「♬」
「…それにしても、東京シャードとはいえ冬は寒いねぇ」
(隊長を赴任して初めての冬、一年が終わるのもあっという間だ)
暖房をかけた車内、正直出勤したくない気持ちを抑えつつ製作所へと走らせる
***************
(冬服、あと数着買わなくちゃな)
駐車して玄関を開けながら休日の予定を考える
(あ~第2の我が家って気がしてきたわぁ)
家にいる時間よりもここにいる方が多いからなあ
しみじみと思いつつも、営業準備もしなくちゃな
(え~とこのスイッチをONにしてっと)
出退勤の記録の為、玄関に備えているリーダーで打刻する
(稀に打刻されない時は、この世にいないってことなのかね?知らんけど)
温度計を見て、外と気温が変わらない
(暖房入れるか)
朝早くから入れるとフミフミに小言いわれそうだけど、仕方がない。寒いもん
皆が来る前に今日のシフト表の確認、AEGISからのメールを確認してっと…
(よし、遊ぼう!)
え、今勢いがある成子坂製作所の隊長さんともあろうお方がそんな事していいのかって?
「いいんです!!」
作りかけのプラモを机の引き出しから取り出して、皆が出勤するのを待つ。最高やな
…
……
………
「やっぱり関節のギミックすげえなぁ、これで5千円は安い!」
注意:誰もいないからと言っても仕事場で模型を作ってはいけません
「お、おはようございます隊長」
「ひゃ!?今回も見逃して…ほ。なんだ楓か、驚かさないでくれよ」
ほれ見てみぃ、カッターが足に突き刺さっちゃった
ちょっとしたホラーよ、これ。
(靴履いてなかったらアウトだったな)
服装にも気を付けなきゃな。
犠牲になった、デカールの貼り直しは次の機会に直そ
気を取り直して、出勤して来た楓の方に気持ちを切り替えてっと
「あれ?まだ出勤時間よりだいぶ早いけど?間違えちゃった?」
時計を確認しても、30分は早い
遅刻されるよりはいいんだけどね
「いえ、今日はオフなんですが隊長に稽古つけて欲しくて…来ちゃいました」
まったくこの娘は...
しかしプラモも作りも終わったことだし、椅子座りっぱなしも健康に悪いからな
「分かった、それなら地下のトレーニング室で稽古としゃれこみますか」
「…はい!」
おお、満面の笑顔になった。天使かよ
まあ、稽古というよりかは模擬戦なんだけどね
普段ももうちょっと緩くすれば、男子からモテモテになるのではないだろうか
聞いたところだと、勤勉なのか。あまり異性と必要以外に話さそうだから。
(まあ、本人がその気がないのならば、こちらが何かを言うのも野暮だろう)
「あの。隊長どうかしましたか?」
しまった!ちょっとばかし考え込んでしまった。今は稽古をつけることに、専念しないと。
「すまん、少し考え事してた。稽古だったね、なら着替えしないとな」
こうして、今日も一日が始まった
…
……
う~むそれにしても
(叢雲の製作陣に太ももフェチが携わっているだろ絶対(感謝))
成子坂では88式の旧型スーツも露出が無いとは言わないが…
(ムチムチなんだよなあ)
傾向的には電撃・重力に『巨』を持つ者が多数にいる。
むろん。焼夷・冷撃にも少なからず、天に選ばれたスタイルの良さを手にした者も確認されている。
しかしその中で至高とも言える猛者が表れた
安産型・一億おっぱい・天使っぱいが所属した時はびっくりしたよ。
煩悩を活性化するだもん、隊長しんどいよ。
「隊長?どうかなさいましたか?」
「あ、いや。何というか有難う」
楓も胸が控えめだからと言っても、日々鍛錬に勤しむ事から無駄のない健康的な肉付き
大和撫子とは楓にピッタリな表現と言えるだろう。そう思ったら今の内に手を合わせな勿体無いで
「?...よくわかりませんが、お褒めに預かり有難う御座います」
お辞儀をしてくれたが、エッチな目で見ていたなんて言えない
小さな罪悪感が心を蝕むが、男だからねエッチなんだもん
「ま、気楽に行きますか」
「隊長、今回は何の武器を使うのですか?」
前回は日本刀だったっかな?あの時はちえりんもいたからしんどかった。
ちえりんの眼が本気だし、攻撃が当たる度に、興奮して襲いかかってくるからたちわりぃ
言葉が矛盾しているかもしれないが、理性を持った狂戦士といった具合だった。
戦っている最中は何もかも忘れられる様で、そうなるとのこと。
(いやはや、困った人だよ。まったく)
前の事を思い出しつつ、武器を選んだ
「今回はこの2つで遊ぼうかな」
逃走用に重宝する。ウイップ(鞭)二つ。それとコンバットナイフ数本を懐に入れ、構えをとる
「今回はどのように決しましょうか?」
楓も構えを取りつつ、今回の勝敗の取り方について質問してきた
「そうだなぁ。今回は、武器が体に三回当てたら勝ちってことで」
「分かりました、では行きます!!」
「かかってきなさい~!」
こうして、何十回目かも忘れた模擬戦が開始となった。
…
……
私=吾妻楓は今日も隊長に戦いを挑む。
(空気が重い...)
