タツマキside
フラッシュが出てきて怪物とガロウに着いてあれよあれよ聞かれた。適当に流したから不服に思っているのだろう、だがきっと説明した所で奴がこの問題をどうにか出来るなどと微塵も思っていない。
化け物達に視線をやる。ガロウは依然ボロクソに弄ばれてる、猫がネズミにトドメを指すのを躊躇う様に...蟻が獲物をじわじわと殺す様に...もうガロウは満身創痍状態だ、なのにも関わらず...いやだからこそ奴は力を緩め、起き上がれば倒し向かって来るなら殴り、止まっているなら痛打を加える。それは見ていて酷く残酷な物だ。
後ろから足音が聞こえる、気になって後ろを向いてみる。
禿げてなにも生えていない頭、ダサい黄色い衣装に赤いゴム手袋に赤い長靴、覇気のない顔。どれをとっても頼りにならないような人物だが...彼が横切り見えた背中はとても自信に満ちており堂々としていた。
「おい...アシナ」
止めなきゃ!あいつが勝ってこない!
「ちょっあんたっ...何して!」
「キュギィ?キッキ...ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」
ぎっ...うるさ...
耳を塞がずに直に食らってしまった...頭が...割れる!
「お前...うるせぇよ」
バスゴン!!!
なんの訳ないチョップだった自然な流れの違和感など無い、しかしそのチョップの威力はあの化け物をうつ伏せの大の字にしてしまい地面にめり込ませるレベルの威力だった。頭がおかしい、いや威力がおかしい。
「ぎっ...ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!」
ズガガガガガ!!!バズンバァン
化け物の猛攻がハゲを遅いすごい勢いでハゲ頭が揺れる。
「お前...どうしちまったんだ?酒でも飲んで酔ったか?1発殴れば正気に戻るか?」
私は思考を放棄してガロウを超能力で回収する。ガロウの見た目は完全に変質しておりもはや人の原型は持ち合わせていない。それにしても酷い様子だ外殻は破れ肉体が直に抉られ傷口は変色している、これは...毒?ガロウの再生と毒の侵食が並行して侵食が勝っている様子だ...ぐじゅぐじゅと嫌な音が絶え間なく発せられ続けている。私はアシナから借りていた回復する刀を迷いなく使いガロウを回復しようとする。
「何をしている...」
「治療よ」
「何故だ」
「私が殺すのよ...アシナを返せって殴るのよ...」
「あの化け物は首切りか?」
「一緒にしないで!あんなの...あんなのアシナじゃないわよ...」
涙が出てくる、あれをアシナだと思いたく無かった。アシナは必要以上の暴力を好まない...必ず一撃でその一振で倒す。常に全力の一太刀件の方はと言うと。
「ゲギャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!オークックッオァァア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
「うぜぇ!うるせぇ!当たらねぇ!!!」
ハゲの拳をいなして殴っているが...あいつはどういう防御力をしているのか一向に響かないし傷1つ無い。
「流石サイタマだな...俺も加勢に...」
「あんたじゃ2秒で死ぬわよ...」
「小娘!無事か!?グッ...ハァハァハァ何とか奴に高エネルギー体をぶつける事が出来たようだな」
目を腫らして、汗だくで、額に土を付けながら残念侍が鬼気迫る表情で戻ってくる。
「あんた...泣いてたの?」
「ふんっ...少しな。」
「プッ弱いわね...」
私も人のこと言えないけど。
バゴン!!!!
大きな音がした...どうやら漸く1発当たったらしい。怪物が顔の形を変えながら大きく吹き飛ぶ様はまるで漫画のようであった。
「はぁぜぇはぁ...ゴホン!目ェ覚めたか?アシナ?ほら帰るぞ、酒奢ってやるから...」
「ギッギギ...ピィ!?」
ずっと弧を描いていた化け物の口がへの字に曲がる...
