裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
コラボ本編第7話までやってまいりました。
大型イベント実施中ですが構わず進めていきまっせ。
G&Kの指揮官『ブリッツ』と一旦別れた俺たちは、尋問で得られた情報に従い、教会とは別方向にある地区の外端部へと急いでいた。
吐かせたカルト教徒の男が言うには、地区の外れで待っていたダークグレーのスーツを着た金髪ポニテの若い女が主導し、戦闘服を着た部下らしき男数名と3台のミニジープから教徒達に武器を納めたのだという。その際に簡単な銃の扱い方をレクチャーされ、とりあえず火器を持ったカルト集団が出来上がった、というわけだ。
この点に関して腑に落ちない部分がある。カルト教団に武器を渡した理由、それと金髪ポニテの目的だ。
連中がわざわざ武器を受け取りに行ったのは”使徒様”とやらの
・・・何を目的に連中に武器を渡したのか、それがイマイチ見えてこない。
受け取りの時に取り扱いのレクチャーを受けたと言っていた。だがそもそもの話、人を殺した事すらない様なド素人連中に武器を渡した所で、仮に暴動を起こしてもすぐさま鎮圧されるのが目に見えている。
教徒連中の抱える感情・・・為政者でありながら救うべき者に手を差し伸べない偽善者というG&Kへの憎しみを利用し、連中を煽り立てたとしてだ。いくら連中に強い想いがあっても、体がまともに動かなきゃ事は為せない。
言葉で解決しようがなく、武力を持って立ち上がらなければならないとしても、あのザマではどのみちゲートを守る戦術人形にすら勝てない。
そう。武器を渡して暴動を起こさせるのが狙いなら、ただ渡して使い方を簡単に教えるだけで済ませたら意味が無い。
ここの指揮官も巡回や監視ドローンをスラムに飛ばすくらいはしてるだろうが、考えてみればまともに管理・監視をしてりゃカルト教団なんて
つまり金髪ポニテ連中はやろうと思えばいくらでも隙を縫って、教徒達にせめてもっとマシな戦い方ができる様に教育出来た・・・それをしないで渡すだけ渡して帰った訳はなんだ。まるで本命は教徒達じゃない様な・・・。
嫌な予感がする。気持ち悪さを拭えない。
そしてこの感覚をより顕著にしたのは、男が口にした神の使徒とやらの姿。とんでもないヤツがこの件に関わってるかもしれない、その懸念が出来たためだ。
「・・・暗がりであまり正確な姿形は分からなかった、とはいえだ。人間の上半分にでっかい八本のタコ足をくっ付けた女・・・そんな奴が何人も存在していい訳は無え。間違いなくあのタコ女だ。あの野郎、何が目的なんだ?」
「・・・」
普通、頭が狂っておかしな幻覚でも見たんだろうと断ずる場面だ。タコ足に人間の女の上半身がくっ付いた? なんの冗談だと思う。バカ言ってねえで真実を話せってな。
しかしそうキッパリ切り捨てるには・・・俺たちは男の言う姿を持つ”存在”を過去にこの目で直に見てしまっていた。
男の口からタコ女の話が出た瞬間俺とスケアクロウは息を呑む。そして俺は奴の目的が分からず考え始める一方、スケアクロウは父親代わりの男を殺した仇へとドス黒い憎悪の炎を燃やした。
ティナが反射的に引きつった悲鳴を上げてしまう程に。
彼女の尋常ならざる様、それと俺の心当たりがあるというツラを見て、ブリッツらも妄言と断ずるのは早計と判断してくれたらしい。
ひとまずは男の身柄、それと尋問と並行して十字架から回収した人形の記憶媒体・・・ホログラフィックメモリーをG&Kの基地まで運ぶ必要があるため、彼らは一旦帰還。その間俺たちは男の証言にあったエリアの捜索へと向かう事になった。
・・・本腰入れて調べたところで、タコ女に繋がるまともな証拠が出てくるかは分からないが。
「・・・ねぇご主人。神の使徒って名乗ったそのタコさん、ホントにいるのかな?」
後ろに座るティナが言った。
あの場はスケアクロウの雰囲気に当てられて、聞こうにも聞けなかったらしい。
その時、すぐ傍を飛んでいるスケアクロウが此方に近付き、憎々しげに呟く。
「・・・私達は
「スケアクロウ達の"父親"を食い殺した、ウチにいる鉄血達にとっての仇だ」
「えっ・・・」
人が人を食い殺すなんて常軌を逸した酷い行為が話に上がり、ティナの困惑が背中越しに伝わってくる。
・・・俺にとってもスケアクロウにとっても思い出すのも胸糞悪い、ルード工場長の凄惨な最期。しまった、言わなくて良い事を口滑らせちまったか・・・。
