裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
不眠になりがちで睡眠が足りてなくて頭回んないとか仕事上手くいかないとか色々かかえこんでたらアニメ終わってました(土下座)。
例にもよって戦術理論ガン無視の突飛な行動多発&16000字超えの長文となりますので、お手隙のタイミングでゆっくりご覧下さい。
暗闇の中、所々明かりを灯す様に燃える炎。先の爆破テロによって電源を喪失したR20地区居住区は、他ならぬテロリストの破壊行為によって完全な暗闇とはなっていなかった。
しかしそれも明るいとは言い難い程度のもので、訓練を積んだ者でなければ、瓦礫も散らばる暗闇の街をなんの労も無く動き回ることは困難。つまるところ暗所での行動に慣れてるか否か、たったそれだけの差が、R20地区所属の部隊に無視出来ない損害を齎していた。
「・・・屋上に着いたね」
「罠があるかもしれない。キミの
「ふむふむ・・・だいじょーぶ。ご主人が心配してる危険は無さそうだよ」
「OK。ドア開けるぞ」
「いえっさ」
C小隊が展開する8番ストリートの一角、その両脇に林立するビル群の一棟、11階建てのオフィスビル。道中手早くクリアリングをし屋上へとやってきたレイ達。一帯を俯瞰して見られる位置は、狙撃するのに絶好のポイントである。
もっともそんなことは敵も百も承知であろう。敵が飛んでくる可能性を考慮しティナにスポッターは任せず、護衛役として周囲の警戒に当たらせつつ、安全を確保出来次第彼女にはある仕事をやってもらうことにしていた。
レイは念の為、敵がここにアプローチ出来る唯一のルート・・・所謂階段室と呼ばれる建屋の扉の無い壁面に一つずつ、計3つのC4爆弾を上からテープで貼り付ける形で設置。更に扉の可動域に干渉しない位置にセンサー信管を取り付けたクレイモアを仕掛ける。
クレイモアの信管に端末を繋ぎ、先に設置した爆弾と信管を無線でペアリングさせ、起爆用意を整えた。センサー信管の検知範囲はクレイモアの殺傷範囲と同様。動きを感知した瞬間、己と3つの爆弾に起爆信号を送る様になっていた。
万一敵がやってきた場合に備え、敵諸共侵入口を潰す算段である。彼らはグラップリングビームを使って階段以外からも脱出が可能なので、正攻法のルートを潰しても大した問題ではないからだ。
安全柵沿いに敵の手による対狙撃者用のトラップが仕込まれてないのを確認したレイは、柵を背にしゃがみつつ背中のL96 AWMを前へ、ストレージから暗視スコープを召喚してマウントに装着し、最後にサプレッサーを取り付けるとセーフティを解除しコッキング。直ぐに立ち上がってバレルを柵に乗せ、態勢を整える。
彼の視界・・・部隊の側に11人ほど民間人らしき人影が映る。避難誘導中に襲撃され、逃げるに逃げられなくなったか。
人形達は
(ゲリラ戦を仕掛けてきてる・・・神出鬼没に攻撃を仕掛け、少しずつ戦力を削ってはまた隠れを繰り返してるみたいだな。
やろうと思えば一気に潰せる筈なのを敢えてジリ貧にしていってる。避難者の精神的不安を煽るため? それとも、人形を甚振る形で攻めて何かメッセージでも伝えたいのか?
・・・・・・いずれにせよ、
相手のメンタルを揺さぶる様な意地の悪い攻め方。効率的に戦闘を進めようと動くAIには思い付く筈も無い非効率なやり口である。
レイは相手の部隊長は意地の悪いヤツなのだろうと当たりを付け、ならば次はどう攻めてくるかを予測していく。根拠はエリア近辺の地形、建物の配置、乗り捨てられた車など。街には隠れられる遮蔽物が多いため、数多の可能性が考えられる。
しかし敵が姿を現さない事には、今の彼にはこうして備える事しか出来ない。緊張の糸を張りつつ、スコープ越しに見える状況、己の周囲双方に油断無く意識をやる。
「今のところこっちに気付かれた様子は無いよ。準備始めちゃって良い?」
「ああ頼む。俺の方にも入れといてくれよ」
「おっけー」
ティナは自分とレイが持つストレージからM84スタングレネードやM34スモークグレネード、それからチャフグレネードをそれぞれ10個ほど取り出すと、なんと一つずつ安全ピンを取り外してから即座にそれぞれのストレージに収納し始めた。
抜いた瞬間に収納することで、爆発ないし着火までの時間をほぼピンを抜いた直後と同等に保つ。それでもってピンを抜く動作をせずに勝手に弾けてくれるため、場合によっては不意打ちに使えるかもというレイの案である。
ひとまずは一人5個ずつ携行。必要に応じてピン外しの仕込みを行っていく。
その様子を見ていたレイは射撃体勢に直り、ナビゲーターへとコールする。
「ナビゲーター、C小隊を援護できる位置に着いた。いつでも狙撃できるぞ」
『了解。敵味方情報を更新。バイザーにC小隊人形、及びその付近の避難民をマーク。視線を合わせれば即座に情報が表示される筈です』
現在、レイの視界は左目は暗視モード、右目はスコープを覗く関係で通常モードに切り替えて表示されている。
バイザーにはレイの視点を感知する機能が備わっている。言われた通りに視点を動かし複数の人影に合わせ、情報の出方をチェックする。例えば人形なら
