キャスターが最強のSHINOBIを召喚したそうです   作:ざるそば@きよし

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 山門での戦いばかりになってすみません……小次郎さんと一緒でここから動けない関係上、相手に来てもらうしか戦う方法が無いのです……


マダラが悪だくみを始めたようです

 使い魔を通して階下のやり取りを監視していたメディアは、早くも勝利を確信した。

 なんて間抜けなマスターだろう。まさか戦う前から自分のサーヴァントに傷をつけるとは。しかもわざわざ敵の目の前でそれを行うなど、正気の沙汰とは思えない。

 

 地脈の細工を発見したからにはどんな敵が来るのかと思って警戒していたが、どうやら余計な心配だったようだ。見つけられたのはきっと、あのサーヴァントの特性か何かだろう。

 

 これはもう自分が手を出すまでもない。戦いに飢えたあの男に任せておけば、向こうが勝手に始末してくれる。実に楽な話だ。

 

 早くも高見の見物を決め込むメディアを前に、二度目の戦いが幕を上げた。

 

 ◇

 

 電撃の制裁を受けても尚、ライダーの動きは素早かった。階段の左右に茂った木々を上手く使い、身を隠しながら確実に距離を詰めて来る。流石にランサーやアサシンのクラスには及ばないが、機動力に優れたライダーの速度は並のサーヴァントとは一線を画している。

 

 視界を攪乱しながら近づくライダーに対し、マダラはランサーの時と同じように両手で印を結ぶと、口から剛炎を吐き出した。

 渦巻く炎の壁が瞬く間に辺り一帯を覆い尽くし、熱波が敵の接近を拒む。

 

 しかしライダーは怯まなかった。吐き出される火炎を短剣を振って切り払い、術者であるマダラの元へと一直線に駆け寄って来る。

 

 疾風と共に短剣が舞う。速度を味方につけた刃の威力は決して侮れるものではない。

 素早く術を中断したマダラは僅かに距離を取ると、取り出したクナイで応戦を試みた。

 

 鋼と鋼が火花を散らし、真昼のように明るかった階段に再び闇の帳が降りる。と言っても、バイザーで自ら視界を塞いでいるライダーには周囲の明暗など関係無いのかもしれないが。

 

 ギチギチと刃同士が悲鳴を上げる。力は互角。リーチの短い武器同士なので互いが顔を突き付けあうような形になる。

 しばらく刃物を通しての力比べをしていた両者だったが、ライダーが不気味な笑みを浮かべると、すっと一歩退いた。

 拮抗が緩んだ事で力が行き場を失い、マダラの身体が僅かにバランスを崩す。

 同時にライダーの短剣に繋がっていた鎖が蠢いたかと思うと、マダラの身体をまるで蛇のように締め付けた。

 

「……ッ!」

 

 幾重にも巻きついた銀色の拘束は彼の四肢を容赦なく封じ、瞬く間に彼の機動力を殺す。

 捕獲され、身動きの取れなくなったマダラの身体をそのまま鎖ごと引き寄せると、ライダーはその喉元に向かって短刀の刃を思い切り突き入れた。

 

 鋼鉄が身体を貫通し、もがき苦しむような素振りを見せるマダラ。そのまま絶命してしまったかと思われたが、そうでは無かった。

 なんと彼の身体の内側から激しい炎が次々と吹き出し、真っ赤な火柱と化したのだ。

 

「!?」

 

 予想外の出来事に驚きの表情を見せるライダー。危機を察知した彼女はすぐさま離脱を試みたが、近過ぎる距離が逆に災いとなった。炎となったマダラの身体は鎖の拘束を擦り抜け、そのまま彼女の身体へと逆に巻き付いていく。

 燃え盛る高熱の炎は容赦なく皮膚を焙り、肉を焼き焦がした。中世の魔女狩りよろしく生きたまま焼き尽くされる事となったライダーは苦悶の声と共に石の踊り場を転げ回り、嫌な臭いと煙を周囲に振り捲いていく。

 

 炎は数十秒ほどで効力を失った。黒煙と共にライダーは炎熱地獄から解放されたが、今の彼女はもはや人の形をしているだけの肉塊に過ぎない。まだ死んでいないのが逆に不思議なくらいだ。

 

「やはりつまらんな」

 

