裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
20/03/04 本編最新話と初期の内容の矛盾を解消するため、本文を一部編集・追記。
ーーどうやらスケアクロウさん、俺のことを”自分をお買い求めになられた”オーナー様であると認識したらしいーー
そのことに理解が及んだ俺は焦った。
何故なら、彼女を含む鉄血のハイエンドモデルのお値段は財布に結構重く響く額だから。
鉄血工造は彼女らハイエンドモデル以外にも、人型で言えば『Vespid』や『Ripper』といった武器を使って戦う人形や、人型に拘らないなら『Dinergate』や『Scout』に『Prowler』といった『
一般的な下級人形ですらも上手く遣り繰りしなきゃ買えないってのに、ましてやハイエンドモデルともなれば時間を掛けて計画的に資金を運用していかないと購入に踏み切る事は無理。グリフィン&クルーガーみたいな大手のPMCでも導入には中々勇気がいるだろう。もちろん、それだけの額を支払うだけの確かな性能を彼女らは持ってるけどな。
さて諸君らに問おう。
決済をしてないのにも拘らず人形のAIが俺をオーナーと誤認している。もしこのまま付いてこられちゃったら、俺は事実上まだお買い上げされていない超高額な商品をそのまま連れ回すことになる。
・・・もしバレたら一体幾ら請求されんのよ。
だからあの手この手で必死こいて説得を試みる。
「あのな、俺は工場からパクられたキミを回収しに来ただけの雇われ人。キミをお買い上げしたオーナーではないし、ましてやどこぞの部隊を指揮する軍人でもないの。どぅーゆーあんだすたん?」
「ですが、私たち鉄血工造の戦術人形たちは、AIの起動が掛けられた時に最初に目の前にいる人間がオーナーであるとインプットされていますが?」
ガスマスクを付けてても分かる美人さんが、人差し指を頬骨に当てつつ無表情のままコテンと首をかしげる。
それがわたくしどもの常識なのですと言わんばかりの真顔だが、そう言われたって事実そうなんだからしゃあないだろうよ。
「んなこと言われても、俺はキミを買い上げたオーナーじゃないの。キミがいまなんでこの状況にいるのかを詳しく経緯を説明してあげるから、ちゃんと理解してね」
「では聞かせていただきましょう」
それはそれはもう懇切丁寧に、こうなるまでの経緯を教えてやる。
一連の説明を聞いた彼女はというと目を瞑り、探偵みたいに右手を口に当てて何やら深く考え始めた。ガスマスク越しに指を当てて考え込む姿を見て少しばかしのシュールさを感じる。
やがて頭の中で考えがまとまったのか、目を開けた彼女は真っ直ぐに俺に目を合わせて・・・
「つまり、本社の方に貴方をオーナーにするよう働きかければ問題ないという事ですわね」
「You何言っちゃってんの???」
どういう理屈でそういう結論になったんだかまるで訳解らんぞ。
この反応を見るにここで押し問答してても埒が明かないと判断した俺は、とりあえず彼女について来るように促す。
「とにかく、俺の仕事はキミを無事に鉄血工造の工場まで送り届ける事だからついて来て。それと俺はキミのオーナーじゃない。オーケイ?」
「・・・分かりましたわ。”とりあえず”は工場の方までエスコートして下さるかしら?」
「あいよ」
”とりあえず”という不穏な単語が付いてたけど気にしない。気にしないったら気にしない。つついたら特大の薮蛇になりそうだから。
そういうわけで彼女をなんとか無事に鉄血の工場まで送り届け、引渡しの際に現れた担当者にも彼女を発見した際の出来事を伝えておく。
そりゃあね? スケアクロウが俺についてきてくれるならきっと俺の心の癒しになってくれるだろうなぁとか下心も湧くもんだが、さっきも言った通り俺が彼女をお買い上げしようとすりゃ懐に重すぎるダメージが来る。長い期間をローン返済の鎖で縛るか、稼ぎの殆どを持ってく代わりに縛られる期間は短めにするか、そのどちらかを選ばなくてはならなくなる。
