裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 タイトルにある通り、いろいろ様の『喫茶鉄血(https://syosetu.org/novel/178267/)』とのコラボレーションです。

 先日自分の無理なお願いを聞き入れて、此方のレイ(の並行世界の同一人物)を出していただいたので、そのお礼という訳じゃあないですがお礼参りという事で・・・。


 ちなみに、番外編なので本編との直接のつながりはありません。
 オンボロがある・スケアクロウは購入済み・ブラックレイの身体能力は健在という設定だけ踏まえたある種のIFストーリーという感じで、どうぞよろしくお願いします汗


-SP47:01-エージェントさん貴方なにやってんのよ?え?喫茶店?は?それこそなんで??

 

 

「・・・ここ、どこだよ」

 

 

 寝ぐらで寝ていたはずの俺たちは、気付くと周囲にある程度の緑がある場所に横たわっていた。スケアクロウは俺のそばで、そして俺の愛車のオンボロも近くに駐機してある。

 誰かが何かの目的のため、俺たちが眠っている間に運び出してここにほっ放った。そうとしか思えないこの状況に頭が追いつかない。しかも俺もスケアクロウも、赤の他人が近づいてくる気配には極めて敏感なはずなのだ。

 にも拘わらず全く悟らせる事なくこんな所に放り出せたこと、もしこれが”プロ”による実行だとするなら、俺たちは一気に警戒度を引き上げなきゃならない。

 

 

 とにかく今必要なのは情報だ。幸い、スケアクロウは旧文明でかつて打ち上げられた衛星とリンクし、自身の位置情報を割り出す機能を持っている。今回はその力を借りて、今自分がどこにいるのかを手早く調べてもらおう。

 それには彼女を起こさないと。

 

 

「起きろ、起きろスケアクロウ」

 

「んぅ・・・?」

 

 

 寝ぼけ眼をショボつかせる彼女だが、周囲が明らかに寝ぐらの自室でない事を朧げに悟った瞬間ハッと眼を見開く。

 

 

「こ、ここはっ!?」

 

「分からん。気付いたらここにいた。なんでこんな所にいるのかも、どうやって移動してきたのかも、何もわからないんだ。

 とにかく、キミのGPSユニットを使ってまずは位置情報を割り出そう。その間、俺は周囲を警戒する」

 

「わ、分かりました」

 

 

 どういうわけか、着ていたはずの寝間着ではなく仕事で着る服装をしていた俺たち。おまけに腰のクリップにはP90まで備え付けているという充実っぷりに、これは実はリアルな感触をも表現した一種の夢なんじゃないかとすら思えてしまう。その方がよっぽどこの珍妙な現象にも説明も付くしな。

 

 プラスチック製の半透明マガジンにはしっかり5.7mm弾が満タンに詰まってるのが確認できる。いつものように、銃口にはサプレッサーも付いてという選り取り見取り。・・・本当、気味が悪いな。

 

 

「・・・GPSユニットに応答がありましたわ! ・・・受信した位置座標から当てはめると、ここはグリフィンが管轄するS-09地区の近くみたいですわね」

 

「S-09地区だって? ってことはコーラップス汚染がほとんど無いエリアだな。確かグリフィンが民間に居住区域を設けてた筈、地図データ持ってるか? 無きゃ端末の方で表示するけど」

 

「いえ、それには及びません。ここからだと北方向、つまり」

 

 

 あの方角ですわね、とスケアクロウが指した方向には、旧文明の名残の高速道路跡・・・と呼ぶには柱とか防音壁とか比較的綺麗な状態の高架路が伸びていた・・・うん? まさか今でも所々修復して使ってるのか? こんなご時世に?

 

 おかしいな・・・。大手PMCとはいえ、グリフィンに旧文明のインフラを修繕して使えるほどの資産は無いはず。

 それに直した所で、嫌われてるライバル企業なんかに業務妨害がてら橋桁を破壊されたりなんてしたら、それこそわざわざ多額の費用を投じたリターンが無くなる。ハイリスクローリターンなんて馬鹿馬鹿しい事、わざわざクルーガーが採るとも思えない、が・・・。

 

 

「・・・考えるのは後だな。ありがとうスケアクロウ、とりあえずそこまで向かうか」

 

「ええ」

 

 

 サイドカーに彼女を乗せ、まずは高速道路沿いにS-09地区へと北上する。

 

 

 数刻経って地区に着いた俺たちは、居住区に住まう住民全員に笑顔がある事に気付く。大人も子供も関係なく、それこそ警邏をしていたグリフィンの人形でさえも、まるで心から平和の幸せを感じているような、そんな笑顔を浮かべていたのだ。

