裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 メリークリスマース!!(殴

 みなさん良いお年を!!(殴殴

 明けましておめでとうございます!!(フルボッコ


 大変お待たせ致しました(滝汗)。
 新年、というか年末の最後の最後に段差に蹴っつまずいて身体を強打したりと、色々残念な終わりの後に新年を迎えております。皆様は如何お過ごしでしょうか。
 漸く纏まりましたので新年一発目の投稿をします。本年も引き続き本作をよろしくお願い申し上げます。

 あと指揮官の皆、アニメも見るんやで。


-85-"Two-up"/05 After contact → Questioning

 

 

 

 彼と、フヨフヨパワーで浮かぶスケアクロウが対峙する。

 

 観測に回してたのも含めた三機のビットを浮かばせ、淡く緑に光る銃口はそれが何時でも放てると言う事を示していた。

 

 

 そして当人はガスマスク着けてても分かる位の凄い顔。今すぐ止めろなり待てなり言っとかないと、今度は彼とスケアクロウの間でバトルが始まってしまう。そう思えてしまう程度には相棒はキテる様だった。

 

 

 ・・・ややこしくならない内に止めておこう。今なら、間に合う。

 

 

「・・・スケアクロウ! 撃つな!」

 

 

 俺の声でスケアクロウの動きが止まり、ビットの銃口に集まっていたエネルギーが拡散した。

 彼もまた、その声に引っ張られる形でトリガーに掛けた指から力を抜いた。

 

 

「そうね。それがオススメよ」

 

 

 上からFALの声が聞こえた。

 声のした方に目を向ければ、白いバトルライフルの銃口をこちらに向けている。妙な動きをすれば即撃つぞと、無機物のハズの瞳に宿した剣呑な光が言外に告げている。

 更にチラと周囲を見やれば、彼の人形たちが俺たちをそれぞれ包囲して立っていた。同士討ちにならぬよう、絶妙に射線を考慮した陣形で。

 スケアクロウが場に現れた次の瞬間には、人形間通信(ツェナープロトコル)を通じてそれぞれが独自に動き連携していた。全員がそう訓練されている、嫌でも理解出来た。

 

 形勢が変わった。どう考えても此方の不利。だが彼らは引き金に指を掛けてこそいるが、それを引き絞る気配は無い。

 それも当然かもしれない。本来、ハイエンドはそれ一体がI.O.P.戦術人形の一個小隊と同等の戦力を持つと言われている。加えて、彼女のベースコンセプトは後方からノーマルモデルを統率し戦局を動かす指揮官機。俺という人間(イレギュラー)の存在はともかく、可能性として彼女の指揮下にある多数の鉄血人形(ノーマルモデル)達が突っ込んでくる事態を彼らが考慮するのは自然のことだった。

 

 そのため、彼はMP7を構えたままゆっくりと慎重に立ち上がる。

 

 

「・・・何者だ、お前らは」

 

 

 Unknown(正体不明の存在)への警戒心をそのままに。心なしか強く現れている鉄血への敵意をそのままに。彼は俺たちに問いかけた。

 俺は先の油断からこんな情けない体たらくを晒してる事もあり、ため息を吐くと徐に答えを返そうとした。

 

 

「・・・俺は────」

 

 

 が、口を動かす間も無く、闖入者(ティナ)が天井からアクロバティックに入ってきた。突然吹き抜けから仄かに入る月光が影で遮られ、何事かと彼らは目を頭上に向ける。

 視線の先には、何回も前方宙返りをしながら落ちてくる小柄な人型。ハイスペックな義体性能をフルに無駄遣いしての登場である。

 ティナはライトとスケアクロウの間に入り込むよう、片膝を着いて着地。人間なら骨逝ったんじゃねえかと思う位のデカイ着地音と砂埃を巻き上げて見せた。

 

 

「スーパーヒーロー着地! スーパーヒーロー着地だ! 膝に悪いヤツ!」

 

 

 と興奮まじりに言うRFBは置いといて。

 あんな着地して本当に脚骨(フレーム)大丈夫なんだろうな? 一瞬スケアクロウへ目配せしたが、彼女は彼女でLWMMGとの間に割り込んできたティナに唖然としており、俺の目線には気付かなかった。

