裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 お待たせ致しました。
 今回バイオレンスな描写がありますので、予めご承知おき下さい。

 ※2022/05/01追記
 こっちも見て↓
https://syosetu.org/novel/186365/92.html

 誤字報告ありがとうございます!


-91-"Two-up"/11 Side Enemy

 

 

 

「────何が起こっている? 何故これ程の損害になっているんだ?」

 

 

 R20地区に立つとあるビルの一室にて。完全武装した仲間の兵士たちに囲まれながら立つ、一人の兵士が言った。

 周囲と同じように特殊部隊が身に着ける様な重装備を纏いつつ、ヘルメットやゴーグルといった頭に着けるものだけを外し、顔を露わにした女性。

 腰に届かない程の長い銀髪を後ろで編み込み纏め、直ぐに戦闘に出られる様に整えている。極め付けは切れ長の瞳に整った目鼻立ちをしており、端的に見てクールビューティーという言葉が似合うものであった。

 

 名を『ユリア・リドヴィツカヤ』。元々は戦災孤児であったところをフレイム・スコーピオンズCEOのアダム・リドヴィツカヤに拾われ、戦闘技能や戦術理論など、必要なスキルを徹底的に叩き込まれた上で現在まで一人の兵士として所属している。

 優れたルックスから過去には自社管轄地で配布する社内報や広告に登場した事もあるが、その実力は本物。

 厳しい訓練を、そして幾度の戦闘を経て、身につけた実力と鍛え上げられた肉体と精神を持ってここに来ている。自分より年上の兵士が圧倒的に多く、その上男所帯のフレイム・スコーピオンズの特殊部隊を()()()

 

 彼女が単なる広告塔ではなく、兵士として一流である事の証でもある。

 

 しかし彼女の顔は今、幾つも重なった不都合への苛立ちに大きく歪んでいる。

 そう、生じる筈の無い損害が出ているという事実に対して。

 

 

 ユリアから見れば、こちらはクルーガーの副官を人質に取り、事前準備も念入りに行った上での攻撃をしている。ここまでやれば()()()最悪の事態を恐れて動けなくなる。

 下手に抵抗すれば人質・・・ヘリアントスの身がどうなるか分かったものじゃない。軽率な行動は絶対にしてはならないと誰でも分かるからだ。

 

 にもかかわらずだ。実際には居住区を攻撃していた一部小隊が瞬く間に全滅し、おまけに他の小隊も徐々に損耗が目立ち始めている。描いていたシナリオと違いすぎて意味が分からない。何故この状況で抵抗出来る? そもそも味方を倒した部隊は何処から出てきた?

 

 その時、ユリアの脳裏にアダムから齎された情報が過ぎる。

 R20地区指揮官のハロルド・フォスター曰く、本部で捕らえた武器密売人がこの地区で取引を企図していた為、その調査に本部から部隊が派遣されていると。

 

 

(密売人はともかくとして。この戦況、もしやその調査部隊とやらがやったのか?)

 

 

 調査の為の部隊とハロルド・フォスターは言っていたが、果たしてそれは本当に調査を主な任務とする部隊だったのか?

 だが、もしそうだとしたら被った被害の説明がつかない。

 我々はフレイム・スコーピオンズの特殊部隊。戦闘を主任務としない部隊に損耗どころか全滅までさせられるなど、練度や実力を考えればまずあり得ない。

 

 

(状況的に見て間違いない・・・調査に来たのはグリフィンのエース級部隊だ。恐らくは密売人とやらに吐かせた情報からこの地区が出てきて、そのまま流れで調査していた折に戦闘が始まったという事か・・・フォスターめ、直ぐに帰らせるんじゃなかったのかっ)

 

 

 拳を強く握りしめる。思い浮かぶのは、資料で見たハロルド・フォスターの憎たらしい笑顔だ。

 

 アダム曰く、調査部隊の存在を聞いて懸念を示した際、フォスターからは『動きを察した様子はなく、じきに帰ると思われる。それにいざとなれば自分の立場を利用して強制的に帰らせる事も出来る。心配は要らない』と返って来ていたそうだ。

 

 じきに帰るというのは『もう少しで』とか『もうすぐ帰る』という意味であって、間違ってもじっくり時間を掛けて用を済ませてからなんて意味ではない。実はこの点は完全にフォスターの見込み違いによるもので、ここで既に歯車の掛け違いが起こっていた。

 フォスターとしてはさっさと仕事を終えて帰るだろうor自分のコネで帰らせる前提でいたが、実際には調査部隊・・・MAGの面々はかなり念入りに現場の調査を行っていた。

 当然である。グリフィンの戦力を根底から崩壊させ得る、極めて強力なドールズジャマーが密輸されかけていたのだ。調査するにあたってはどんな些細な証拠も見落とす訳にはいかない。放っておけば大惨事となる可能性を孕んでいる以上、(元々手抜きする様な性格じゃないが)彼らに手を抜く理由など無かった。

 

 つまるところフォスターは、派遣された部隊や任務の内容、派遣された経緯等をよく知らずして適当にじきに帰る()()()という見込みを伝えただけなのである。彼の立場上大抵の人間は実質逆らえないと高を括って、ブリッツ達MAGの事をよく調べなかったこともある。

 