『それに該当しない人影はレイさんと人形の視界を介し直ちに解析します。このエリアでの今までの敵の動きを見るに、敵は姿を現してから直ぐに発砲してきてますので見分けが付きやすいと思います。
しかし攻撃をせずに接近してきた例もあります。この場合可能性は低いですが、逃げてきた避難対象者の可能性もありますので、解析が済むまでの攻撃はくれぐれも控えてください』
「攻撃されてる間にそこまで気を回してる余裕は無いと思うが?」
撃って撃たれての状況下でそんな細かい事まで気を付けろと? レイは顔を顰め問い直した。
勿論、人道的な問題は最大限配慮しなければならないPMCの立場は理解しているが、少なくとも現状、ブリッツ達の進軍速度を大きく抑える程の手練れ相手にそれだけの気を回せるかは分からないというのが彼の意見である。
更に言えば、所々炎によってぼんやりと照らされてはいるものの、それでも視界が暗闇に包まれてる事に変わりはない。
100%の精度で敵か避難者かを識別して誤射を無くすのは、慣れたレイにとっても難しい事だった。
しかしナビゲーター・・・グリフィン側にとってもここは譲れない要素。戦闘に関係無い者を誤射し、最悪射殺してしまったなんて事が起これば、確実に大バッシングの嵐がやってくるだろう。
熟練の兵士でも難しいオーダーなのは分かっていても、折れる訳にはいかないのだ。
『無理は承知ですが、民間人を誤射してしまうと後々大問題になります』
「・・・後でオプション料金請求してやる」
『ご面倒でしょうがよろしくお願いします』
文句はあれど、クライアントに言われたのならレイは従うのみ。
溜め息を吐くと、トリガーガードに指を掛け体勢を整えた。
その時。
C小隊から程近いビルの一階。乗り捨てられた路駐の車の影から部隊に向けて、幾数ものマズルフラッシュが光った。
「! 来たよご主人!」
「モグラ叩きの始まりだ」
レイはすぐ様光に目掛け、その中でC部隊に最も近い所にいる敵兵を視認。車に身を隠し、照準のため露出させた頭部に狙いを定め・・・発射。
敵兵は強力な.338ラプア・マグナム弾を頭に食らい、何が起こったかも分からないまま一気に後ろに仰け反り・・・突如遺体が青白く
(! 殺した途端死体が燃えた?)
スコープ越しにその様子を見ていたレイは、思わぬ出来事に一瞬思考に空白が生じさせるが、すぐにその隣の敵兵に照準を合わせ、発射。
同じ様にひっくり返った敵兵は、またしても青い炎にその身を焦がす。
まるで死体からはどんな些細な情報も敵に渡さないとばかり。炎の色が青いということはそれだけ温度が高いため、一度発火すれば瞬く間に人間の体など灰になってしまう。身に付けてる物も同様だ。
(下手に殺すと情報を得られない、だがかといって殺さず手加減できる相手かは微妙だ・・・面倒な)
眉間に皺を寄せながらも装填された5発を撃ち切ると、即座に身を隠しマガジンを装填し直す。
コッキングし、再度狙撃姿勢を整えて敵を探す。一発、二発、三発、と撃ったその時、暗視モードの左目に、此方に銃を構えている様に見える小さな人影が映った。
『レイ伏せて!!!』
「ッヤッベ!?」
スケアクロウの警告と、目に入った光景に咄嗟に影に身を隠した次の瞬間、それまでレイがバレルを乗せていたまさにそのポイント付近に着弾した。金属の棒は一瞬で弾丸に突き破られ、更にレイの隠れているあたりに向けて数発撃ち込んできた。
「この暗さだぞ! 幾ら何でも気付くの早過ぎだろ!?」
更に何発ものライフル弾が放たれる。ビルの外装を抉り取ったりそのまま埋まったりと、当たればタダでは済まない口径の弾がいくつも至近距離に着弾するのを見てレイは顔を引き攣らせた。
弾数で言えばまだ10発も撃っていない。それに視界不明瞭かつ、サプレッサーを着けているためマズルフラッシュも無い。
つまり敵は人形部隊以外からの攻撃を受けた瞬間、兵の倒れ方から迅速に射線を割り出し、レイの位置を特定したと言う事になる。
可能なのか? もう少し数を撃ってたら気付かれてた可能性もあるだろうが、視界が碌に効かない、目印になるモノも残さず発さずの中で、射撃数が10発にも満たない内にこうも容易に位置を特定されるとは。レイの中で焦りが浮かぶと同時に、ふと頭に射殺した敵兵士が直ぐに燃えた事が過ぎる。
そして、繋がった。
(ハッ、なるほどね。人形がいつでも喋らずやり取り出来んのと同様に、連中も身体にナノマシンか何か入れてて、常に互いの視点や戦況をリンクして把握出来るって事かよ。これじゃあ狙撃位置が即バレする訳だぜ・・・)
撃たれた兵士自身は、恐らく頭を撃たれた事を認識出来てないまま死んでいったハズ。だが体内のナノマシンはヘッドショットを受けた事を頭の傷から認識し、即座にその情報を他の兵士にリンクしたに違いない。
プロの兵士なら・・・8発も撃たれれば射線から狙撃手の位置を割り出すには十分だろう。
やはり、練度が高い。その上、体内に入れたであろう何らかの機器の恩恵で、彼らは戦術人形と同様に味方の状況をリアルタイムで把握し行動できる可能性が高い。
熟練の兵士にそうした”システム”を装備させればどうなるか。誰が考えても分かる。非常に高い戦闘能力を持った部隊の完成。これでは経験が少ないR20部隊どころか、MAGですら苦戦を強いられるのも道理。レイは苦虫を噛み潰した様な顔になる。