 しかし、俺の不安と心配など知ってか知らずか、ティナは腰に留めてたP90を取り出すと、伏せてた顔を上げてニヤリと笑う。その顔は勝気な笑顔と言うべきもので、つまるところ登場シーンの掴みは完璧だったとでも思ってるのかもしれない。

 

 

 ・・・・・・だが、まだまだ詰めが甘え。帰ったらもう一度叩き直すべきか。

 

 俺はティナの足元に射線を合わせようとしているVectorを横目に、敢えて何も言わずに事の成り行きを見守る事にした。

 というより、今なお銃を向けられてる立場上、下手に口開いて助けようにも撃たれるかも分からんから助けられん。まぁクリスベクターは銃口初速400m/s・1400発/分の発射性能を持つとはいえ、教えた通りに動けりゃ理論上はティナのスペックで十分避けられる。

 あんな着地した後も笑ってられるってことは、少なくとも自覚出来る範囲で故障はしてないんだろうしな。

 

 

「フフフ・・・私、参じょおぉおおぉおぉおぉぉ!!?」

 

 

 最っ高のドヤ顔を決めた次の瞬間、Vectorの銃口が火を吹いた。.45ACP弾が連続した銃撃音と共にティナに襲い掛かり、彼女は困惑と驚き混じりに悲鳴を上げた。

 

 

「ちょちょちょちょ! 待って待って待ってぇ!」

 

「っ!? 射撃停止!(Cease fire!)

 

 

 彼にとっても予想してない発砲だったのか、慌てて声を上げてVectorを止める。一方その間、悲鳴を上げながらもなんだかんだ弾道を読み切って回避を続けるティナ。

 

 程なくVectorは射撃を止めるものの、その表情は「何で止めるんだよ」と言わんばかり。

 

 

「私はI.O.Pの人形だよ!?いきなり撃たないでよ!」

 

「急に出てきたから」

 

「ヒドイ!」

 

 

 悪びれた様子が一切無い(当たり前)Vectorの言い草に、あからさまにショックを受けるティナ。漫画やコメディであれば何かしらの擬音が付きそうなツラだ。

 

 とはいえだ。ティナは自らをI.O.P.の人形だと名乗り、彼らに撃つなと言ったが、I.O.P.製ではあっても別にグリフィンの所属じゃないので、彼らから見ればティナも俺たちと同じくれっきとした不審者である。

 むしろI.O.P.製品が何故こんな所にいるんだと、余計に不信感を煽るまである。

 咄嗟に出てきた言い分にしてもひどい言い訳に、俺たちは呆れ混じりにツッコまざるを得なかった。

 

 

「・・・それは無理があるでしょう」

 

「無理あるだろ・・・」

 

「サーちゃん!? ご主人まで!? ううう・・・私に味方はいないのか・・・」

 

 

 ティナはよよよ・・・と口に出しながら手をつき崩れ落ちた。

 そもそもI.O.P人形と名乗ったところでアプローチが派手過ぎる上に、決めポーズとは言え銃を抜いたわけで。その時点で問答無用で攻撃されても仕方ない。

 

 

「あー・・・ライト?」

 

 

 敵対者かもしれないという警戒心よりも困惑が上回ってきた彼は、ひとまず浮かんだらしい疑問を今なお銃を構えたままのLWMMGに聞いた。その意味を正確に拾い上げたLWMMGは、少しの沈黙の後質問に対する答えを返した。

 ・・・どうでも良い事だが、他の人形は銃の名前で呼んでるのにこの人形だけ愛称で呼んでる。ふむ・・・。

 

 

「・・・確かに、今出てきたのはI.O.Pの信号だけど、識別信号はグリフィンのモノじゃないわ」

 

 

 つまり、彼らは俺たちを敵か味方かまだ確定しきれない、ということだけ判明した。

 それにティナは現状では量産されていない、事実上のワンオフモデルである。彼が仮に頻繁にカタログに目を通していたとしても、見覚えがある訳は無かった。

 その時、

 

 

「あーもうじれったいわね!」

 