隊長の底が解らない。
多分、本気ではないのでしょう。それでも、圧倒する力。
(隊長と私との格の違い…)
単に、体格の差とかではなく、技術を駆使して翻弄されてしまう。
(今まで気にしていませんでしたが、隊長は成子坂に在職する前は何をしていたのでしょ?)
誰もご存じない。知っているとすれば、所長だけしかわからないでしょうけど...
雑念を巡らせつつ、攻撃を仕掛ける一瞬を防ぐ事に意識を傾ける。
「まあまあ、そんなに気張るなよっと」
「!?」
隊長の左手から何かが真っ直ぐ飛んできた
「はっ!」
咄嗟の回避が功を奏し、何かが後方の壁に当たり床へと落ちていく
片目でその何かを視界に入れるとその正体に気付けた。
(あれはナイフ!?それをノーモーションで投げてくるなんて)
私が驚いているのを他所に、隊長は口を開く。
「あ~やっぱ、不意打ちにはもってこいだけど、当るまでには至らんか。流石に!」
左手にはナイフを、右手には鞭を使ってこちらへ急速に接近してきた
「え、うそ!」
「いやっほおおおお」
鞭の先端に備えられた装置が、何にでもくっ付く様に設計されている。
「ぼ、防御を」
構えようとしても、反応できずに一撃を当てられてしまった。
「はい、先ず一回ね」
(そんな、あっという間に)
「このままだと直ぐに終わっちまいそうだな」
元の位置へと戻り、余裕の顔をしながら隊長は呟く
「そんなことありません!!次はやられません!!」
負けじと威勢を張るが、
「あらよっと」
「く...!」
次は左右の鞭の先にナイフを付けて、遠距離からの攻撃に変化した
(これでは迂闊に近づけない)
弾いたと思ったらすぐさま次の攻撃に転じる、近づくことすら難しい
何とか打破しなければ、勝ちは掴めない
(このままでは埒が飽きません)
私はただ弾くのではなく、鞭とナイフを繋ぐ接続部を壊す事に専念した
「こ...これなら...いけます!」
いくらナイフの本数があっても、鞭に付けられるのは二本だけ付け入る隙が出来るはず
しかし、消耗が激しい。精神的なものですが、高速で振っている物に当てるのは骨が折れる。
「はぁ...!」
一瞬の鞭の緩みを逃さず、鞭を隊長の後方へと弾き飛ばすことに成功した。
「やば」
左右の鞭の先にナイフはもうない。今なら一撃を与えることが出来る
「せい...!」
自分の間合いまで距離を詰め、会心の一撃を叩き込む
「流石にこれはやる気をみせんとな」
隊長は後方へ飛ばされた内、右腕に備えた鞭を利用する形で壁に引っ張られた
その結果、私の一撃は空振りになってしまった。
「そんな!」
「おしい、あと少しで無敗に傷つくとこだった。成長したな」
言葉を発しながら左腕に備えた鞭を振い、刀身へと当てられた。
(くっ!)