兎にも角にも、居場所がバレた時点で狙撃手のやるべきことは決まっている。
暗視スコープを着けたままのL96を一旦ストレージに収め、匍匐で屋上の反対側へと向かう。
「ごごごご主人! どうするの!?」
身を伏せたままティナが問う。
「どうするも何もまずは逃げる」
「はぇ? まずはってそのあとはどうs『ピュンっ!』うわっ!!?」
敵弾が直ぐ側の柵を掠め、火花が散る。
「あークッソ、本当容赦『RPG接近!!! 逃げてっ!!!』ウッソだろオイ!!?」
レイ達の耳が空気を切り裂く音を捉える。ということは————
「クッソっ!!」
「にゃあああっっ!!」
匍匐してる場合でなく、1歩でも遠くその場から離れなくてはならない。
二人は全速力で狙撃位置と反対側へ駆け出し、ロケット弾の回避を試みる。
階段室の裏側まで滑り込んだその時弾頭が着弾、爆発で屋上に衝撃が走る。
想定よりも早い狙撃位置の把握、そして確実に潰せる様にビルごと吹っ飛ばす勢いでの反撃。レイ達の手元の装備では対抗が難しく、かといって顔を出せば敵兵の狙撃やロケット弾が飛んでくる状況。一箇所に長時間拘束されるのは極めて望ましくない。人質がいて現地部隊の戦力は当てにならないという状況、長引いた分だけ仕事の成功率は下がっていく。歯痒い展開に堪らずレイは苦々しく口を開いた。
「チッ・・・こっちもこのままじゃ動くに動けねぇな。ナビゲーター、危険は承知だがCASを頼みたい」
『一番近くの機がそちらからおよそ8分の地点にいます。派遣は可能ですが、その前に出来る限りの対空火器の排除が必要になります。可能ですか?』
間髪入れず告げられるナビゲーターの懸念。ヘリコプターにとっては、例え無誘導であってもRPGなどのロケット弾は充分な脅威となる。
この暗い中では、撃ってくるまでどの兵士がどんな対空火器を持ってるかの判別はほぼ不可能。サポートしに来たヘリが墜とされては、この後の作戦進行に大きな支障が出かねない。
戦場を俯瞰して管制しているナビゲーターが不安を伝えるのも無理はなかった。
『せめて対空火器を持った敵の位置が把握出来れば、優先的に
という言葉を聞き、ふむと思案し始めるレイ。
数秒考え思い浮かんだ事があったのか、徐にインカムに向けて口を開く。
「上から姿が見えりゃ良いんだな?」
『え? えぇ、そうすれば敵の武装を把握出来ますので、標的化可能です』
ニヤリ。やる事は決まったと笑うレイ。
「OK。スケアクロウ、一旦こっち戻ってくれ」
『へ?』
「上から6kg分のC4を落とす。起爆はこっちでやるから、爆発で地上が照らされた瞬間にナビゲーターと兵士の装備を洗い出せ。なんなら炙り出したその瞬間、ビットで上からぶち抜いても良い」
空で爆発を起こし、膨れ上がる爆炎で地上を照らすという荒技。
要は一瞬でも姿をはっきりさせられれば、後は超高速と言って良いナビゲーターの解析によって優先目標を定める事が出来る。
演算リソースが足りるなら、観測していたビットをそのまま本来の用途に転じてメーザーブラスターとして使うのも手だろう。
『データリンクと並行して上空から攻撃をするんですのね。やりましょう』
「頼んだ。ナビゲーター、敵の位置と装備を割り出し次第、こっちで優先目標を排除する。それが終わったらヘリを寄越してくれ。後は空から蹂躙されるばかりの歩兵しか残らない筈だ」
『了解しました』
「さてと、壁に貼っ付けたC4を剥がさねえと・・・」
レイは先ほどセットしたばかりのクレイモアに端末から無線で再度接続、信管を無効化した上でストレージに仕舞い直し、ティナと共に階段室の壁面三辺に貼り付けていた3つのC4爆弾を取り外す。
とちょうどそこへ、羽織ったマントをはためかせながらフヨフヨと飛んでくる人影が。被ったフードを取った彼女はレイの手に抱えられたそれらを目にして、ジットリとした目線で見据えた。
「・・・・・・相変わらず突飛な手段を思いつきますのね」
「照明弾撃てる拳銃は流石に持ってきてねえからな。他に使える案があるなら聞くが?」
「いいえ? それで、私はその爆弾を落とせば良いんですの?」
「あぁ。今もう一度ペアリングして設定を変えてる所だ。俺の端末から起爆出来る様にセットして・・・っと。ほい、後はこれを落とすだけだ」
レイはテープで3つの爆弾をぐるぐる巻きにまとめた状態で手渡した。
「・・・間違っても誤爆なんかしないで下さいな?」
スケアクロウとしては冗談のつもりで言った一言だったが、それを聞いたレイの顔に見る見る内にどんよりとした影が差す。
「その一言で傷付いたからそれ落とす前にコードを送ってしまうかもしれない」
「本当にやめて下さいまし!!?」ガビーン
「ばーか、んな事はしないよ。それじゃあ上がってくれ」
「・・・・・・もう、行ってきますわ」
少々拗ね気味にプイと顔を逸らすと、あっという間に空高いところまで飛び去っていく。
程なくバイザーに『Ready to drop & searching.』と表示される。
レイは再度端末を確認し、自身がコードを送れば即座に爆発する状態になっているのを確認。
「落とせ」
『いきますわ』
応答から1秒後、レイは端末に表示されたボタンをタップ。即座にティナと共に匍匐状態へ、爆風から身を守る体勢に入る。
————Program RUN.