「貴公!!!逃がしてはならぬ!!!」
「あ?」
化け物から膜のないように見える翼が生え、羽ばたき始める。
「アシナ殿!待って下さ...グッ傷が!」
化け物は残念侍の言葉を無視して飛びさり空に消えていく。
「タツマキ!奴を止めろ!今すぐだァ!」
「無理よ...もう念動力は使えない。」
「グッ...致し方無しか。」
残念侍は立ち上がりどこかに行こうとする。
何考えてるのかしら?バカかしら?
「待ちなさい、そんな傷であいつに勝てるとでも。」
「勝たなくとも刺し違える事ぐらいは!」
「無理よ...少し落ち着きなさい...ガロウにすらボロボロに破れたアンタがそのガロウを弄んでた奴に太刀打ち出来るわけが無いでしょ?」
「...済まない、取り乱した。」
「今は休むことよ...それと私も行くから。」
「貴様では戦力外だ」
「超能力者の厄介さは知ってるでしょ?一瞬止まることがどれだけの一撃を畳み込めるかも...アンタが身をもって体験した事じゃない。」
「...足は引っ張るな...それだけだ。」
頑固なやつね。
「俺も行かせてもらうぜ。」
ハゲも着いて来るらしい。
「それは心強い!是非ともお願いしたいところです!」
「では夜明けに...」
「グッ...何が...起きた?」
どうやらガロウが目を覚ましたらしい。こいつのせいで...こいつのせいで...!アシナは!!!!
パァン!!!
気づいた時には既にガロウを殴っていた。
この手はヒーロー戦慄のタツマキとしての攻撃ではない、1人の人間としての私情を挟んだ攻撃である。
「アンタのせいで...めちゃくちゃよ!何が怪人よ!何が次のステップよ!アンタは何がしたかったのよ!」
「勝手に暴走したのはあっちだろうが!!!俺はなぁ!!必要悪なんだよ!!人類が求めるのは正義ではなくて悪なんだよ!!!今人類は結託する時なんだよ!!!そうすれば下らないことする奴はいなくなる!!皆生きることだけに必死になる!!!ヒーローなんて言う不平等な善よりも平等な悪こそがこの世界に必要なんだよ!!!」
「なぁすこし良いか?お前本当はヒーローになりたかったんだろ?」
「はぁ?俺の話し...聞いてたのか!?お前どうやらあいつを追っ払ったみたいだけどなぁ!!!お前もヒーローだろ!?お前はなんの為にヒーローをしている!!!答えろよ!!!なぁ!!!」
しばしの沈黙が流れハゲは首をひねりあまつさえ鼻をほじり始めた。全く汚いわね
「趣味?」
「しゅっしゅしゅっ趣味...だと?.........ふざけるな!!!おま...お前...おまっおまおまおま!!!お前俺の俺の話を聞いた上でよくそんな冗談を!!!...ッ!?お前!!!あの時の公園の!!!」
「あ?公園?なんだそれ覚えてねぇぞ?人違いじゃね?」
「お前は最近命を奪いかけたものの名前も覚えていないのか!!?おかしいお前は何かが可笑しい!!そのレベルの強さに至るまでに明らかに何かが欠如してしまっている!!!」
何たるずぼらさなのだ。このハゲは...
「もういいもういい!長ぇよお前の話めんどくせぇ。」
「何なのだなんだと言うのは貴様は!!!貴様はヒーローとは言えない!!貴様はヒーローなんかではない!!!」
確かにこいつはヒーローの精魂を持ち合わせている様には見えない。しかしこいつは蝙蝠の頼みを聞きあの化け物に単騎で挑み撃退すると言う結果を納めた。その強さと弱き者の頼みを無償で聞き前へと出る様はヒーローと呼べるものでは無いか?
「うるせぇ!!!趣味だ!!馬鹿野郎!!」
バズん!!
ガロウの変形していた頭が割れて中からガロウの人の頭が除き、衝撃でへなへなとその場に座り込む。
「お前なんて...お前なんてヒーローじゃ...お前なんて...」
うわ言のようにヒーローがヒーローだなんだと呟く...そろそろイライラしてきたわね...
