中央歴1639年 マイハーク港
ロウリア王国が、4000隻以上の大艦隊を出港させたという情報が伝達され、マイハーク港の海軍基地へ、クワ・トイネ公国海軍第2艦隊が集結していた。
各艦は、来たる決戦のために準備し、各兵士が敵船へ切り込むための梯子や剣などの装備をチェックする。
艦艇へダメージを与えるための爆弾や矢、鯨油などが続々と船舶へ積み込まれる。
艦隊数は50隻、クワトイネ海軍が用意できる最大の艦艇数であった。
「壮観な風景だな」
提督パンカーレは、海を眺めながら、ささやく。
「しかし…敵は4000隻を超える大艦隊、彼らは何人生き残る事ができるだろうか」
側近に本音を漏らす。圧倒的な物量の前にどうしようもない気持ちがこみ上げる。
「提督、海軍本部から、魔伝が届いています」
側近であり、若き幹部ブルーアイが報告する。
「読め」
「はっ!本日夕刻、アメリカ合衆国ロデニウス派遣艦隊20隻が援軍として、マイハーク沖に到着する。
彼らは、我が軍より先にロウリア艦隊に攻撃を行うため、観戦武官1名を彼らの旗艦に搭乗させるように要請する…との事です。」
「何だと!?たったの20隻!?200隻の間違いではないのか!?あまりにも少な過ぎるぞ!」
「間違いではありません」
「なんて奴らだ、やる気はあるのか……。しかも観戦武官だと?20隻しか来ないなら、観戦武官に死ねと言っているようなものではないか!!明らかに死地と解っていて、部下を送るような真似は出来ないぞ!」
沈黙が流れる。
「…私が行きます」
ブルーアイが発言する。
「しかし…。」
「私は剣術ではNo1で一番生存率が高いのは私です。それに、あの鉄龍を飛ばして来たアメリカの事です。もしかしたら勝算があるのかもしれません…
それに彼らから輸出された武器の性能には目を見張るものがあり、あれらを開発する彼らには何か切り札があるのかもしれません。
我が国に訪問した時も200m、300mの艦艇は確認されたことから戦闘艦の戦闘能力は高いのかもしれません。」
あれらとは米国が輸出した民間で使用されるリボルバーや猟銃などだ。
米国の企業としてはもっと売り込みたいというのも本音であったが、新世界技術流出防止法があるのと高性能な銃器を輸出してもそれらを維持、修理能力の皆無な国家へ売っても意味がないからだ。
当たり前ではあるが、現代武器兵器はきちんとしたメンテナンス・整備・修理、部品を供給、乗り物を動かすための燃料
これらを支える工業いわゆる基礎工業力がなければ全く意味がない。
自動車一つにしてもガソリンスタンドどころか、製油所すら存在しない地域に売ってもガソリンが切れれば動かない。
これらを全てアメリカとカナダがカバーしようにも転移騒動のダメージが大きい状況ですぐにはできない。
なので、整備の簡単であらゆる環境下にも対応しやすいのがリボルバーやショットガンなどだ。
リボルバーは6発入りの旧式ではあるが、部品も少なく扱いやすい銃と5発装填可能な、高い威力を持つショットガンだ。
クワトイネやクイラはこれに驚愕し、ただでさえ前装式のマスケット銃は一発しか装填できない上、射程は50メートルくらいだ。
それが、リボルバーは射程200メートル、装弾数6発、連続で撃てるということに軍務関係者は驚愕と民間用で作られるアメリカに戦慄したという
その上、ショットガンはイカサM37などを中心とする散弾銃、装弾数4+1発、射程150メートルもあり、威力はマスケット銃と比べものにはならず、重武装の兵士を一発で吹き飛ばすという実験結果も出ていた。
彼らを一番驚愕させたのはワイバーンを近距離であればショットガンを5発撃てば倒せるということだ。
バリスタを数十発も撃ち込まないと倒せない敵がたった5発で倒せるということだから。
それを見越してブルーアイは進言した。
「すまない…。頼んだ…」
「はっっっ!」
その日の夕刻
ブルーアイは、目を疑っていた。
その船は、彼の常識からすれば、とてつもなく大きかった。アメリカとの接触の際に、第一海軍が、200mクラスの船を臨検したという話を聞いていたが、自分たちの仕事の成果を誇張するために、嘘をついていると思っていた。
しかし、今彼が見ている船たちは、遠くの沖合いに停泊しているにも関わらず、とてつもなく大きく、そして帆が付いていない。
やがて、一際大きな船から、剣、竹トンボのような金属でできた飛行物体が飛んでいた。
事前に連絡は受けていたが、どうやら乗り物らしい。それが近づくにつれ、大きな風を受ける。
理解不能な乗り物に乗り、沖へ移動した。
フワフワのシートに座り、ほとんど揺れずに「それ」は進んだ。ワイバーンよりも遅いが、遥かに快適で、人が大量に運べる。
それだけでなく、銃らしき武装も搭載しているようであった。
やがて、母船が見えてくる。
その大きさに驚愕する。
(一体何だ!この大きさは!!