チラと横目で様子を伺う。
彼女は気にしないでと、マスク越しにも分かる儚い笑みで返した。
ちょっと触れただけでもくしゃくしゃに壊れてしまいそうな、無理して作った顔を見てられず、俺はそっと前へ向き直るほかなかった。
「・・・・・・話が逸れたな。とにかく今は目の前の事に集中しよう。ティナ、気になるかもしれないが・・・」
「ううん、私もう聞かないよ」
「ティナ・・・?」
被せる様に言ったティナに、少しだけ目を開いたスケアクロウ。ティナは彼女をしっかり見据えて続けて言った。
「その、私は"人形"だからお父さんって感覚はよく分かんないけど・・・。でもさっきのサーちゃん見てたら、サーちゃんの・・・ううん、サーちゃんだけじゃない、リーちゃんや他の皆にとっても大切なお父さんなんだって分かったから。
気にならない訳じゃないけど・・・でも、お父さんの事を聞くなら、泣きたくなる様な辛いことじゃなくて、サーちゃん達がお父さんと過ごした楽しかった思い出を一杯聞きたいなっ♪」
「ティナ・・・」
にへへー、そうティナは笑う。聞くだけでも分かる。屈托の無い丸っこい笑顔を浮かべてるんだろうと。
彼女の顔を直に見れないが、ティナを見たスケアクロウの表情が少しだけ晴れたのをミラー越しに見て、俺も気を取り直す。
目標のポイントまで、あと27km。
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約45分後、男が言っていた受け取り場所に着いた。
相変わらず燃え残った瓦礫が視野の大半を占めているが、先ほどと異なるのは目の前に地区全体を囲う外壁が見えている点。
ここから外は管轄こそG&Kのままだが、積極的な統治は行われていない外部区域となる。証言が確かなら、女達はこの壁をくり抜く様にいくつか点在するゲートのいずれかを通り、ここまで運んできたという事になる。
そして、その内の一つが俺たちの正面真っ直ぐ進んだ先に立っている。
ゲートからコチラに向けて伸びるのは、オフロードタイヤの大きな凹凸で深く土に刻まれた3台分の轍。それが一棟の瓦礫・・・コンクリ製で、珍しく屋根や壁が残ったままの廃墟の前で並んで止まっている。帰りは轍に沿ってそのままバックした様で、転回した形跡は無し。
女達は取引場所から最短距離のこのゲートから地区に侵入し、男達に武器を手渡した。車が止まったと思しき瓦礫の中に目を向け、バイザー越しに赤外線で床を見る。
すると、複数人が一列にならんで足を肩幅に開いていたモノ、その側に立って何度も踏まれた足跡が微かに残っていたのを確認する。この中で
・・・一応、記録はしておくか。
視野を通常モードに戻し、ティナを呼ぶ。
「ティナ」
「どしたのご主人」
人形の彼女は、見たものをそのままデータとして出力出来る。そんでもって彼女の頭にはそれなりに使い勝手の良いツールが乗っかっている。
「今から俺が指示したところをスマートグラス掛けてじっくり観察してくれ。キミの見た
「いぇっさ」
気になったポイントをティナに指示し、現場をなるだけ踏み荒らさない様にと伝えて証拠をその目で記録してもらう。
次にもう一つ気になっている点・・・外と内とを区切るゲートの調査も必要だろう。
「それとスケアクロウ。あのゲートに付いてる監視システムにアクセスしてみてくれ」
「・・・どうせこの様子では、無力化されてから今日までロクに手も付けられてないんじゃないですの?」
結果は分かりきってると思う、そんな顔を浮かべるスケアクロウ。
そう思うのも無理は無い。
なぜなら、轍以外に人が動いた形跡が、地区の内側からここに来たであろう教徒達のモノらしき足跡と、車から降り立った女達の足跡くらいしか無いからだ。
ここに来るまでの間、巡回に使うであろう車やバイクの走行跡や足跡すらも碌に見ていない。
つまり、そもそもスラムの巡回の頻度が少なすぎて警備がザルですらもなくなっている現状が考えられる。
これでは調べたところで結果などもう明らかだと、そう思っても当然である。
とは言ったって、調べない事には生きてるか死んでるかは分からない。確実な根拠は抑えておこう。
「仰ることはごもっともだが、一応確かな証拠ってのを抑えておきたい。もしかしたらパツキン女の姿が一瞬でも映ってるかもしれないしな。まぁ多分無いだろうが」
「分かりましたの」
フヨフヨと浮きながらゲートへ近付き、天井に設置された黒ポッチの監視カメラに手をかざす。