 いつの間にか姿を現していた本物のマダラがライダーに近寄った。真っ黒い塊は辛うじて呻き声のような音を出すものの、立ち上がる事はない。止めを刺せばすぐに戦いは終わる。

 が、そうはならなかった。彼はライダーの身体を掴み上げると、無造作に階段の下に放り投げた。

 

 石階段に何度も身体を打ち付け、ライダーの身体が階段の一番下まで投げ落とされる。煤まみれの身体の上から更に石の破片を浴びた姿は、もはや人にすら見えなくなっている。

 それを茫然と眺めるばかりの少年マスターに向かって彼は言った。

 

「そいつを持って失せろ。糞ガキ」

 

 冷めきった写輪眼には殺意の感情すら無く、まるで醜い物体を見ているような、人としてまるで相手にしていない視線だった。

 

 ◇

 

 慎二は目の前で何が起こっている事実が全く理解できていなかった。

 勝利を手にする筈だった自分のサーヴァントが呆気ないほど簡単に倒され、しかも逆に敵に情けを掛けられている。

 プライドの高い彼にとって、そんな屈辱的な事実は決して認める訳にはいかなかった。

 

「お、おい……ライダー! いつまで寝てんだよ! 立てよ! 早く立って!今すぐあいつをぶっ殺せよ!」

 

 足元に転がる役立たずに喝を入れようと、慎二は必死に罵倒を浴びせ、黒い脇腹に蹴りを放つ。だが彼の努力も虚しく、下僕が起き上がる事はなかった。

 そこへひゅん、という風切り音が鳴り響いた。次の瞬間、マダラの放ったクナイが慎二の左肩に深々と突き刺さっていた。

 

「え!? あがぁ……ッ!!」

 

 間抜けな声から一拍遅れて苦痛の悲鳴が響く。鋼が防寒着を突き破って肉を咬み、傷口から滴った血液が防寒着の袖を深紅に染めた。

 

「二度は言わん。死にたくなければ、一刻も早く目の前から消えろ。俺の気が変わらない内にな」

 

 感情の無い瞳が自分を射抜く。冗談や脅しではない。このままでは確実に自分は殺される。

 死の恐怖に駆られ、慎二は痛みも忘れて行動した。倒れているライダーの身体を苦戦しながらどうにか持ち上げると、そのまま街の方へと引き返していく。

 途中、一度だけ後ろを振り返り、つまらなそうに二人を見下ろしているアサシンを睨みつけた。未だ恐怖に覆われてはいたが、その眼はまだ戦いを諦めてはいなかった。

 相変わらずマダラの目には何の感情もなかったが、それでも十分だった。彼の意思表示は完了したのだ。

 

 そして再び視線を前方に戻すと、彼はそのまま街中の闇へと消えていった。

 

 ◇

 

 メディアにとってマダラの行動は全くの予想外だった。当然だ。瀕死に追い込んだ敵をわざわざを見逃すなどと、一体誰が考えるだろうか。

 そのまま躊躇なく始末すると思っていたばかりに、当のメディアも怒りが沸くどころか困惑の表情を隠せないでいる。

 使い魔の視線の中では未だつまらなそうにマダラがその場に佇んでいる。

 そんな彼に向かってメディアが声を張り上げた。

 

「一体何をやっているのですアサシンッ! なぜライダーを見逃したのですか!」

 

 向こうも使い魔の位置をある程度は把握しているのだろう。こちらに視線を合わせたマダラが気の無い調子で答えた。

 

「単に気が乗らなかった。それだけだ」

 

「なっ……!?」

 

 あまりの答えに言葉を失う。まさかそんな下らない理由一つで勝機を逃すとは。

 神や英雄と言うのは得てして理解不能な思考を持つモノだが、特に戦いの中に生きる者の考えがメディアには全く理解できない。

 目の前が暗くなったような気分だった。

 

「だからと言ってわざと敵を見逃すなんてもってのほかです! 倒せる時にこそ倒す! それが戦いのセオリーでしょう!」

 

「相手は自分のサーヴァントを痛めつけるようなマスターだ。遅かれ早かれそのうち負ける。だったら他の敵と戦わせて、少しでもそいつらに手傷を負わせた方が、お前にとっては有利なんじゃないのか?」

 

「それはそうかも知れないけれど……」

 

 意外にも冷静な意見を返され、思わず言葉を詰まらせた。堅実な判断かどうかは怪しい所だが、一応、筋は通っている。

 