そうか、これだけ大きければ、人員もたくさん搭載できる。切り込みの際は、中から大勢の人が出てきて一気に一隻ずつ制圧していくのだろう。
これなら、一回の戦闘に投入できる人数が多いから、1隻あたりの戦力は大きいだろう)
彼は、自分の理解の範疇で、空母を理解しようとしていた。
ジェラルド・R・フォード級原子力空母3番艦「エンタープライズ」
全長333m
全幅41m
吃水12m
乗員
操艦要員:2.180名
航空要員:2.480名
基準排水量80.000t以上
満載排水量10.1600t
艦載機ジェット機やヘリコプター合計90機以上、同時に戦闘機を4機同時発艦させることができるアメリカ海軍最大の戦闘艦である。
これは……。鉄で出来ているのか?どうやって海に浮いている?
あの剣のような飛行物体は一体どうやって飛ぶ?
あの建造物の上に建っている、くるくると回る黒い板は?
なぜ、戦列艦よりも速い速度で進む?
疑問は尽きない。彼は、アメリカ軍に言われるがまま、艦内に入っていった。
・・・中が…明るい。
何か燃やしているのか?それとも、光の魔法?これは魔導船か?
彼はやがて提督と出会う。
「ロデニウス派遣艦隊のパターソン提督です」
「クワトイネ公国第2海軍観戦武官のブルーアイです。このたびは、援軍感謝いたします」
「早速ですが、我々は、ロウリア軍の船の位置をすでに把握しており、ここより西側500kmの位置に彼らはおります。船足は、5ノット程度と非常に遅くはありますが、こちらに向かってきております。我々は明日の朝出航し、ロウリア軍へ攻撃を開始します。
明日までは、ゆっくりとされてください。
ちょうど今日はチキンの日ですので、よければ食堂へ行ってください。」
ブルーアイは驚く。
彼らは、自分たちだけで、クワトイネ海軍の協力を得ずに、4400隻の大艦隊に挑むつもりなのだ。
自殺行為だ!と叫ぶところだったが、寸でのところで思いとどまる
確かに艦は大きく、切り込み用水夫を大人数収容できるだろう。それにこれほどの巨大な船体であれば敵艦に体当たりし、そのまま粉砕する攻撃方法を持っているのかもしれない。
それにあれほどの大量の鉄龍がいればなんとか戦局を有利に進めるのかもしれない。
それでも、やはりたったの20隻で、4400隻に挑んでいくのは、自殺行為にならないだろうか?
また、お馴染みの対艦バリスタや、火矢を防ぐ木盾、大砲すらないことに不安に駆られた。
一応第二艦隊にはアーレイ・バーク級駆逐艦やタイコンデロガ級巡洋艦なども含まれ、5インチ主砲やCWISなども搭載しているが、あまりの規格外と見たことの無い装備だったため、ブルーアイはそれらが武器であることを認識できなかった。
不安に駆られながら、食堂で出される食事のボリュームを見た途端一気に吹き飛ぶ。
は?何だ…この量は…それに美味い!!!
とブルーアイはチキンを片手にガツガツと食べる。
まさか…船の中でこれほど美味しい料理が食べられるなんて!!!
翌日早朝―――――――――――
ロデニウス派遣艦隊は出航した。
ブルーアイは驚愕する。
(一体何回驚愕すればいいのだ!?)
艦隊速度が速い!我が軍の帆船最大速力を遥かに凌駕している。そして…他の艦との距離が遠すぎる。密集する必要はないのか?
先ほど轟音とともに飛び出した剣の金属飛行物体も何だったんだろうか?