次の瞬間、レイ達のいる屋上から7m程の高さに大きな爆炎が現れた。
強力な爆発がビルの高層階の窓ガラスを粉砕し、バラバラと砕けた破片が地上に降り注ぐ。
頭上で起こった突然の出来事に、敵味方問わず一瞬動きを止める。その一瞬の間が、爆炎に照らされた敵味方を識別するのに大いに役立った。
三機のビットの映像から齎された情報を元に敵兵を瞬時に識別するなど、ナビゲーターの優れた能力なら1秒あれば事足りる。
『分析完了、優先目標をマーク。スケアクロウさん、この3名が対空火器を持っています』
『ターゲット設定、恨みはありませんが・・・さようなら』
炎が消えかけるその時、三本の光の柱が地上の敵兵士を貫いた。
人を一直線上に文字通り貫いたメーザーは、当人に何かを感じさせる間もなく身体を内から溶かす。
それでも宿主が死んだのをちゃんと認識したのか、体内のナノマシンが凄惨な状態の遺体を完全焼却してしまう。
『ターゲット撃破』
『了解。現時点でそのエリアに対空戦力は確認出来ません。一番近い機の到着まであと6分半です』
「分かった。スケアクロウは最初の態勢に戻ってサポートを頼む。こっちは一旦地上に戻って敵を撹乱する」
『承知しました』
通信が終わると、指示した通り1機のビットが二人の元へ戻ってくる。レイは二人に顔を向けると狙撃位置と反対側へ歩いていき、地上に敵が来てない事を確認するとグラップリングビームを取り出し、複数本の柵に絡ませ荷重が分散するように取り付けた。
ティナも懐に命綱代わりのロープを取り出すと、背後からレイに密着する形でお互いの腰に括り付ける。
「準備おっけーだよ」
「よし、降りるぞ」
背中にティナを背負ったレイは身軽な身のこなしで柵の外へ。強く引っ張って柵の様子をチェック、問題無いと判断すると床を蹴って壁伝いに勢い良く降っていった。
地上に降りた二人はすぐに命綱を外し、己の得物を構える。周囲を確認、敵影・異常は無し、クリア。
「さーて、掻き回してやるか」
「お供しますぞご主人」
二人顔を見合わせ、ニヤリ。
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ビルの裏から主戦場の表通りへ早足で忍び寄り、路肩に乗り捨てられた車の陰に身を隠す。
乗り捨てられた車がゴチャゴチャと並ぶ通り。中には追突してオカマを掘ったものや、無理に車で避難しようとしたのか、別の車に猛スピードでぶつかってクラッシュした様なものまで。
この騒ぎで大混乱が起こった挙げ句、自分勝手なドライバーが無理な運転で余計に事故を起こしたせいで、いよいよどうしようもなくなったといった所だろう。最早レッカーでどうこうでなく、1台1台クレーンで吊り上げてかないと片付けられない状態である。
遮蔽物に隠れながら少数で奇襲するにはうってつけだ。まぁ誰かが燃料タンクぶち抜いて爆発する可能性も無きにしも非ずだが。
右目の通常モードの暗い街の景色、左目は暗視モードによって人の輪郭がはっきりと浮かんでいる。そこにティナのグラスの透視で見えた遮蔽物に隠れる兵士の姿と、そして先の爆発で姿を捉え位置を把握したことで、人影が敵か味方かが視界に入った瞬間分かるようになっている。データリンクによる恩恵だ。
これならばやり易い。豪勢なお膳立てをしてもらってる、口元がニマリと弧を描く。高周波ブレードを取り出し、静かに鞘から抜くと右手に持つ。左手は撹乱のために敢えてフリーに。ティナは半身で後方からのフォロー、追従しているビットも同様に。
俺は隣のティナへハンドサインで合図を示す。3、2、1————
カウント0となった瞬間、俺達は身を屈めながら一番近い敵の懐へ突っ込んだ。
「!? コンタk!!」
早速横っ腹を突こうとした此方に気付いた敵が叫ぼうとする。だがその前に潜り込んだ俺が喉笛に刃を突き刺し声を潰す。開いた傷口から溢れ出る血液、このまま抜けばまだ死なずに済むだろうが、容赦無くそのまま首を切り裂く。
隣にいた兵士も、突然真横で味方が襲われ一瞬硬直したその隙をティナが突いた。ゴーグルとフェイスマスクにしか覆われていない顔面に5.7mm弾を撃ち込み沈黙。程なく青白く死体が燃えた。
「!? 味方の反応が消えたぞ! 警戒しろっ、伏兵がいる!」
チッ・・・やっぱりナノマシンでお互いに連携してやがったか。狙撃位置がすぐバレた時点で察しちゃいたが、これで確信した。
これでは殺したそばから芋づる式に俺達の居場所もバレてしまう。
