終局特異点で死んだぐだ子がアヴェンジャーとして召喚される話   作:九条空

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炎上汚染都市冬木②

「はあ!? 自分の名前がわからない!?」

 

 そうなんです。

 それどころか生い立ちとか何やらかんやら、全てわかんないです。

 

「やっぱりこんなチンケな魔術師とも呼べない素人が召喚したサーヴァントだから欠陥品なのね、ああもうっ!」

 

 オルガマリーと名乗った少女はずっとカリカリしているなあ。

 

「むしろ、記憶喪失の状態でそんなに落ち着いているあなたの方がおかしいような気もしますが……」

 

 マシュがおずおず話しかけてくれる。

 

 うむ、何でこんなに落ち着いているのか、それすらもわかんないんだからもうしょうがないよ。

 わかんないもんはわかんない、それで終わってしまうのだ。

 

「そういうものですか」

 

 そういうものです。

 ところで、私はさっきから立香くんに言いたくて仕方がないことがあるので言っていいですか?

 

「え? う、うん」

 

 サーヴァント、復讐者(アヴェンジャー)。召喚に応じ参上したよ。

 

 はい、言えた、満足。

 ところで復讐者(アヴェンジャー)ってなに?

 

「自分のクラスのこともわからないなんて何なのよもう」

『アヴェンジャーだって? そんな特殊なクラスを召喚するなんて、イレギュラーにもほどがあるよ!』

 

 通信の先にいるのはドクターロマニ。

 ん? ロマンだっけな、なんかそんな感じの男だ。

 

『一体どこの時代の英雄なのか、少しでも判断できる要素はないかい?』

「見た目は魔術協会の魔術師に近いようですが……」

 

 魔術協会なー。よくわからんなー。

 

「アヴェンジャークラスということは、何かに復讐したくて顕現されたのですよね。その憎しみの対象も、覚えてはらっしゃらないのですか?」

 

 まさにそうなのだマシュ。

 

 私別に何も恨んでないよ。

 だからアヴェンジャーとか言われても何それ美味しいんですかって感じなのだ。

 

「はーん、お前らも大変だな」

 

 一歩引いた感じなの何なんですかキャスニキ。

 お前ももう仲間なんだぞ巻き込んでやる。

 

「度胸だけは忘れちゃいねえようだな。うし、そんじゃ、そっちのデミサーヴァントっつったか」

「はい! マシュ=キリエライトです」

 

 デミサーヴァントというのはなんかよくわかんないけど人間とサーヴァントのハーフ的ななにがしだと理解しました。

 

 マシュを見ていると、常に感じる既視感がさらに強いものになる。

 何だろう、何なのだろう、この感じ。

 

「お前さんら2人、サーヴァントとしては欠陥品だ。理由はわかるな?」

 

 わかりません!

 なぜなら理由がいっぱい思いつきすぎるから!

 

「ええと、宝具が展開できないから……でしょうか?」

「そうだ」

 

 ああそっか、マシュも自分に宿ったサーヴァントの名前がわかんないんだっけ。

 宝具には真名が必要なのか。

 

 でもわかんないのはしょうがないだろう。わかんないんだから。

 

 キャスニキ、この状態でどうやって宝具撃てるようになればいいんですか。

 

「俺が稽古つけてやる。宝具発動しなきゃ——死ぬぜ」

 

 実践主義ですか!?!?!? うそやん!!!!!!!!!

 

 

 

 …………

 

 

 

 結果からいうと気合いで何とかなった。

 

 真名、偽装登録――とかいうよくわからんアレでマシュは乗り切った。

 

 私? 私もなんか気合い入れたら宝具出た。気合いってすげえ。

 

 でも宝具名もわからんかった。

 マシュのようにカッコカリの宝具名をつけたというわけでもなく、何というか、バグってる?

 

 私の宝具名は【■■を■■■■■■(■■■■■■■■)】なのだ。

 

 何言ってんだと思う。

 何を言えているんだと思う。

 

 言ってるはずなのに言えてない。

 そしてこれ、みんなも聞こえてるはずなのに聞こえていないらしい。

 

 な、バグってんじゃんな。

 ちなみに宝具の効果はあれだ、よくわからんかった。クソワロタ。

 

「辛気くせえのは嫌いだから、あっけらかんとしてんのはいいが」

 

 いいが、何なのだキャスニキ。

 

「緊張感があまりにもねえのが気になるんだよ」

 

 私がギャグ時空に生きてるとでも言いたいのか。

 そんなことないぞ。死んだら死ぬはずだ、多分。ギャグ補正とかない。

 

 私がこうして決戦に備えて眠る3人を守っている、というテイでキャスニキと呑気に歓談できるのは、ひとえにキャスニキの実力を信じているからなのだ。

 

 襲われたら正直やべえと思う!