艦隊は約25ノットで西へ向かう。
先ほど鉄龍が轟音を鳴らしながら空へ舞い上がった。
そして変な羽が上向きに取り付けられた鉄龍も飛び立っていった。
見たことも無い飛行物体の発艦姿に見惚れていたが、すぐに意識を切り替える。
私は戦闘状況をもっと前線で知るために駆逐艦という船に乗船した。
先ほどの超大型正規…竜母艦?と呼んでいいのだろうか…竜母艦は前線には出ず、後方から支援することになっている。
飛び出した飛行物体、「F/A-18」は偵察用カメラとミサイルを搭載した状態でロウリア軍へ真っ直ぐ飛行するのであった。
ロウリア王国東方討伐海軍 海将 シャークン
「良い景色だ。美しい…」
大海原を美しい帆船が風をいっぱいに受け、進行する。
その数4400隻、大量の水夫と、揚陸軍を乗せ、彼らはクワトイネ公国経済都市マイハークに向かっていた。
見渡す限り船ばかりである。
海が見えない。そう表現したほうが正しいのかもしれない。
6年をかけた準備期間、パーパルディア皇国からの軍事援助を経て、ようやく完成した大艦隊。これだけの大艦隊を防ぐ手立ては、ロデニウス大陸には無い。
いや、もしかしたら、パーパルディア皇国でさえ制圧できそうな気がする。
今回は新型の大砲を備えた軍船も配備した。
艦隊には新型の戦列艦・輸送船・快速船・揚陸船などを加えている。
揚陸船団には物資や上陸地点を確保するために必要な資材、魔獣などが収納されている。
野心が燃える
ふふふ…圧倒的ではないか、我が軍は
いや、パーパルディア皇国には、大砲を多く積んだ砲艦という船ごと破壊可能な兵器があるらしいな…。
彼は、一瞬出てきた野心の炎を理性で打ち消す。第3文明圏の列強国に挑むのは、やはり危険が大きい、か…
彼は東の海を見据えた
すると上空から何か聞き慣れない轟音が響き始める。
……ん?
何だ、この音は?
何かがこちらに飛んでくる。
まさか、飛龍か?…いや、違う。何だ!あれは!?
剣のような形をした灰色の物体が、キューンと耳が痛くなるような音を立てながら接近してきた。
見たことのない物体は、こちらを見下ろすように飛ぶ光景に、表情には出さなかったが、内心恐怖の心が芽生えた。
「!いかん!直ちにあれを撃ち落とせ!敵の竜騎兵だ!」
剣のような形をした無機質な物体が、1つ
ゴオオオオーーーー!!!と音をたて、こちらに飛んでくる。
「それ」に向かって弓矢が射られるが、「それ」には当たらず見当はずれの場所に飛んでいく。
お返しと言わんばかりに何かを放ってきた
それは矢のような形状で光を放ちながら寸分もなくこちらへ迫った。
あれは何だ!?光…?光の矢?それに速い!!!
それが命中した戦列艦は、轟音とともに一瞬で兵士が、部品が、大砲がバラバラとなり、轟沈した。
さらに集中運用が仇となり、付近の戦列艦にも飛び火や破片が降りかかる。
やがて、それは撃ち尽くしたのか、そのまま去って行ったが、たった一つの何かによって10隻の戦列艦が僅か数分という短期間で沈められた。
あれは一体なんだ?剣のような形をした飛行物体が光の矢を放つ度に、それは正確に戦列艦に命中した。
命中した戦列艦は木っ端微塵となり、それが連続して続いた。
あの速度…ワイバーンよりも速かった、一体あれは…
シャークンは不安が出てきた。
しばらくすると、海の向こうに複数小島が見えてきた。
島が動いている……!まさか、船か!?
その船は灰色の全長200mもある…あんな巨大な船をマストなしで一体どうやって動かしているんだ!?