強烈な痺れが生じて、刀は私の手から離れ床に落としてしまう。
「あ…」
「これで二回目も敗北だな」
刀を拾う暇もなしに、為す術もなく攻撃を当たられてしまった。
(隊長には私の攻撃が全く通じない…)
圧倒的だ。苦労して近づき、会心の一撃を放っても隊長には通じない。その事実は深く心に突き刺さる。
「次で三回目か...ほれ、武器を拾って次行くぞつぎ」
「…」
刀を手にしようと拾っては手から落ちてしまい、カランと音が響く。
膝が地面に落とした、目の前が歪んで見えてしまう、自信もなくなる。
模擬戦とはいえ、勝つ
(…でも、一体どうすれば一矢を報えるのでしょうか?)
不安だけが巡り、体に力が入らない。
そんな私の前に立ち、両肩を掴み目を逸らさせまいとする。
「怖いか」
「はい...ここまで見事に負かされて、自信を無くしてしまいました」
「楓は負けず嫌いで気持ちの切り替えが早いと思っていたんだが...」
「私は、隊長が思うほど強い人ではありません」
ただ、憧れたお姉ちゃんに追いつきたかった
大切な人達に置いて行かれないよう、ただただ研磨していただけ。根っこは弱かった幼い時のまま
「現にこの有様です」
今にも泣き崩れてしまいそうなのを、支えてもらって維持出来てる
「私は貴方の様に強くなりたいんです!」
色んな方達を導き、確かな強さを持った人。
いつからか憧れていました
「…俺は楓が言うほど強い人間じゃない」
しかし貴方は首を横に振り、自身の強さを否定する。
何故? どうして?
「俺の強さ…技術は、【生き残るため】に得たものだ。自分ひとりしか守れない情けない物だ。本当の強さってものは楓の様な【誰かを護る】それこそ本当の強さだ」
…悲しい顔している、今にも泣きそうなのを堪えているんだ
私には貴方が何を背負い、過ごして来たのかわからない。
けど、辛い人生[もの]だった事は理解できた。
「でもありがとう、俺なんかを憧れて。本音を言ってくれて」
そっと私を抱きしめる。
「…隊長!!」
「今だけでもいい。我慢していたものを吐き出せ、傍にいてやる...それ位にしか俺は出来ない」
長く忘れてた、人の温もり。
春風にも似た優しい暖かさの前に、私は静かに泣いた
…
……
………
泣いてから多分10分は経ったと思う、時計を見ていないから確信していないが体感それぐらいあるだろう。
過去に囚われて、誰かに相談することも、忘れることもできなかった、不器用な娘。
(本当ならアクトレスという職業に、若い子達に担わせたくは無いんだけどな)
髪を優しく撫でながら切に願う
ヴァイスが地球に侵攻してから約300年、人々の生活を護る為に若い者達が盾となる現代。
技術が発展し、少女達の殉職は低い数値をもたらしている
だが奴らも特異型・新種など進化している、不安は拭い切れない
せめて、君達を喪う事など無い様に俺が、大人達がサポートしていかなくちゃな
自分勝手な罪滅ぼしだがな
「…隊長」
「どうした?」
「少し、我儘になります」
先程まで流していた涙が止み、こちらの服をギュッと掴んだ手を腰に回してきた
密着して、む、胸が当たっているんだが…幸せ
「あの~楓さん?隊長さんだって男なんですけど~、我慢できない一本があってですね」
「ですから、我慢してください隊長?」
耳元で囁いた後、腰に回してた手を首に移動し、腰には足を絡ませる形へと変化させた。
俺は明けてはいけないパンドラの箱の様なものを開けてしまったのでないかと後悔の念と共に、
今まで見られなかった楓の一面が見れて興奮している自分もいるもの事実。
(こうなったらこっちだって!)
やけになり、こちらも右手を頭の後ろへ。左手を腰へと回し、互いがより密着しての我慢比べと移行した。
因みに私は童貞貴族です!
しかし、余裕のなのか顔が見れないからその表情が確認できないから予想で言っているが、確実だろう
さっきから、耳にやたら息を吹きかけて来るんですよ!
