裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
お待たせしました。
二体のハイエンドモデルたちと一悶着はあったが、とりあえずは人を待たせてると言うことでゾロゾロ会議室へと向かうことに。
というかエージェントめ。俺に耳打ちする寸前に周囲をチラ見したってことはスケアクロウの存在に気付いてたな?
会ってまだ一時間も経っちゃいないが、交わしたやり取りから察するにアレは確信犯だろう。
ちなみにスケアクロウは未だに拗ねてる。それはもう拗ねに拗ねまくってる。今までにないくらいご機嫌斜めだ。
ほっぺは相変わらず赤いし、まだちょっとプクーッとしてる。あれこの子、こんなに感情表現豊かな性格してたっけ? 最初に会った頃とは違いすぎて、もはやAIの思考パターンがバグったんじゃないかと疑うレベルに別人だぞ。
「うふふ、罪な男性ですわね」
「はぁ?」
流し目にクールな微笑を浮かべるエージェント。ていうかこうなってるの、キミの振る舞いも原因の一つだってのをご理解してらっしゃる?
俺よりもずっと一緒にいたんだろうから分かってるだろうけど、この子が一回拗ねると機嫌を治してもらうの大変なんだぞ?
「さて、この奥が護送作戦のブリーフィングを行う会議室となります。依頼人の工場長以下、工場の上級役員全員がこちらにてお待ちしております。この先は私たちは入室を許可されておりませんので、入り口にて待機させていただきます」
もうすでに全員揃ってるんかい。
耳打ちとかそういう余計な接触してる間、俺は依頼人をこの部屋でずっと待たせ続ける事になっちまったじゃないか。
なんてこったい、これでまた鉄血側に切れるカードが一つ減っちまった。
「では・・・コホン。工場長、レイ様をお連れ致しました」
『どうぞ』
「失礼します」
見た目通りメイドをモチーフにした行動プログラムを組んでるのか、本物のメイドと(多分)変わりない丁寧な所作で扉を開くエージェント。そこにはつい先ほどまでの魔性の女らしさは欠片も見られず、ただ主人の命に従う従者としての動きだった。はえー。
「大変お待たせしまして申し訳ありません。ただいま参りました」
「お待ちしておりました、レイ様。そこではなんですからどうぞ、お入りください」
「失礼いたします」
依頼者側から入室の許可が出たのに従い、俺はなるべく丁寧な動作を心がけながら会議室へと踏み入れる。
直後に入室を確認したエージェントにより扉が閉ざされる。
さぁて、いよいよジャッジの時間だ・・・。
「では改めまして、ようこそ鉄血工造第三兵器産業廠へ。私が工場長を務める『ルード・ジーバン』です。まずは唐突なご指名という形での依頼に応えて頂けました事、心より感謝申し上げます」
会議室の中央に鎮座する円卓。そのトップが座る席に腰掛けるのは恰幅の良い老紳士という身なりをした工場長。
一見朗らかで柔和な表情を浮かべる彼だが、この大企業が運営する工場の長という地位に就いているんだ。よほど強いコネがあって就任したとかでもなきゃ、それなりに頭の切れる人物のはず・・・。
「こちらこそ、数あるメンバーの中から私をご指名頂けた事に感謝しております。さて、工場長殿を始めとして皆様もきっとご多忙の身。早速ですが今度行われる護送作戦についてのお話をさせて頂きたく存じます」
スケアクロウの件について突かれるのは何としても避けたいところ。少しでもこの場にいる時間は短くしたい。
それは大企業の重役に身を置き、常に忙殺されている彼らもきっと同じことだろう。あくまでそういう理由があっての提案ということを匂わせつつ、時間を捲いていく。
「分かりました。では・・・。すまないが、例のボディをこちらに運んできてくれるか」
「かしこまりました」
ルード工場長が一言命じ、部下の男性は何かを取りに奥の部屋へと退出する。
ボディということは、護送する例の新型ハイエンドモデルか?