 

 頭上のFALが苛立たし気に銃のコッキングレバーを引き、既に入っていた弾丸を吐き出して新たな弾を装填する。あれま、これ以上焦らすとマジで撃たれるな。

 

 この瞬間、スケアクロウがものすっごい顔でFALを見据え攻撃態勢を取ろうとするのが見えた為、落ち着かせる意味も込めて俺は腕を上げ彼女を制止。そのままゆっくりと、ティナの乱入で話せてない此方の事情を話していく。

 

 

「・・・俺はお宅のボスから頼まれた 仕事人(フィクサー) さ」

 

「何・・・? どういう意味だ」

 

 

 間髪入れず彼が聞き返す。

 何故なら、お宅のボス、頼まれた仕事人(フィクサー)、この2つのフレーズが示す人物は、本来重なる事の無い立ち位置にいる人種だからだ。

 これだけ聞かされても事情など察するに余るだろう。もちろん、伝える事はまだある。

 

 

「コッチの仕事には色んなモンがある。例えばだ、普段は手掛けない・・・というか身の丈に合ってないようなドデカイ商売を目論んでる奴がいりゃ、動向を捕捉して追跡(トレース)する・・・とかな?」

 

 

 ここまで言えば大抵は察せるはず。ていうか、これでも察せなかったら今すぐ人や人形を率いる立場を降りた方が良いとも思いつつ、当てつける様に軽く肩を竦めて見せる。

 ・・・不愉快だったのか、頭上のFALが銃把を握り直した。頼むから落ち着いて欲しい。

 しょうもない事で撃たれちゃ堪らないので、後頭部を乗っける形で両手を組む。

 

 一方で、彼はあくまで油断無く銃を構えたまま考えている。

 俺の言った内容が違い無くヘンブリーを指してるのは分かっているはずだ。

 

 ヘンブリーの情報は元々ウチのギルドがクルーガーに伝えたモノで、情報源が公に出来ない故に社内で詳細を知る人間、つまりクルーガーがコレを伝えられる人物は限られる。

 クルーガーの他には彼と、クルーガーの側近の何名か位だろう。それ以上この情報が広範囲に広まれば、逆にクルーガー自身の立場を悪くする楔になりかねない。

 

 しかしだ。信頼出来る部隊の長とはいえ、クルーガーも馬鹿正直にウラの仕事人(フィクサー)に情報収集を頼んだとは言わないだろう。大方『信頼出来る』とか『個人的なコネクション』とか、そんな切り口でヘンブリーの一件を処理させたと見える。

 

 さて、俺がそのクルーガー曰くの関係者だと察してくれれば話はスムーズに全部纏まるんだが、後は彼がそれを受け入れてくれるかである。

 

 とその時、考え事の最中ヘッドセットに手をやっていた彼が、驚きに少しばかし目を見開いてスケアクロウを見た。

 ・・・向こうのオペレーターに何か言われたな?

 

 

『・・・実は先程から遠隔による信号スキャンを受けてますの。R20地区の基地局を経由して、グリフィンのコンピューターからアクセスされてる様ですわ。

 OSのコマンドが書き換えられ、暴走状態にある同型機(スケアクロウ)とは信号自体が違いますし、向こうのオペレーターからその旨を伝えられて驚いたのでは?』

 

 

 とんでもない発言がインカム越しに流れてきて、今度は俺が驚きに見開いた目でスケアクロウを見る事になった。

 グリフィンのコンピューターからアクセスされてるだって? バホ野郎、キミ自身がハックされてんのと同義じゃねえのかソレ? んな大事なコトなんでやられた瞬間に言わないんだ。

 

 

『ご、ごめんなさいですの・・・ただ、下手にアクセスをブロックしたらその方が危険な可能性もあるかと思って』

 

 

 理由になってねえ。ブロックしたらそれこそ無理矢理こじ開けられるかもってのは分かるが、イコール言わなくて良いことにはならねえでしょうが。

 ・・・・・・ハァ、心臓に悪い。頼むからもう二度と勘弁してくれよ。

 

 

『はいですの・・・(ŏ﹏ŏ)ショボーン』

 

 