「それにあれだけ痛めつければ、もう二度とここには近寄って来るまい。もしまたノコノコやって来るようなら、今度こそ殺してやるから安心しろ」

 

 つまらなそうにそう言い捨てると、そのままマダラの姿がすっと消える。魔力消耗を減らすために霊体化したのだ。

 

「…………まあいいわ」

 

 今さら議論を重ねた所で、起こってしまった事実は変えようがない。

 それにあれほどの傷を負わせたのなら、再び動き出すまでには時間がかかる。邪魔者が減っている今のうちにより多くの魔力を貯め込んでおいた方が利口だ。

 考えを切り替えたメディアは使い魔の視界を自分から切り離すと、工房での作業に手を付け始めた。

 

 ◇

 

 焼け付くような肩の痛みと必死に戦いながら、慎二は這う這うの体で自宅への帰還を果たした。

 途中で意識が戻ったライダーは、既に霊体化によって回復に専念させている。恨み節を山ほど浴びせてやりたい所だったが、口を開けばそれだけ余計な痛みを味わう事は分かっていた。

 形ばかり豪勢な玄関のドアを無事だった右手で乱暴に開ける。大きな音に気が付いたのか、二階から一人の少女が姿を現した。

 

「お、おかえりなさい兄さ……って、どうしたんですか!?」

 

 血まみれの慎二を見た少女はそのまま階段を駆け下りると、心配そうな顔で慎二の元に近寄ってくる。

 だがそんな彼女を慎二は逆に突き飛ばした。

 

「クソッ! お前のせいだぞ桜! ライダーなんてクズサーヴァントを呼びやがって……!」

 

 倒れた少女の上に馬乗りになった彼はそのまま細首に己の両手を押し当てた。

 指が気道にめり込み、呼吸を遮る。酸素を失った少女の顔色が段々と赤に染まっていく。

 

「にぃ……さ、やめ……それよ、り……て、手当を……」

 

 その彼に自分は苦しめられているというのに、少女は未だに慎二への心を忘れていない。

 流石にその姿に動揺したのか、慎二は少女の首から手を離した。そしてそのまま逃げるように立ち上がると、自分の部屋へと走っていった。

 

「クソ……! クソ! なんで僕は……!!!」

 

 呻くような声が家の廊下に小さく響いたが、その意味を知る者は本人の他には誰もいなかった。

 

 ◇

 

 傷ついた慎二が家の中に入っていくのを密かに見届けている者が居た。誰であろう、マダラである。

 

 と言っても、彼はマダラ本人ではなく、彼が魔力を使って作り上げた分身体である。彼の世界には、魔力を消費することで己の分身を生み出す術があり、ライダー戦の時に使用したのもこの術だった。直前に彼が放った火炎はライダーの接近を防ぐためではなく、メディアの監視の目を一時的に遮り、この分身体を生成する時間を稼ぐのが目的だったのだ。

 

 彼には最初からライダーたちを殺す気など微塵も無かった。二人を逃がしたのは、単に彼らの拠点とライダーの本当のマスターが誰なのか知りたかったからだ。

 基本的にサーヴァントとマスターは魔力のラインで互いに繋がっている。これは契約している以上絶対で、普段は見えないが、写輪眼を通すとはっきりと視認できる。

 だがライダーと慎二にはその繋がりが全く確認できなかった。代わりに彼が手にしていた本――あの赤い本と繋がっていたのだ。

 つまり慎二はライダーを従えてはいるが、マスターではないという事になる。だとしたら、彼女を呼び出した本当のマスターがどこか別の場所に居る筈だ。

 そう考えた彼は彼らをわざと見逃し、その後を追跡することでマスターの正体を探ろうとしたのだ。

 そして彼の予想は見事に当たった。玄関で慎二を迎えた娘――桜と呼ばれていた少女は、霊体化しているライダーと魔力でしっかり繋がっていた。

 

「――これで少しは面白くなって来たな」

 

 予想以上の収穫を前に彼は悪どい笑みを浮かべた。




【Tips】

火遁・影分身の術:火遁チャクラで作った影分身。攻撃されると巨大な火柱となって敵にカウンターを与える。性質変化したチャクラを使用する関係上、普通の影分身よりも難易度が高く、より多くのチャクラを使用する。

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