終局特異点で死んだぐだ子がアヴェンジャーとして召喚される話 作:九条空
炎上汚染都市冬木
サーヴァント、復讐者(アヴェンジャー)、召喚に応じ参上し……ってあれ?
勝手に口からこぼれた言葉に首をかしげる。
私は何を言っているんだ。
そしてここはどこだろう。さらに私は誰だろう。
どことなくテンプレな気がする疑問とともに、私は燃える町に立っていた。
いやマジでここはどこ。
明らかに人間の気配のない場所だし日常からかけ離れている。
うん、日常? そもそも私にとっての日常とは何か?
わからん、何も。
これは完全に記憶喪失ってやつなのだな! わはは!
人のいる方に向かってみるべきだろうか。
うん、人のいる方向がわかるのは何でかっていう疑問は置いておいて、私はそうした。
…………
「マシュ! 危ない!!」
遠くから聞こえる男の声。
記憶喪失のくせして、妙な既視感を覚える。
声自体に? いや、それとも「マシュ」という単語に?
なんにもわからなかったけど、とりあえず私は飛び出した。
「ッ! 誰です!?」
髪がピンク色の女の子が、紫髪の女の人に襲われていたので、割って入ったら怒られた。
いやでもほら、争いってよくないよね?
あと、私が誰かっていうのは私が聞きたいのだ。
「ここに来てまたサーヴァント!? 何なのよもうッ!」
ぎゃーぎゃー騒いでいる白髪の女の子がいる。
さっき「危ない」と叫んだのは、ピンク色の女の子の、後ろにいる男の子だろう。
「よくわからないけど……君は味方、なのか?」
おお少年、よくぞ聞いてくれたな。
しかし、よくわからないのはこっちもなのだ。
だからその質問には答えかねるのだった。
『確かに彼女はサーヴァントだ。しかしこの反応……まさか!?』
どこかから男性の声が聞こえる。通信か?
『彼女は立香くんと契約が結ばれている! つまり、マシュに続く、君のサーヴァントだ!』
そーなのかー。
何言ってるのか何もわからないのだ。
「アンタいつの間に召喚なんてしてたのよ!」
「いや知りませんよ所長、俺が聞きたいくらいで……」
なんかわちゃわちゃし始めたけど今はそれどころじゃないのだ。
紫の女性に斬られそうになっていたリッカくん? をひっつかんで後ろに跳んだ。
「フフ、戦闘中に随分余裕ですね」
だよねー、戦闘中だよね。
ところで私は平和主義者なんだけど、お姉さんに戦いをやめる気は?
「ありません、よッ!」
鎌が振り上げられた。
あー、交渉決裂。どうしよ。
私は私が誰かわからない以上、戦闘方法だってわからないのだ。
軍人じゃあるまいし……って、軍人かどうかすらもわからないのだったな。
このまま斬られちゃう、って時に声が飛んで来た。
「ansuz(アンサズ)!」
ケルトの呪文だ。
……んん? 何で私はそんなこと知ってんのだろうか。
火の塊に牽制され、鎌はこちらに当たることはなかった。
「またサーヴァント!?」
そもそもサーヴァントって何なの……。
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サーヴァントとは、英雄が死後、人々に祀り上げられ英霊化したものを、魔術師が聖杯の莫大な魔力によって使い魔として現世に召喚したもののことである。
ただし使い魔とは言っても本質的には全くの別物であり……
——————
うおお!?
突然知識が頭に流れ込んで来た何これ!? なにこれー!?
混乱している間にも戦況が動く。
「俺はキャスター。ようやくまともそうなマスターが見つかったんだ、みすみす死なせはしねえぜ?」
つまり味方ってことですねよくわからないけどわかりました。
「そこの盾持った嬢ちゃん!」
「は、はいっ!」
「死ぬ気でマスター守りな! 攻めはこっちで持ってやる!」
こっち、って言い方的に私も入ってんだよなこれな。
「当たり前だろ? しかし見た目的に後衛揃いだな……ったく、何で今回俺は槍持ってねえんだか」
むむむむむ。なんかすごい既視感。
キャスターと名乗ったこの水色フードの男、初めて会った気がしない。
いや、そもそも私はずっと既視感に襲われている。
場所、人間、状況、空気感、全て一度経験しているかのような——
ってあぶねー!
思考は鎌によって中断された。
ばか! 斬ったら人は死ぬんだぞ!
「無論、殺す気ですから」
こえー! こんな女の人相手するの無理だよキャスター助けて!
「さぁて、ここからだ!」
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スキル『矢避けの加護』
・自身に回避を付与
・防御力をアップ
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私の頭にまた勝手に情報が流れてくる。
今発動されたスキルとやらの名前と効果。
「燃えろっ!」
私より前に出たキャスターは、火を打ち出しつつ、敵の鎌をひらりひらりと躱していく。
いや、むしろ鎌の方から彼を避けているかのようだった。
た、頼れるー! カッケー!
全然前線張れるじゃないですか動きがキャスターのそれじゃないじゃないですか!
キャスターのそれって何だか知らんけど!
「援護頼む! お前もサーヴァントなら戦えんだろ!?」
私もサーヴァントなら何かできるはずなのか。
なんかやってみるか。えーとほら、さっきのキャスターみたいにスキルをほら!
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スキル【■■譲渡】
・味方単体の■■を■■%増やす
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なんかできたー!
何が起きてるのかわかんないけどなんかできたけど何が起こりましたかキャスターさん!
「おっ、こりゃ魔力の譲渡か! もうちょいで宝具展開できそうだな」
宝具!
知らないけど知ってる! あれだな、必殺技だな!?
「させませんよ」
「そうもいかねえ。オレは割と手強いぜ?」
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スキル【原初のルーン(クー・フーリン)】
・自身のクリティカル威力をアップ
・弱体耐性をアップ
・■■をチャージ
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不思議パワーにより、キャスターが発動させたスキルが目に見える。
いや、見えない部分もあるのだが……というか目に見えない部分こそが大事な気がするのだが!
「くっ、魔力の補充スピードが早い!?」
「準備完了、とっておきをくれてやる——【灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)】!」
暴れまわる巨人が召喚された。
いや何これヤバすぎでしょ。
こわっ! こんなん人が死にますよ!
というか現に紫の女性はサラサラっと消滅してしまった。
これは頼れすぎる。
キャスターの兄貴……いや、キャスニキと呼ばせてもらおう!
「んだそりゃ。それより助かったぜ、魔力渡してくれてよ」
うむ、私は何を渡したのかよくわかっていないが、役に立ったのならば良かった。
「さてそんじゃ、改めて自己紹介といこうか。俺はこの狂った聖杯戦争に召喚されたキャスターだ」
聖杯戦争 is 何。
そう思った瞬間にまた流れ込んで来た膨大な知識に私はクラッと来たのだった。