 あーったく、驚いた。嫌な未来を思い浮かべてしまった。

 しかし、他ならぬ当人がアクセスに気付いてること、その内容も人形が発する信号(コード)の解析程度に収まっている事から、今すぐ相手方にどうこうされるという心配は無さそうである。

 もし本気でスケアクロウに鹵獲なり電子攻撃を仕掛けてたなら、今頃ジャマーを食らった時よろしく激痛やら苦しさで意識をまともに保つのすら難しい場面になっていたはずだ。無論、そうなってたら此方も容赦無く敵対するが、そうなってないという時点で、向こうのオペレーターも恐らく好戦的な人物ではないと見える。

 

 そしてスケアクロウを見ていた彼。向こうのオペレーターから齎された情報と現状を整理し、気を落ち着かせるために一息吐くと、深く息を吸い込んで声を通す様に張り上げた。

 

 

「総員!武装解除!一切の攻撃を禁ずる!」

 

「ブリッツ!?」

 

「繰り返す!攻撃禁止!」

 

 

 LWMMGが驚き、何故と困惑した声で彼の名を呼ぶが、彼は有無を言わせず従えと改めて声を張った。

 構えてたMP7にセーフティを掛けホルスターに収めると、未だ睨み続けるスケアクロウを横目にスルー。スタスタと歩き、寝っ転がったままの俺の頭上に立った。

 

 その際、俺へ銃口を向け続けていたFALにアイコンタクトで下がる様促し、納得出来ない顔ながらも彼女が下がると、前かがみになって此方に手を差し伸べてくれた。

 

 

「蹴り飛ばしてすまなかった」

 

 

 わざわざ引っ張り上げてくれるってんならご厚意に甘えるとしよう。

 彼の腕を掴んで立ち上がり、ついでに挨拶も兼ねて詫びを入れる。

 

 

「・・・お互い様だ。すまねえな。試すためとはいえ、紛らわしい事して」

 

「ブリッツ、あまりいい判断とは思えないけど」

 

 

 間を置かず、尚も後ろからビンビンに殺気を飛ばしてくるFALが言う。

 銃口も俺に向けたままだろう。ブレード振るって彼へ仕掛けたのがよほど腹に据えかねてるのかもしれない。

 どうやって銃を下ろしてもらうか考えようと思ったが、なんと彼自身の口から俺をフォローする言葉が出てきた。

 

 

「言いたいことはわかるぞFAL。だが、もしこの男が敵であったなら、最初の一撃で俺は死んでいる」

 

 

 この男が仕掛けてきた時を思い返してみろ、と言いたげな顔で俺の背後へ目線をくれてやり、釣られて俺も振り返る。

 FALは事実として俺の動きに彼を殺す意図は感じにくいと理解したのか、苦虫を噛み潰した様な顔してやっと銃を下ろしてくれた。彼の言う通り、殺す気ならハナから首刎ねりゃ良いだけだしな。あの布陣で生還できるかどうかは別問題として。

 FALが武器を下ろしたのを確認し一つ頷くと、彼は歴戦の兵士たる鋭い目つきで俺を見据えながら名乗った。

 

 

「敵ではない、という前提で名乗らせてもらう。グリフィンS10地区司令基地所属、本部直轄部隊、多目的戦闘群特別現場指揮官のブリッツだ。アンタは?」

 

「俺の事は『レイ』と呼んでくれりゃ良い。勿論、本名じゃないが」

 

「お互い様だ。よろしく頼む────さて」

 

 

 彼・・・あらためブリッツは視線をずらす。

 振り返った先には俺の相棒、スケアクロウが浮かぶ。

 経緯はどうあれ、彼にとってはスケアクロウは鉄血の人形でしかない。すなわちG&Kとして滅するべき敵だ。

 ただ、それだけでは言い切れない強い憎しみを湛えた顔つきになったブリッツは、吐き捨てる様にこう呟いてみせた。

 

 

「今日は見逃してやる」

 

 

 ・・・・・・オイ。別の日に会ったときは容赦無く潰すと宣言してくれやがったぞ。

 もちろん、暴走個体なら戦闘も止む無しというか適宜対応すれば良いと思うが、相棒までヤらせる訳にゃいかねえ。

 