暫くじっと動かずアクセスを試み続けていたスケアクロウだが、やがてコテンと首を傾げ、そしてこちらに戻ってきた。
「結果は?」
「ザル警備も良い所ですわね。中の警戒システム自体は生きてはいますが、侵入者を感知してもそれを本部に伝える為の伝送系が死んでますの。
加えて言うと2日前、具体的には日が沈んだ後19:00〜22:00までのおよそ3時間。ゲート及び周辺の外壁に設置された監視カメラのいずれも、映像が後から別の日の同じ地点からの映像に差し替えられた形跡が見られましたわ。
差し替えられた本来の映像はシステムの何処にも見当たらず。抜けがありませんわね」
はぁーあ・・・敵は上手い具合にコチラの隙を潜って動いてるらしい。
「・・・ところで伝送系が死んでるっつってたな。基地に警報が飛ばない状態なのは、物理的に回線が繋がってないのか?」
「ええ。ログを辿る限りだと、接続が途切れたのは映像が差し替えられた時間の更に1時間ほど前」
「1時間前?」
「そうですの。回線が途切れれば何らかの連絡が基地に行くはずですから、恐らく基地のコンピューター自体も何かしら工作を受けている可能性がありますわね」
「チッ・・・」
面倒な。
というかだ。仮に基地のコンピューターが手を加えられて警戒網が機能不全になってるとしても、普通は最低限外壁の内と外を日に一回位巡回して然るべきなんじゃないのか?
エリアの外周を囲う壁は有事にはそのまま地区を守る拠点になるわけで、万一正常に動かせないなら速やかに修復なり手を入れる必要がある事案だろう。正常かどうかをチェックする、その意味でも毎日見回って点検するくらいはやって当たり前に思う。
そうしなきゃ今みたいに密かにシステムに手を加えられて穴が出来てた時、即座に対応が出来ない。仮にこの穴を突いて敵対勢力とかが秘密裏に潜入してクーデターでも起こそうもんなら、それこそ基地の指揮官にとって首が飛ぶだけじゃ済まない大惨事のはず。
スラムの住人なんかどうでも良いと思ってるからかもしれな、い・・・が。
・・・大惨事、なんだよな?
こんな明からさまに警戒が行き届いてない
・・・・・・ていうかそもそもの話、金髪ポニテにカルト教徒へ武器渡すためだけにそんな大それた工作を仕掛ける必要性があったのか? 本当に
・・・別の視点から考えてみろ。
セキュリティに穴が開いて得するのは誰だ? まずはお告げとやらで会った金髪ポニテ、未遂に終わったが武器商のヘンブリー、それと強いて言うなら地区に非公式に入った俺達。後は・・・G&Kと敵対する組織やら、快く思ってないライバルPMCが当てはまる。
さっきも思ったが、3時間も穴が開いてりゃプロが中に忍び込むなんて容易い。だがそんなピンポイントに敵勢力がココから入って何かしようだなんて考えにくい。
・・・いや、否定しきれない以上はそれも可能性として考えるべきか。
でも仮に敵勢力が何か企んでたとして、どうやったらココを・・・!!
———
———要するにコイツは自分が贅沢するために地区運営を頑張ってるダメ指揮官ってわけだ———
———そう見ておいて良いと思うわ。この手のヤツは自分の縄張りをチョコマカされんの嫌がる人種だし、何かしらコネクションを生かして早々に特殊部隊を引き上げさせる可能性がある、恐らくクルーガーはそうなった時のスペアとしてレイを指名したんじゃない?———
依頼の説明を受けたとき、クルーガーからの資料にはR20地区指揮官の情報も添付されていた。
理由はクルーガーの内に、俺達が思った通りの懸念があるからだろう。
ブリッツ達に縄張りを彷徨かれるのを嫌がって、コネで退散させようとするかもしれない。ブリッツの派遣に協力的な人間と分かってるなら、クルーガーもウチに指揮官の情報を寄越す事も無いのだ。
スポンサーの息子、クルーガーの指示にも介入出来ると思われる奴のコネクション、御誂え向きとばかりに開いたセキュリティの穴・・・・・・
その時頭の中で細い一本の線が繋がった。これらが結びついて見せる未来、それは信じたくない可能性。
ただの妄言にも取れる話だが、事実だったなら恐ろしく面倒な展開になる。
「————まさかあの男、自分の株を上げるために自分から”敵”を招き入れた、なんて事は無いよな?」
もし仮にだ、G&Kを快く思っていない勢力の一派とここの指揮官が繋がっていて、金髪ポニテとも繋がっていて、このゲートの情報を敢えてリークし忍び込ませていたら?