小悪魔が降臨してしまった
美少女+小悪魔×密着囁き=俺が死ぬ
「・・・」
互いの心臓の鼓動が聞こえる
「ふふ…子供の頃にお父さんに抱っこして貰ったのを思い出します。大きくて温かい、とても安心します。…隊長さんもご両親にしてもらったことありましたか?」
「ごめんな。俺は孤児生まれだから両親の事は分からないんだ」
教養されてはいたが、家族なんて繋がりを理解することは出来なかった。
「愛情か、どんな物なのかね」
やべ!また暗い話になってしまった。折角いい感じになってたのに
しかし後悔先に立たず、口に出してしまっていた。
「なら…わ…が…」
「?」
今何か言っていたが、小声で聞き取りづらい。
そんなこと考えていたら、ガバっと顔を上げ、意を決したかのような表情をしこちらに顔を近づけてくる。
え!ちょっ!?
「私が…隊長さん…貴方に愛を…」
茹で蛸みたいに真っ赤な顔、目を閉じてこちらの唇と合流しようとしている。
勇気を出した行動を無下にもできない。だが、果たすべき使命が終わるまで結婚する気がないのも事実。
あと
(高校生に手を出すのはどうかと…)
一時の感情に身を任せるのはロクな結果を逃さないからなぁ
そうしている間にも刻々と近づく。
いっそ楽になって、応えようと決めた時
なぜだか、死神の釜が首筋に当てられた感触がして我に返った
(!?)
楓も同じ様に感じたのか、正気に戻り辺りを見渡す。
「隊長さん…何をしているのですか?うふふふふふ」
あ!俺死んだ…
みさきさんに見つかった、こ、殺される。
あれ?でも
「みさきさん、今日はシフト入っていないはず?AEGISからの急ぎの用もありませんのに…」
「妻が夫に愛妻弁当を持ってくるのに理由はいりますか?」
「くそ!会話のキャッチボールが成立してねえ」
相手から投げられたのは魔球じゃった
「匙な事は忘れて、何故楓さんは旦那さんに抱き着いているのでしょうか?詳しく教えてもらえると苦しまずに済むのですが...」
目に光を宿していないんだが
「隊長、私は決して話しませんから。死ぬときは一緒です!」
死ぬ前提で考えるのはやめようか楓よ
「隊長さん?早く離れてください?浮気するのなら手足を拘束して余生を過ごすしかありませんよ?」
うわ~。頑丈そうな手錠と首輪が胸元から取り出したよ。嬉しそうな表情も見える~、もう帰ろっかな今日
「まず話を聞いてくれ!誤解だから、やましいことはしてないから」
ここは先ず、穏便にすることが延命への道。何とかしてつかみ取らねば
思考を巡らせ、逃げる算段をつけたと同時に楓さんが口を開く
「そうです!やましいことはしてません。今からするんですから、あっちに行っててもらえますか‼」
・・・さよなら現世、よろしく来世。
死って突然訪れるもんだ
その後、文嘉さんが仲介に入り何とか収まった。
「え〜今日もヴァイスの出現報告がないから、ま〜巡回で。
もし現れた場合は連絡、直ぐに指揮をする。
因みに基本スリーマンセルだが、今回はフォーマンセルでの出動だ。ちょぅど良い機会だからシタラやジニーが先導して乙莉さんを指導するように、それじゃあ、今日もよろしく」
「「「「はい」」」」
憧れのトライステラと一緒なら、良い刺激になるだろう
まあ、肝心の本人は「あわわわ」ってテンパっているが大丈夫だと思い...たい
今回の内容は巡回だから、指揮しなくても大丈夫だろう。
他にも目を通していけないことが事務作業が増えて、肩凝りが日に日に酷くなってきた。
「隊長は今日も真理さんとデート?」
褐色巨乳が尋ねてきた
「何とか形にはしないとな」
あと数日には両親が来るそうだから、あまり猶予もないしな。
「えっと...今日はどんな所に行くんですか?」
普段着が薄着で下着が見えてしまう服装なのだが
(狙っているのではなく、素で選んでいるんだろうなあ)
あがり症で引っ込み思案なのだが、街中でその服装はどうかと思うぞ。
