部屋を改修し終えたアシナは刀を腰に差して協会内の探検に出掛けた。
暫く道を覚えながら進んでいくと後ろから声を掛けられる。
「少しいいかい?君は新入りだろ?ならばなぜこの昆虫王である僕に挨拶に来ない?不敬ではないか?細切れにされたいか?」
カブトムシの頭にカマキリの腕と胴、イナゴの足をしたよく分からない物に声を掛けられる。アシナは先程のギョロギョロの言っていた幹部の1人である昆虫王なる人物の名前と一致させる。
そうか...こいつが。
「これはこれは...失礼致しました昆虫王殿。では不詳ながら名乗らせて頂きます、本日から怪人協会に入会させていただきました、アシナと申すものでございます、手土産等はございませんが以後お見知り置きを...」
下手に問題を起こすことを嫌ったアシナは下手に出ることを選んだ。
「ほう?君は目上への口の聞き方を心得ているようだなぁ?ククク...いいだろう君のその態度に免じて細切れは勘弁しておいてやる。感謝しろよ?...ん?おい!?そこの害獣!僕の配下に手を出すなァァァ!!!」
昆虫王は凄まじい速さで俺の横を通り過ぎてはるか向こうの方まで行ってしまった。あれが竜の速さか...対峙するのも面倒くさそうだ。
引き続き探検を続けた。暫く廊下を歩き続けお腹が空いてきてしまった。腹がキュルキュルと栄養を求める、目が血走り口端からヨダレが垂れていく...ギョロギョロは余り協会内の怪人を食うなと言っていた...問題も起こすものでは無いだろう...しかし非常ひまずいことになった。溢れる欲を抑えられない。目が獲物を求めひっきりなしに動くが瞳に獲物は捉えられない。
もう...限界だ...
「ん?お前は新い...」
1つ目の肉が曲がり角からちょうど現れたので首を跳ね飛ばす。
グチグチ、ビチィ、チャグ...チャグ、ジュリュリュ。
生物的嫌悪を催す音が廊下に木霊する。手で血を掬い啜り、肉を噛みちぎる。衝動で行動する悪癖をどうにかしないと行けないな。口元の血を拭いながら今しがた起きたことを反省する。
血液パックでも作るか?まぁギョロギョロに要相談だな。
衝動は収まったのでまた歩みを進めた。
sideギョロギョロ
首輪を付け手懐けるのは骨が折れそうだ...怪人闇くらいを遠隔カメラ越しに見た感想はそれだった。対価さえしっかり渡せば大丈夫だとは思うが...奴の秘める力とあの刀。育てれば下手をすればオロチ様をも超えうるかもしれない逸材。面白い...多少噛み付いてくれた方が育てがいがあると言う物だ。奇妙に感じた点だがなぜ彼は一人称定まって居ないのだ...それどころか雰囲気が掴めない。幼い少女の印象を受ける時もあれば妙齢の紳士の時もある...田舎の荒くれ者かと思えば急にしおらしくなる...まぁ使えると言うのなら詮無き事か。
「さて...戦力は整ってきた、闇くらいが落ち着けば本格的にヒーロー協会に攻める日も近いだろう...ククク...ハッハッハッ」
目の前すぐ近くにある怪人の勝利と言う2文字が浮かんで私は高笑いを抑える事など出来なかった。