 そのため、フォスターから齎された情報を元に組まれていたスコーピオンズ側の想定と実際の展開に、無視出来ない大きなギャップが生じる事となってしまう。

 グリフィンに恨みを抱いていた彼女達にはフォスターからの攻撃開始の合図を待つ気は無く、不意を突く形で攻撃を進め、地区そのものを制圧するつもりでいた。勿論、フォスター自身の目的など知った事ではない。

 

 自分たちの目標を遂行するため、スコーピオンズの部隊は”実際とは異なる情報”を元に行動を進めていった。

 

 結果————

 

 

「これもヤツのバカさ加減を見誤った私のミスか・・・」

 

 

 そう言ってユリアは頭を抱えた。

 

 最初は良かった。予定通り脅迫メッセージを送り、予定通り変電所を爆破し、予定通り駐在所に車を突っ込ませ、予定通り街への攻撃を開始した。

 フォスター指揮下の人形達は碌な実戦経験も無く、まともに戦えない木偶人形を物言わぬスクラップに変えてやるのはとても簡単な事。

 R20地区の現地兵力だけならば、多少時間を掛けても一晩もあれば制圧は可能。コネだけで指揮官の座に就いた男に、経験不足な戦術人形の集まり、戦況打破が出来る道理は無い。

 金稼ぎの才はあっても軍略の才は無い、フォスターや地区戦力を分析したスコーピオンズ社の作戦参謀の評価である。

 

 それもあって、スコーピオンズは敢えて一気に殲滅するのではなく、徐々にグリフィン側の戦力を削っていくプランで進めていた。

 グリフィンに苦い経験をさせられた恨みを示す様に、ジワジワと甚振る様に。

 

 だが蓋を開ければグリフィン側の強い抵抗に遭い、現実には作戦失敗の四文字が頭を過るほどの大惨事となっている。調査部隊と言っていた異分子がなんと味方の、それも特殊部隊の一個小隊を全滅させる強力な戦力だったとは、なんというふざけた貧乏くじを引いたものか。

 もし調査に来ている部隊の正体を知っていれば、たとえフォスターやアダムがどう言おうともユリアは攻撃開始を命じなかっただろう。そうすれば、少なくともここまで味方の命を失う事は無かったのだから。

 結果的に少なくない兵を無駄死にさせるという、指揮官として最悪の失態を犯してしまったユリア。その悔しさからグローブが軋むほど強く拳を握り締める。

 

 

「隊長。今は死んだ同士達のことを考える時じゃない」

 

 

 諭す様に声を掛けたのは、副隊長としてこの作戦に参加している男。

 俯いていた顔を上げると、彼は静かに首を横に振ってみせた。考えるのは後にしろ、失敗すれば払った犠牲も浮かばれなくなるんだと、ゴーグルの奥にある瞳はそう語っていた。

 

 

「・・・あぁ、そうだな副隊長。最後まで戦わなくては、同士達に顔向けできない。ベレゾヴィッチ・クルーガーに連絡を取る。これ以上の抵抗を続ければ————」

 

 

 ユリアは腰のホルスターからコンバットナイフを取り出すと、広い部屋の隅にポツンと置かれた椅子へツカツカと歩み寄る。

 椅子には着ていた制服を剥ぎ取られ、下着姿にされたヘリアントスが縄で拘束されていた。

 彼女は身を屈めヘリアントスを鋭く見据える。抜いたナイフの刃を首筋に触れさせ、一筋の鮮血を刀身に伝わらせながら。

 

 

「この女の命は無いと、灸を据えてやる必要がありそうだ。なぁ、ヘリアントス?」

 

「・・・」

 

 

 所々に暴行を受け、体に幾つも青いアザを作った悲惨な姿のヘリアントス。

 しかしユリアの言葉に徐に顔を上げた彼女は、それでも屈しないという強い意志でもってユリアを睨みつけた。

 

 

 そこへ部隊員の一人が、人の顔ほどもある大きな無線機をユリアに手渡した。

 強力な電波出力に堅牢な耐久性、大容量バッテリーを備えた故の大きなソレを受け取ると、ヘリアントスのすぐ傍に立って敵のボス(クルーガー)直通のテレホンナンバーを押した。

 

 1コールと待たずして相手のオフィスに繋がる電話。ユリアは切れ長の眼を細め口を開いた。

 

 

「——————これはどういう事だ? ミスタークルーガー」

 

 

 激しい抵抗を受けている事を咎める。此方には人質がいるのに何故抗うのかと。

 

 

『居住区の住民を避難させようと行動している所、敵部隊と遭遇し交戦した。私はそう聞いている』

 

 

 その声は重用していた部下を人質に取られてるとは思えない、冷静沈着そのものである。

 まるで平時のビジネスで応対されてるかの様な口ぶりに彼女は思う。お前達がやってる事の意味を分かっているのかと。

 

 当然、理解していない訳が無い。仮にも大手と呼ばれるPMCのトップが、その程度の事すら理解できないポンコツだったなどあり得ない。

 つまり、ヘリアントスの命をベットしてでも抵抗を試みているのだ。

 