「特に考えていないが、ゆっくりと観光でもするかねぇ」
やはりこういうのは無頓着だったから、行きたい場所が思い浮かばない。
「だったらこことかがお勧めかな。カップル向けで施設が多いから、手慣れていない隊長にはぴったりだと思うよ☆」
金髪の女の子が流暢な日本語と手つきで、俺のスマホに店の情報を送ってくれる。
「助かった、正直困ってた」
郷によっては郷に従えというし、ヘマするよりは断然いい。
俺はジニーに一礼する。
「いいって、その代わりに私も隊長とデートするでチャラにしてあげるね〜」
ハッハハー、こ奴め。冗談なのか本気なのかこちらの左腕に抱きついてきた。(ジニーは信頼はしているかが、掴み所が分からない事があるからやりにくい)
手玉に取られている気がする。多分
「隊長はモテモテだねぇ〜、よ!憎いねぜ大将!」
「王道も…あり…」
「お、おめでとうございます???」
シタラは煽り、舞さんは鼻血を出しながらもメモを取る
乙莉さんは顔を真っ赤にして勘違いをしていた。
「はいはい、デートでもしてあげるからとりあえず離れてくれ。
俺が獣にならん内にな」
「は〜い。じゃあさ約束!楽しみだなぁ」
指切りげんまんをして、やっと離れてくれた。ホント良い身体してるよ。
「恋愛なら同級辺りでいいだろうに…二十歳超えてんだよ俺」
年頃の女子高校生なら同級か下級生、またや上級生とデートに誘う事が大半っうのにな
「それがさ隊長。意外にもジニーは男子より女子にモテモテなんだよねぇ。姉御的な感じで人気なの。けど性欲旺盛な男子には高嶺の花で意気地なしが多くて、ラブレターでの告白がだいたい」
「確かに3人でもジニーが引っ張ってる感じがあるしな」
女子人気も頷ける。
「それを言うならシタラだって、毎日大量のラブレター貰っては開けずにしているよね。未だに返事が来てないって男子が泣いてたって話だよ」
男はおっぱい好きだもんね。気持ちは分かる。
当の本人は親友の反撃を想定してなかったのか、顔を真っ赤にしてテンパってる。愛らしい
「ちょ!それを言うなし!?…だってなんて書いたら良いか解らんし、付き合うとか無理だし」
「返事がないって事は脈なしだから、書かなくても大丈夫だろ。 偶に勘違いする奴がいる可能性があるから、そんときは相談に乗るわ」
(もしもの時は送り主を体育館の裏へ誘きだし、
シタラの後ろで腕組んで威圧でもするか)
落ち着かせる為、シタラの頭を撫でつつ対処法を思いつく
「こんなことしてるけどさ隊長。時間はいいかい?」
「あ」
時計を見ると、約束残り時間まで残り数分になっていた。
「わりぃ、そんな訳で行ってくるわ」
余裕の行動を取るつもりが、気が緩むとすぐだめになるなぁ
***********
「えっとですね。みさきさんには隊長の監視をお願いしたい」
「はぁ」とため息が溢れる。勤め先にも夫(願望)を狙う者が現れると言うのですか。しかし、口には出せる訳がない。
「それは、隊長さんの疑いが晴れていないとですね」
「何分あの人の情報が少ないですから、上層部でも意見が別れているんですよ。これまでの実績があっても、拭えない不安が取れるまでの対処です」
全く面倒な事を押し付けるもんです。と愛宕さんは肩をすくめてこちらに同意を求める様な仕草をした。
「琴村姉妹が『SIN』について何も知らない様でしたので、今回の件の方を重要度が上ですかね。ステルスで尾行して下さい」
「拝命いたしました。では早速」
その場から離れ、目の前から消える。任務に向かったのだろう。
(それにしても…)
成子坂の隊長はこの情報社会のご時世、謎に包まれると言うのは凄いもんですね。
悪い人では無いんでしょうが、確証出るまで我慢して下さいね。
身から出たサビでしょうけど…
**********
「それにしても、混んでるなぁ」
