟銃・リボルバー程度などの民間の銃器類は輸出を検討することになった。

 

アメリカ・カナダから入ってくる便利な物は、明らかに彼らの国の生活様式を根底から変えるレベルのものばかりであった。

いつでも清潔な水が飲めるようになる水道技術(もともと水道技術はあったが、真水ではとても飲めたものではなかった)、夜でも昼のように明るく出来、さらに各種動力となる電気技術、手元をひねるだけで、火を起こせ、かつ一瞬で温かいお湯を出すことが出来るプロパンガス、これだけでも生活はとてつもなく楽になる。

両国はすべての分野において中世レベルなので、アメリカ・カナダは文化的支援も行い、各分野の向上させるためにも国力の基礎である教育システムや生活の質の向上など全面サポートに努めた。

しかし、どうしても連携することが難しい宗教や利権とのトラブルは跡を絶えなかった。

根本的に民主主義の政治・資本主義経済ではないことが仇となり、緩やかな資本主義形態へ移行することに政府や各企業も方針を固めた。

 

衣服や女性関係用品なども異世界の国家とは比較にならないほどの高品質であり、衣服関係や化粧品、女性生理用品などの大手企業を中心とした企業は異世界の事情を知り、積極的に企業進出させる計画もある。

まだまだ、数ヶ月しか経っていないので、普及はしていないが、それらのサンプルを見た経済部の担当者は、驚愕で、放心状態になったという。

国がとてつもなく豊かになると・・・

 

 

クワトイネとクイラはアメリカとカナダの全面支援の元次々とインフラや港湾整備され、真っ先に整備された港湾設備は見たことのない巨大な赤い金属製の超重機が設置され、海岸には繋ぎ目のない石で覆われ、超大型船でも停泊できる近代的な港湾設備へたった2ヶ月で変貌した。

これにはアメリカの資本が積極的に投入され、将来異世界国家との貿易市場拡大に狙いをつけている傾向が多くあったことが建設速度促進に繋がった。

その後、インフラ系企業が進出し、インフラの発電所・変電所・水道関係・アスファルト製の道路が建設された。

工事スピードは異世界側から見れば10年ほどはかかる工程をたった数ヶ月でやり遂げるアメリカやカナダに驚愕する声が上がった。

さらにアメリカは鉄道という線路を引いた上を走る金属の列車を走らせる事も計画されていた。

 

「すごいものだな、アメリカとカナダという国は…。明らかに3大文明圏を超えている。もしかしたら、我が国も生活水準において、3大文明圏を超えるやもしれぬぞ…」

 

クワトイネ公国首相カナタは、秘書に語りかける。

まだ見ぬ国の劇的発展を、彼は見据えていた。

 

「はっ。しかし、彼らが友好的な国家で助かりました。強大な軍事力を保有しているのに関わらず、彼らの技術で覇を唱えられたらと思うと、ぞっとします。」

 

「そうだな、しかし、軍用武器を輸出してくれないのは残念だったな…それでも民間用ではあるが武器を売ってもらえる事に感謝だ、少しはロウリア王国の脅威も低減するだろう…」

 

「はっ!彼らの民間用とはいえ販売予定の『リボルバー』や『ショットガン』という銃器は素晴らしいものです。」

 

「うむ…あれを軍に配備できればロウリアを蹴散らすこともできるのかもしれない……貴族たちの様子はどうだ?」

 

「はい…最初はアメリカやカナダの政治形態を見て反抗する動きもありましたが、両国の素早い対応と政治には一切口を出さない姿勢を見せてくれたおかげで、沈静化しました。」

 

「そうか…しかし、アメリカやカナダという国…あの国には王族や貴族といったものが存在しないと聞いた時は驚愕よりも恐ろしさが舞い上がっていた…」

カナタは万が一アメリカやカナダと貴族や王族がいないことの背景によって貴族による妨害や過激的な行動に移すのではないか、と冷や冷やしていた…

もし、何かしらアメリカやカナダの外交官などに危機があれば、両国が持つ海軍力だけでもロデニウス大陸では対抗できない…

一瞬で滅ぼされ、貴族や王族は全て処刑されることも考えられなくはない。

特にクイラ王国は今の所悪政は全くないが、つい数十年ほど前はポルポラート・クイラ29世王によってかなり荒れ、現ジルト・クイラ30世によって非常に国民から親しまれている。

 

 

はあ…まだまだロウリア王国の件もある…安心できない状態だが、アメリカやカナダが助けてくれることを祈ろう…

とりあえずカナダから輸入したカナダ産メープルシロップ漬けのリンゴケーキでも食べよう…

アメリカの菓子料理は美味いが何分にも味が濃く、少し毎日というわけにはいかない…

しかし、カナダ産のメープルシロップ系のお菓子というものは非常に美味しく、今では貴族だけではなく国民にも徐々に広まっている大人気名物となっている。

 