そう時間の経たない内に、何かが乗ったストレッチャーを押してくる男性社員。
ストレッチャーにはこれまた見目麗しい若い少女が目を瞑り、胸の上に祈るように指を絡めた両手を置いている。
・・・なんでこの運び方をチョイスしたんだろう。これじゃまるで若くして死んじまった少女の遺体を運んでるみたいじゃないか。
後頭部でエージェントのようなお団子を作り、さらにそこから後ろに伸びるサラサラの長い髪。ここらでは見かけない黒っぽい服に病弱に思えるほどの色白の肌。もしこの子が人だったら、下手すりゃ死体にすらも一目惚れする奴が出てくるんじゃないか、そう思わせるほどに整った少女の顔立ちをしていた。
人形の造形に関しては鉄血の技術力は凄まじいものがある、素人目に見てもそう思わせる位に美しい少女が眠っていた。
「・・・この人形が、件のウロボロスと名付けられた新型の?」
内心、持ち込まれた人形の完成度に驚きつつも、工場長にこの人形が護送対象なのかの確認を取る。
「ええ。我が社が誇る技術とノウハウを最大限に詰め込みましてこの度完成に至りました、戦術人形の一種の到達点ともいうべき人形でございます。このヘソ出しルックのセーラー服といい、バランスのとれたプロポーションといい、今までご覧になられた鉄血の人形の中でも特に可愛らしいでしょう?」
「・・・はい?」
いまこの男はなんと言った?
ヘソ出しルックのセーラー服にバランスのとれたプロポーションがあって、この人形は特に可愛いでしょ? そう問うたのか?
ちょっと待て、戦術人形の到達点の一つと銘打ったなら普通何かしらの武装の運用の仕方とかってのを説明するもんじゃないの?
なんで戦術人形のあるべきコンセプトではなく見た目のルックスの説明から入ってるわけよ。
円卓に腰掛ける他のメンツを見ても一様にウンウンと頷いている。まるで独裁主義者の言うこと全てにYESと言うような異様とも取れる光景。何か違和感を覚え・・・ツラ見る限りどいつもこいつも本心から思ってるなコレ。
なんだろう、嫌な予感がする・・・。
「ですから、今日までレイ様がご覧になられた鉄血の人形の中でもこの子は特に可愛らしい部類に入ると思うのですが、いかが思われますか?」
「You何いっch・・・ンンっ、失礼。戦術人形のルックスが今回の護送作戦と何か関係があるのですか?」
『大有りですともっっ!!』
「うおっ!?」
思わず本心からのツッコミが出かけたがなんとか飲み込み問いかければ、なんとこの場にいる俺以外の全員から答えが返ってきた。一切のブレなく綺麗に重なったハーモニーとなって。えぇ・・・。
「以前スケアクロウを奪った時と同様に、我が社の人形を奪おうとする不届き者が現れるやもしれません!」
「奴らにスケアクロウを奪われた時、我々はどれほど過去の自分の行いを悔やんだことでしょうか!」
「もっと警備体制を強化していたらあの子は奪われなかったのではないか?」
「研究をする以外にもっとできることもあったのではないか?」
「奪われた先であの子があの手この手で汚されたらどうしよう・・・」
「もしあの子が自死を選ぶほど傷付けられていたらどうしよう・・・」
「我々は決意した!」
「あの子たちの美貌に惹かれ、体を奪い去るという凶行に走る者達が現実にいるのだと!」
「我々はその教訓を生かし、次はとびっきり不細工な人形を作って、そんな奴らの標的にそもそもならないようにしようと考えました・・・」
「でも出来なかった!」
「我々の技術者としての魂が、見ていて可憐だと思わせるようなとびっきりの美少女を作るように手を動かさせてしまったのです!」
「故に、今回もウロボロスの美貌に惹かれ奪い去ろうとする愚か者が現れるやもしれない・・・!」
『だからこそ、スケアクロウを救って頂いたレイ様に護衛をお願いしたいのですッッ!!!!』
「・・・」
んなこと言われてもなぁ・・・。
どうも目の前の方々はボディを掻っ攫う敵勢力の目的を勘違いしてらっしゃるよう・・・いやでも、そんな事を本気で思ってられるような頭してたら鉄血の幹部に就けるか? それが一人二人ならまだしも、この場の十数人全員が口を揃えて言ってるんだぞ。・・・これはジョークなのか本気なのかどっちなんだ。
仮に彼らが本心からそう言っているのなら、その危機意識は少しポイントがずれている事を指摘した方がよさそうだが。
