裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 前話でテレポしてからのお話・・・そしてコラボ元の喫茶鉄血にバトンパスするための謂わば岐路です。
 なので3000文字いかない程の短文となります。

 追記:投稿位置を思いっきり間違ってたので投稿し直しました(滝汗)


-SP65:06-epilogue 01

 

 

 

 エドワード・ヴァーレンタイン中将の犯した一件は、私たちの心に煮え切らなさを残す結果に終わりました。

 当人は自身の辿る運命を予め決意していたらしく、後日彼が別名義で所有していた地区内の廃ビルにて拳銃で自決していたのが、カーター将軍の組織した軍の監査部隊によって発見されたそうです。

 

 

 愛を誓い合った大切な人を、暴走していたとはいえ普及初期の戦術人形に奪われたヴァーレンタイン中将。例のテロ事件以来穏健的に反人形思想を主張してきた彼ですが、そこにきて今度は人形(スケアクロウ)に雇われた護衛(レイ)に自身の子供達を殺害されてしまった。

 無論、武装した過激派の人権団体に所属していた以上、状況次第では子供たちが命を落とす事もおそらく理解していたはず。

 妻を殺した人形を憎みつつもあくまで穏健派であった父と、母を殺した人形を憎むあまり過激派に回った子供達。本来ならばそれを、場合によっては力を行使してでも律するのは他でもない中将自身の役目だったのでしょうが、親が子供を手に掛けるなんてそうそう出来る事ではありません。

 後の捜査で、ヴァーレンタインから子供達に何かをするような事は無かった事が判明しましたが、逆に言えば”何もしない”事こそが、せめてもの血の繋がった子供達への彼の親心であったのかもしれません。それが良いか悪いかは別として・・・。

 

 複雑な関係ではあっても、子を想う親の心は持っていた中将。血を分けた子が死んだ、ましてや誰かに殺されたとなればその心中は如何程か。

 子を殺したのが『自らが憎む人形』を護る存在であれば・・・これほどまでに怒り狂うのも無理はありません。彼の怒りもまた、尤もなものだと言えるでしょう。

 

 しかし、故に誰かを傷つけて良い理由には決して成り得ません。怒り、憎しみ、恨み、そうした憎悪の果てに”力”で誰かを傷付けても、一体その後に何が残るのでしょうか?

 ・・・憎悪の果てに”力”を振るったとして、それはまた新たな憎悪を生み出すだけ。憎しみは連鎖する。どんどん繋がって、どんどん大きくなる。負の連鎖にしかならないのです。

 人間はそれを歴史の中で幾度も繰り返した筈なのに、どうしてそれを理解しようとしないのか? いいえ、理解していても抑えきれないのでしょうか?

 

 私は・・・人間の住む街で喫茶店を営み、ある程度は人の心も分かるようになってきたと自負していました。

 ですが、こんなに悲しい事件に身内が巻き込まれ、私の心は数日経った今もグチャグチャに乱されています。

 

 今なお必死に看病を続けるスケアクロウを見るたびに、尚更私の心は混迷の渦に包まれるのですーー

 

 

 

 -----

 

 

 

「・・・レイ、朝ですよ」

 

 

 小鳥のさえずりがどこかから聞こえて来る、新緑の美しいある日の朝。スケアクロウは今日もまたカーテンを開け、部屋に朝の光を注ぎ込ませた。

 だが、ベッドで眠る人物からの返事はない。部屋に置かれた機械の電子音が規則的に鳴り続けるだけ。

 

 

 ここは、喫茶鉄血のプライベートスペースにある一室。

 あの日、代理人の機転(テレポート)で間一髪爆発から逃げ(おお)せる事のできたスケアクロウたち。だが、本職の軍人たちから全身にリンチを受けていたレイの体は、もうすぐ命が消え失せてしまうほどにボロボロになっていた。

 救急車を待つ時間すらも惜しい。しかもレイの体をここから動かすのも非常に高いリスクが伴う。それに気付いた代理人が早急に地区にある病院の医師たちをテレポートで運び、店内を手術室にして緊急オペを実施した。

 かなりの量の失血に加え内臓自体にも大きなダメージがあったため、止むを得ず一部の臓器を自律人形用の人工臓器と交換するなど、輸血と並行して長い時間を掛け文字通りの大手術を行った結果、レイは辛うじて一命を取り留めた。

 

 しかし、オペが終わってから数日経った今も、レイの目が開いた事はない。

 

 

 

『なんとか現時点で一命を取り留める事は出来ましたが、正直に申し上げてダメージが甚大であると言わざるを得ません。今は容体こそ安定はしていますが、予断を許さない状況に変わりはありません。もしかしたらこのまま目を覚まさず、植物状態のままの可能性も・・・残念ですが否定できません』

 

 

 

 執刀医の口からそんな言葉が出た瞬間、スケアクロウは大きく崩れ落ちてしまった。

 自分を守ろうとしてくれたが故にこんな大怪我をさせてしまった事への申し訳なさ、悔いても悔やみきれない後悔の念、そして。

 

 

(もう二度と、レイの声を聞く事が出来ないのですか・・・?)

 

 

 想いを自覚し、伝えようとしていた矢先に襲いかかった絶望に、彼女の心も打ちのめされていた。

 だが、次いで医師から放たれた言葉に、スケアクロウは一つの決意を固める事となった。

 

 

 

『・・・これは医師として提示する、皆さんが選べる選択肢の一つだと考えてください。

 彼が植物状態のまま人生を終えるのであれば、長い年月を機械に繋いだまま過ごさせるのではなく・・・彼を”安楽死”させる、それも一つの選択だと考えます』

 

『!!?』

 

 

 安楽死という単語に、その場にいた全員の顔が驚愕に染まる。

 誰もが思いもしない決断の一つ。傷付いた体で意識のないままにし続けるのならば、その苦しみから解き放つことも出来ると。命に携わる者として、一つの案を提示したのだ。

 

 

『機械による延命措置をしなければ自身の生命活動もまともに維持出来ない状態。それが彼の現状です。人形である貴方がたにはイメージし辛いとは思いますが、機械に繋がれ機械に生かされている事が、果たして本当に当人の望む生き方なのか? 明確な答えの存在しない、とても難しい医療の命題の一つに貴方がたは直面しているのです。

 人によって考え方は違います。安楽死を望む人もいれば、どんな形でも良いから命を繋ぎ留めて欲しいという人もいるでしょう。

 ですが今の彼の状態はある種見方を変えれば、消え行こうとしている命を他者によって無理やり()()()()()()()()()』とも取れるのです』

 

『今この場で機械の電源を落とせば、彼はやがて静かに息を引き取るでしょう。意識のないまま永遠の眠りにつくことになりましょう。・・・あくまで機械に繋がれた状態ではなく、ヒトとして自然な姿で最期を迎えたい。そう考え、そう望む方も現実に多くいらっしゃることは理解してください』

 

『もちろん、延命措置を続けるというのもまた一つの選択肢です。ですがその場合、彼の体に床擦れが出来るのを防ぐために、毎日毎日ずっと彼に寄り添い続けなくてはなりません。目を開けない、声も出さない、眠ったままの彼の介抱を続けるというのは、想像するのも苦しくなるほど辛いものですよ。そして労が報われることなく、ある日突然彼が消えてしまうかもしれない・・・。

 

 スケアクロウさん、たとえそうなってでも彼に寄り添い続けるという”覚悟”はありますか?』

 

 

 




 二人がこの後どんな結末を迎えるのかは・・・
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