ふふふ…今日も仕事が終わったら、早速ケーキを…

 

「カナタ首相?」

 

「う、うむ?どうしたのじゃ?」

秘書である獣人族熊族の女性がモジモジとしながらこちらを見る

 

「今日カナタ首相の秘書を務めさせて頂いた私めに「メープルシロップのお菓子」を少し頂くことは可能でしょうか?是非ともお願いします!」

 

「き、君も好きだったのか…良いともカナダ産のメープルは美味いからのう〜」

 

カナタは、夕日を見ながら、そう嘆いた。

 

やはりアメリカやカナダと国交を締結してよかった…

両国の多種族に対しての反応は非常に良好で、全く差別しないアメリカ人やカナダ人に獣人族、翼人族、エルフなどが興味を持ち、特にドワーフは興奮しながらアメリカの土木企業関係者に詰め寄っていた。

 

『そなたたちの建設技術は一体どうなっているのだ!是非ともその技術を学ばせてくれ!!頼む!』

 

アメリカ人やカナダ人も多種族に対し非常に友好的でアメリカの自由の国というものに惹かれ、渡航希望者も後を絶たない程多く出ていた。

特にアメリカやカナダ系の料理で最も流行し始めた「メープル系の料理」は獣人族に人気が爆発し、上品なサトウカエデの幹に傷をつけ、そこから溢れ出す濃厚な樹液から生まれる味わいが人気を増長させていた。

 

『な、なんだこの甘さは!!!』

 

『こんなものは今まで味わったことがないにゃーーー!!!』

 

『もっと欲しいです!村のみんなにあげたい!』

 

『カナダに行かせてください!!!』

 

 

とアメリカやカナダ側を困らせる事態も起きたが、両国の法律の整備が終わるまで、両国へ行きたい人々は待つことになった。

 

 

 

 

 

ロウリア王国

 

王都ジン・ハーク ハーク城 御前会議

 

月の綺麗な夜、秋になり、少し涼しくなったこの日の夕方、城では松明が集れ、薄暗い部屋の中、王の御前でこの国の行く末を決める会議が行われていた。

 

「ロウリア王、準備はすべて整いました」

 

白銀の鎧に身を包み、筋肉が鎧の上からでも確認出来るほどのマッチョで黒髭を生やした30代くらいの男が王に跪き、報告する。

 

彼の名は、将軍パタジン

 

「2国を同時に敵に回して、勝てるか?」

 

威厳を持つ34代ロウリア王国、大王ハーク・ロウリア34世はその男に尋ねる。

 

「一国は、農民の集まりであり、もう一国は不毛の地に住まう者、どちらも亜人比率が多い国などに、負けることはありませぬ。」

 

「宰相よ、1ヶ月ほど前接触してきたアメリカとカナダという国の情報はあるか」

 

アメリカ・カナダは、クワ・トイネ公国国交締結後、ロウリア王国にも接触してきたが、事前にクワ・トイネ公国と、クイラ王国と国交を結んでいたため、敵性勢力と判断され、ロウリアには門前払いを受けていた。

何か黒い服を基調とし、どこか清潔感溢れる格好であったが、両国が持ち込む献上品にはハークも目を引いた。

あれほどの技術や文化があるのならば忌まわしいクワトイネとクイラを殲滅した後、攻め入るのも悪くはないだろう。

 

 

「情報ではロデニウス大陸のクワトイネから北東に約9000kmの所にある、新興国家です。9000kmも離れていることから、軍事的に影響があるとは考えられません。

また、奴らは我が部隊のワイバーンを見て、初めて見たと驚いていました。竜騎士の存在しない蛮族の国と思われます。その他の情報はあまりありませんが」

 

ワイバーンの無い軍隊は、ワイバーンの火力支援が受けられない分、弱い。

空爆だけで、騎士団は壊滅しないが、常に火炎弾の驚異にさらされ続けるため、精神力が持たない。

 

「そうか…。しかし、ついにこのロデニウス大陸が統一され、忌々しい亜人どもが、根絶やしにされると思うと、私は嬉しいぞ」

 

「大王様、統一の暁には、あの約束も、お忘れ無く…クックック」

 

真っ黒のローブをかぶった男が王に向かってささやく。気持ちの悪い声だ。

 

「解っておるわ!!」

 

王は、怒気をはらんだ声で、言い返す。

 

(ちっ、3大文明圏外の蛮地と思ってバカにしおって。ロデニウスを統一しアメリカとカナダを攻め滅ぼした後はフィルアデス大陸にも攻め込んでやるわ

9000kmという情報もどうせ超長距離という情報で攻め込まれないようにするための偽情報だろう。

どうせ、どこかの島国に決まっている。)