いや、その前にあの巨大な大砲が一門だけとはいえ、先ほどの飛行物体が起こした出来事を思い出し、不安は更に増大した。
イージス護衛艦バリーの前方に設置された、5インチ砲が敵船に向かい旋廻する。目の良いシャークンは、バリーのわずかな変化に気が付く。
「あの棒はなんだ?」
次の瞬間、轟音と共に破壊が吐き出された。
距離は5km、至近距離射撃
「なんだ?勝手に燃え始めたのか?」
シャークンが疑問に思った瞬間、最前方を走る帆船が突然大爆発を起こす。爆散した木や、船の備品、兵士の遺体があたりに撒き散らされ、密集隊形にあった味方の船上に、人間のパーツと共に降り注ぐ。それも5隻同時に吹き飛ばされた。
「!!なんだ、あの威力は!それにあの距離から当てやがったのか?」
経験したことの無い威力に、それを見ていた船団全員が驚愕する。
船は、無事だった乗員を乗せたまま、自重に耐え切れなくなり、沈んでいく。
砲弾は、さらに最前列に居た船を直撃し、1発でその船は爆散、轟沈した。
凡そ20隻撃沈されたところで、砲撃が止む。
巨大船から赤トンボのような飛行物体がバタバタと音を鳴らしながら接近してきた。
「こちらはアメリカ海軍、ロデニウス派遣艦隊である!
ロウリア艦隊に告ぐ!降伏せよ!我々は既に貴軍を射程内に収めている!これ以上の戦闘は無益であり、無意味だ!
直ちに降伏せよ!」
警告をしてきた、しかし、巨大船だからと言って圧倒的物量を持つ我らに降伏という文字はなかった。
アメリカ?今まで聞いたこともない国家だ…
やがて、味方艦艇が飛行物体へ火矢の攻撃を行うが、飛行物体はあっという間に避け、巨大船へ帰った。
射程内だと?あんなものはまぐれだ!そうだ…蛮族があんなものを持つはずなんてない。
「やったぞ!敵の竜騎兵を追い払ったぞ!この大艦隊にビビったんだ!」
「ふ…あれほどの威力の魔導、そう連射は出来ないようだな……。」
ロウリア王国、海将シャークンは、バリーがそれ以上撃ってこないため、このように判断していた。
「艦隊行動前進微速!艦隊の速度落とせ、ワイバーンの航空支援と同時に、一気にたたみかけるぞ、航空支援を要請しろ!」
「はっ!」と水兵が魔伝で伝える
するとイージス艦が最前列に一列となった。
「マーク3が敵艦からの攻撃を受けました!」
「ちっ!こちらへ攻撃したぞ!奴らに礼儀というものを教え込むぞ!海軍魂を叩き込んでやれ!!!」
「イエスサー!」
ロウリア王国 ワイバーン本陣
「ロウリア王国東方討伐海軍より魔伝入りました。敵主力艦隊と思われる船と現在交戦中、敵船は巨大であり、航空支援を要請する」
「ほう、敵主力か…。よろしい。350騎全騎を差し向けよ」
「し…しかし、先遣隊に150騎ほど分けてあるため、本隊からワイバーンがいなくなりますが…。」
「聞こえなかったか?全騎だ。敵主力なら、大戦果となろう。戦力の逐次投入はすべきではない」
「了解しました」
ワイバーンは、次々と、大空に飛び上がった。
イージス艦のCICでは、すでに「それ」を捕らえていた。
「ほう…こいつらが噂のドラゴンというやつが来やがったか……」
「敵編隊、二手に別れました、目標群Aは北西から、目標群Bは南西から急速接近中!」
レーダーに現れた飛行物体は300を超えており、敵は徹底抗戦を認識するのであった。
「射程距離に入りしだい、全力で迎撃せよ、敵部隊に容赦はいらない。ただ攻撃せよ、対空ミサイルも全て使い切る勢いで撃てええええ!!!」
「イエッサー!!!」
彼らにとってもギムの出来事は衝撃的であり、絶対に許さないと言わんばかりに返事をした。
突如、5km先の巨大艦隊から煙が上がる。そして、何かが光の尾を引きながら、ロウリア艦隊上空を通過していく。
!?どうした、味方はまだ発砲していないぞ?自爆か?