 

 

「・・・なあスケアクロウ。子供はともかく、大人までこうして明るくしてるのを見たことあるか?」

 

「少なくとも、私の記憶では数える程度しかありませんわ」

 

「同じく。・・・とりあえず、住民に話を聞くか。いろいろと調べないといけない事が沢山ある」

 

「ですわね」

 

 

 オンボロのエンジンを止め、地区入り口にある案内板も兼ねた地図を見る。どれどれ、ここからしばらくメインストリートをまっすぐ進むとグリフィンの基地があって、その周囲を居住区が囲うようにしてあるわけか。アパートに喫茶店にスーパーに・・・マジか、学校に公園まであるのかよ。

 

 おかしい。さっきの高架橋もそうだが、グリフィンにここまで住環境を良くするほどの資産ってあったっけか? それとも、多少無理してでも未来への先行投資的な考えで? いずれにしてもこんな大規模に居住区を作っちまったら、それこそ手段を選ばないテロリスト達にとってグリフィンを脅かす格好の的にになりそうなもんだが・・・。

 

 

「とりあえず、この喫茶店ってところに行ってみるか。客の住民からも何かしらの話は聞けるだろうし、喫茶店の雰囲気なら落ち着いて話ができる」

 

「それが良いでしょう。この『喫茶 鉄血』という所に・・・鉄血?」

 

「うん???」

 

 

 気になる理由がもう一つ増えた。

 端末の地図データと案内板の位置からおおよその座標を算出し、案内板に書いてある道路図を当て込んで擬似カーナビにする。座標がわかってても、そこにまっすぐ一直線に進める訳じゃないからな。ぶっちゃけこの案内板も分かりやすさ重視でアバウトな道路図になってるんだろうが、それでも無いよりはマシ。

 

 というわけで再びエンジンを始動し、クリープ現象プラスほんのちょいぶかしを駆使して『喫茶 鉄血』なる店に向かっていく。

 

 って、オイオイオイなんて所にあるんだあの店は。喫茶店にたどり着くまでに指示される道がどれも狭く、クランクにS字のオンパレード。こんな道本当に通る必要があるのか? そう思い予め写真に撮っておいた案内板の画像を良く見てみると・・・。

 

 

 うん? 『穏やかで落ち着ける空間の喫茶店に向かうには、”歩いていても楽しさを感じる”趣ある道を往きましょう』だって?

 

 

 いらんがな、そういうの。道理でオンボロで行くには難しい所ばっか通ると思ったよ。今のでドッと疲れが出た・・・。

 しかし現在の場所は店までもう間もなくという地点。ここまで来て後戻りする理由もない、ゆっくりと発進する。

 

 やがて開けた所に出ると、正面に公園がある木造の建物を見つけた。座標的にはここが『喫茶 鉄血』なる喫茶店らしい。交通の邪魔にならない位置になんとかムリクリオンボロを路駐し、重厚感あふれる見た目にそぐわぬ重さの扉を開ける。

 

 

「いらっしゃいませ、ようこそ喫茶鉄血へ。お好きな席にお掛けください」

 

 

 カウンターで出迎えてくれたのは、シニョン団子にメイド服を着た女性。つまり、エージェントだった。え、えぇ・・・。

 

 

「「・・・何やってんの(ますの)??」」

 

「何って、いつも通りに仕事をしてるだけ・・・あら?」

 

 

 思わず二人揃って口をついた言葉に反応したエージェントはこれが自分の日常といった体で返答するものの、顔を上げ俺たちの顔を認識した途端眉間を寄せ怪訝そうな顔をする。

 

 俺の顔を見て、スケアクロウの顔を見て、そしてフゥっと一人納得したように一息ついて仕事に戻る・・・いや待てよいよい。

 

 

「あの、一人で納得してないで答えてくれませんかね?」

 

「ああ、それもそうですね。では突拍子もないお話になると思いますが、聞いていかれますか?」

 

 

 何に納得したのかと問えば、突拍子もない話をするとの答えが返ってきた。質問に対する回答としては成立してねえが、まあ俺が知ってるエージェントなら、この場面で無駄な話や手間の掛かることはしないだろう。

 

 

「それじゃあお願いしようか。スケアクロウも、それでいいか?」

 

「構いませんわ」

 

「では、どうぞお掛けになってください。レイさんはコーヒーで、スケアクロウはココアの方が良かったかしら?」

 

「ああ」

 

「なるべく甘めにお願いしますわ」

 

