終局特異点で死んだぐだ子がアヴェンジャーとして召喚される話   作:九条空

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炎上汚染都市冬木③

 セイバーのところにたどり着いたらマシュ死にかけてて笑えない。

 

 というわけで何とかしようね、何とかなるって思ったら何とかなるものなのだ。

 

 ——————

 

 スキル『全体回復』

 ・味方全体の■■を■■■■回復

 

 ——————

 

 ほ〜らなんとかなった。

 余裕そうに言ってるけど実際めっちゃ嬉しい。

 

 超お役立ちスキルじゃないですかー! 

 私とキャスニキの傷も治った。

 

 今! 私は! 確かにサーヴァントとして活躍している! 

 

「キャスター! アヴェンジャー!」

 

 はいな。

 呼ばれる前からジャジャジャジャーン。

 

「先輩ッ! また宝具がきます!」

「マシュ、宝具は!?」

「まだ準備が……!」

 

 はいはいはい! はいはい! 

 ここも私の出番じゃないですかー!? 

 

 ——————

 

 スキル【■■譲渡】

 ・味方単体の■■を■■%増やす

 

 ——————

 

「これは……力が湧いてきます!」

 

 そうだろうそうだろう。

 記憶ないなりに私すごく頑張っているのでは? 

 

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を飲め!」

 

 ってちょっと待て敵のセイバーが撃とうとしてるのってビームでは!? 

 え!? ちょっとそれ反則なのでは!? 

 

 剣士の域を超えているのでは!? 

 

「【約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーン)】!」

「【疑似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)】!」

 

 セイバーの放った剣撃(ビーム)が、マシュの宝具と拮抗する。

 

 うそ……マシュ、硬すぎ? 

 

 ふざけてる場合じゃねえやあんなん何回も防いでられんわ! 

 キャスニキ早くルーン書いてルーン! 

 

「急かすな嬢ちゃん」

 

 ——————

 

 スキル【原初のルーン(クー・フーリン)】

 ・自身のクリティカル威力をアップ

 ・弱体耐性をアップ

 ・■■をチャージ

 

 ——————

 

 よしこれで私がスキル使えばキャスニキの宝具ブッパでドッカンドッカン戦争大終了……ってあれぇ!? 

 

 ア──ーッちょっと待って同じスキルって連発できないんですか!? 

 キャスニキにアレを譲渡できないんですけど! 

 

「本腰入れろ!」

 

 いや私戦闘手段持ってな、ア──────ッ!!!!! 

 

 

 

 ……

 

 

 

 キャスニキの宝具が打てるようになるまでもう少し。

 

 マシュは宝具を打ったばかりでまだまだ打てない。

 

 対するセイバー、さっき打ったばかりなのにもう宝具を展開している! 

 

 おかしいだろーッ! なんでやねん! 

 パワーパランスどうなってるんだよ! 

 

「聖杯の力で宝具打ち放題みてえだな」

 

 なにその聖杯って……あーっ待って今は説明なんか聞いてられない! 

 

 とりあえずセイバーはチートモードで宝具打ち放題ってことですねわかりました。

 えーと……じゃあ……私はどうする!? 

 

 同じ支援型ではあるが、盾で敵を殴れるマシュと異なり、私はマジで攻撃手段/Zeroなのだ。

 なぜなら素手だから。

 

 キャスニキのように杖でも持っていたら魔法が放てたのかもしれないが、素手なのだ。

 無理なのだ。そもそも私は自分が魔法使いなのかどうかも知らないのだ。

 

 だから持ってる手札は3つのスキルだけ。

 そのうち2個はもう使った。

 

 ってことは私の持ってる手札は1つきりじゃねーか馬鹿野郎が!!! 

 やれること1つだよこれでなにがどうなるかわかんないけどさァ!!!! 

 

 ——————

 

 スキル『■■■■■■■■■』

 ・コマ■ドカ■ドを配り直す

 

 ——————

 

「……足掻くな!」

「うっ!」

 

 宝具を展開しようとしていたセイバーは戦法を変え、マシュに斬りかかった。

 

 攻撃方法を変えるスキル、宝具を通常攻撃に変更できてよかったー! 

 じゃなかったらマシュが死んでたわ! 

 いやあれ範囲攻撃だから全員死んでたな!? 

 

 あーダメだダメだダメだマシュへのダメージが大きすぎる! 