 まぁ、過去に鉄血に何かヤラレたからこそここまで露骨に負の感情を表してんだろうし、俺が言ったところで互いに納得出来るとも思えない。平行線と分かるのが精々だろう。

 がしかし、しょうもない事で相棒を傷付けられるのは到底看過出来ないので、その辺りはしっかり釘を刺させてもらう。ブリッツに何があったか知らないが、彼の感情を揺さぶらない様に気を付けて。

 少し大袈裟にため息を溢し、彼の注意を引いた上で俺は徐に口を開いた。 

 

 

「・・・お宅、相当鉄血に頭キてるらしいな。けど、間違っても壊そうなんてトチ狂った事考えてくれんなよ? 俺にとっちゃ、鉄血が暴走する前に、決して安くねぇローン組んで引き込んだ相棒なんだ。

 —————そう、例えばお宅と、そこのマシンガン持った子の様に」

 

 

 ピクリ、彼の眉が動いた。

 

 

「他の人形を銃の名前で呼んでる中、一人だけ愛称で呼んだり、目線や声掛けだけで正確に意思疎通が図れてる辺り、その人形とはアンタの他の人形よりも一歩進んだ間柄なんだろ? もしや、指輪買って所有権自体がアンタだったりしてな?」

 

 

 アタリだろ? と笑みを作ってやる。

 ジープから降りる所から彼らの動きを見ていたが、他の人形が後部座席から出てくるのに対しLWMMGは助手席から降り立った。彼の持つアサルトライフルを持って。

 その後の行動から見ても、多分彼女とブリッツに関しては一緒に過ごした時間が他の人形たちよりも長いんだろうと目星を付けたのだ。

 指輪云々、すなわち誓約に関しては勘で言っただけだが。

 

 しかしその予想は誓約の部分も込みで当たっていた様で、突如フンスと鼻を鳴らし、わざわざ胸元から銀に光るドックタグを取り出したLWMMGが、見せびらかすように胸を張ってこう言ったのだった。

 

 

「そうよ。私はブリッツの銃よ」

 

「どうした急に」

 

 

 相棒の思わぬ行動に何とも言えぬ怪訝な顔でツッコむブリッツ。

 

 

「ブリッツ、ハイコレ」

 

 

 その時、横から思っクソ不機嫌そうな顔(カタログ見た感じ普段から無表情っぽいが、それでもあからさまに拗ねてるのが分かる)のVectorが、ブリッツの銃と、そのトリガーガードに掛けたグラスを、やや乱暴に彼の肩に押し付けた。

 

 ・・・モテモテだな。

 

 

「ああ、ありがとう」

 

「ふん」

 

 

 クールな雰囲気に混じる不機嫌オーラそのままに、感謝の言葉に対するリアクションも素っ気ない。

 Vectorの対応に、はてどうしたものかという顔になるブリッツ。しかしその事を今考えるのは後回しにした様で、とりあえずは受け取った装備を背中に収めてグラスを額に掛けた。

 

 ふとその時、そういえば思い出したと彼が口を開く。

 

 

「そういえば、何で誓約について知ってるんだ。あれはグリフィンに所属する職員以外知らない筈だが」

 

 

 仰る通り。グリフィン所属として戦ってる戦術人形を自分の所有物にする手続きの事を、部外者が知ってるワケは無い。

 しかし俺は知っている。訳あって鍛えた人形に、少々理不尽な理由(経緯)で迫られたからな。

 

 

「そりゃあ、昔あるRF人形に『私を買え』って迫られた事があってな」

 

『バカ! ボケ! ナス! 私の気も知らないで! 浮気者! アホ! あんぽんたん!』

 

 

 涙目で真っ赤なお顔から出るわーちゃんの罵詈雑言が脳裏に蘇る。

 ・・・自分が恥ずかしがって言えてなかっただけでしょうに、こうして改めて思い返してもなかなかヒドい言い草だと思う。

 その経緯など知る由もないブリッツは、ただただそんな人形もいるのかと感心した風に、

 

 

「ほう、随分と積極的な人形だったんだな」

 

 

 と言ってのけた。

 積極的、積極的・・・せっきょくてき??