ともあれ、敵は味方の位置しか分からないのに対し、此方は敵の位置もしっかり把握出来ている。この優位性を崩さず掻き回せるかがキモだ、遮蔽物を縫うように動き回りながら考える。
「クソっ、何処から湧いてきtングッ!?」
「っ、どうしt」
「おっせえよ」
「暗がりはウチの専門だからね」
後衛にいた敵に狙いを定め、合図と同時に背後から襲い掛かった。思い至った事があり、敢えて首を絞めて気絶させるだけに留める。
気絶した兵士を手早く地面に寝かせ、敵がタクティカルベストに据え付けていた目当ての物を探り当て頂戴する。ついでに持っていた
死体が燃え出す前にさっと身体を離し、道のど真ん中に乗り捨てられたセダン車へ駆ける。直後、俺達のいた所に近い味方からの銃撃が飛んできた。
・・・流石に7.62mm弾の威力は強力だ。着弾音が全然違う。あまり近くにいる敵から撃ち込まれたら、戦闘用じゃない車じゃ身を守れない。
一方で敵の方は潜り込んだネズミの駆除を優先するらしい。正面に相対する人形部隊は少数戦力でも対処可能だと、そういう事でもある様だ。
結構。コッチも危険だが、目を引き付けられるならそれに越した事は無い。
「ナビゲーター、敵から無線機をパクった。何か調べられないか?」
『了解。そちらの端末と接続し解析してみます。その間、回線が途切れない様にして頂けると助かります』
「OK。気を付けよう」
俺は光ったマズルフラッシュから改めて敵の位置を把握。一番近くにいる敵に向けて、呼び出した通常のグレネードのピンを抜いて投げ入れた。
「!? グレネーd
叫ぶも、何も身を守る術を行えずに爆発に巻き込まれる敵兵士。
しかしナノマシンの連携によって、今殺された奴がグレネードが投げ入れられた事を味方に発信しているはず。
セダンから離れ、別の遮蔽物へと急ぐ。それから5秒と待たずに、味方の情報から投げ入れた際の位置を割り出した敵の攻撃がセダンに集中する。
戦闘用じゃない車体にはあっという間にいくつもの風穴が開いていく。その裏に隠れてたら身体に幾つも弾がめり込んでるだろう。
だがそこに俺たちはいない。そばに誰もいない車へ無駄弾を撃ってるだけだ。
身を屈め、気配を殺し、スピーディに、此方からは丸見えになっている敵の元へとそっと駆け寄る。
今度は3人。ティナとビットに向けてアイコンタクト。3カウントで懐へ入って胸を一突きにしてやる。ティナは得物で防弾ベストに守られていない部位へ射撃、ビットは即死級のメーザーを食らわせ体を焼いた。
『ヘリ到着まであと4分』
あっという間の2分半だ。敵兵士はまだまだいるが、あと4分、あと4分人形部隊へ向けられる火力を引き付けられればコッチの勝ちだ。
俺達は車の陰から出ようとした。しかし流石に敵も4度目の脱出は許さなかった。
駆け出そうとした矢先、俺の鼻先を撃ち込まれた弾丸が通り過ぎる。咄嗟に身を引っ込めるも、此方を釘付けにせんとばかりに複数方向から撃ち込まれ続ける。これでは逃げるに逃げられない。車体もいつまで持つか分からない。少々マズイ場面だ。普通なら。
だが、直接手を下せる味方は空にもいる。
地上で対処が難しいなら、別角度から状況打破の切欠を作るだけだ。
「撃て」
『さようなら、兵士さん』
2本のメーザーが、隠れた敵の頭上から降り注いだ。
その隙に車の下をスモークグレネードを潜らせる。車体から出たタイミングで吹き出す煙、俺達は煙幕を張った内に別の
「敵はメーザー兵器を上空に展開している模様! 上にも目を向けろ! 低空で近付いてくる物は撃ち落とせ!」
敵の言葉と共に、数人が上に銃口を向けて警戒し始めたのが、透視したティナからのデータリンクで分かった。
先程パクったSCAR-Hはロングバレルモデル。その有効射程は約800m。このごちゃごちゃしたビル街では、ビットやドローンがまともに偵察可能となる高度は低くなる。空に向けて撃ったとしても、撃ち出された弾丸は撃墜に十分な威力を維持するだろう。
面倒な・・・。正確なエイミング、強烈な反動によるブレも最小限に抑えられる体力と技術、これらを備えた相手だと下手を打てば本当に撃ち落とされるかもしれない。
直後、移動した先の此方へ再び何発も撃ち込まれる。金属の針が金属を撫でる音が直ぐ側で鳴り響く。それと、硬い筈の金属板を突き破る音も。
チッ・・・普通の車なんざ簡単に突き破られる。身を守る盾にもなりゃしねえ。
ヘリが来るまであと4分・・・ローター音が少しずつ喧しくなってきたが、壁を転々としないと来る前にこっちがやられる。だが位置が敵に割れて動くに動けないというジレンマ。
・・・いっそのこと、牽制でビットにもうちょっと動かさせるか?