 此方が絶対に人質を殺さないと思っているのか、それとも最悪の事態が起こる前に制圧出来ると本気で考えているのか。

 いずれにせよ、人質を取られていながらの抵抗行為、そして今トップの口から出た言葉は、相手が此方の戦力に十分対応可能と判断しているということ。つまるところナメられているのだと彼女達は認識した。

 

 そう思うのも無理はない。現に全滅させられた部隊も出ている。

 

 ・・・実に忌々しい。

 

 チラリ、眼下のヘリアントスを一瞥したユリアは、マイクが拾わない程度に深呼吸をして口を開いた。

 

 

「ミスタークルーガー、貴方は何か勘違いしている様だ」

 

『勘違い?』

 

「我々は"お願い"をしているのではない。"命令"している。あの女を返して欲しくば、我々の求める物を大人しく寄越せと。そういう命令をだ。身代金500万ユーロ、それをこちらが指定した口座に振り込め」

 

 

 どんな富豪ですら一瞬目を疑う莫大な大金。あまりの額に流石のヘリアントスも目を見開いた。しかし、低汚染地域の大概を掻っ攫われたことで生じた自分たちの損害を思えば、まだこれでも補填しきれない位である。

 鉄血の相手を政府から委託され、元々肥えてた身の内を更に肥している。この程度も持っていないとは言わせないと、ユリアはマイクの向こうにいる相手を睨むつもりで前を見据えた。

 しかしそれでもなお、クルーガーの声に苛立ちや焦りといった感情が乗る事はなかった。

 

 

『随分と金に困っている様だな。同情しよう』

 

 

 むしろ彼女達を憐れむ様な声色で、その実皮肉を通して挑発してきたのだ。

 

 

(金に困ってだと・・・??? 誰のせいだ・・・!!!)

 

 

 ギリっ、

 筆舌にし難い怒りが込み上げ、つい彼女は歯軋りをしてしまう。無線機を握る手にも無意識に力が入る。

 

 

「(隊長、落ち着け)」

 

「っ!」

 

 

 副隊長が小声で窘めた。

 周囲を見やれば、仲間も頷いたりといった反応を返す。

 

 実はクルーガーの声は無線機を介してこの場にいる全員のインカムにリンクしており、自分も当事者としてユリアの気持ちを理解した上でそれでも彼女に冷静さを保たせようと働きかけていた。

 兵士として、指揮官として、決して感情に身を任せて行動してはならない。作戦中はどんなことがあっても冷静さを保たなければ、いざと言う時に判断を誤ってしまう。

 

 ユリアはもう一度、今度は無線機を物理的に口元から離して深呼吸をする。

 頭に上った熱を一旦冷まし、相手のこれ以上の抵抗を牽制する様に強い言葉を投げた。

 

 

「ミスタークルーガー。貴方の優秀な副官の命は我々が握っている。この手に持ったナイフ一掻きでどうとでも出来るのだ。これ以上我々へ抵抗を続けると言うのならば、ヘリアントスの命の保証は出来ないと忠告させてもらう」

 

 

 敢えてヘリアントスの生殺与奪をチラつかせ、相手の出方を伺ってみる。

 実際、彼女の命を奪うなど容易く出来る。極端な話、今この場で今この手に持っているナイフを使って、本当に首を掻き切ってやれるのだから。

 時間稼ぎをしようなどとは考えるなと、言外にそう告げてやる。

 

 だがそれでも、返答はまたしてもユリア達の望むものではなかった。

 

 

『ならばお前達が民間人への攻撃を止めれば良いだけだ。我が社の人形や戦闘員ならともかく、民間人の避難まで妨害しているのはそちらだろう。

 それでは道を開くために現場が動くのは当然、そこに私の意思が逐一投影されている訳ではない』

 

 

 あくまで民間人の避難のため、仕方なくこちらも武力を行使している、そう言わんばかりの呆れ混じりの言葉。

 現場は現場で上は上、私に言ったところでどうしろと?と、クルーガーはそのスタンスを貫くつもりでいるらしい。

 

 一周回って最早頭が冴えてくる感覚すら覚えたユリアは、低く平坦なトーンで返す。

 

 

「・・・・・・勝手な事を。我々の兵力をここまで削っておいてどの口が言うか」

 

『ならばその文句は張本人に言ってくれたまえ』

 

「は?」

 

 

 思いもがけない突飛な返しに呆けた声が出てしまった。

 まさか交渉役の立場に就いているはずのクルーガーが、自分とのやりとりを他人に丸投げするとは思っていなかったから。

 虚を突かれたユリア達の思考の空白など気にも留めず、言ったもん勝ちとばかりに続けるクルーガー。

 

 

『このままでは埒があかん。お前が直接、今現場の指揮を執っている男に伝えるんだな』

 

「なんっ」

 

 

 待てと言う間も無く、一瞬プツリとノイズが混じると再び通信が繋がる。

 ただし今度は相手が走っているのか、相手の息遣いやヘリのローター音がスピーカーから流れる。

 そして繋がった相手は此方をクルーガーと思っているのか、開口一番畏まった口調での謝罪が出てきた。

 

 

『クルーガー社長ですか? 申し訳ありません。上級代行官の救出にはまだ時間がかかりそうです』

 

「─────なるほど、お前の仕業か」

 

 

 思わず口を吐いた言葉。クルーガーの言う現場の指揮を取っている男とはこの人物らしい。

 どうやら本当に現場の人間に丸投げしてくれた様だが、それならそれで構わない。

 

