キャスターが最強のSHINOBIを召喚したそうです   作:ざるそば@きよし

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キャスターは新たな手駒が欲しいようです ①

 

 しんと静まりきった土蔵の中。窓から僅かに差し込んだ月明かりを頼りに、衛宮士郎は日課である魔術の鍛錬に勤しんでいた。

 家から持ち込んだ幾つかの素材の中から、手近にあった角材を掴み取る。杉を切り出して作られたそれは無骨ながらも頑丈で、訓練用に使うには申し分ない。

 使う魔術は『強化』の呪文。義父である衛宮切嗣から教わる事ができた、数少ない魔術の一つだ。

 

「――同調(トレース) 開始(オン)

 

 自らに掛ける暗示と共に、体内で魔術回路を組み立てる――ここではいつも通りだ。後は対象の内部構造を解析し、魔力を正しく流し込めばいい。

 『強化』の魔術はその名の通り、対象が持っている性質を強くする。成功すれば右手の角材は、その硬質さをより一層強める事だろう。

 だがしかし、彼の魔術が正しく成功する事はなかった。

 

「……うわッ!?」

 

 僅かな集中の乱れによって注ぎ込んだ魔力が暴走し、角材を内側から破壊する。微塵に砕けた角材の欠片が、土蔵のあちらこちらに散らばっていく。

 

「くそ……また失敗か……」

 

 小さく呟いた愚痴と共に士郎が木の破片を拾い集める。これもまた、彼にとってはいつも通りの出来事だった。

 

 率直に言って、衛宮士郎は魔術が得意な訳ではない。実戦で成功したごく一部の例外を除き、彼の魔術の殆どは対象の物体を内側から破壊するか、何も起こらないかのどちらかだ。

 とは言え、いつまでもそんな状況に甘んじている訳にはいかない。強化の魔術が実戦で役立つ事は、今までの戦いが証明している。苛烈な聖杯戦争を生き残るためにも、強化の習得は必要不可欠な課題だった。

 

 木片をある程度片づけた後、今度は手ごろな石を右手に握った。次こそ集中を切らさないよう、細心の注意を払いながら再び魔術に打ち込んでいく。

 すると、土蔵の入口から何者かの気配を感じ取った。

 

「――シロウ」

 

 立っていたのは麗しい金髪碧眼の美少女にして士郎が契約したサーヴァント、セイバーであった。

 

「なんだ? セイバー」

 

「いえ、魔術の気配がしたものですから」彼女は魔力に輝いた士郎の右腕を見つめた。「鍛錬ですか?」

 

「ああ。特別な事情がある時以外は毎日やってるからな」

 

「入ってもよろしいですか?」

 

「え? あ、ああ……」

 

 慮外な申し出だったが、別に迷惑という訳ではない。士郎が了承すると、彼女は静かに隣に座った。少女の身体からは年頃の娘特有の甘い香りが漂ってきたが、彼は出来るだけ気にしないことにした。

 

「シロウの得意な魔術は強化だと聞きました」

 

「まあ……得意っていうか、それしかできないんだけどな」

 

 実際はもう一つ使える魔術があるのだが、そちらは強化に比べればあまり戦闘向けではなく、いつ危険が迫ってくるか分からない今はそちらに時間を割いている余裕はなかった。

 

「強化の鍛錬というのは、具体的にはどのようなものなのですか?」

 

「強化っていうのは、単純に物の強度を上げるだけじゃなく、効果を強める事も含めるんだ。この石だとより硬く、あそこにある電球ならより明るくする、とかだな。物の構成材質をイメージして、その中に俺自身の魔力を通して強化するってことなんだ」

 

「なるほど……」

 

 ふむふむ、と興味深そうに頷くセイバー。あまり関わった事のない魔術の話を聞くのが面白いのだろう。

 そんな彼女に僅かでも良いところを見せようと、士郎の中にあった小さな下心が動いた。

 

「まあ、口で説明するよりも実際に見た方が分かりやすいだろうから、これで一回やってみるよ」

 

 そう言うと、士郎は握っていた石を使って強化の魔術を再開した。

 

「――同調 開始」

 

 先ほどと同じように暗示を呟き、自らの中に徐々に集中を作っていく。

 