 

 

「あれを積極的と言って良いのか・・・?」

 

 

 少し的を外した指摘に考え込む。

 うーむ・・・。

 

 

 あ、今小声でスケアクロウが拗ねた声が聞こえた気がする。チラリそちらを見やると、ブリッツの部下のわーちゃんに向かい合い、

 

 

「貴女と白リボンはどちらが強いんですの?」

 

 

 と問うた。

 

 

「は? 白リボン??」

 

 

 と、問われた方はいきなり頓珍漢な事を聞かれたかの様に素っ頓狂な声を上げていた。

 ふむ・・・周囲の環境によって個体差が出るのは考えれば当然のことだが、どうもブリッツのところのわーちゃんは他の基地のわーちゃんには興味無いらしい。

 誰がどんな戦果を上げようと関係ない、日々己を鍛え、己に出来ることを遂行していくのみ・・・元軍人(ブリッツ)の下で戦ってきた人形なので、もしかしたらそんな考えが根底にあったりするのかもな。

 

 

「んんっ!」

 

 

 わざとらしい大きさの咳払いが響いた。

 見ればFALが拳を口元に当て、ジットリした目で指揮官(ブリッツ)を見据えていた。

 仮にもまだここは戦場なのだと、そう言いたげだ。ちなみに俺に対しては射殺す様な目でチラッとだけ見てきた。・・・本当信用の欠片もねえな。

 

 ともかく、俺たちは気を引き締め直す。

 ブリッツは先ほどまで教徒の男がへたり込んでいた付近へ目を向けるが、そこには誰もいない。

 俺らがバトってる時、それも殴り合いをおっ始めたせいで人形たちの注意も逸れたところを狙って、まんまと上手く逃げおおせたわけだ。

 ・・・・・・面倒くせえポカをやらかした気がするぞ。

 

 俺もブリッツも揃って頭を抱えた。

 

 

「しまった・・・足に一発撃ち込んでおけばよかったか」

 

 

 それについては同意する。

 というか、俺も俺でその男の存在を完全に失念してたあたり実に笑えない。

 あの男はカルト教徒たちの中ではリーダー格らしい振る舞いをしていた。もしかしたら他にも何人か同じ考えのやつがいるかも分からん。

 まあ仮に増援を呼ばれたとて、実力があの程度なら負ける気はしないが、中に傭兵かぶれとかが混じってると話が変わるので、どの道とっとと見つけ出して捕まえなきゃいけない。

 

 

「・・・探しにいくか」

 

 

 ブリッツが向き直り呟いた直後——————

 

 

「その必要はないわ」

 

 

 聞き覚えのある新たな女の声が、レンガのアーチから響いた。

 この場の全員が声のした方へ銃口を向ける。

 

 

「待って、敵じゃないわ」

 

 

 アーチを潜り、月光に照らされた事によって女の正体が見えた。

 サイドテールにした髪、左目に刻まれた傷跡。

 存在しない部隊(404 Not Found)の隊長『UMP45』が、右手に何かを引きずりながら入ってきた。

 その後ろには45の姉妹銃を使う『UMP9』、完璧主義を貫く『HK416』、そしてとても眠そうな『G11』が続き、404のフルメンバーが揃った。

 

 

「やっほ~レイ。久しぶりね」

 

「お前らまで来たんかい」

 

 

 過去に何度か仕事をした仲であり、ある程度気心は知れている。

 一応構えていたP90を背中に留め直し、今にも寝落ち寸前のG11を手招きで呼ぶと、俺の体を支えに早速寝言洩らしながらスリープに入った彼女の頭を撫で回してやる。

 ボサボサに見えて実は意外と指通りが良い質の人工頭髪を使っているので、ワシャワシャに撫で回すと結構気持ち良い。

 気分的にはイヌを撫でてる感じ。

 

 一方ブリッツは過去に45と何かあったのか、構えたMP7を下ろす気配は無い。その顔は何故こんな信用出来ない奴と親しいのかと言わんばかり、嫌悪感込みの眉を顰めた怪訝な顔で俺を見る。