「当たり前じゃん。祝日なんだし、逸れない様に…手、繋ご?」
はいはいと彼女の気遣いに感謝をしつつ、差し出された左手を捕まえる。よく見ると、顔を真っ赤にしてしているやんけ。
「えへへ〜暖かいね」
「そうだな」
恥ずかしさのせいか、直ぐに暑くなる。
景色を見渡して見るとカップル連れやイルミネーション、冬服のセールなどなど、活気づいてる。
「さて、何か食べ歩き向けか小腹を満たす店はやっていないかな?」
裏路地に昼から営業している居酒屋もあるが、今回の雰囲気作りには適さないから除外する。しかし、普段は一人でぶらりと飲み食いに行く為、自然と通う店も煙たくて酔っぱらいのサラリーマンが多い所になってしまうからなぁ。どうしたものか。
「手羽先の食べ放題もアルコール飲み放題付きで、安くて旨いがそうはいかんし〜」
「私もすっごく行きたいけど、それは今度のお楽しみにしとく」
ならば、割烹着屋にでも行くかね。今から予約入れて間に合えば…
「そうやぁさ、一つ聞きたいことがあるんだが」
「?どうかしたの?」
気のせいならば、このまま電話するがその前に確認を取らねば
「母さん来るんだったら、部屋の掃除はちゃんとしているのかなぁっと思って…」
この前、杏奈さんが「真理ちゃんの部屋凄く汚くて、ゴミ屋敷とかでは無いのですけど、女の子の部屋なんだからもう少し奇麗にして欲しいものですよね」って言っていたな。
彼女の顔を伺うと、はっ(・o・)とした表情からやっちまった
Σ(´∀`;)という表情へと変えていった。
すると、こちらの方に顔を向け涙目を浮かべながら呟く
「ど、どうしよう」
取り敢えず、俺が言えることは
「…今日の昼飯はコンビニ弁当へグレードダウンしました」
こうして、デートは中止となり晩御飯の材料を買うため、スーパーへと足を運ぶのでした。
************
「おっじゃましま〜す」
「只今我が家」
成子坂製作所から駅を乗り継いで30分位の場所。新築では無くても、古臭いわけでも無い。
しかし
「流石に言わせてもらうわ、汚ねぇ」
空き缶やカップ麺、服などが散乱しているのだ。一人暮らしって気が緩じゃうもんな。
「だはは〜、後で片付けるって後回しにしたらこんなんなっちゃったわ〜」
世話が焼けるやつだ。
スーパーで買った食べも物を冷蔵庫にいれる。
「…酒とつまみしか置かれてねぇ」
ストロングな缶酒が各種揃っているのはお気に入りなのだろう。
「チンした物って手軽で美味しくって便利。最近は栄養バランスがバッチリだし」
「バッチリかぁ」
胸に行くであろう栄養は、どうやら摂取出来なかったようだ。もしくは入ってなかったか。
(偶に年齢より若く見られたらしいけど)
中高生高に見られて、涙を流してたな。
若く見られすぎるのも問題ってわけだ。
「まあ、ここに置くか」
昼飯用の弁当とゴミ袋を一先ずテーブルの上に置く。
「…腰を下ろせる場所がベットだけって…」
「メンゴメンゴ」
平謝りで済ます彼女に半端諦め、さっさと弁当の米を口に放り込んだ。
**************
「さて、片付けを始めますとするか」
やることは可燃物と不燃物、リサイクルや残して置く物で仕分け。
それが終わったら百均の商品で散らかさない様に、フォローも入れておこう。
気合を入れる為の両頬を叩く。
「あ!そうだそうだ」
彼女が何かを思いだしたかのように、顔だけこちらを向き告げた
「私の下着が落ちていたからって、興奮しないでね」
「大丈夫。きちんと粗大ゴミに放り込むよ」
…何故かパンチが飛んできた。酷い
掃除をしていると、ゴミの中からまだ使えそうな化粧品や、売れ残ったであろう隠し撮り写真。
棚があるというのに、そこら辺に置く日々が続いて現状が完成されたのだな。
「よくもまあ、ゴキブリとかでなかったな。居たら退治したくないし」
俊敏だしキモイし、1匹見たら100匹いるって考え、恐怖過ぎないか?