「――基本骨子、解明。――構成材質、解明」

 

 魔力を通して石の構造を解析し、魔術を通すための筋道を模索していく。物体の構造を把握するのは、彼の数少ない得意分野の一つだ。

 

「――基本骨子、変更。――構成材質、補強……ッ!?」

 

 解析した構造を元に自らの魔力を注いでいく――しかしその段階に入った途端、先程と同じように魔力が再び暴走し、石を内側から砕いてしまった。

 

「はぁ……また失敗だ」真っ二つに割れた石を悔しそうに見つめる士郎。そこには苦々しい顔が浮かんでいた。「実は成功率はかなり低いんだ」

 

 そんな彼に向かってセイバーは首を振った。

 

「いえ、先ほどのシロウは、集中をやや欠いているように感じました。何か心の中に気になるものがあるというか、雑念を含んでいるような……はっきりと言葉にするのは難しいのですが、私は見ていてそんな風に感じました」

 

 彼女の指摘はずばり当たっていた。

 お互いの息が掛かりそうな距離に、誰もが目を惹くであろう美少女が座って居るのだ。そんな中で先程以上に集中しろという方が、健全な男子である士郎にとっては、土台無理な話だった。

 

「い、いや……たとえば、こういう刃物だと上手くいくことが多いんだけど……」

 

 気まずさの中で言葉を紡ぐ彼だったが、それを断ち切るようにセイバーは静かに立ち上がると言った。

 

「やはり私が隣に居ては邪魔ですね。夜も遅いですから、あまり根を詰めないようにしてください」

 

「あ、うん……お休み」

 

 さっと離れていく彼女の背中を茫然とした気持ちで見送りながら、士郎が言葉を返す。

 もう少しだけ居てくれれば、と思わなかったわけではない。だが彼女が隣にいる限り、緊張で鍛錬にならないというのも、また事実だった。

 

「……いかんいかん。集中集中!」

 

 胸に沸いた雑念を振り払うように首を振ると、士郎は魔術の鍛錬を再開した。

 

 ◇

 

 それから幾ばくの時が経った。

 夜は更にその深さを増し、月は空高くまで登り詰めている。凍るような寒さは澄み切った静寂をもたらし、家の中も外も眠ったように音一つ鳴らない。

 

 身を切るような冷たさの中、鍛錬によって集中力と体力を使い果たした士郎は、土蔵の中ですっかり眠りこけていた。

 時折身震いするように身体を揺すったり呻き声を上げたりするが、彼が眠りから覚める様子はない。身体に蓄積した多くの疲労が、寒さを感じる本能をすっかり麻痺させていた。

 

 この様子ならば朝まで目覚めることはないだろう――そう思われた時だった。明かりを得る為に開かれた土蔵の窓から、細い糸のような何かがするりと入り込んできた。

 それはゆらゆらと宙を漂いながら士郎の身体にたどり着くと、まるで意志を持っているかのように彼の両手両足へと独りでに巻き付いていく。

 

 普段の彼ならこの時点で異変に気付き、意識を取り戻していたかも知れない。だが今まで以上に鍛錬に力を入れていた結果、そのための体力すらも使い果たしていた。

 

 最初は腕、次に脚と、順当に身体の動きを掌握した糸は、最後に彼の首筋にがっちり巻き付く。そして細く尖った自分の先端を彼の首の後ろ、脊椎に向かって突き刺した。

 

 神経を直に刺激されたことで、彼の身体がぴくりぴくりと僅かに痙攣する。まるでそれは何かの生物実験のようにも見えた。

 そうしてしばらく身じろぎを続けた後、まるで何かに操られるかのように眠ったままの状態でゆらりと彼の身体が立ち上がった。

 

 そしてふらふらとおぼつかない足取りのまま土蔵を出て行くと、何かに導かれるように街のどこかに向かってゆっくりと歩き出していった。

 

 ◇

 

 アサシンを始末する。

 バーサーカー戦で手痛い裏切りを経験したメディアは、熟考に熟考を重ねた末、ようやくその結論に達した。

 

 いくらあの男(アサシン)が強力無比なサーヴァントであるとは言え、叛逆に出た者をいつまでも生かしておく訳にはいかない。今までは他のサーヴァントに対抗するため仕方なく利用してきたが、それももう限界だ。