一時的に高高度に退避したスケアクロウ達に呼び掛けた。
「スケアクロウ。ビットは最大で何連射出来る?」
『フルパワーでの試験記録は3機ローテで毎分103発、連続射撃時間は4分23秒』
「かすり傷にもならない微量なら?」
『試したことはありませんが、より短い間隔で撃てるかと』
よし。この弱っちい盾から動く時間くらいは稼げそうだな。
「分かった。小雨を降らせてくれ。射撃間隔は70%程度で、こっちが隠れる時間を作れれば良い。撃ち落とされない様に気を付けて」
『分かっています。では早速、雨を降らしますわ』
俺達に追従していたビットがスケアクロウの元へ戻る。間を置かずして、空からマシンガンの様に放たれたメーザーの雨が敵の方へ降り注ぐ。射撃間隔第一で人を傷付けるほどのエネルギーは無いため、効果としては牽制程度にしかならない。
それでも十分だ。曳光弾のように光るメーザーがいきなり降ってくれば、プロなら尚更まず身を守る事を優先する。無用な犠牲は作戦に支障が出る、故にどんな場面でも生き残れるよう徹底的に叩き込まれているから。
俺達は敵の動きが止まった一瞬を突いて、別の車の陰へと急いだ。
「雨の中に
『下手に動かせなくするんですのね?』
「ああ。この射撃間隔なら他の2機で頑張れば本命の穴は埋まるだろ?」
『ええ、問題ありませんわ』
「頼んだ。俺たちが移動を止めたら射撃停止で」
『了解』
直後、降り注ぐメーザーの雨の中に一筋の光の線が混じり、敵兵士の身体を脳天から貫いた。
死体を燃やす青白い明かりが遮蔽物越しに見えた。これで敵の動きを鈍らせられる。
敵からすれば小雨みたいな痛くも痒くもないメーザーが降ってくるかと思いきや、いきなり人を焼ける弾がいつ自分に降り掛かるか分かったもんじゃない。
しかもメーザーは発射から弾着までのタイムラグはほぼゼロ、狙われ撃たれれば回避する術はほぼ無い。そして自分達が俺達に向けて攻撃すれば、そのマズルフラッシュで自分の位置を空のスナイパーに教える事になる。それがどんな結果を招くかは火を見るより明らかだ。
案の定、紛れて放たれた狙撃には流石の連中も動揺したらしく、此方を釘付けにしようとする動きが止まった。
動き回れるならこっちのもんだ。俺は手元にC4爆弾を呼び出し、手早く端末とペアリング。今隠れている車のボンネット下に紛れ込ませると、バイザー越しに残っている敵の位置を確認する。
一番近いヤツは二人。クーペの影に隠れてるが、ルート見るに回り込めば背中から落とせるな・・・そう判断した俺はティナにハンドサインで合図。身を屈めて敵の元へ向かう。
車の影に隠れ、姿を露出するところでは影の間を縫う様に素早く動き、兵士たちの背後、正確にはその後ろに乗り捨てられたワゴンの裏に来た。同時に指示通り、メーザーの雨が止む。
「(次はこっちに一番近い敵を一発で射抜け。俺達が落とした瞬間に撃てるか?)」
『了解。4人が同じ程度の距離範囲にいますが、こちらで順次潰しますわ』
「頼む」
『味方のヘリ到着まであと1分半』
よし、そろそろ潮時かね。
ティナに3カウントの合図を見せて、構える。
3、2、1、GO。クーペを背に俺達がいたバンを見てる敵へ忍び寄り、此方へ振り向いた途端ドアップの顔で笑ってやる。
「ハロー?」
「ぐっでぃーぶにーん?」
「「!!?」」
何か口にする時間も与えず、互いに敵の首根っこを掴むと顔面から思いっきり地面に叩きつける。
そのあとはヘルメットの縁から頭を持ち上げ、二度三度顔を打ち付け続けて意識を奪う。
今までの連中の連携を見るに、恐らくそろそろ攻撃が飛んでくると思うが、一番近く、少なくとも車の鉄板が盾にならない距離にいる敵は問題無い。
端末を取り出し、爆破画面を表示させながらスケアクロウの攻撃を待つ。
『ターゲット設定、発射』
まず三本の光がほど近い車の後ろに到達。青白い光がほのかに車の影から見えた。
その時、グラスの透視でクーペ越しに敵を見ているティナの視界が、こちらに向けて銃を構える一人の兵士の姿を捉えた。ビットは3機、4人以上の一点狙撃は順番待ちが発生する。
たった数秒の時間。その隙に少しでもこちらに一矢報いようという気概を見せる兵士だが、奴が引き金を引く前に俺は端末のボタンをタップしてやった。
仕掛けたC4が起爆し、明後日の方向での突然の爆発が兵士の注意を奪う。爆発が起これば反射的にそっちに気をやってしまうだろう、そう見越しての仕込みだ。C4一個の費用(というか雷管に使ってるパーツの方が割合は大きい)を考えた時の
一瞬でも俺たちから意識を離したことで隙を作った兵士は、程なくリロードが終わった二射目に貫かれて人生を終えた。
『ターゲットクリア』
良い感じに敵の始末と撹乱が出来た。もうそろそろヘリがこのエリアに到着するというし、俺たちは空から撃たれない様に一旦どこかに退避した方が良い。
気絶させた敵兵から身包みを剥ぎ、SCAR-H(こっちはCQB仕様のショートバレルモデルだった)やタクティカルベストのポケットに入ってたマガジン、手榴弾やらお役立ちグッズを根こそぎストレージにパクりながら返答する。無線機も一応忘れずに二人分回収しておく。