 

 

「・・・アイツと仲が良いのか? ロクなのと付き合ってないな」

 

 

 ロクなのと、の辺りで瞬間的に45が能面になった。直ぐにいつもの顔に戻ったが。オメェこそ何言ってやがんだテメェコノヤロウとかそんな感じの反応。ブリッツに対する彼女の本音が一瞬漏れたな。

 二人の間に何があったか知らねえが・・・なんだかんだ言って45は嫌な事されるとずっと根に持つタイプなので、多分ブリッツに昔何かされたのかもしれない。

 とりあえず藪蛇を突くのは御免なので、触れずにフォローする程度に抑えることにしよう。

 45が引き摺ってきたモノも見た感じ正に丁度俺達が求めてた存在だろうし、なにはともあれここは話を進めるほうが良いだろう。

 

 

「お宅はお宅でヒッデェな」

 

「ホントよね~。折角捕まえてあげたのに」

 

 

 ホラコレ、45が掴んでたモノを俺たちの前に転がす様に放り投げた。

 それは布で猿轡をされ、両手足は結束バンドで思いっきり縛られている。隙間から荒く漏れる唸り声を聞くに逃げた男で間違い無い。

 此処から逃げてる所に404と鉢合わせて、案内がてら顔の布を剝かれて捕まった様だ。

 

 ・・・よく見ると片頬になんか火傷になりかけてるトコがあるな。それに首輪? 男はコレを持ち手にされたらしく、輪っかに沿って首に真っ赤な筋が出来てしまっている。あぁ、何されたのか読めたわ・・・。

 

 一方のブリッツは、何故404がここに来ているかを測りかねてるみたいで、求めてた証人が転がってきて尚疑いの目を改めぬまま問いかけた。

 

 

「・・・何しに来たんだ?」

 

 

 対する回答は実にシンプル。

 

 

「ヘリアンに頼まれてね。ヘンブリー・ステインについて色々調べてたのよ。その過程で、このR20地区に行き着いたってワケ」

 

「・・・わかった」

 

 

 ヘリアンなる人物はよく知らないが、この件を知って404に指示を下せる事から、少なくともその人物はクルーガーに近しい上位者なんだろうと当たりを付ける。

 彼女の説明が納得に値すると判断したブリッツは、MP7をホルスターに収めつつ人形らにも銃を下ろすようジェスチャーで命じた。

 

 

「後で腹を割って話し合うとしよう」

 

「賛成だ」

 

「私も~」

 

 

 それではと、指揮官(ブリッツ)が、俺が、404達が。目の前に転がる教徒の男を見下ろした。

 

 

「まずお前からだ」

 

 

 ゆっくりと、ブリッツは敢えて見せつける様にナイフを抜く。それだけで男はブリッツが何をするかを察し、死にものぐるいに激しく体を動かす。だが強固に手足を縛られている以上、逃げることはおろか立ち上がることも出来ない。

 男はただ、これから己を襲うであろう恐怖に震え上がり、青褪めていくだけ。

 

 そんな男の様子など意に介さぬとばかりに無表情のブリッツは次の瞬間、抜いたナイフで残っていた首から下の白布を一気に切り裂いた。

 

 

「〜〜〜!!?」

 

 

 次にズボン。解くのも面倒だとベルトを切って腰回りを緩めると、ベルトごと物凄い力で一気に引きずり降ろす。肌との摩擦、その後地面と接触した時の痛みで男に苦悶の顔が浮かぶがまだ終わらない。

 

 男が痛みに悶える間に周囲を見渡すブリッツ。ふとその視線が止まる。

 そこには焼け残った鉄のパーツだけのパイプ椅子が畳まれた状態で壁に立て掛けられており、手に取ったブリッツは鍛え上げられた筋力で無理矢理椅子を開くと男のすぐ真横に置く。

 

 

「ライト、FAL、手伝え」

 

 