 本当なら今すぐにでも取り掛かりたい所だったが、その為にはまず解決しなければならない課題が一つある。

 アサシンに代わる新たな戦力の確保だ。

 

 サーヴァントは七騎全てが召喚されている事から、前回のような新規契約による戦力補充は望めない。とすれば、残る手段は敵マスターから令呪もろともサーヴァントを奪取するか、或いは“もう一つの奥の手”を使う事になるだろう。

 どちらの方法を取るにせよ、そのためには敵のマスターかサーヴァントのどちらかと直接接触しなければならないのが、最大の問題だった。

 

 強力なサーヴァントと契約していて、なおかつ簡単に始末できるマスター――言葉で表現するのは簡単だが、そんな都合のいい存在は普通ならとっくに始末されていてもおかしくない組み合わせだ。

 しかしメディアには一人だけ心当たりがあった。

 

 衛宮士郎――葛木が通う学校の生徒で、セイバーのサーヴァントと契約しているマスターである。

 

 サーヴァントの中でも最優と名高いセイバークラスを使役している事実とは裏腹に、その少年は驚くほどの未熟者で、魔術への耐性は無いに等しかった。加えて戦いの心得も大して無く、狙うにはまさにうってつけの相手だったのだ。

 

 メディアが彼の存在を知ったのは、学校の監視をしていた時だ。偶然にも彼ともう一人のマスターが争っている所を目撃したのが始まりだった。

 まだ年端も行かない子供がマスターとなっている事実に最初は驚いたものだったが、学校関係者にマスターが潜んでいる可能性は十分考慮していたし、何より目的を達成する為に世代を重ねるのが魔術師だ。どんな年齢であろうとも、魔術に携わる者であれば例外など無いのだろう。

 

 そうして衛宮士郎に狙いを定めてから監視を始めること数日。多少の時間はかかったものの、見事に目標が真夜中に一人になる時間を見つけた。

 その日の彼は土蔵の中で魔術の鍛錬を行っていた。物に魔力を通している事から、行っているのは強化系の魔術だろう。苛立たしげな表情と砕け散った雑貨の破片からして、結果は芳しいものとは言えないようだ。

 

 襲う機会を伺うためにしばらく様子を見ていると、土蔵の中に金髪の少女が入ってきた。セイバーのサーヴァントだ。

 一瞬、こちらの監視が気づかれたのかと焦ったが、そうではないようだった。彼女は不用心なマスターの様子を見に来たのだ。

 彼女は僅かな時間そこにいたが、やがてすぐに去っていった。家の中では敵に襲われないと考えているのだろう。甘い見積もりだった。

 

 さらに監視を続けていると、少年はだんだんと睡魔に意識を囚われていき、数十分もする事にはその場でくたりと眠り込んでしまった。

 

 あまりの不用心さにメディアは思わず呆れてしまいそうになったが、敵の不注意は絶好のチャンスであり、目的を達成するためにはこれ以上のタイミングはない。

 都合の良いうちに面倒事は片づけてしまおうと、メディアは早速作業に取り掛かった。

 

 ◇

 

 マダラが“それ”を発見したのは、それが山門に入ってすぐの事だった。

 ぎこちない奇妙な足取りで、一人の少年が山門の階段を登ってくる。歪で不格好なその動きはさながら、糸で吊られた操り人形を連想させた。

 少年の顔には見覚えがあった。ライダーのマスターが先輩と慕っている少年――確か名前は、エミヤシロウだったか。

 警告の為に実体化して近寄るが、少年はこちらを警戒するどころか、反応する素振りすら見せない。仕方なく胸ぐらを掴んで目の前に立たせると、少年の首筋や手足に魔力で編まれた細い糸が巻き付いているのが確認できた。

 

魔力(チャクラ)の糸……傀儡(くぐつ)の術か」

 

 本来それは武装を施した人形を操作するための術で、術者はそれにちなんで“傀儡使い”と呼ばれる。彼らは卓越した操作技術を応用することで、人形だけでなく敵の死体や意識の無い人間をも操る事が出来た。