 

「将軍、今回の概要を説明せよ」

 

「はっ!説明致します。今回の作戦用総兵力は50万人、本作戦では、クワ・トイネ公国に差し向ける兵力は、40万、残りは本土防衛用兵力となります。

海軍としても4400隻以上の戦闘艦でクワトイネ沿岸地域を制圧する予定です。

クワトイネについては、国境から近い人口10万人の都市、ギムを強襲制圧します。

兵站については、あの国は、どこもかしこも畑であり、家畜でさえ旨い飯をたべております。現地調達いたします。

ギム制圧後、その東方250kmの位置にある公都クワ・トイネを一気に物量をもって制圧します。

彼らは、我が国のような、町ごと壁で覆うといった城壁を持ちません。

せいぜい町の中に建てられた城程度です。籠城されたとしても、包囲するだけで干上がります。

かれらの航空兵力は、我が方のワイバーンで数的にも十分対応可能です。

それと平行して、海からは、艦船4400隻の大艦隊にて、北方向を迂回、マイハーク北岸に上陸し、経済都市を制圧します。

なお、食料を完全に輸入に頼っているクイラ王国は、クワトイネからの輸出を止めるだけで、干上がります。」

 

「次に、クワトイネの兵力ですが、彼らは全部で5万人程度しか兵力がありません。即応兵力は1万にも満たないと考えられます。今回準備してきた我が方の兵力を一気にぶつけると、小賢しい作戦も、圧倒的物量の前では意味をなしません。

6年間の準備が実を結ぶことでしょう。」

 

「そうか…はっはっはっはあーっはっはっは!!!今宵は我が人生で一番良い日だ!!世は、クワトイネ、クイラに対する戦争を許可する!!!」

 

うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーー

 

王城は喧噪に包まれた。

 

 

この数日後、ロウリア王国はクワ・トイネ公国・クイラ王国に宣戦布告した。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国 

 

来るべき宣戦が通知されたクワトイネ公国は国家非常事態宣言を行い、直ちに常備兵から徴兵へ移行し、戦争準備を迅速に行った。

元々ロウリア王国との戦争は将来的に起こりえる戦争と認知されたので、準備は早く終わるが、戦力差は圧倒的であり、どう対抗しようにも軍事力差は覆せない。

 

公国は何とか勝機を導き出すため、動き出すのだった…

 

 

 

 

アメリカ合衆国大使館

 

「と、言うわけでロウリア王国と戦闘が始まったら、貴国に対して約束された量の食料品の輸出と工場進出計画が白紙になるかもしれません。」

 

クワトイネとロウリア国境にて、ロウリア王国の兵力が集結しており、戦闘が近いと判断したクワトイネ側は、アメリカ大使館に説明に来ていた。

 

国務省のジェフは、その言葉を聞いて絶句する。

突然の国ごとの転移、地球から遮断され、国務省に科せられた使命、それはかつてのアメリカ再建であった。

大穀倉地帯で、肥沃な土地を持つクワトイネ公国と友好関係を結べ、かつ貿易候補となる国家が見つかったことは奇跡であった。

 

さらに、アメリカの幸運は続き、クイラ王国にはアメリカが必要とする資源をほぼ一カ国でまかなえるほどの埋蔵量が確認おり、エネルギー関係の企業関係の倒産やアメリカでは採掘できない資源は解決できた。

 

 

それでも、二カ国が軌道に乗るまでアメリカが負担をしなければならないが、それでも国があるだけマシだった。

それが、ここに来ていきなり、食料や工場進出計画が途絶える可能性がある事を知らされる。

もしも、クワトイネからの輸入が途絶えても、国民が飢え死にすることは無いが調理バリエーションが大きく減ってしまう上、経済活性化のための工場進出計画がなくなると、経済がまた悪化するだろう。

ただでさえ、経済や金融などがリーマンショック以上のダメージが入っている状況で、先延ばしする猶予はアメリカにはなかった。

最悪の場合、政権が潰れ、さらなる大混乱となる。

 

 

「なんとかなりませんか?我が国は、輸入や工場進出計画が途絶えると、非常に困ります。」

 

「わが国としても非常に心苦しいことではありますが、ロウリア王国は我が国やクイラ王国の総合戦力だけでも圧倒的な軍事力を保有しています。

彼らは、現在国境付近で、軍の集結が確認されています。

我が軍としては圧倒的な物量の差に対抗するため都市や穀倉地帯などを放棄し、戦略的撤退を繰り返すことも考えられます。

そのような戦況で、流通や食料を確保し続けることは非常に困難だと判断し、同盟国の貿易を停止することは同盟国として大変遺憾だと思っております。」

 

「つまり、既にロウリア王国の脅威によって貿易が難しいということですな?」

 

「そうですな…我が国としても貴国との貿易は是非とも今後続けたいと思っております。が、忌まわしいロウリア王国軍によって我が国は国家存亡の危機を迎えている状況でもあります。

もし、貴国から援軍があると助かるのですが……。」

 

(頼む…アメリカやカナダからの援軍があれば我が国は間違いなく、この戦争に勝利できる!