「ふふ、少々お待ちくださいな」

 

 

 去り際に浮かべたデキる女のクールな微笑み。これにコロッとやられる男は多そうだな・・・流石、サブカルに染まりまくった鉄血の技術者が作った代物だと感心する。

 コーヒーをサイフォンで抽出している最中の仕草や、沸騰しているお湯を注視している表情なども、初対面の人間は誰かから彼女は人形だとでも言われない限りまず気付けないんじゃなかろうか。

 ウロボロスの護衛の時もそう思ったが、改めて人形メーカーとしての鉄血の技術の高さを実感する。

 

 そうこうしてる内に出来上がったコーヒーとココアが置かれた。ふむふむ・・・今まで嗅いだ事のない香り、紛い物じゃない本物のコーヒー豆を使って出来たコーヒーはこんな香りがするのか。コーラップスが起こる前、人類はこれを毎日当たり前のように飲めたのだろうと考えると、なんだか無性に悔しくなるな。

 

 暖かいを超えて熱い域のコーヒーを口に含むと、ブラックの苦味の中にわずかな酸味の混じった味わいが口内を満たす。同時に伝わるコーヒーの風味、これを知ったらもう紛い物のコーヒーでは満足できなくなるだろう。

 ”落ち着ける空間”と銘打って地区入り口の案内板にも名前が乗るだけはある。素人でも分かるコーヒーの味わい、どうやらエージェント自身のバリスタの実力も確かなようだ。

 

 ちなみに俺とは真逆の甘めのココアを頼んだスケアクロウだが、彼女実は猫舌だったらしい。さっそく一口付けた途端全身でビクンとしたかと思うと、それからはひたすらふーっふーっと息を掛けて冷ましてらっしゃる。

 猫舌なのをバレたのが恥ずかしいのか、少しだけ頰を紅く染めつつ時折チラチラと見てくる。別にそんな弄ったりしないってばよ。それとも弄ってほしいっていうフリ? んーでも、弄ったらまたつーんって言われちゃいそうな気がするし。

 

 

「・・・美味いな」

 

 

 結論、スケアクロウには触れない事にした。エージェントのコーヒーに素直な感想を伝え、話の続きを促す。

 

 

「ありがとうございます。”並行世界”のレイさんにもそう言っていただけて光栄ですわ」

 

「ぶふっ、へ、並行世界だって??」

 

 

 と思った矢先にブッ込まれた”突拍子もない話”である。何? 並行世界? パラレルワールドのことか?

 あまりにストレートな流れでいきなりブッ込まれたから、思わずコーヒーを吹きそうになってしまった。大惨事にならないように抑えたから被害はないが。

 

 にしても並行世界ねぇ・・・。つぅことはだよ、俺たちは世界の垣根を越えてここに来ちまったってわけ?

 

 

「驚くのも無理はありません。ですが、貴方がたのいた世界とこの世界は確かに違うはず。そう、この世界の歴史を証明するものをお見せすれば納得できるでしょうか?」

 

「・・・それが本物って確証をどこが担保するんだ?って言いたいところだが、はぁ・・・頭が痛い。とにかく、その証明するものってヤツを見せてほしい」

 

「私も、この目で確かめさせていただきたいですわ」

 

「ええ、少々お待ちを。この世界で発行された新聞などを幾つかお持ちしますわ」

 

 

 カウンター裏、従業員専用スペースに引っ込んだエージェントを見送った俺たちは、思わず同時に大きなため息を零す。

 そもそもここに来る前にほっぽり出されたあの場所といい、一体何の力が働いてこんな目に遭ってるのか。もしや神とかいう巫山戯た存在の力でも働いてるんじゃないだろうな?

 ・・・ヤメヤメ、流石にそれは突拍子もない話の中でもさらにあり得ない話だ・・・と思いたい。ちくしょう、明確に否定できる根拠が何も見つからねえ。

 

 

「お待たせしました。お二人が最も分かりやすいのは、この日付の前後に発行された新聞でしょうか」

 

 

 エージェントから新聞を受け取る。中身はドイツ語で書かれてるな。えーっと日付は・・・コーラップスが起きた日じゃないか。

 ただ新聞自体はその日の朝刊のため、もしかしたらこれには載っていないかもしれない。次の日付の新聞の見出しを見てみる・・・は???