 おそらく少年を操っているのもそれに類する技術だろう。もっともマダラが故郷の世界で見てきたモノに比べれば、些か見劣りすると言わざるを得なかったが。

 

《その子には手出し無用よ。アサシン》

 

 不意に脳内に聞き覚えのある声が流れてきた。キャスターによる念話だ。

 やはりこの少年は彼女の企みらしい。

 

「この小僧はお前の仕業か。マスター」背後の柳洞寺を一瞥した後、改めてマダラは意識の無い少年の顔に視線を戻した。「わざわざ敵のマスターなんか連れて来て、一体どうするつもりだ?」

 

《そこの坊やには少し用があるのよ。お前はそこで警戒を続けなさい。もし他のサーヴァント――特にセイバーが来た時は、殺さずになるべく時間を稼ぐのよ》

 

「……了解した」

 

 マダラは瞬時にキャスターの意図を理解した。わざわざ意識の無いマスターを捕まえた上、追いかけて来るであろう敵のサーヴァントも殺さない。つまりそれは、二人を自分に代わる新たな戦力として取り込もうという魂胆に他ならなかった。

 

「いよいよ俺もお払い箱か……だが果たしてそう上手く行くかな?」

 

 誰にも聞こえないようにそう呟くと、マダラは少年の瞳を僅かに凝視した後、掴んでいた胸倉を離して静かに見送る。

 

 その顔には底意地の悪い笑みがしっかりと張り付いていた。

 

 ◇

 

 家の入り込んだ奇妙な違和感が、眠っていたセイバーの意識を揺り起こした。

 襖を開けると、隣で寝ている筈の士郎の姿が見当たらない。普段ならとっくに眠りについている時間にも関わらず、そこには何の形跡も無かった。

 

 胸騒ぎがする――生まれ持った天性の勘が、いち早く彼女に不穏の到来を告げていた。

 

 縁側から庭に出て土蔵に向かう。士郎が鍛錬を続けているとしたら、まだそこにいるはずだ。

 少女の手が冷え切った鉄扉を勢いよく開ける。しかし土蔵の中に主人の姿はなく、代わりに細い糸のような物がそこら中に張り巡らされていた。

 

「これは……」

 

 警戒しながら調べてみると、それは魔力を寄り合わせて作られた糸だとわかった。一見簡素な魔術に見えるが、使われている技術はきわめて高く、魔術師として未熟な自分のマスターが到底作れるような代物では無い。

 

 つまり、彼はまんまと敵の術中に嵌まったという事だ。

 

「シロウ……!!」

 

 セイバーは素早く甲冑を身につけると、糸を辿って家を飛び出した。

 

 油断していた。まさか敵が結界を張った敷地の中までこうも易々と侵入してくるとは。

 こんな事ならば、自分が隣で寝ずの番をしていれば良かったのだ。それを主の好意に甘えてしまったばかりに、不覚を取ってしまうなど!

 

 言いようのない自己嫌悪と無力感がセイバーの心を苛んだが、今はそれどころではなかった。全てが手遅れになる前に主を敵の陣地から取り返さなければならない。

 

 疾風もかくやという速度でセイバーは冬木の街をひた走る。己の危機を省みずに駆けていくその姿は、まさに現代に蘇った騎士に違いなかった。

 

 ◇

 

 無事に獲物を境内まで引き込み終えたメディアは、逸る心を抑えながら慎重に自室を出た。

 月光が照らす敷地の中央では、セイバーのマスターである少年が虚ろな表情で一人立ち尽くしている。掛けられた術は未だ解けておらず、その意識は今も失われたままだ。

 

 まさかこんなにもあっさり成功するとは。

 

 少年の無防備さに少々呆れながらも、メディアは一人ほくそ笑んだ。

 いくら彼女が神代の魔術師とはいえ、厳重に張り巡らされた結界を潜り抜けて敵を捕らえる事は決して容易な作業ではない。今回は敵に魔術の心得がなく、油断しきっていたという事が幸いしたに他ならない。

 

 ともあれ、一番の問題点だったマスターの拉致には成功した。後は少年の左手に宿っている令呪を引き剥がし、葛木の身体に移植すればいい。そうすれば彼が契約していたセイバーは晴れてこちらの手駒となり、あの厄介なアサシンも心置きなく排除できる。

 

 嬉々としながらメディアが少年の手に触れると、その身体の内側から僅かな違和感を感じた。

 一瞬、操作の術が解けたのかと警戒したが、どうやらそういうわけではないらしい。

 よくよく調べてみると、少年の体内には彼本来の魔術回路とは別に、何か不思議な力の源がある事が分かった。

 

 ひょっとしたら何かの魔術礼装だろうか?