まず第一に、スケアクロウを攫った武装勢力がなんで多大なリスクを冒してまで工場に襲撃をかけて人形を攫ったか。
奴らが欲していたのはスケアクロウに使われている”鉄血のテクノロジー”であって、間違ってもスケアクロウ本体の体ではない。そりゃ掻っ攫った後のついでで欲を発散するための道具にしようとも考えてたか分からんが、それはあくまでも二の次三の次の事であって、奴らがとった行動の主目的ではないのだ。
もっとも、肝心の盗もうとした鉄血の技術があまりにも凄まじく、技術漏洩どころか盗み出すことすらも出来ずに奴らは終わったがな。
ストレッチャーに眠るウロボロスはとても儚げに横たわる美少女といったような様で、百歩譲ってそういう欲の対象に見てしまう奴がいるかもしれないというのは理解出来る。
だがそれだけの理由で”あの鉄血”に武器をこしらえて本気でカチコミを掛けるかと言われたら、よほど頭のネジがぶっ飛んだ思考でもない限りまずあり得ない。武装するのに必要な武器弾薬はタダじゃないし、そしてそれらは決して安くはない。
護送集団に襲撃をするにあたり、考えられる目的は二つ。
先日の一件の様に人形本体に使われている技術を盗んで売って利益を得るか、人類至上主義を掲げる自称人権団体の過激派が人形の存在を葬ろうとするためか。
前者はともかく、厄介なのは後者の方だ。
人権団体とか色々語っているが、連中が真に成し遂げたいのは社会基盤の全てを人間が司る世界を取り戻すという理想だ。
人形が現代の社会的循環の大半を担っている状況、それは連中にとっては非常に面白くないのだ。飲食店に勤める民生用人形しかり、戦場で銃持って戦う戦術人形しかり、ね。
あくまで『将来の人形のあり方について議論すべき』とした上で、少しづつ人形から人間の雇用へとシフトしていこうという考え方の団体はまだマシな方で、中には理想を達するためならば人形はどんな方法でぶっ壊してもいいなどと宣う過激派も一定数いるのが実状だ。そういう奴らはどこかしこで武器や爆弾などを仕入れては、今回の俺たちのような人形を護送する列などに突如手榴弾をぶん投げたり発砲したりするわけだ。
ちなみに、護送集団の中に奴らが一番尊重すべきと発している”人間”がいたとしても奴らには通用しない。『護送集団に加わっている人間=人形を作っている or その関係者』と見なし、”人形を世に蔓延らせる存在”として本当に容赦なくぶっ殺そうとしてくる。相手が女だったらそれこそ気がすむまで犯し抜いた後に殺すとかな。
人権を主張している奴が相手の人権を完全に踏みにじるという実に痛々しい頭の回路を持っている連中だが、そういう奴に正論言っても感情でねじ伏せられて結局通じないから厄介なのだ。ある種子供の方がまだ純粋で救いようがある。子供は分からないだけで教えてやればちゃんと理解するんだから。
とまあ話が完全に逸れたが、この方々は自分が思っている以上に面倒な事情を抱えて護送するという事実を認識してるのかどうか、正直怪しいな。
というか、コイツらあれだ。
まさか、鉄血工造の上級役員は全てがこんなんなのか?
・・・えぇー。
実は、レイに対する鉄血の役員達の反応をどうするのかっていうので打っては消して打っては消してをずっと繰り返してました。
ていうのも実はこの小説、見て分かる方は分かるかもしれませんがプロットも何もありません汗。
なので着地をするためにどういう過程を踏んでくのかとか色々考えてる中で、やはりスケアクロウの生みの親とも言える鉄血の社員達、彼らがレイに対してどう向き合っていくのかっていうのは実は意外と重要な要素と成り得る可能性が極めて高い訳です。
なので、ここの展開をトチるとエラい事になるといいますか・・・。
という感じで複雑に事を考えすぎてたらいつの間にかこんな時間になってました汗。改めて楽しみにしてくださってる方には申し訳ありません。
大体の行く末方向性というのは決まったので、こんな感じで投稿していきたいと思います。
題して『鉄血工造役員は全員、熱いジャパニーズサブカル魂を胸に秘めてるんだぜルート』です。
色々長々と書いて進みが遅くなるのは当方の悪い癖なのですが、次からは少しづつ進みが早くなってまた読みやすくなると思います。
それではまた。
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