「なんだ...お前自分の中に立派なヒーロー像があるじゃねぇか...やっぱり本当はヒーローになりたかったんじゃねぇか、お前は妥協して怪人を目指したんだ。世界を平和にするには怪人のがヒーローより手っ取り早いってのを逃げ場にして...な?怪人の役割はヒーローを倒すことだけだもんな?自信の無いお前にピッタリだ。」
「.........」
「でもそれじゃ俺には絶対に勝てない。」
ガロウにはその言葉は重くのしかかった事だろう、目付きが死んでゆく。
「恐怖で世界を支配して平和を作る...それは俺を倒さない限り達成は出来ない、それはお前には絶対に無理な事だ。なぜなら...お前の怪人は妥協の趣味!!!俺のヒーローは本気の趣味だ!!!それだけでも負ける気がしねぇ!!!目指す前からハードルを下げたのが間違えだったんだ、半端な目標なら尚更達成なんてデッキ来ない。絶対悪はもう実現しない...だったら次だ!!」
「次は...」
ガロウがボソリと言葉を落とす。
ガロウの外殻がボロボロと剥がれて行き完全に中身が見えた。その顔は悲壮に満ちており、もはや先程の覇気など微塵も感じない。
「次はどうすればいいんだよ...」
「お前...見た目変わってたからわかんなかったわ。無銭飲食の奴か...いや金払ったら好きにすりゃいいじゃねぇか?」
「お前に勝てない時点で俺の生きる意味は終わったんだよ...もう...無理だ...」
もう限界だ。
私の足はその時勝手に動いて居た。頭に血が上っていたのか無償に腹が立ったのかは後で考えても分からないだろう...タダ目的を持ってやつの元へ向かったのは確か。
「おい小娘...何をする気だ?」
「何が生きる意味もないだよ厨二病の拗らせ野郎が!!!」
ボスン
全力の助走の付けた情けない拳がやつの顔面に入る。
奴の胸ぐらを掴み上げ感情のままに怒鳴り散らす。
「ふざけんじゃないわよ!!!雑魚が!!!アシナをあんなにしておいて生きる意味がないだぁ!?死ぬなら勝手に死ね!でもアシナをあのままにして死ぬな!!落とし前ぐらいつけなさいよ!!馬鹿!!阿呆!!間抜け!!あんたは憎たらしいレベルで強いわよ!!だから手伝いなさい!!今生きる意味をあんたにやったわよ!!ほら!立ちなさい!!立て!!ガロウゥゥ!!」
ガロウが向くりと立ち上がる。
「小娘!」
血流技『血潮』
私の周りに血の壁が出現して攻撃から守る。
「うるせぇよ...さっきも行ったがあいつが勝手に暴走して勝手に逃げた...俺には微塵も関係ねぇ...そうだなぁ?お前が頭下げて頼むんだってなら...」
「頼むわ。それぐらいで着いてきてくれるならいくらだって下げてあげるわ。死人はなるべく出したくないのよ...あれに太刀打ちできるのはそこのハゲだけ...でもそのハゲだって攻撃1発当てるのに精一杯だったでしょ?囮でも数が居るのよ...必要最低限だけでもあれと戦える数が...私は完全に回復すれば奴の制止ぐらいならできる、そこの侍は毒に侵されて無ければめちゃくちゃ強い。ハゲは言わずもがなよ。あんたはそこの侍を倒してアシナと私の全力を一身に受けても尚ピンピンしていた...その力が必要なのよ...お願い...手を貸して。」
「おいガロウと言ったか...プライドの高い小娘がここまで頼み込んでるんだ...我としても貴様レベルの戦力ならぜひ欲しいと思っている...ダメか?」
「やったじゃねぇかお前。ヒーロー目指せるぞ?」
「いや目指さねぇよ、俺はヒーローなんてならねぇ。何になるかは追追決める。取り敢えず分かった...頼んでねぇが、回復してもらったみたいだしな。恩もある...その恩を返して...何をするか決める。いいな?」
今はそれで良い...アシナ...今...助けるから。
遥か遠くから聞こえるはずもない叫びが聞こえた気がした。
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