さらに、光の矢は後方へ、(艦は見えないが)複数の何かがすさまじい速度で飛んでいくのが見える。
海将 シャークンに嫌な予感が過ぎるが、彼の経験上最良の選択を命じる
「奴らは何をしたかったのだろうか……そろそろ、ワイバーン部隊がこの海域に到達する。全軍突撃せよ」
ワイバーン部隊には、悲劇が襲いかかった。
18隻のイージス艦から離れた合計45基以上のミサイルはワイバーン部隊へ迫った。
いきなり仲間45騎が爆散し、黒い塊となって海に落ちていく。何が起こったのか、全く解らないまま、十数秒後に40騎、さらに数秒後に40騎、と、次々と落ちていく。
こんなことは、歴史上1度も無い。
ましては高速で接近する光の矢はまるで意思を持つかのように旋回する味方ワイバーンを木っ端微塵にした
そのまま撃破されたワイバーンは竜騎士と共に人間の部位やワイバーンの肉片が落ちていた。
しばらく光の矢は約5波に渡って繰り出された。
一通りの嵐が去ると、ワイバーンは数を350騎から100騎まで減らしていた。
部隊はパニック状態になったが、その時、船団が見える。
100騎のワイバーンがロウリア艦隊上空に到達する。
その先に見えるのが、一際大きい灰色の船。
彼らは、その船に襲い掛かろうとしたその時、船から光の矢が立て続けに発射され、直撃したワイバーンが雨のように落ちていく。
彼らは次から次に数を減らし、バリーに近づく。
なんとか、船まで7kmまで近づいたとき、ワイバーンは残り数十騎まで数を減らしていた。
不意に、艦が大砲を放つ。1発あたり1騎が大砲に絡め取られて落ちていく。
装填がこちらのより遥かに早い!
さらに、見えないところから光の矢が降り注ぐ。
彼らの距離が3kmまで近づいたとき、砲弾の嵐が止む。
その頃、数を3騎まで減らしていた。
「バカめ!魔導が切れたか、仲間たちの無念を晴らしてやる!!」
ワイバーン3騎が口を開け、火球を形成する。その時、2騎が突如としてミンチになり、黒い雨を降らす。
!!!!!
残りの1騎も、すぐに彼らの後を追った。
CIWS毎分3000発(1秒に50発)の20mmバルカンファランクス。
CIWSはモーター音を鳴らしながら一瞬にして強力な20mm弾幕をワイバーンへ打ち込み、彼らの生命は絶えた。
静粛が大海原を支配した。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
誰もが信じられずに、声が出ない。
ワイバーンは、1騎落とすだけでも、船にとっては至難の技、それが見ている範囲だけでも100騎以上!!
300騎以上の数が、精鋭のワイバーンが血の雨を降らせながら落ちていった。
夢?いや、違う。
しかもここまでかかった時間は僅か20分間だけでだ
「わ、我々は、悪魔を相手に戦っているのか?」
海将シャークンは、悲壮な心境でつぶやく。
なんと表現していいのか解らない。
しかし、悲劇は自分たちだけを見逃してはくれなかった。
やがて、目の前にある巨大船と後方に控えている艦隊も前列へ進んだ。
その全てに、帆船をなぎ払った魔導兵器が付いている。
18隻は、破壊の嵐を打ち出した。
後にロデニウス沖大海戦と呼ばれる歴史を動かした海戦が始まろうとしていた。
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!ダン!
途切れもない砲撃音が響き、例え一つの艦が装填に入っても、それをカバーするかのように撃ち出される砲弾の雨
ゴシャアアアアア!!!!
何かが爆発する音もまるで音程を取るかのように途切れない音が響く
中には逃げる戦列艦もいたが、その艦も破壊する。
「ば、バカな…我がロウリア艦隊が長年かけて作り上げた艦隊が…いとも簡単に潰されるなんて…」
しかし、無慈悲にも砲弾は降り注ぎ、1分間で100隻の戦列艦が消滅することもあった。
ロデニウス大陸の歴史において、海戦を決するのは、水夫の切り込みである。
バリスタ(大型弩弓)等により、ある程度船にダメージを与え、火矢で燃え上がることも稀にあるが、船を根本的に破壊できない。
最後は、切り込みによる白兵戦になるため、結局は水夫の数がものをいう。
それを4400隻そろえている。
三大文明圏の列強相手ならともかく、辺境で負ける訳がない。
いや、これほどの数があると、三大文明圏の列強相手でも、ある程度渡り合えると思っていた。
駆逐艦・巡洋艦18隻の打ち出した砲弾は、1発あたり、1隻を沈めていく。
完全なアウトレンジであり、射撃演習状態であった。
それでも4400隻は多い。
2100隻を海の藻屑に葬った時、主砲弾切れが近くなる。
「撃ち方やめ!これより接近し、敵艦隊に近接攻撃を行う!各艦!気を引き締めて攻撃せよ!!!!」
「よっしゃー!!!」
「奴らに本当の地獄を教えてやるぞ!!!」
「まだまだテロリストどもがうようよしてやがるぜ!」
あたりにはかつて船だった残骸が海を漂う。
バリー1隻が敵艦隊との距離を詰める。
距離が400mまで近づき、ブローニング12.7mm機銃とCWIS、M4カービンなどを武装した兵士が甲板に出て、直接打ち込み、確実に1隻ずつ沈めていく。
ダダダダダダダダ!!!!