 キャスニキも対応してくれてるけど矢避けの加護はさっきのアーチャー戦で使ったばかりで多分まだ展開できない。

 

 マシュはあと一撃でも食らったら死んでしまいそうだ。

 それだけは阻止しなきゃいけない。

 

 何でかって? 

 

 いや知らんけど! 

 

 だって記憶喪失だから! 

 

 なにも覚えてないけど! 

 

 それだけは! 

 

 マシュが死ぬのは! 

 

 ダメなんだよ! 

 

 

 

 …………

 

 

 

「そんな……なんでっ!?」

 

 マシュは目の前の光景に絶句した。

 

 正体不明、記憶喪失のアヴェンジャー。

 自分に続く、藤丸立香のサーヴァント。

 

 彼女は、自分のこともわからなければ戦いのこともわからないと、先輩よりもさらに後ろに控え続けていた。

 オルガマリー所長にサーヴァントとしてありえない、と怒号を受けても、記憶喪失だからなにがありえてありえないかもわかりませんと適当に流していた。そんな彼女が。

 

 殺されたら死ぬから、死ぬのは嫌だから、とずっとぼやいていた、サーヴァントなのにきっと誰よりも生きたがっていた。そんな彼女が。

 

 かばうように飛び出してきて、マシュの代わりに、セイバーに斬り伏せられた。

 

「目障りだ」

 

 セイバーが、膝をついたアヴェンジャーの首を刎ねた。

 

 首が、とんで。

 

 光になって、消えてしまった。

 

 何の言葉も残さずに。

 

 

 でも、彼女がなにをしたかったのかはわかった。

 私を守ること——そして、キャスターのための時間稼ぎだ。

 

「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社」

 

 召喚された植物の巨人が、胸の檻の扉を開けてセイバーそこに放り込む。

 

 

「オラ、善悪問わず土に還りな! 【灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)】!」

 

 

 かくして、セイバー戦はアヴェンジャーの犠牲を持って幕を引く。

 

 マシュは守りきれなかった自分を恥じながら、未だに残る不穏な雰囲気に身構えた——。

 

 

 

 …………

 

 

 

 死んだ。

 

 いや、死んだっていうか、何だ、還った? 

 

 そう、思い出した。色々思い出したのだ。

 

 実を言うとそう、私はもう死んでいたのだった。

 

 と言うか、サーヴァントの概念からすると、サーヴァントって死んでからしかなれないから、私は死んでいて当たり前なのだった。

 そのくせ戦闘の時に死にたくない〜とか言って後ろに引っ込んでたの、今考えるとダサすぎだな。

 

 いやでも死んだことも思い出せなかったのだから、しょうがないだろう。

 

 私の名前は藤丸立香。

 カルデア最後のマスターだった。

 

 マシュとともに特異点を駆け回り、人理を修復し続けた。

 そうして最後、ソロモン——ゲーティアと戦ったのだ。

 

 そして勝利した。

 

 けれど、ゲーティアを倒したことで崩壊する終局特異点から逃げる途中に、私は逃げ遅れたのだ。

 頑張って頑張って走ったけれど、逃げきれなかったのだ。

 

 諦めなければ何とかなると、最後までは信じきれなかった。

 「もういいや」と思ってしまったのだ。

 

 勝ったから、人理を修復したから、もう全部終わったから。

 

 だから「もういいや」。

 

 もしかしたら逃げ遅れてしまうかもしれないギリギリの瞬間、私はマシュとともに生き残ることではなく。

 マシュの背中を強く押し、彼女だけを確実に生き延びさせる道を選んだ。

 

 選んでしまった。選んでしまったのだ。

 

 それが私の後悔。

 

 ああきっと、私の優しい後輩は、私を失って悲しんだだろう。

 長くともに戦った私には、それが自惚れではない自信がある。

 

 後輩を悲しみから守れずに、なにがマスターだ。

 なにが、「もういいや」なのだ。

 

 私自身も、ロマンを失った悲しみに耐えられそうになかったくせに。

 いや、いいや、耐えられなかったから。

 耐えられなかったら、ああなったのだ。

 

 私の後悔。

 

 藤丸立香は普通の人間だ。

 英雄になれる器のないはずの一般人だった。

 

 だから死んでしまっては、後悔など意味をなさない「はずだった」。

 

 

 うん、これね、バグなのだな。

 

 

 宝具名の表示とか、どうみたってバグでしかないのだ。

 つまり、「英霊としての私」の存在自体が、「カルデアスのバグ」なのだ。

 

