蝙蝠side
怨門を構え獣と対峙する。奴はサイタマ殿のおかげで、だいぶ弱りかけており尾の本数が10本から6本まで激減している。これぐらいなら怨門を抜いた我なら容易いだろう。
「ギッ...ギュウ...」
獣の悲痛な呻きが耳に入る。貴様に罪は無い...しかし切らねばならぬのだ...すまぬな。
「参る。」
「ギャアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
刀と爪がぶつかり甲高い音が響く。爪が我の喉を掻っ切ろうと襲う、それを弾き反撃の一打を飛ばすが奴も負けじと爪で刀を弾く。弾き、撃ち合い、お互いに1歩も譲らぬ攻防と化す。
6本でも獣は獣...やはり手強い...。このまま撃ち合い続けてもジリ貧...何れこちらが敗れる。
「怨嗟「泣き声」!!」
この現状を打開するために少し距離を取り泣き声を打つ。
「グゲギッィィ!?」
効果的だった様で獣は大きく体制を崩し隙が生じる。奴の元へ移動し顎を蹴りあげ胴を開ける。その胴体に怨門を突き刺し奴のアシナ殿の魂を獣から押し出す。
「ゲッギィ!?」
奴は余力で刀を掴んできたが、魂という核が抜け落ち力が抜けて行くのだろう。次第に刀を抑える力が弱まっていく。我は添えていた左手を空けて、癒を顕現させる。
「獣よ...御免!」
癒を相手の下顎から頭頂部にかけて突き刺し奴の存在を浄化する。
「グッギギッグギ...イ...ヤ...ダ」
奴の存在が塵となり霧散する。癒しを消し怨門を鞘に納め変身を解除する。獣がいた所で手を立て黙祷する。
黒く変色したアシナ殿の魂に治癒の浄化をかけながら抜け殻の元へと戻る。
抜け殻の元へと行くと小娘が半べそを書きながらうずくまっている。邪魔だからどいてもらうとしよう
「小娘。邪魔だ、どけ。」
小娘に何か言われて居るが全て無視し抜け殻に魂を置いて体の中に入れる。
我は一通り準備を整え用途するとアシナ殿の体に変化が起こる。
「こう...もり?」
「アシナ殿!?」
信じられない事にアシナ殿が喋り始めたのだ。しかしその声はか細く今にも消え入ってしまいそうな声である。
我はアシナ殿の手を掴み話しかける。
「今...元気になられますから待っていて下され!」
アシナ殿は首を少し左右させその言葉を否定する。
「君は...生き...て?俺の...為に...死んじゃ...ダメだ...よ...」
小娘がアシナが黄泉がえったと騒いで居るので一括する。
「俺...はも...う助か...らない...蝙蝠が...俺と1つに...なれば...助かるやもしれない...けどそれじゃ...蝙蝠の存在が...」
「我はどうなっても構いませぬ!もうそれ以上喋ると...」
主は震える腕を我の刀まで持ってきてそれを抜くように示唆する。
「解釈を...お願い...できますか?」
「それは...命令でございましょうか...」
声が上澄ってしまうのを嫌でも感じる。
「違うよ?...お願いだよ...蝙蝠なら...聞いて...くれるかなぁって」
「蝙蝠?馬鹿な事はやめなさい...何する気よ...いいかしら私の今から言う言葉は命令よ?今すぐその刀を...」
小娘の髪が逆上がり臨戦体制を取り、命令を口にしようとした時。
「よさんか!タツマキィ!」
バングが思いっきり後頭部にゲンコツを叩き込む。そして倒れ込み掛けた所をすかさずガロウがタツマキの意識を刈り取る本気の一撃を加え入れる。しかしその一撃ではタツマキを刈り取る事が出来ず。足を踏み込み歯を食いしばり鬼の形相でこちらを見据える。サイタマ殿が移動して首に攻撃を当てると糸が切れたように地面に倒れる。
「俺は詳しい事はわかんねぇ...お前の事情もアシナの事情も分からん..だから俺はどこに転んだ所で文句も言えねぇし指図も出来ない...」
サイタマ殿は屈んで我の胸に拳を当てる。
「でも...これだけは言える。後悔をするな覚悟を決めろ!それが男なら尚更...な?きっとここが人生最大の決断場所になってると思うぜ?俺は。」
この人は...全く頭が上がらない...
「蝙蝠っつったっけ?酷な願いだよなぁ?選ぶも断るもお前次第なんだぜ?」
ガロウ...全くもってその通りである。この主は...本当に...
「蝙蝠君...いつぞやジェノス君にも言ったが何が正解なんて、分かるぬものじゃよ。自分が決めて方を選ぶといい」
「我は...我は...アシナ殿の願いを...尊重します! 」
主に背き主を切る...従者を名乗る身としては失格所か打首ものである。しかし主がそれを望み、主がそうしてくれと言うのなら我はそうしよう。我は主に歯を向けよう。
決意し、刀をアシナ殿の魂があるところまで持っていく。
アシナ殿が我の刀を弱々しく掴み言葉を連ねる
「あり...がと...蝙...蝠...お願い...します。」
「グッ...アシナ殿...いや...主よ...御免!」
鮮血が舞いそれは花のように霧散して消滅する。主の魂を我に取り入れ、我自身がアシナ成れる。しかしその名を我は否定する。我は蝙蝠でありアシナでは無い...生涯この命が尽きるまで我は主の道具であり、主人にはなれぬのだ。
「貴公等...済まなかったな。この埋め合わせは後日しよう..」
主を抱えてその場から離れる。
山へ潜り一件の寺を見つける。既に放棄されているのか...草は茂り等に荒れているその寺に腰を下ろし。
手短に主を火葬し寺横の空き地に墓を立て骨壷を埋めた。墓石を起き、お供え物を供えて手を合わせる。
これで...これで良かったのだ...
そう思わなければ潰れてしまいそうだった。
かつてかの物が焦がれてやまなかった、道具ではなく人になること...それは等に諦め、主のパートナーとして生きることを決めた後に最悪の形で完遂されることとなった。
TRUEandBADEND
人成り
数年後
山から離れた荒れ寺で日がな、木を彫り続けるものが1人。
「あんた...一体いつまでそうしてる気かしら?」
珍しい。来訪者が訪れたと思ったら当時見たまんまの変わらぬ姿の小娘1人。
小娘の言葉に耳も向けず、ただ木を彫り続ける。
「主の墓なら...」
「もう参ってきたわよ。」
「...そうか」
「...はぁ。そんなしょげてる姿みたらアシナ...なんて言うかしらね?」
「分からぬ...暇つぶしで始めた木彫り何を掘っていても仏様になってしまう...そしてその全ての仏が怒ってらっしゃるのだ...我は咎を背負っている。もう...神に祈るしか無いのだよ...」
「そう...深くは言わないわ。」
仏彫りは無心で仏を彫り続ける。
「酒...置いてくわね。」
「タノモォォオォ」
寺の扉を勢い良く開く人が1人。
「此方に名だたる剣豪が居ると!バング殿からお聞きした!わっ...わっちにわっちに剣を教えて下され!」
「ほら...あんたにお客様よ?」
「知らぬ...帰れ。」
力を求める剣士...それは何かの始まりを示唆しているのやもしれぬ...しかしそれは別の物語。この場所で語る必要は無いだろう...
TRUEEND
新たな始まり
これで全エンド終わりました。
後は番外のみとなりましたね、頑張ります。
感想等お待ちしております。