 この男には言いたいことがある。

 内に渦巻くドス黒い殺意を胸に抱えつつ、冷静さを保ちながら口を開くユリア。

 

 

「随分と暴れてくれたものだな。おかげで部隊の損耗率が予想を大幅に越えてしまったぞ。R20だけなら、ここまでにはならなかった」

 

『・・・そういうアンタも、随分困らせてくれたな』

 

 

 相手には彼女の声は非常に耳障りに聞こえているはずだ。たった一言発しただけで敵だと察した相手は、こちらも敵対者に向ける低い声で返答する。

 

 

「甘く見ていた。実戦らしい実戦を知らぬポンコツどもと思っていたが、よもや本物も混じっていようとは」

 

『そっちも、()()()()()にしてはよく訓練されている』

 

 

 ピクリ、ユリアの眉が動く。

 フレイム・スコーピオンズの特殊部隊に籍を置く者として、プロの誇りも何もないただの武装集団(テロリスト)と一緒にされるのは我慢ならない屈辱だった。

 予想以上に進まぬ計画、何故か肥大化していく味方の損耗と、ただでさえ苛立ちを募らせていたところに投げ込まれた爆弾。

 

 

「我々をその辺にいる蛮族と一緒にしないで頂きたい」

 

 

 そう言った。そう言ってしまった。言外に自分はただのテロリストじゃないと反論した様なもの。

 間髪入れず、相手の男から返しようのない鋭い突きが刺さる。

 

 

『やってる事は同じだろう。────それともPMC崩れとでも言ってほしいのか?』

 

 

 空気が凍る。PMCという単語が出てきた瞬間、男の声を聞いていた全員の背筋を冷や汗が伝う。

 そんな彼女達の緊張など構いもせず、男は推理の根拠をツラツラと述べてゆく。

 

 

『ずっと考えていたんだ。『もしこの蜂起を実行に移すならどんな勢力なのか』と。素人じゃダメだ。最初は良くても後々破綻する。となるとプロしかいない。それも、高度な訓練を受け実戦経験も積んだプロ中のプロだ。

 しかし、実際に事を起こすのなら何かしらのモチベーションが必要になる。仕事だとしても、グリフィン相手に戦争を吹っ掛けるにはリスクが大きすぎるからな。下手なプロ気取りは尻込みする。尤も、そこはあのビデオメッセージが答えを教えてくれたが。

 で、グリフィンに恨みを持つ武装勢力とくれば、PMCしかいない。PMCは現代における花形職業だが、この辺りの地域ではグリフィンに殆どのシェアを持ってかれているからな』

 

 

 淀みなく流れてくる推理は確かに理屈の通った、聞けば誰でも納得出来る内容のもの。気付かぬウチにユリアの心臓は非常に早いペースで鼓動を刻んでゆく。

 

 

『そして現在、戦力的にグリフィン相手に戦えるPMCは四社のみ。後は消去法だ。グリフィンに恨みを持ち、かつ所属している実行部隊が人形ではなく訓練を受けた人間兵士のみで構成され、かつ大規模に部隊を展開出来る。そんなPMCは一社だけだ。────お前らフレイム・スコーピオンズ社だろ』

 

「───!」

 

 

 息を呑む彼女達。

 男は戦っている相手がフレイム・スコーピオンズだと確信している様だ。

 

 

『変電所といったライフラインを破壊したのに、病院や学校といった施設が破壊されたという情報はない。そういった分別があるあたり、確かにそこらにいるテロリストよりマトモだろうな。さもなきゃ戦争犯罪だ。

 それにナノマシンによる情報保護機能による燃焼処理もそうだ。そりゃあ徹底して情報を隠蔽するだろうな。何せフレイム・スコーピオンズ社もPMCとしては大手だ。それが居住区を攻撃しているだなんて知れたらそれこそグリフィンと全面戦争だ。おまけにこちらは先手を取られてる。報復としては十分な理由だ。

 ハロルドもそのつもりだったんだろうな。わざとお前たちを迎え入れて、お前たちを叩き潰すことで実績を得て、グリフィン内での立場を確固たるものにする。お前らはそれを利用して逆に叩き潰す選択をしたようだが、そこはハロルドがマヌケだったというだけの話だ』

 

 

 ギリっ、計画が頓挫しかけている事を叩きつけられ、食いしばった歯が軋みを立てた。

 どうする? どうやってこの男を排除する? そんな思考が頭の中をグルグル回っていく。

 

 だがその時、焦燥しているユリアの頭に冷水をぶっ掛ける様な言葉が無線機から流れてきた。

 

 

『だがそんな事はもう関係ない』

 

 

 声には、強い怒りが乗っていた。

 

 

『ひとつだけ伝えておくぞ。俺は必ずお前らをブッ潰す。首を洗って待っていろ』

 

 

 本気で自分が此方を制圧する、してみせると、そう言ってのけた男に遂に堪忍袋が限界を迎え始める。

 

 

「・・・忘れているのか? こちらには人質がいる。いかにお前たちが抵抗しようとも、人質の生殺与奪は我々が握っている。もっと理性的に考えろ。さもなくば、ヘリアントスは切り刻まれ、その肉がグリフィン本部に届くことになる」