「居たら言ってね。私、隊長を盾にしてでも触りたくないから」
あ、隊長は生贄になるんですね。くたばれ。
「ったく。飲みかけのペットボトルもあんのかよ」
賞味期限を見てみると、半年も前に切れて…変色もしてるじゃねえか
「それは口に合わなくて、放置してたやつ。すっかり忘れてた~」
「しゃ!かい!じんっ!!」
声を上げながらも流しに、中身の液体を処分する。下水処理が優秀である事を祈る
「ゴキもいないだろうなぁ」
むしろ寄り付かなそう
「綺麗に整理されているのは棚だけか…」
目線を唯一綺麗そうな棚に目を向ける
埃があるが、放ったらかしにしている訳でもない。週1位で掃除はしているのだろう。
「そこは私が責任を持って掃除するから、他のを頼む〜」
「へいへい」
キッチンからリビングに戻り、ゴミの選別を再開するのだった。
********************
「こんなものか」
「結構あったねぇ」
空き缶が大半を占めている。掃除したのか昼過ぎで今は外も暗いから17時か18時辺りだろう、腹も空いてきた。
「飯にしますか」
立ち上がってキッチンへと向かう。
(調味料は塩と胡椒、わさびに醤油しかない)
あるだけマシかとポジティブ思考へシフトしつつ、冷蔵庫から材料を取り出す。
「いやぁ。まさか隊長の手料理食べられるなんて思っても見なかった」
驚きの声を出しつつも、テーブルで晩酌を始めてやがる。
ゴミ捨てに行っている間から飲んでいたんだろう。今ので5個目だ。
(つまみを先にするか)
買ってきたアサリにバターで炒めて、醤油と七味で味付けを施す。
「ほら、酒ばかり飲むな。これでも食べてろ」
女子と言うよりは、女子の皮を着たおっさんだな。
「あ〜極楽極楽。何もしなくても美味しい物が出てくるのは最高だねぇ」
ぷふぁっと泡が口についているもお構いなく、次々に口に放り込む
「俺は家政婦か」
この光景を見た真理のお母様は俺を彼氏と見てくれるのだろうか?
「合鍵渡すから、時々料理つくってよ」
「…1品作る度に500円の料金が貰えるならな」
あまりない休日をそんなことで使ってたまるかよ
「え~遠慮なく女性の部屋に上がる貴重な機会を棒に振るつもりかい?もったいないなあ」
「いや、すぐみの家には頻繁に行ってはいるんだがな」
プラモの技術が恐ろしく高いから、教わりに遊びに行くのは楽しい。上達やモチベの向上にも繋がる。一石二鳥やな。
ただ、あの娘も栄養が偏りそうな飯をよく食べるから、行く度料理は作る羽目になったがな。
雛鳥にエサを上げる親鳥みたいな関係かねぇ
「うわ〜、隊長は手当たり次第に女の娘につばをかけているのか。ハーレム主人公かよ」
「人聞きの悪いことを言うなし。ほら、オムライスだ。これでも食え、食い終わったら俺は帰る」
結構長いしてしまったし、これ以上する事はない。
「TVつけんぞ」
「はいよ〜」
許可を貰い。明日の天気や話題のニュースに目を通す。
「…現在のシャードは大規模紛争後から安全地帯が拡大し、観光スポットなども点在しています」
「ここって、前までは生きて帰れる保証なしって所だったよね」
腹が膨れて布団で横になりながら言う。
「ああ。王国周辺の観光業が盛んな範囲でしか旅行者は出歩けず、地元民の2割が職に就けれなくて、傭兵等に有り就く。悲しい所だった」
そのシャードの背景には民族が関係している。
複数の人種が集まり、文化・宗教。価値観が異なる事が紛争を起こす要因となった。
日本も多種多様な人種が集まる所ではあるが、他民族でも受け入れる心の広さが、結果として新たな価値観を産む土壌となった。
(しかし…それは日本独自の文化の変化を余儀なくするものでもあったがな)
まあ、事の善悪を求めるつもりはないが。
「でも、紛争が収まって行きやすくなったんだよね」
「今まで脚光を浴びるのがなかったしな、新たなビジネス場として注目を集めているか…」
考え深いとうなずく。真理はその様子を微笑みつつも、可笑しな発言をしたのに気づく。
「あれ?隊長は行ったことあるの?」
「いや…知り合いにカメラマンがいて、偶々教えてもらっただけさ」
不意に視線を反らす、私にはその光景が不自然だと思った。
けれど、これ以上探ってものらりくらり躱されてしまうであろう。「…っと。夜も老けてきたし…」
真理は「…襲うの?獣みたいに?」と冗談なのか本気なのか、こちらに挑発をしてきた。…残念な胸が色気を生産できなかったらしい。悲しいな
「家に飼ってる兎に餌をやらないとな」
「よいしょ」っと腰を上げて、彼が帰ろうとする。
こういった時に言葉が見つからない。所詮は偽装の恋人同士。もうすぐ来る母さんを騙すまでの役を演じているに過ぎない。
だけど
(この胸が締め付けられる、気持ちは何?)