 その言葉で彼の意図を汲み取った二人は、両サイドから男を抱え持つと、クッションを載せるベースの鉄板だけ残ったカッタイ椅子に無理矢理乗せる。

 続いて脚のバンドを一旦解き、片方ずつそれぞれの椅子の脚に結び直す。

 最後に後ろ手に結ばれた拘束を解き、前に腕を持って行って再び拘束。終いに口の布を取り外し、いよいよ尋問の用意が整った。

 

 

「さて、お話を始める前にだ。FAL、RFB、ワルサーは新たな敵性勢力の出現に備えて警戒、一〇〇式とVectorは磔になってる人形の回収を頼む。ライトは俺と一緒に楽しいトークタイムだ」

 

『了解』

 

 

 全員が頷き、それぞれ指示された動きへ移る。

 ブリッツはそれを見届けるとヘッドセットに手を触れ、通信の向こう側にいる相手を呼んだ。

 

 

「それとゲート」

 

『言いたい事は分かってますよ』

 

「あ??」「は??」「はぇ??」

 

 

 突然俺達の使う暗号回線に聞き覚えの無い女の声が割り込んで来た。

 とはいえ、第一声のフレーズやタイミングからこの女が『ゲート』なる人物であるのはすぐ気付いたが、ブリッツは自分だけでなく此方にも声が飛ぶとは思わなかった様で、俺達のリアクションに一瞬呆けた顔になった。

 

 

『初めましてレイさんと人形のお二人。私はブリッツ指揮官の下で部隊の作戦行動をサポートしている『ナビゲーター』と申します。勝手ながら私の方でそちらが使っている回線の暗号コードを解析し、普段我々が使う回線を貴方がたの周波数帯にチューニングしました。これでいつでも()()()()()()()()()()()()()レイさん達とやり取り出来ます。

 それと、先程スキャンしたついでにそちらのスケアクロウが扱うビットの操作信号(コントロールコード)も解析しました。フォーマットが判明したので、ビットが得た情報を部隊と指揮官、そしてレイさんのバイザーに戦術データリンクとして逐次共有可能です』

 

「なんっ・・・」

 

 

 いつの間に、しかもとんでもないスピードで此方の暗号形式を丸裸にしてくれやがった。

 何者だこの女・・・・・・はぁ、まあいい。聞いたところで馬鹿正直に教えてくれる訳も無い、考えたところで無駄だ。ウチ(ギルド)がG&Kと敵対しない限りは、この驚異的な手腕が此方へ牙を向くこともない訳だしな。要警戒対象として報告は上げさせてもらうが。

 リアルタイムに情報共有出来るってんなら、こっちも協力してやるか。

 

 

「・・・・・・スケアクロウ」

 

「・・・何ですの?」

 

 

 ナビゲーターとやらの仕業にもう既に怪しさ満点な顔でブリッツを睨みつつ、俺に答えるスケアクロウ。

 気持ちは分かるが、まぁあって便利なものを使わない理由も無い。少なくとも現状は味方であると分かっている。

 それに、急拵えのものをぶっつけ本番で使うのは出来る限り避けるべきだ。テストが出来るなら今やっちゃった方が良いだろう。

 

 

「気乗りしないのは重々承知だが敢えて言わせてもらう、キミのビットを偵察役に回せ。データリンクの稼働テストも兼ねて、上から辺りを見守ってやれ」

 

「・・・・・・・・・・・・了解ですの」ジトー

 

「・・・・・・・・・・・・ご主じ〜ん」ジトー

 

 

 隣に立つティナと揃ってものっそいジト目を寄越して大袈裟なくらいの溜め息を吐き出すと、どこからか取り出した指揮棒を流麗に振るった。

 刹那、彼女の周囲に浮いていた3機のビットはあっという間に夜空へ飛翔し、程なくビットが観測しナビゲーターが処理した情報がバイザーに表示された。

 

 そんな俺達のやり取りを困惑した顔で見ていたブリッツだが、情報がグラスに表示されたのを確認すると男に向き直り言った。

 

 

「—————よしウジ虫、ハキハキ喋れよ」

 

 

 

 

 




 このペースで行くとコラボ完結よりアニメ終わる方が先になる件()
 マジで頭をスッキリさせてアイデアが湧き出てくる脳みそにしたい。書き始めた頃のあのブーストが欲しい(´;ω;`)
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