 

 メディアは一瞬、それをどうするべきか悩んだ。

 可能性は低いだろうが、もしそれが罠のような代物だとしたら、放置しておけば厄介なことになるかも知れない。気の回し過ぎかも知れないが、ここは安全を取って処理した方がいいだろう。

 

 そう思ったメディアが少年の肉体に干渉しようとした時、彼が僅かにうめき声を上げ、驚いた彼女が咄嗟に彼の顔を覗き込んだ。

 

 その時だった。

 先ほどまで鳶色だった少年の瞳が突然、深紅色に変化したかと思うと、メディアの視界と精神を凄まじい衝撃と幻が覆い尽くしたのだった。

 

 ◇

 

 ばしっ、と揺られたような衝撃と共に士郎は意識を取り戻した。

 突然蘇った視界には、呻きながら苦しむ女性が一人。そして周囲には見覚えのある風景が広がっていた。

 

「ここは柳洞寺……? それにこれは一体……?」

 

 突然の状況に理解が追いつけないまま呆然と立ち尽くしていると、目の前の女が悪罵と共に睨みつけてきた。

 

「……やられたわ。まさかこの私が不意打ちを貰うなんて」怒りで歪んだ女の口から怨嗟が漏れる。フードの奥から覗かせた顔は、屈辱の炎で燃えていた。「半人前のマスターだと思って甘く見たのが間違いだったようね」

 

「お前、サーヴァントか!!」

 

 ようやく状況を飲み込んだ士郎は急いで女から距離を取る。何度か実戦を乗り越えてきたからか、突然の危機にも関わらず、自然と身体が反応するようになっていた。

 

「ええそうよ。はじめまして、セイバーのマスターさん。私はキャスター。ごらんの通り、魔術師のサーヴァントよ」

 

 その名は士郎も知っていた。街の無関係な人間から生命力を奪い取り、自身の魔力に変換している悪辣なサーヴァントが居ると、同盟相手が教えてくれたからだ。

 

「俺をどうするつもりだ!」

 

「あなた自身に用はないの。用があるのはその左腕に刻まれてる令呪。率直に言うと、あなたが契約してるサーヴァントが欲しいのよ」

 

「誰がお前なんかに!」

 

「あなたの意見なんてどうでもいいわ。最初は痛くないよう優しく剥がしてあげるつもりだったけれど、こうなったらその手足を引きちぎってからゆっくり貰ってあげる」

 

 その言葉を合図にキャスターは虚空から杖を取り出すと、鋭く尖った先端を士郎に差し向けた。

 決して生かして帰さないと言う明確な殺意の証だった。

 

 ◇

 

 糸を辿ったセイバーは円蔵山の麓まで来ていた。

 術は山の頂上から発せられており、そこが敵の本拠地なのは明らかだ。

 その証拠に、通り道である石階段以外にはサーヴァント除けの結界が張られている。

 ここを進むとなると、敵の罠に向かって真っ直ぐ飛び込んでいく格好になる。正面突破と言えば聞こえは良いが、これではまるで死にに行くようなものだ。

 とは言え、ここで手を拱いていれば、いずれマスターは殺されてしまうだろう。厳しい道のりだが、ここは無理をしてでも前に進むしかない。

 

「シロウ……」

 

 セイバーは覚悟を決めると、階段を一直線に駆け上がった。

 石段を疾風のようなスピードで登り切り、踊り場を突っ切って頂上を目指す。

 すると、山門の頂上に一人の人間が立ちはだかっているのが見えた。

 セイバーは足を止めた。それは敵以外の何者でもなかった。

 

「……貴様、何者だ」

 

 彼女が尋ねると、月明かりに照らされた朱鎧の男は堂々と名乗りを上げた。

 

「アサシンのサーヴァント。うちはマダラだ」

 




 すみません。今回は少し短めです。

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