 

 

 しかし、表向きは冷静に。怒りをそのまま乗せてしまってはいけない。

 それでも男は気にも留めず吐き捨てる様に言葉を連ねる。

 

 

『分かっているさ。だから丁重に扱えよ。彼女が死ねばこちらに遠慮をする理由がなくなる。お前らが今そうして俺にクソ生意気な口を叩けるのは、彼女がまだ生きているからだ。だが生きていたとしても許す気はない。テロリストには譲歩しない。これは国際常識だ。常識のないお前らは知らないだろうがな』

 

 

 そして、一拍溜めた。

 男はありったけのドス黒く染まった感情を声に乗せ————

 

 

『お前らが始めた戦争だ。降伏は認めない。五体満足で朝日を拝めると思うな』

 

 

 返答を待たず通信を切った。

 スピーカーからは通話終了を示すビジートーンが規則的に鳴るのみ。

 

 無線機を持った手をだらりと下ろすユリア。顔を俯かせ、無気力に立ち尽くすのみ。

 しかし段々と小刻みに肩が揺れ始めたかと思った次の瞬間、

 

 

「——————————クソがぁぁッッッッ!!!!!」

 

 

 激情のままに腹から叫び、手に持っていた無線機をフルスイングで床に叩き付けた。

 無線機は二度三度床をバウンドして止まる。だが流石に軍用の高耐久品なだけあり、見た目には特に壊れた様子は無い。

 

 無線機をぶん投げたユリアをヘリアントスはせせら笑う。その顔はざまぁみろと言わんばかりの笑み。

 

 

「フフッ・・・なんとなくお前の声で分かったよ。どうやら私をダシにした交渉は失敗した様だな。灸を据えるどころか、説教すら禄に聞く耳も持たれず切られたというところか? 流石は我が社の()()()()()だ。真にすべき事を分かっている。諸君らとは違う」

 

 

 心の底から勝ち誇った笑みを浮かべ、ユリアを見上げて優秀というフレーズを強調して言うヘリアントス。

 言外にお前達の部隊はヘッポコだと嘲笑するかの口ぶりに対し、能面を浮かべたユリアはノーモーションで椅子の足を勢いよく蹴りつけた。

 

 

「ぐぅっ!」

 

 

 当然、バランスを崩した椅子はひっくり返る。拘束されたヘリアントスごと。

 左肩を叩きつけられる形になり、痛みで思わず呻く。

 

 

「うぐっ・・・ハハッ、反論出来なくなれば直ぐ暴力か? 益々お前達の程度が知れる」

 

 

 それでもなお、ヘリアントスの眼は死んでいない。

 彼女にとって絶望的な状況であるにもかかわらず、未だ希望を持ち続けている。必ず仲間がこの混乱を解決してくれると、そう信じて。

 

 それがユリアの癪に触った。

 それがユリアの・・・我慢の限界を超えた。

 

 

「——————すぅーっ」

 

 

 深く息を吸ったユリア。

 直後、加減無しのつま先がヘリアントスの腹部にめり込んだ。

 

 

「はぐっ——————」

 

 

 横隔膜を押し込まれ、肺から無理矢理空気が押し出される。痛みとかそういう次元ではない、尋常でない苦しさが彼女を襲う。

 その様を見下ろすユリア。更に一発、腹へ突き入れる。もう一発、二発、三発、四発、一切の感情の乗っていない能面で何度も蹴りを入れる。

 

 

「がっ、がはっ、ゲホッゲホッ、うぶぅっ————」

 

 

 何度も腹部を蹴られ咳き込むヘリアントスは、直後耐え難い衝動と共に堪らず胃の中身を吐き出す。

 吐瀉物が床に散らばる。胃液特有の臭いが彼女の鼻を刺激するが、身動きも取れない状態ではせめて顔を少しでも浮かせるしかできない。

 

 そんなヘリアントスの頭、正確には頬から耳にかけての部分をユリアは上から踏みつけた。

 吐いた物に無理やり顔を押さえつけられる構図となり、痛みと臭いで苦悶が浮かぶ。その顔を見たユリアは足の力を強めていく。

 

 

「ぐぅっ・・・」

 

「誰が吐いて良いなんて言った?」

 

「うぅっ」

 

「汚ねえモンをぶち撒けやがって。立場を分かれ、ヘリアントス。レイプしてないだけありがたいと思え」

 

 

 そう言って足を離したユリアを、ヘリアントスは汚らわしい物を見るかの目で睨みつけた。

 ピクリと眉を動かすユリア。彼女は屈んでヘリアントスに視線を合わせると、右側頭部の髪を掴み言った。

 

 

「・・・なるほど。クルーガーが側近に配する女というわけだ。レイプなんて聞かされれば普通どこかで恐怖が出て目線が落ち着かなくなるものだが・・・それでもなお私を真っ直ぐ睨んできたのはお前が初めてだよ。だがな————」

 

 

 ユリアは吐瀉物の広がる床に頭を叩きつけた。

 

 

「ガッ!?」

 

「強気に抵抗の意思を示し続けるのは、我々からすれば非常に不愉快極まりないことだと覚えておくと良い」

 

 