地区のトップが自分から敵、ないし敵に戦力を供給する存在を招き入れて何するかなんて分かりきってる。・・・自作自演の強襲劇、からの華麗に撃退して戦果を上げると言うマッチポンプ。それをこの地区のどこかで起こす気でいるのかもしれない。
だとすれば一応は辻褄が合う。ゲートのセキュリティの穴を放ったらかしにしてる理由、金髪ポニテがカルト教徒に武器を渡した事も、制圧しやすい雑魚相手なら手軽に
・・・いや待て。
そもそもの発端であるヘンブリーの一件も気になる。
仮に尋問で言わなかっただけで実際は指揮官と繋がってたとして、無事だった暁にはこのゲートから武器を運び入れようとしてたのか? ・・・考えにくい。アインスの言いぶりを聞くに、密輸途中のヘンブリーを制圧したのも、本部に運んで尋問したのもブリッツなのだろう。あの男が黙秘や嘘ぶっこく余裕を相手に与えるとは思えん。教徒相手に喋らなかったら殺すと断言し、敵の排除には欠片の容赦も情けも無く徹底的に動けるヤツなのだから。
つまり尋問で得られた情報がおそらくは全て。だとすると可笑しな点がある。
ヘンブリーの依頼主はあの量、あの内容の武器を誰に渡させようとしてたのか? ドールズジャマーまで運ばせてた理由は?
普通戦術人形が主戦力のG&Kで、ジャマーまでマッチポンプに使おうと思うか?
あるいは見た目そっくりな偽物のスピーカーを用意して、それっぽく見せるため? 違う。ヘンブリーが運んでたのは紛れもなく本物、しかも公的機関向けのを改造して出力を強化したトンデモ仕様。指揮官が改造後の詳しい仕様を知らなかったとしても、ジャマーが仮にフルパワーで動けばどうなるか、いくらなんでもそこまで分からないバカじゃない筈・・・。
———そうじゃない。
クルーガーから齎されたヘンブリーの証言では、自分に依頼した奴は耳に纏わりつく様な甘ったるい声の女と言っていたらしい。甘ったるい、声の女・・・?
『ちょーっと待ってくれるぅ? お姉さん的には〜そのスイッチ押されちゃうとぉ、すっごく困っちゃうんだけどなぁ〜?』
『ざーんねん。これを押されちゃうとぉ、お姉さん的にはすっごく困っちゃうの。だから無理やりやっちゃったんだけど、許してね?』
・・・そういえば、タコ女も癇に障る様な甘ったるい喋り方をしてやがった。
そして奴はこの地区で、異形の姿を晒して教徒連中を扇動し暗躍していた。奴はココに何かを目的として動いてる、それは確かだ。
———もしヘンブリーの依頼人がタコ女だったら? 大量の武器にジャマーまで運ばせてどうするつもりだった?
もし指揮官の手引きで入った
だとすれば、答えは一つ。
タコ女達の目的。それは———
「ヤツの目的は・・・この地区で大規模な暴動を引き起こす事」
ヘンブリーの武器密輸は失敗した。だが、タコ女の暗躍を鑑みるに安心なんて一切出来ない。
元々の目的からして
端末を取り出し、先ほど共有した回線からブリッツへコールしようとした次の瞬間、腹に響く様な衝撃と共に居住区の方で複数のデカイ爆発が起こった。
直後、夜空に鬱陶しい程のハレーションを齎していた煌びやかな明かりが一つ残らず消える。・・・あぁ、アレで完全に電力系統が死んだなこりゃ。
「・・・・・・」
「・・・・・・うへぁ」
「ジーザス・・・」
俺たちはとことん後手に回ってるらしい。
これから処理しなきゃならないことが幾つも思い浮かび、俺は信じてもない神へと呼びかけた。
アーキテクトがなかなか捕まってくれない()。
さて次回、いよいよ本番だぞ(ー_ー )ウンウン