トトトトトト!!!
と戦列艦には鉛玉が撃ち込まれ、船体を穴だらけにする。
さらに悲劇は続く。
原子力空母に搭載してあった、アメリカ海軍F/A-18戦闘機航空兵団が襲い掛かったのだ。その数40機ほど。
あたりは狩場の様相を呈し、ロウリア王国海軍は恐怖に包まれた。
「ちくしょう!!化け物どもめ!あんなのに勝てる訳がねえ!畜生!ぐあぁぁぁぁ」
一隻、また一隻と、時間を追うごとに信じられない速さで味方の船が撃沈されていく。
「………これは戦争なのか?」
海将シャークンは、絶望していた。どうやっても勝てない。
このままでは、部下の命をただいたずらにすり減らすだけである。しかし、降参して捕虜になった場合、ギムでの大虐殺をしているロウリア人が、許されるわけが無い。
彼に残された道は、撤退の二文字であった。
ロデニウス大陸の歴史上最大の大艦隊の2分の1を失っての大敗北、国に帰ったら、死刑は免れないだろうし、歴史書に、無能の将軍として名が残るだろう。
しかし、部下を全て死なす訳にはいかない。この一方的な虐殺から逃げなければならない。
これはもはや戦争ではない、ただの虐殺でしかない!
虐殺をしてきた自分たちが虐殺されるとはなんと滑稽な話か…
「全軍撤退せよ!繰り返す、全軍撤退せよ!!!」
魔法通信が各艦に流れる。
彼の旗艦も撤退を始めようとしたその時、船に砲弾が直撃した。
海に投げ出される。
海上に浮かびながら見た光景、彼の乗っていた船は、真っ二つに割れ、沈んでいく。
「敵艦隊は撤退を開始しました。」
攻撃を控えるよう命令が飛ぶ。
「ほう…海に浮かんでいる仲間を見捨てて撤退したか……全艦戦闘停止!海上に浮遊している者たちで、生存者を救助せよ」
「アイアイサー!」
一つの海戦が終わった。
原子力空母に同乗していたクワトイネ公国の観戦武官ブルーアイは、実感が無かった。
彼は、艦橋でアメリカ軍人のやりとりを聞いていたが、いまひとつ実感がわかなかった。
黒い薄い板に映し出される戦闘の様子は、まさしく地獄としか言いようの無い光景であった。
あれが彼らの戦い方なのか?戦術も戦法も装備も練度も何もかもが違いすぎる。
しかし、救助者多数のため、海戦のあった海域を目にしたとき、じわじわと実感が出てくる。
海に浮かぶ浮遊物の数は、海を覆いつくさんばかりであった。
海戦は目視できなかったが、圧倒的攻撃力で一方的に破壊したのは理解出来た。
異世界の軍との初戦は圧倒的勝利で終結するのであった。
ロウリア王国北部沿岸部
真夜中、美しい海を照らす月光、マングローブの茂みに見たことのない鉄の塊が海から浮上する。
海から浮上したそれはやがて、上部ハッチが開く。
『クリア』
『クリア』
『こちらSEALs a群、目標地点へ上陸完了…周辺に敵兵見当たらず』
『こちらシーウルフ、了解、これよりオペレーションステッドを開始せよ、「探知」された目標はロウリア王国ジン・ハーク市内にあると思われる。これを調査せよ』
『こちらSEALs a群、了解、これより任務を開始する。』
『了解、我々シーウルフの任務は、君たちの作戦が完了するまでサポート・撤退支援を行うこととされている。何かあれば報告せよ、アウト』
「さて…この世界はどんな光景を見せてくれるかな」
「異世界の飯って美味いですかね」
「分からん、無駄話は置いとけ、作戦内容は各自聞いたな?目標まで80kmはある、気を引き締めて行くぞ」
「イエッサー」
黒い服を身に纏ったアメリカ海軍の特殊部隊はある作戦のため、上陸を成功させる。