 

 ある一点に気付いた俺は、さらにその次の、そのまた次の日付の新聞も見出しを見る。だが内容はいたって平凡、普通の日常の中で起こる事象や政治的活動が語られているのみ。そう”至って普通の新聞の内容”しか書いてないのだ。”北蘭島事件(コーラップス)が起こった日”以降も。

 あれほどの大事件は情報統制を敷いたところで隠せる域を遥かに超えている、つまり新聞に載ってないわけがないのだ。事実、昔あの人に見せてもらった新聞見出しのスクラップにはこの事件のことが大々的に書かれていたのだから。

 

 なのに、今読んでいる新聞には北蘭島のべの字もありはしない。

 あぁ、頭痛と目眩がしてきた・・・。

 

 

「・・・エージェント」

 

「なんでしょう」

 

「これは、本物なのか?」

 

 

 実は何かしらのドッキリ企画を(遂行する意図はともかく)やっていて、そのネタばらしをするなら今だぞと、新聞片手に言外に告げる。いや、むしろそうなのだと言って欲しかった。

 さっきの知らないうちに屋外に放り出されていた件も、よく考えてみればエージェントのテレポート能力を使えばなんとか出来るんじゃないだろうか。以前ねぐらに不法侵入してきた時も、ウロボロスとチミっ子の二人をテレポートで連れ帰ったのだから。

 

 だから、この悪夢のような今も、実は鉄血側が何かしらの理由で仕掛けたドッキリなのだ。頼む、そう言ってほしい。でなきゃ、俺たちはどうやって元の世界に戻るんだ??

 

 

 もはや神頼みに等しいくらいの懇願は、ベルの音とともに現れた来客によって、粉々に打ち砕かれた。

 

 

 

 

「いやぁー代理人、申し訳ないんだけどスケアクロウが忘れ物しちまったみたいでさ。この間スケアクロウが泊まった部屋の鍵をちょっと開けてもら、っても・・・っ!?」

 

「っ!!?」

 

「えっ」

 

「なっ!!?」

 

 

 振り向いた先にいたのは『左の頬骨にあるはずの傷が無い』顔をした”俺”と、もう一人のスケアクロウだった。それを認識した瞬間、立ち上がりFive seveNを抜き”俺”へと向ける。

 一方で、俺と相対する”俺”も同じく、ホルスターから”リボルバー式拳銃”を抜いて俺へと向けた。

 

 

「・・・オイオイ、一体何の冗談だ?」

 

「そんな、レイさんが、二人・・・?」

 

 

 一切の油断も隙も無い姿勢で、”俺”ともう一人のスケアクロウがつぶやく。それは俺のセリフだっての、まさか声まで寸分たがわず同じときたか。

 

 

「なんの冗談だって? それはこっちが聞きてえな?」

 

「・・・あぁ・・・」

 

 

 度重なるあり得ない出来事に痛む頭で、なんとか意識を集中しながら返答する。スケアクロウは、よりにもよって並行世界の生き証人であるもう一人の”俺”が出てきた事で、エージェントの話した全てを理解したようだ。それはすなわち、本当に別の世界に来てしまった事。そして戻る事の叶わないであろう現実への諦めの念か。

 

 

「・・・おい。お前、俺のクローンか何かか?」

 

 

 クローン、か。

 そうであれば楽だったかも知れないな。少なくとも、この世界の住人である事に変わりはないんだから。

 

 だが現実は違う。俺はお前のクローンじゃない。

 

 

「いーや、違う。店主のエージェント曰く、俺とこっちのスケアクロウは”並行世界”からやってきたんじゃねえか?って話をしてたところだ」

 

「はぁ? 並行世界だって?? 何をバカなことを・・・嘘付くならもっとマシな嘘を付くんだな!!」

 

 

 意味の分からないという表情を浮かべたのも束の間、おちょくられてると取った”俺”の指がトリガーに向かっていく。銃口の射線上は、俺の額だ。

 直後、飛んできた弾丸を紙一重で避け、その勢いのまま”俺”へと肉薄する。

 

 

「っ!」

 

 

 まさか弾を避けられるとは思ってなかっただろう。だが、慣れてさえしまえば簡単にできる。

 

 ”俺”へと最接近し、Five seveNのストックを上から数度振り下ろし、最後下ろした腕を払うように奴の頭に叩きつける。バランスを崩して仰向けに倒れた”俺”にマウントを取り、そして銃口を突き付ける。

 

 

「チェック、だな。いきなりぶっ放してくるから咄嗟に反撃しちまったが、俺には今の所”お前”を殺すつもりは無い。だから、抵抗しないでくれよ。俺に『チェックメイト』をさせないでくれ」

 

「ぐっ・・・反則、だろ、撃たれた弾を、見て、避けるなんて・・・」

 

 