そうした理由があるため、仕事のパートナーとして
故にこの件に関してはお互いきれいさっぱり解決した事として始末し、鉄血には彼女の記憶を抹消してもらって、高級ラインの商品としてまだ見ぬオーナーのためにしばらく待ってもらう方がお互いに面倒なく事を終えられるはずだと。
その旨を担当者側にしっかりとお願いし、俺は次の仕事を受けに移動した・・・はずなんだがーー
どうやら鉄血は彼女の記憶の削除をしなかったらしい。おかげでなーんでか知らないけど、俺が仕事に行く先々で必ず出会っては俺の仕事の補助をしてくれる。ある時はチンピラのアジトの奇襲に同行したり、ある時は”お荷物”を運ぶお仕事の護衛役だったり。
正直申し上げるとスケアクロウさんって流石ね!って拍手したい。
奇襲にしても護衛にしても、自分の周囲を飛び回るビットを駆使して的確な援護をしてくれて、その場その場に応じた出来うる最高のクオリティでサポートが入るからものスゴく助かってる。
流石ハイエンドモデルを襲名するだけはある・・・。ソロでやってた時とは効率が全然違いすぎて涙が出そう。
そんなハイスペックサポーターな彼女は現在、俺の隣であのモノトーンの衣装のまま俺と同じように伏せている。
・・・おいおい、せっかくの衣装が汚れちゃうじゃないか。髪も後ろ結びとかにすれば良いのにデフォルトのツインテールのままだから、クルクルロールしてる部分が土に付いちゃってるし。
本人は自分の服や髪が汚れる事を気にしたそぶりは見せないものの、なんだか俺が自分の仕事に付き合わせて汚してるみたいで少々申し訳無さを覚える。
「風向きがまた少し変わりましたわ。ところで、さっきから何を考えてらっしゃいますの?」
「ん? なんでスケアクロウはいつも俺のお手伝いをしてくれるんだろうなぁと思って」
「いやですわ? 私にそんな恥ずかしいことを聞くなんて・・・」
「・・・さいでっか」
少なくとも現状は答えを教えてくれるつもりはないらしい。てか恥ずかしいことって何よ? 顔があまりにも真顔そのまんまで、全然恥ずかしがってる様に見えないんですが。
まあ、仕事を手伝ってくれてるお陰でなんだかんだ能率はすげえ上がってるんだけど、そもそもこの問題の一番やべえところはソコじゃないのよね。
「・・・俺、これから本当にエラい額背負わされるんじゃねえの?」
思わずボソッと呟く。
「責任はちゃんと取ってくださいまし」
「You何言っちゃってんの!? っと、敵さんの動きが予想より早いな。サポート頼む」
「承りましたわ」
視界に敵さんの車列が入ったのを見て瞬時に仕事モードに切り替える。
正規軍が掴んでいた当初の通過予定時刻より30分も早い。単純に予定よりも順調なだけなのか、それとも・・・。
「よほど急がなきゃならない
「貴方が確実に当てられる射程内まで残り2.5km。準備を」
「サンキュ」
グリップに右手を掛け、引き金のすぐそばに人差し指を添えながらスコープを覗く。
さっきから風向きがちょくちょく変わってきている様だが、車の速度は見たところおよそ70km/h前後。最長の射程内まではあと30秒弱で来る。
「目標地点周囲の風向きが動きましたわ! 左2クリック、下1クリック修正を!」
「・・・流石だスケアクロウ。おかげで最高の条件で一発目を撃てる!!」
的確な指示のおかげで、スコープの調整を終えてちょうどいいタイミングでターゲットを捉える事ができた俺は、息を止めて静かに引き金を引く。
放たれた銃弾は彼女が観測した情報より得た”読み”通りの弾道を通り、目標とするトラックの左前輪を撃ち抜いた。
瞬間的にバーストしたタイヤはあっと言う間にホイールが地面に直接触れる状態になり、ドライバーが他の三輪で制御する事が出来なかったのか、スピンしたかと思えば勢いのままに前走車を巻き込む形で横転する。
「・・・第一段階完了。次、味方部隊にとって危険となる敵兵の行動阻止に移るぞ。引き続きよろしく」
「言われなくてもすでに
「OK」
敵の奇襲に気付いた連中は次々と車を止め、ライフルを構えながらワラワラと出てくる。