 ありえない存在、それが「アヴェンジャー:藤丸立香」なのだった。

 

 終局特異点で死んだ私の復讐対象、それは「自分」だ。

 

 生を諦めてしまった私だ。

 マシュを置いていってしまった私だ。

 ロマニを失うことに耐えられなかった私だ。

「もういいや」で全てを投げ出してしまった私だ。

 

 だからバグった私は、並行世界に召喚された。

 並行世界の「藤丸立香」の元に。

 復讐対象の元に。

 

 全ては、そういうことだったのだ。

 

 しかしバグとは再現不可能だからバグという。

 

 もう私は二度と、召喚されることなどないだろう。

 いや、そもそもバグとして、データ自体が削除されるだろうか。

 

 まあ、それでもいいか。

 一般人である私にはこんな機会、本来訪れるはずもなかったのだ。

 

 一度だけの奇跡で、並行世界のとはいえ、マシュを守れた。

 それで満足だ、それで、もう——

 

 

 もう、いいや? 

 

 

 いや。いいや。ダメだ。

 

 その言葉だけは、許してはならない。

 

「アヴェンジャー:藤丸立香」は、その言葉だけは許してはならない。

 

 何故ならば、その言葉を許容した己自身に、増悪を向けるサーヴァントだからだ。

 

 

 だから、よくないのだ。

 

 このままじゃ、何にも、よくないのだ。

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 サーヴァント、復讐者(アヴェンジャー)、召喚に応じ参上し……ってあれ? 

 

 勝手に口からこぼれた言葉に首をかしげる。

 

 私は何を言っているんだ。

 そしてここはどこだろう。さらに私は誰だろう。

 

 どことなくテンプレな気がする疑問とともに、私は——思い出した。

 ここはカルデアだ。

 

「アヴェンジャー!」

 

 ためらいなく私の名を呼ぶのは藤丸立香。

 

「よかった、まさか、召喚できるなんて! ダ・ヴィンチちゃんに狙ったサーヴァントを召喚することはできないって言われたから、奇跡を願うしかなかったけど……」

 

 そうか。奇跡を願ったのか。

 うん。私も祈ったのだ。

 藤丸立香、君と私で願ったから、だからきっと叶ったのだな。

 

「それで、一応正当な方法で召喚されたらしいんだけど、記憶の方は戻ってる?」

 

 ああ、戻っているとも。

 私の名前は■■■■。

 

「あれ? ごめん、もっかい言ってくれる?」

 

 何度言っても聞こえないと思うぞ。

 私はカルデアのバグだからな! 

 

「バグって?」

「本来なら表示されるはずのサーヴァント情報が虫食いだらけ! 名乗ってもらった真名は謎の力で聞き取れないし! 一体なにがどうなってるんだ!」

 

 頭をかきむしって叫んだのはロマン。

 うむ。

 ロマンなのだな。

 

「ああはい、ロマンです……じゃなくて! バグってどういうことだい?」

 

 だから、サーヴァント■■■■は本来存在してはならないということなのだ。

 この世界に私はいない。けど、バグってるからいる。そういうことなのだ。

 

「どういうことなのかさっぱりだよ!」

 

 まあ細かいことはいいじゃないか。私もよくわからんし。

 

「え、ええー……?」

 

 それよりもだ藤丸立香。君に言いたいことがあるから言ってもいいか。

 

「なに?」

 

 あなたが私のマスターか? 

 

「うん、そういうことに、なるんじゃ……ないかな?」

 

 頰をかきながら、自信なさげに言われた。

 ここはめっちゃカッコつけるところだったろうに。

 

 でもいいのだ。私はそれでいい。

 

 それじゃあ人理修復のために、そして私の復讐のために。

 

 しばらく、よろしく頼むよ、マスター。

 




マテリアル

真名『■■■■』
クラス『アヴェンジャー』

キャラクター詳細
カ■■ア■員、■■■■が■■■■■■■■■姿。
■■■■■■■■、■■■■のた■■■■■■■■。

ステータス
出典:Fate/Grand Order
地域:カルデア
属性:中立・中庸 性別:女性

宝具:
『■■を■■■■■(■■■■■■■■)』
ランク:D 種別:対人宝具
■■を消費■■■■■、■■の即時■■、■■■■の■■■、■■した■■■■■を■■させる。

筋力E 耐久E 敏捷E 魔力E 幸運E 宝具E
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