「OK。掻き回すのはこれくらいで良いだろう。誤爆されない様にヘリに任せて一旦隠れるぞ。スケアクロウも来い」
「らじゃっ」
『分かりましたの』
俺たちはスモークを二つ同時に焚き、身を屈めながら通りから外れたビルの路地裏へと急ぐ。
どうせこの煙もヘリが来ればホバリングの風で吹き飛んでいく。攻撃の妨げにはならないはず。
『ヘリ到着まであと30秒』
「あぁ、ローター音がだいぶ煩くなってきた」
もうすぐ敵兵を蹂躪するヘリがやって来る。航空戦力相手に歩兵はほぼ無力だ。これで少なくともC小隊の生命線は繋ぎ留められた。
『お待たせしました。間もなく味方のヘリが到着します。スレイプニルさん、お好きにどうぞ』
『待たせたなっ、後は俺に任せろ!』
「お待たせしましたの」
スケアクロウが戻って来たその時、遂に眩いライトで地上を照らしながらヘリが来た。此方にとっては救いの手が、敵にとっては死神の手が伸びているかのよう。
敵はライトで一通り敵のいる当たりを照らしていくと、機体下部に取り付けたガンポッドから地上の掃除を開始した。
あの発射速度、あのサイズのヘリに載せられる銃となるとおそらくミニガンか? 見た目はブラックホークっぽいサイズだが、側面にロケット弾ポッドも付いてる辺り、地上部隊への本格的な航空支援も想定してる様だ。
『敵ではない、という前提で名乗らせてもらう。グリフィンS10地区司令基地所属、本部直轄部隊、多目的戦闘群特別現場指揮官のブリッツだ。アンタは?』
そういやブリッツは自分らのことを本部直轄の多目的戦闘群とか言っていた。
多目的・・・それは様々な戦況に投入される可能性があるという事。当然、部隊が運用する兵器もありとあらゆる場面に対応できる物でなきゃならない。あのヘリもその一つってところか。
戦術人形を主戦力に据える=最悪切り捨てれば良い戦力を扱うG&Kらしからぬ兵器ではあるが、かと言って全ての戦場が地上の兵力だけで対処出来るかといえば答えはNo。
正規軍上がりの元兵士だからこそ、真に損耗を抑えられる効率的かつ効果的な兵力の運用を分かってるという事だろう。
空からの蹂躪はあっという間に終わる。
後に残ったのは燃えて炭となった敵の死体の果ての姿、それに人形部隊と、彼女らに守られていた少ない民間人達。
掃除を終えたヘリ・・・無線を聞いた限りでは彼のコールサインは『スレイプニル』というらしい。スレイプニルは道路の比較的広く開けた地点に機体を下ろすと、生き残っていた面々を中に収容していく。
あのサイズだと定員は乗員込みで14-15人だったと思うが・・・俺の心配は杞憂だったようで、なんとか全員乗れたらしい。逆に言えば、C小隊の元へ来れた民間人がそれだけ少なかったということだが。大多数が既に逃げた後で取り残された少数を庇っていたのか、それとも恨み妬みを文民軍人拘らず徹底的にぶつけまくったのか。
俺たちが引っ掻き回してた道路に関しては民間人の遺体は特に見当たらなかったが、さっき見たビデオメッセージを鑑みると人道に沿った攻撃というのはあまり期待しない方が良いだろうな・・・。
そんな俺の思考を他所に、スレイプニルは怪我人にも配慮してゆっくり離陸していく。林立するビルの中で乱れまくる風など意にも介さぬ、この条件を考えれば非常に安定した姿勢で基地の方へ飛び去って行った。
優秀な指揮官のもとに優秀な駒がつくとはよく言うもんだが、この悪条件でブラさず飛ばせる時点でウチにスカウトしたい位の実力がある。まぁ、引き抜きはしないでおくが。
「・・・一先ずC小隊のサポートは完了ってとこか。ナビゲーター、現状を共有してくれ。この後はどう動けば良い?」
『現状ではB、D、E小隊が敵と交戦。そのうちB小隊は我々MAGの部隊が共闘中、その他は自部隊のみで戦闘中です。そちらから近いのはD小隊となります。D小隊もE小隊もこのままではいつまで持つか分かりません、いずれの隊も早急なテコ入れが必要です』
やれやれ、この
「まだまだ忙しいってこったな。分かった、俺達はD小隊の方に向かう。ところでブリッツ達はどうしてる?」
『現在B小隊と連携して敵と交戦中です』
「あぁ・・・そっちに行ってんのか。ならBは大丈夫だな。それとコッチも聞いとこう。404小隊、聞こえるか?」
『聞こえてるよ!』
『聞こえるわ』
回線が即座に切り替わり、変わって応答したのはナインと416だった。
端末に現状の戦場俯瞰図を表示させつつ、俺は証拠集めに向かわせたナインへと問う。
「潜入はどうだ?」
『今45姉と一緒に段ボールに隠れながら潜入してるよ。ものすごくバタバタしてるし警戒レベルMAXになってるし、みんなすっごいピリピリしてて殺気ダダ漏れ。オマケにさっき放送があって、要訳すると"基地の指揮機能を守る為、例えグリフィン所属であってもR20指揮官の側近以外で司令室に近付いた者は問答無用で即射殺する"って感じの事を言ってたよ』
「何??」
側近以外の司令室への接近を許さず、近付けば即座に撃ち殺すだと?