ロウリア王国の脅威は時が経つごとに迫る一方、何としても早く行動しなければ我が国は消滅する!)

 

「援軍ですか…わかりました、この件は大統領へ報告し、前向きに検討させて頂きます。」

 

「おお!それは助かります!ぜひともよろしくお願いします!」

 

「こちらこそ輸入や工場進出計画についてはよろしくお願いします。」

 

一国を見捨てて、また、新しい国と国交を締結するか、クワ・トイネ公国を危機から救うのか。

議会はアメリカ合衆国の再建途中でもあり、再建を最優先に行うべし、と声も上り議会はスムーズに進み海外派兵へ検討するのであった。

 

 

 

中央暦1639年4月11日午前―――ロウリア・クワトイネ

国境付近

 

ロウリア王国東方討伐軍 本陣

 

クワ・トイネ公国外務部から、何度も国境から兵を引くよう魔法通信にて連絡があった。

すべてを無視する。

もう戦争することは、決定しているのだ。

 

「明日、ギムを落とすぞ」

 

Bクラス将軍パンドールは、ギムに攻め込む先遣隊約3万の指揮官の任を与えられていた。歩兵2万、重装歩兵5千、騎兵2千、特化兵(攻城兵器や、投射機等、特殊任務に特化した兵)1500、遊撃兵1000、魔獣使い250、魔導師100、そして、竜騎兵150である。

数の上では、歩兵が多いが、竜騎兵は1部隊(10騎)いれば、1万の歩兵を足止め出来る空の覇者である。それが150騎もいる。

パンドールは、満面の笑みを浮かべ、部隊を見つめていた。

ワイバーンは高価な兵器である。ロウリア王国の国力であれば、本来国全てをかき集めても、200騎そろえるのがやっとである。

 

しかし、今回は、対クワ・トイネ公国戦に、500騎のワイバーンが参加している。

 

噂では、第三文明圏、フィルアデス大陸の列強国、パーパルディア皇国から軍事物資の支援があったとされている。

真実なのか、不明ではあるが…。

いずれにせよ、先遣隊だけに150騎のワイバーンという戦力を投入できることに、パンドールは満足だった。

 

「ギムでの戦利品はいかがしましょうか?」

 

副将のアデムが話しかける。彼は、冷酷な騎士であり、ロウリア王国が、領地拡大のために、他の小国を統合した時代、占領地での残虐性は、語るに耐えない。

 

「副将アデムよ、お前に任せる。」

 

「了解いたしました。」

 

アデムは、将軍に一礼すると、後ろを振り返り、すぐさま部下に命じる。

 

「ギムでは、略奪を咎めない、好きにしていい。女は嬲ってもいいが、使い終わったらすべて処分するように。

 

 

一人も生きて町を出すな。

 

 

奴隷を希望する将校や軍人、民間人が居れば許可する。ただし亜人族は徹底的に皆殺しにしろ。

建造物は全て焼き払い、全てを破壊するのだ!

奴らの文化を一つも残してはならん!

浄化するのだ!!!

全軍へ伝えよ!!!」

 

「はっ!!!」

 

アデムの部下は、すぐさま天幕を出ようとする。

アデムはたった今思い付いたかのように兵士を制止する。

 

「いや、待て!!!」

 

アデムに呼び止められる。

 

「やはり、嬲ってもいいが、100人ばかりを生かして解き放て、恐怖を伝染させるのだ。それと…

敵騎士団の家族がギムにいた場合は、なるべく残虐に処分すること。

そうだな、串刺し刑とし広場に見世物として飾ってやればクワトイネ軍も戦意を失うだろう。」

 

部下は、天幕を飛び出し、命令を忠実に伝えた。

ロウリア王国はクワトイネとの本格的な戦争へ突入し、楽に勝てる相手だと認識していた。

それが大きな間違いであったことが知るのは大分先となるのだった。

 

 

 

 

 

 

余談ではあるが、アメリカの金融関係で最も難航したのは『金』の価値であった。

金はいつの時代でも常に高価な価値を持ち、価値の変動が少ない。

それは金そのものが非常に貴重であり、世界中で金の埋蔵量は採掘できる範囲で50mプール一杯分ということ。

その金が異世界に転移したことによって異世界でどれほどの金が埋蔵されているのか、わからず、アメリカの金融関係の企業や担当官は寝る暇もなく、資本家や金を保有する国民の対応で忙殺された。

 

 

 

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