 そう言ってヘリアントスを縛った椅子を元の姿勢に戻してやったところへ、部下の兵士がバケツ一杯の水を持ってくる。

 受け取ったユリアは身動き取れない彼女に勢いよく水をぶっ掛け、体に付いた吐瀉物を洗い流してやる。

 

 

「これで少しは身も綺麗になっただろう? ではな、また会いに来るよ」

 

 

 ユリアは徐に背を向けると、先ほど投げた無線機を拾って部屋から出ていった。

 続いて副隊長や他の兵士たちも出ていき、後には見張り役二人と冷たい水を滴らせたヘリアントスが残る。

 

 

「・・・・・・必ずお前達には鉄槌が下る。愚かしい計画を実行した事、必ず後悔するだろう」

 

 

 濡れた顔を俯かせ、誰にも聞こえない小声で彼女は呟いた。

 

 

 

 -----

 

 

 

「隊長、ちょっとついて来てくれないか? 話したいことがある」

 

 

 煮えきらぬ怒りを抱え、殺気を振りまきながらツカツカ歩くユリアを、一歩後ろに付く副隊長が呼び止めた。

 振り向くと、彼は親指で屋上へ通ずる階段を後ろ向きに示す。屋上に用がある、ということなのだろう。

 

 彼の示す用事に思い至ったユリアは苦い顔になる。が、思った所で現実が変わるわけもない。二人は先程と前後入れ替わって階段を上ってゆく。その時、副隊長が徐に口を開いた。ユリア以外に聞こえないよう、小さな声で。

 

 

「隊長。・・・あまり言いたかないが、このままだと作戦は失敗する。奥の手を立ち上げておくべきだろう」

 

「・・・あぁ、そうだな」

 

 

 考えてもない、そもそも起こるはずの無かった多くの仲間の死に、内心参っていたのはユリアだけじゃない。彼の声にも、悔しさや散った仲間への悲しみといった感情が少しだけ現れていた。

 しかし、それでも判断能力は失われていない。理性的に感情に流される事無く最後まで戦い抜く、その意思と共に彼は提言した。例え、この先に待ち受ける結果が負け戦であろうとも。

 

 

「隊長は万一に備えて脱出の用意を。恐らくそう掛からない内に此処もバレる。敵が来た時の迎撃は俺が引き受けよう。命に換えてもお前を逃してやる」

 

「・・・!」

 

 

 決死の時間稼ぎ。残された者はほぼ間違いなく死ぬ。それを分かって事実上の囮を引き受けると宣言した副隊長。

 

 

「何かあった時にって持ち込んどいて良かったな。アレが俺の死に装束になるのはなんともビミョーな気分だが。ハッハッハ」

 

「なんっ・・・笑いながら言うことか!」

 

 

 笑いながらそんなことを言ってのける彼に言葉が出ないユリア。だが、話してる間に気付けば二人は屋上にいた。そこには一つ、茶色に塗られた小型のコンテナが置かれている。一見それはどこにでもありそうな一般的なモノ。所々サビもあって、使い古されたようにも見える。違和感があるとすれば、ビルの屋上などという高所にある物ではないことか。

 

 副隊長は懐から取り出した端末を引き戸の取っ手にかざす。すると手動式の筈がなんと、引き戸のロックが一人でに解除される。彼は取っ手を持ち、金属の擦れる耳障りな音と共に観音開きの戸を開けた。

 

 コンテナの中は、外装とは全く異なるラボラトリーの様な内装が設えられている。真っ白な壁面に所狭しと並んだ何台ものコンピューター、そしてそれらの奥に人型の巨体が鎮座していた。

 

『Armored Security Trooper』通称A.S.Tと呼ばれる、装甲搭載型のパワードスーツである。

 ダークグレーに塗られた装甲が特徴で、右腕に機関銃、左腕には装甲シールドを構えるのが基本的な使い方。

 操縦者は背面のハッチを開けて中に入り、全身をこの鎧に身を包んだ状態で敵と交戦する。

 

 対歩兵戦においては大きな戦力となる鎧。しかしそれでも、形勢逆転するほどの力は備わっていない。

 各PMCに課せられた保有戦力の協定により、実はこのスーツの装甲は見た目ほど厚くはない。比較的近距離、主に歩兵戦での間合いから7.62mm弾クラスの弾を撃ち込めば、少しずつではあるが削りとれる程度。当然、それより威力の大きい弾を撃ち込まれれば更にダメージは大きくなる。そんな兵器だ。

 

 無論、機関砲に強固なシールドを装備しているので、歩兵相手ならそれでも十分な戦力になるだろう。

 それでも彼女達が一機しか持ってこなかったのは、一機ごとのコストが高いから。何機も持ち込む事は出来なかったのだ。

 

 無事に制圧出来ればそれで良し。しかし万が一失敗した時、作戦上の重要人物を脱出させる為の奥の手として、此処に持ち込まれていた。

 

 劣勢に追い込まれた現状、もう既に当初想定していた流れは破綻している。最悪の事態を突き進む真っ只中であり、いよいよ手段を選んでる場合ではなくなっていた。

 

 

「まさか出番が来るとは思っちゃいなかったが・・・これもあの”密使(エージェント)”の寄越したツールのおかげだな」

 