部隊の纏っている服装や使用している武器から見るに、どうやら数あるテロ組織の中でも相当規模のでかい一団のようだ。
正規軍も潜伏していたところから次々と姿を現し、正規軍対テロ組織の戦闘が始まった。
俺たちは引き続きスケアクロウの観測を元に、味方を狙う敵兵を片っ端から脚を狙撃して動きを封じていく。原則殺害はダメっていう正規軍からの無茶なオーダーだが、やはり観測してくれる人間が横にいて狙撃に集中できるってのは相当にデカイ。次から次へと照準すべきポイントを伝えられては狙撃、このルーチンだけに集中できるのはスゴく助かる。ましてや彼女の観測が本当に的確にポイントを突いた情報なのも尚更役立っている。
やがて正規軍が圧倒的優勢に立ったところで敵部隊が両手を上げて投降、今回の作戦も無事に終了したらしい。
正規軍と周波数を合わせた無線機より、指揮官殿からお仕事終了のお声が掛かる。
『君の狙撃により、我が隊は極めて少ない損耗率で今回の作戦を終えることが出来た。的確な支援攻撃に感謝する。所定のルートを通って帰投してくれたまえ。また機会があればよろしく頼むよ』
「こちらこそどうも。その際は是非とも頼みます。んじゃこれから撤収準備をするんで、国家機密が云々に関わる事を始めるのはもうちょっとだけ待っててください」
『すまないな。心遣い痛み入る』
短いやり取りを交わして無線を切る。
立ち上がって体をほぐしたのち、直ちに撤収するべく持ってきた狙撃兵フルセットをチャチャッとしまう。
ここまでの経過時間およそ5分も掛かってないだろう。流石にもう慣れたもんだ。
本来なら銃の掃除といった軽いメンテ位はこの場でしておきたいが、俺がここでゆっくり時間を掛けてると正規軍が次の仕事に進めないからな。今回は省略だ。
「お待たせしました。それじゃお先に失礼します」
『うむ。また会えるのを楽しみにしているよ』
指揮官殿との交信が今度こそ終わると、狙撃道具を近くに止めてたオンボロのサイドカーに乗っけて発進する。このご時世ガソリン代は馬鹿になんねえ位に高いが、それでも4輪を動かすよりはまた安く済む。その代わり操作をミスると4輪より死ぬ確率は高いんだけどな。
スケアクロウはというと、自分の体に搭載された機能をフル活用して”フヨフヨ浮きながら”俺の単車について来てる。んなことしてエネルギー使うならサイドカーに乗りゃいいのに。荷物にプラスで人が乗ってもそんなに燃費は変わらないし。
そう思いながら単車を走らせていると、スケアクロウが俺のすぐ近くまでフヨフヨ近づいてきた。
ああ、そういや仕事終わりのアレをやってなかったな。ってことは今日はこれでお別れか。
「お疲れさん。今日も助かったぜ」
「どういたしまして、ですわ」
走りながらで危ないのは承知の上だがまあ許せ。
左手に握りこぶしを作って腕を真っ直ぐ伸ばす。すると彼女もそれにコツンと当てるように自分の拳を当てる。
この動き、俺が他の人間と一時的にチームを組んだ際に仕事終わりにやってるのをつい癖でスケアクロウにもやっちまったのが始まりなんだが、初めて以降は彼女の方からやってくれるから多分気に入ってくれたんだろう。これが、俺たちの仕事が終わったときのルーチンってやつさ。
そしてこれが終わると俺たちはお別れだ。
俺は真っ直ぐ寝ぐらの方へ、彼女はどこか俺の知らぬ場所へ(まあ多分鉄血の工場だとは思うが)フヨフヨ飛んで、それぞれの家へと帰って行くのだ。
・・・俺って、段々スケアクロウがいないと仕事が出来ないヤツになるんじゃないか???
カカシさん実は超優秀なんです(当たり前)
P90に名前を付けるとしたら?
-
そのまま『P90』でいんじゃね?
-
『ナインティ』でいんじゃない?
-
ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
-
いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
-
良いアイデアがあるから感想に書くぜ