 ハァ、ハァ、と大きく息をしながら返事をする”俺”。

 

 

「悪いな。俺は裏稼業やってる身の中じゃ相当に修羅場を潜って来てるもんでな」

 

「うら、稼業だと・・・? お前、傭兵じゃ、ねえのか、よ?」

 

「傭兵? そういうお前はオモテで傭兵やってんのか?」

 

 

 ・・・なぁるほど。そういうところも”並行世界”ってか。俺は裏稼業の何でも屋。対してこの世界の”俺”は傭兵が仕事らしい。パラレルワールドとはよく言ったもんで、オモテで生きてるのかウラで生きてるのか、同じ人物のはずなのにそこから違うなんてこともあるのか。

 

 

「お二人とも、そこまでにしてください」

 

 

 戦闘態勢に入り、スカートの下からアームを展開したエージェントがツカツカと接近してくる。さらに武装したウェイトレス姿のリッパーやイエーガーも・・・ああ、このチョイスはさすがに喫茶鉄血というだけあるわ。

 

 ともかく、エージェントが本気でアームのエネルギーを解放すればここら一帯焼け野原になるのは、以前の護送任務で実際に見てはっきり理解してる。まあまさか実弾を一発撃たれるとは思わなかったが、正直あれは立場が逆だったらおそらく俺も撃ってたかもしれない。

 

 エージェントの言う通り、銃をホルスターに収め立ち上がる。そしてもう武力行使をするつもりは無いことを示すため、俺は静かに両手を挙げた。

 ”俺”も呼吸を整えながら立ち上がり、銃をホルスターにしまった。

 

 

「・・・レイさん」

 

「「うん?」」

 

「いえ、傭兵の方のレイさんです」

 

「あ、ああ・・・」

 

 

 店の中でドンパチ、しかも最初に引き金を引いたのは自分。店主のエージェントに何を言われるのかと、内心ドキドキしてる様子。

 

 

「目の前に自分と瓜二つの存在が現れて動転するお気持ちは分かりますが、くれぐれもお店で銃を抜かないよう、厳重に注意させていただきます」

 

「あ、ああ。それは、申し訳ない・・・」

 

 

 ”俺”はこの喫茶鉄血のエージェントとはそれなりの付き合いがあるのか。怒られた事にシュンとした様子を見せている。・・・こういう細かいところの性格も微妙に違いそうだな。

 

 

「そして、もう一人のレイさん。貴方も同じく、お店で銃を抜くのは止めていただきたいですわ。お気持ちは分かりますが、いきなり拳銃を抜くというのはいささか早まり過ぎな行動ではないかと」

 

「裏でチンタラ相手の出方を待ってたらあっという間に殺されるもんで、つい癖で・・・。ともかく、こちらも申し訳ない。トラブルを起こしたことは謝らせてもらう」

 

 

 謝罪と一礼をエージェントと”俺たち”にそれぞれする。一応の礼儀として、互いの初対面は最悪な部類に入るとはいえ、その後も関係が悪いままにしておく理由は特に無いからな。関係を修復できるならしておくに越したことは無い。

 

 

 エージェントがスカートの中に武装を収納したのを見て、俺は”俺”へと歩み寄る。近づいてくる俺に対し”俺”は警戒して強張った顔を浮かべるが、俺が握手の形を作りながら歩み寄るのを見て少しだけ柔らかくなった。

 

 

「こっちの世界の”俺”で、いいんだよな? さっきは散々殴りつけて悪かった。痛みは無いか?」

 

「ああいや、大丈夫だ。それにこっちこそ、いきなり撃っちまって悪い。でもはっきり言ってカスってすらも・・・ないよな?」

 

「ああ。それは心配いらない。さて、ファーストインプレッションは正直最悪だったが、だからってその後の関係まで最悪にする必要は無いだろ? いっそこの出会いを飲みの会の笑い話に出来る位、友好的な関係を築こうぜ」

 

「やれやれ。ったく、なんて話のオチだよ」

 

 

 お互いに苦笑しながらも互いの手を握りしめる。

 その様子を見たエージェントはほっと一息ついた様子でカウンターへと戻る。

 

 

 さて、並行世界がどうこうの話の続きをする前に。

 一旦荒らした店の状態を現状復帰させねえとなぁ・・・。いやはや、申し訳ない。




 これから幾つかに分けてお話を書いていきます。
 さっきも言った通り、本編との直接のつながりはないですので、レイは背中を痛めたりは(今の所)してません。

 さて、この後レイはどうやって生き抜いていくんだろうか??(実はいろいろ問題山積み)
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