「このデカブツが懐に入るほどの小さな媒体に仕舞い込めるとはな。戦場に革命が起こる大発明だ。しかし、何処からこんな技術を持ってきたのか・・・出処を思うと背筋に嫌な汗が流れそうだ」

 

 

 二人の脳裏に浮かぶのは、ダークグレーのスーツに身を包んだあるエージェントの姿。アダムの"協力者"の部下を名乗った彼女は、ユリア達が見たこともない画期的なツールを使って物資の密搬入をサポートしていた。

 ユリアの言う通り、仮に普及すれば兵站において革命的な変化が戦場に齎されるだろう。食料、水、弾薬、兵器、その他あらゆる物資を収納することが出来て、取り出す事も出来る。残りの携行物資を気にしなくて良いという極めて大きなメリットを齎す道具、軍事力を持つ立場からすれば喉から手が出る程の技術そのものである。

 詳細は教えてもらえなかったが、正直なところエージェントを殺してでも獲得したい技術ではあった。無論、計画の遂行を第一にしていた為、そのような()()()()()はしなかったが。

 

 ユリアの疑問も尤もだと頷き返した上で、副隊長はコンソールに手を置きシステムを立ち上げた。

 

 

「・・・さぁてな。それも気になる所だが、気にして考える時間は俺たちには無いだろう。さぁ隊長。せめて最悪の最悪を辿らない様に、お互いの仕事に取り掛かろう」

 

「・・・あぁ。任せたよ、副隊長」

 

 

 


 

 

 

 C小隊の援護を終えた俺たちは再びバイクに跨り、R20地区を9番ストリートに向けて走っている。まだ援護が必要なのがニ部隊あり、その一つのD小隊のもとへ向かっていた。

 

 

『現在、D小隊は民間人16名を守りながら商業ビルの一階部分にて籠城戦をしています。敵の装備や練度もあり、とても不利な形勢に立たされている状況です』

 

「そりゃSCAR、しかも7.62mm型持った実力者が相手じゃな・・・」

 

 

 ナビゲーターに次の目的地、D小隊と敵との現在の戦況を尋ねるとこのような返答があった。

 

 7.62mm弾の威力を考えれば、一般の建物に使われる壁や柱の素材は弾を防ぐ盾にするには強度が心許ない。ましてや、民間人を守りながらじゃなおさら戦いにくいだろう。籠城戦ってことは建物の周囲を囲まれてるワケで、下手したら裏口から忍び込まれたりするかもしれない。まぁ、ジリジリヤバくなってきてる状態だ。

 

 D小隊が今の今まで持ち堪えてるって事は、恐らくは補機(ダミー)を持ち込めてたのと、単に敵がジワジワ攻める方針で削っていってたから。だから主機(メイン)5人の少数戦力でも抗えていた。いや、抗わせてくれてたっていうべきかな。

 だがここに来て俺達やブリッツ達が少しずつ戦況の優勢を取り戻しつつある。そろそろ敵が手加減無しにぶっ潰す方に切り替えておかしくない。ったく、忙しいったらありゃしねえ・・・ってか。

 

 目の前に広がった光景に、俺はバイクをドリフトさせて斜めに停めた。

 

 

「ぐっちゃぐちゃだねぇ・・・バイク通れるスペースすら無いよ」

 

「二人とも覚えとけ。自分だけ我先に車で逃げようとするとこうなる。幾つ連鎖したかも分からない多重事故の完成だ」

 

「オーナーの本性がよく透けて見えますわね」

 

 

 そう。現場へ向かうのに一番手っ取り早い大通りだが、こちらも8番ストリートの様に多数の車がゴチャゴチャにぶつかりあってどうしようも無い状態になっている。

 それこそバイクが通る隙間すらまばらで、いっそ走って行ったほうが早いレベルの事故現場である。

 しかもオカマを掘ったり進路を塞ぐ形で止まっているのは、大半が見たことある高級車ブランドの車ばかり。レクスヴァルト・クラウンやカレラ・フェルディナンドまである。

 

 一方で商用のバンだったり低価格普及帯の車は、ぶつけられた側だったり出来る限り路肩に寄せようとしてるものが比較的多く見受けられる辺り、スケアクロウの隠れてもない皮肉がより際立って頭に残る。

 

 

「しゃあない。此処からは歩いて・・・ん?」

 

 

 その時。段々こちらにローター音が近付いて来るのに気付く。

 すぐさま端末を取り出し、ここから一番近いヘリを探してナビゲーターにコールする。

 

 

「ナビゲーター、俺達から一番近いスレイプニルさんをこっちに寄越してくれないか? 突然で悪いが、彼に現場へのデリバリーを頼みたい。あとティナ、命綱」

 

「あいっさ」

 

 

 俺のやろうとしてる事を察したティナはストレージから再びロープを取り出し、俺に密着する形で腰のあたりで縛り始める。

 

 

『了解しました。到着まであと48秒程です。着陸地点をマークして下s』

 

「いや、低速で頭の上飛んでくれりゃ良い。勝手にこっちで掴まるから」

 

『ちょっと待てアンタ。一体俺の相棒になにしようってんだ?』

 

 

 無線に割り込んで来たのは、先程一瞬だけ聞いた男の声。男のインカム越しにローター音が薄っすら聞こえる為、彼がパイロットのスレイプニルで間違いない。

 