しかもその理由が基地の指揮機能を守る為? 何をクルクルパーな事を吐かしてやがんだコイツは。
普通こんな局面だからこそオペレーターなり後方支援の人間が頻繁に司令室に出入りするもんだろうし、ましてや敵に内部突入された訳でも無いのに司令室を閉じる意味が分からん。
いよいよもって奴自身が黒に染まってきてるな。
『よっぽど知られたくない何かがあるのか分かんないけど・・・だから私達がいくらヘリアンの指示で来た人形だって言っても、見つかったら多分即撃ち殺されちゃうね♪』
『そのとおり。私達は見つかる訳にいかないの。あ、一応放送は録音しといたけど、聴く?』
「いい。それと証拠が要るのは俺じゃなくてブリッツ達の方だ。渡すんならそっちに送ってやれ。
とにかく状況は分かった。見つからねえ様に気を付けて」
『了解だよっ』
『ありがと。頑張るわ』
訳分からん指示といい行動といい、自分で自分の墓穴を掘ってる構図。しかし当人は多分今頃保身に必死でそのことに気付いてないのかもしれない。
あぁ哀れなり、軍事裁判に掛ければほぼ100%死刑になるであろう罪状の数と罪の重み。はぁ・・・ホント下らない事件に呼び込まれてしまったもんだ。
そう思ってると、なぜボンボンがそのような行動をしたのかをナビゲーターが分析してくれた。
『現在、ブリッツ指揮官の命により、フォスター指揮官のアカウントでの指揮コンソールのログインをブロックしています。
それにより外の現状を知る手段を奪われたため、より短絡的な行動に出てしまったのだと推測出来ます』
「あーそぅ。邪魔しかしねえ味方は早いとこブッチすべきだ、ブリッツの指示は最善策だと俺も支持するぜ。で、となるとだ。俺の読みが当たってりゃ、ヤツが引き込んだであろう敵にコンタクト取るのも時間の問題かもな」
『・・・幾らなんでもそれは流石に短絡的思考が過ぎるのでは?』
困惑しつつも、否定もしきれなくてどう言ったべきかという声色で言うナビゲーター。
内部放送での内容や今までの行動を鑑みると、本当にやりそうな気もしているらしい。
「事前に襲撃の規模や流れを打ち合わせてたんなら、こんな事態になりゃまず最初に文句を言うはずだ。ところが実際は文句付けるどころじゃないほどの窮地に陥った挙句、この地区にはMAGというイレギュラーがいて下手に動けない。事態が起こって直ぐに連絡は入れられなかったんだろう。
だけど今はどうだ? 司令室に近付くなとわざわざ忠告した上で自分の身内だけの空間を作ってる。まさしくクレーム付けられるチャンスじゃないか」
『・・・・・・しかし、もし本当にそんな真似をしたら、最早指揮官以前に人としても————』
「最大級のバカだな。まぁそん時は決定打になる証拠を
『そう、ですね・・・』
もし本当にやりやがったら、自分が殺されかねないレベルの最悪のオウンゴールを決めた事になるんだがな。
それだけ馬鹿極まりない所業、怒りとか憎しみよりもまず哀れみの気持ちが湧き上がってくる程のお粗末さに、流石の彼女もどうコメントして良いか言葉に困ってしまう様である。
もっとも、既に奴の自滅は確定事項。これ以上奴の事について頭を割くのは無駄だ。
「さて待たせたな416。そっちは進行形で暇を持て余してそうだが・・・そこにキミらがいるかいないかで、今この時も俺たちの気の持ちようが全然違うんだ。予想できる最悪の展開に備えて、悪いが引き続き待機していてほしい」
『! えぇ、そこまで言うなら完璧なこの私がやり遂げてみせるわっ』フンス
「頼んだぞ416」
404との無線が切れると、バイザーと端末の画面に新たなデータリンクが提供される。
D小隊はSMG人形2にAR人形が3という構成、少なくともC小隊よりは遥かにマシだ。しかし敵の練度の高さによって有効なダメージは与えられていないと。
「・・・少し急ぐか。二人とも、次の仕事場へ行くぞ」
「えぇ」
「おっけー♪」
そーろそろ終盤に差し掛かる??
いーえ、まだ中盤です()。
アタシの筆が遅過ぎる事でお相手に大迷惑を掛けており申し訳無い気持ちで一杯。
皆様、今回のコラボはまだまだ続きますので気長にお待ち下さい(滝汗)。