良く分からない感情が駆け巡る。それは言葉として現れた
「また…いや。今度は隊長の家に行っていい?」
彼は暗い表情をした後、笑顔で返す
「ふ〜む。来てもいいが面白みがないぞ?趣味全開に仕上げているからシンナーの匂いがキツイかも。」
誤れば人体に影響を及ぼすの物が多いというのはすぐみちゃんが言ってたっけ。一応塗装ブースの設置、空調には気を使っているけど、慣れていないと初見はきついもんがあるよね。(使う塗料にもよる。隊長はラッカー系を使用傾向)
「それでも行く」
ほう。決心は固いようだ。しかし、人ん家に行くのにそれほどの決意って必要だったっけ?
「まあ。都合が合えば来ても構わないがな、そん時は連絡してくれよな」
職務上一応成子坂にアクトレス登録をしている人達の連絡先は所持。
仕事用とプライベート用で区別するためスマホを2台持っているんだが・・・
プライベートの方にいつの間にかみさきさんと小鳥遊の連絡先が登録されていた時は恐怖を感じたよ
(分けているってしゃべった事なかったんだけどなあ)
「んま。じゃあ俺は行くわ。お休み」
「ええ、おやすみなさい」
そう言って彼は帰った。
「・・・・」
一人になり、あたりを見渡す。
久しぶりに綺麗になった部屋、幸いなことにGがいなかった事に日頃の行いに感謝をしつつ、酒を飲む。
何というか、初めて男を家に招き入れた。その事実が一人になったことで更に大きくのしかかった。
「いやいやないない。私が隊長に惚れているなんてことありえないし」
いや、でも。私もそろそろ婚期に目を逸らすのは不味いよねぇ。
だからこそ親からの電話が来た訳だし。今回は無かったことに出来るけど、次はどうなるか分からない。
「困ったなぁ」
杏奈はまだ若いし…職業柄出逢いだって少なくない。
けど、仕事関係以外で男とは今まで考えてなかった。
アクトレスとの結婚率は低い数値を叩き出している。殉職する率も低くはなってきてはいたもの、全業種でもトップクラスである。
「更に私自身いつ消えてもおかしくないからねぇ」
覚悟はしている。保険もかけて入るけど、命の保証はない。
危ない橋を渡っている自覚はしている。けれど、この道を進む以外に道は見たくなかった。親友を忘れて生きることなんて出来なかった。
むしろ、まだ生きているが奇跡。天はまだ見放していない様子。
「一体どうすればいいんだろう?」
答えのない問いを自分に掛け、酔いが回ったのか意識が切れた。
何故だ。真理さんとの話を書くより、楓の方が文字数が多いような・・・・
ま、いっか。長らくお待たせしまた。手直しを半分まで終わらせた後で、めんどくさくなったので先に投稿させていただきます。
このご時世辛いことばかりですが、これでも読んで楽しく悶々とした日々でも過ごしてくれや。
・・・・それとEXTREME難易度のソリダス・スネークの倒し方がわかりません。後半戦から攻撃が当たらず、即死になってしまう。あと少しなんだけどなあ