 

「気にしなくて良い。便利なフック掛けてぶら下がるだけだ。重量は大人二人分」

 

『ああん??』

 

 

 向こうはグラップリングビームを知らないため、こちらが一体何を求めてるのかを量りかねている様だ。

 するとスケアクロウ、何を思ったか俺にチラリ目をやると突然ヘリの方へ飛んでいってしまう。

 

 程なく、スレイプニルの驚愕に満ちた声と、聞き慣れた相棒による脅迫がスピーカーから流れてきた。

 

 

『うぉっ!!? 俺の相棒の真横にゴーストが張り付いてる!?』

 

『失礼な。とにかく、ナビゲーター経由でそちらのマップに通過地点をマークしましたの。高度15m-20mで低速で通過していって下さる? さもないと・・・ローターの羽を私の重力操作で無理矢理捻じ曲げますわよ?』

 

『なんてこと言いやがる!?』

 

 

 なんてこと言ってるんだこの子は。まぁ・・・1t超えのオンボロ持ち上げられる位だし、羽捻じ曲げるくらい大したことじゃないだろうが。

 っていうか、ビル風で気流が安定しない環境だってのに高度の指定幅狭えな。さっきのフライト見る感じ多分問題なくこなせそうな気はするが。

 

 

「止めてやれ。とにかくそういう訳でMr.スレイプニル?」

 

『ん?』

 

「傾いたら彼女が支えられる。安心して来てくれ」

 

『どこに安心すりゃ良いんだって感じだが』

 

 

 そう言って深い溜め息を溢すスレイプニル。

 だが続く言葉は半ばヤケクソ混じりのOKだった。

 

 

『あーもうっ、分ぁったよ! 一回しかパスしないからしっかり掴まれよ!!』

 

「OK! 切り替えが早くて話の通じる男はモテるぜ!」

 

『やかましいわっ!』

 

 

 程なくヘリの煩いローター音と共に照明が俺たちに照らされる。

 ヘリは俺たちの位置を把握すると直ぐに照明をズラし、同時にこちらの直上を飛行するルートに進路を修正し向かってきた。

 

 

「結び終わったよ!」

 

「よっしゃ、行くぞ!」

 

 

 俺は取り出しておいたグラップリングビームの射出口をヘリの脚に向け、

 

 

「揺れるぞスレイプニル」

 

『ああん??』

 

 

 引き金を引き絞った。

 次の瞬間、メーザーで出来たロープが一直線に撃ち出され、脚部に触れるとグルグル回り込んで絡みついた。

 今は射出段階のため、限界距離までビームは伸び続ける。そこから引き絞った引き金を戻す事によって、本体側がメーザーを巻き取る様に動く。つまりどうなるかというと————

 

 

「飛ぶぞ!」

 

「にゃっほーーー!!」

 

『おおっと!!?』

 

 

 ヘリを支点に俺たちを持ち上げようとする力が働くため、必然的にヘリは一瞬傾くことになる。

 しかしそこはプロのパイロット。一瞬驚いた反応を見せるも、直ぐに体勢を立て直してみせた。

 

 一瞬の間で乱暴な搭乗を果たした俺達を、スレイプニルはチラリ後ろを振り返ったのち腹から叫んだ。

 

 

『こんな乗り方したヤツは初めてだよっっ!!』

 

「そりゃ良かったな。このままD小隊のトコへ向かってくれ」

 

『スルー!!?』ガビーン

 

 

 その後はインカムからブツブツとお小言が聞こえてきたが、気持ちも分からんこともないのでとりあえず触れないでおく。

 機体はD小隊のいる9番ストリートへ真っ直ぐ進む。その間にスケアクロウにハッチを開けてもらって機体に乗り込んだ俺達は、今度はガンシップのガンナーとしてサポートに入る事にする。

 機体両サイドに取り付けられたドアガンを使い、上空からの航空支援という形でサポートに入るつもりだ。

 

 

『二人がそのポジションにつくなら、私は対空火器の迎撃を担当しましょう』

 

「頼んだ。さっきみたいにRPG持ったのが紛れてるとも分からねえからな。アンタもそれで良いだろ? Mr.スレイプニル」

 

『もう好きにしてくれ。俺と地上部隊が落とされなきゃ良いさ』

 

「あい分かった。任せとけ」

 

『・・・・・・不安しかねえよ』ボソッ

 

 

 ピクリ、聞こえてきた小声に目尻が一瞬ヒクついたが、信頼されてないのなら結果を出して信じさせるだけである。

 

 そうこうしてる内にあっという間に目的地上空へ接近したヘリ。

 スイッチの切り替わったスレイプニルが、インカム越しに俺達に呼び掛ける。

 

 

『さぁ、仕事の時間だ。お手並み拝見といこうか?』

 

「・・・フッ、ならしっかり目かっ開いて見届けなっ!」




 最近ドルフロはログインとデイリーだけ回す感じだから全然レベルが上がらない()

 っていうか、シビックタイプRも欲しいけどポルシェのパナメーラも欲しい。宝くじ買いまくってますが当たりません()。

 作者の愚痴と欲求はともかくとして、そろそろ終わりに向かいつつあります本コラボ。
 よろしければ引き続き楽しみに待って下さると幸いです。
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