 でも私に何とかできなくてもキャスニキが何とかしてくれるよね!

 

「キャスニキ、キャスニキってなあ……」

 

 ムムム。あだ名がお気に召さないとでも。

 じゃあクー・フーリンって呼んだ方がいいのか?

 

「おいおいおい。何で俺の真名知ってんだ?」

 

 ほんとだ何で真名知ってんだ?

 

「お前が聞いちゃおしまいだよ。ったく、わけわかんねえなお前さん」

 

 わけわかんねえのは私もなので、お揃いだなキャスニキ。

 

「俺の生前を知ってるってわけじゃなさそうだ。なら別の聖杯戦争で当たった時にでも知り合った記憶が残留してんのか?」

 

 別の聖杯戦争……あー、うん? なんかそんな感じがしなくもないけど……。

 

 ま、よくわかんないから、いっか。

 

 

 

 …………

 

 

「ここから先は通さん」

 

 立ちはだかるのはシャドウサーヴァントとかいうなんかよくわからん存在。

 

 立香くんとマシュとオルガマリーは、この先にいるセイバーを倒すために先へ行った。

 つまり私とキャスニキが「ここは任せて先に行け!」をやったわけなのだな。

 めっちゃ死亡フラグでしんどい。

 

 とりあえず弓持ってるので敵はアーチャーだな。

 ってことはやばいな、キャスニキの後ろにいても攻撃当たるかもじゃんな。

 

「フツーに俺を盾にしようとしてんじゃねえよ」

 

 ちげーよ肉盾とか思ってないよ頼ってるだけだよ。

 ほらキャスニキ、矢避けの加護、早く矢避けの加護して。

 

「俺の真名だけでなく手の内も割れてんのか? 呑気な顔してあなどれねえ嬢ちゃんだな」

 

 ——————

 

 スキル『矢避けの加護』

 ・自身に回避を付与

 ・防御力をアップ

 

 ——————

 

 よし。このスキル、アーチャー相手なら最強やん。

 だって矢避けだぜ?

 

 そう思っていた時期もありました。

 

 いやー!! 普通に斬りかかってくるじゃんこの人ー!!!!!

 アーチャー詐欺!!! アーチャー詐欺だよこんなん!!!!!!!

 

 私の方がクソザコだと見抜いたのか、アーチャーは真っ先に私に斬りかかってきたのである。

 クッソこんなんセイバーじゃねえかずるいぞ詐欺だぞ!

 

 彼の判断は冷静かつ的確だ。私は一回斬られただけで死ぬぞ!

 宝具名も知らん、戦い方も知らん私にどうしろってんだ。

 

 死んだと思った。

 もうぜってえ無理だと思った。

 

 でも、それでも、諦めなければ何とかなるのが人生だって、私信じてるからね!?

 

 ——————

 

 スキル『■■■■■■■■■』

 ・コマ■ド■■ドを配り直す

 

 ——————

 

「何っ!?」

 

 アーチャーの剣の軌道は明らかに私に当たっていた。

 

 しかし、私のスキルが発動すると同時、その攻撃の線が不自然に逸れた。

 

 よくわからん! よくわからんけど助かった!

 ありがとうよくわからんスキル! 読めないけど!!

 

 

 

 …………

 

 

 

 その後も私は何度か、アーチャーの攻撃を不可思議な力で逸らした。

 

 決してバリアというわけではない。

 なぜなら普通に攻撃が何回かかすって血を流しているからだ。痛い。

 

 自分なりに私が何をしているのか分析してみたが、これは何というか。

 攻撃方法を私の力で強引に変更している、という感じだろうか。

 

 右フックをアッパーに。

 斬りかかりを突きに。

 蹴りをバックドロップに。

 

 そんな風に、相手の攻撃を無理やり変更している感じだ。

 

 相手の攻撃自体は行われるものの、攻撃の狙いや方法を相手の思い通りにさせないことで、致命傷が当たることを防いでいる。

 

 そんな感じで私が時間を稼ぎ。

 キャスニキが宝具をぶっぱした。

 

 ここで「やったか!?」とか「勝った!」とか言わないのが勝利の決め手ですよ。

 

「うし。消耗はしたが、セイバーのとこ行くぞ」

 

 ちょっと休んで行くという選択肢は?

 

「お前なあ、サーヴァントはマスターを守るもんだろうが」

 

 あ、そうなのか。はい、わかりました。

 ワタシ、マスター、マモル、オッケー。

 

「分かってんのかね……」

 

 分かってる分かってる。

 ところでキャスニキ、マスターって誰のことですか?

 

 キャスニキは空を仰いだ。

 

 

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