裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 お待たせして申し訳ないです。
 スケアクロウ、新たな道を開く?


-16-世の中テクがないとどうしようもない事ばかりだけど諦めずに頑張ってこそ流した汗は輝くのよ

 

 

 鉄血三人娘不法侵入事件を終わらせ、俺のベッドで”埋め合わせ”をしつつ二人で爆睡して数刻。お昼を少し過ぎたあたりの時間になってお互いが目を覚ました折、ふと思い浮かんだようにスケアクロウが呟いた。

 

 

「・・・そういえば、バイクってどうやって乗るんですの?」

 

「どうやって・・・とは??」

 

 

 彼女のなんとなしに呟かれた疑問を思わず拾ったが、多分その時の俺はなんとも言えない顔を浮かべてたと思う。

 はて、二輪車なんて跨ってバランス取りながらアクセル吹かして走るだけだが、何がそんなに不思議なのか。俺からしてみたら、地球の重力に逆らってフヨフヨ浮いていられるスケアクロウの鉄血テクノロジーの方がよっぽど訳分からなくて興味を惹かれるぞ。

 そう返してやるも俺の回答に不満があるようだ。聞きたいことはそうじゃないという少しばかりの顰め顏で、再度問いを投げかけられる。

 

 

「ですが、貴方の乗るあの二輪車に関しては、私の知る一般的な二輪車とは遠くかけ離れてますの。あの巨体で二輪となれば、体を傾けるだけでバランスを維持しきれるものでもないでしょう?」

 

 

 ああなるほど。確かに仰る通り。

 

 オンボロは二輪の規格からすればあまりにも常識の枠をぶっ壊したサイズだ。二輪車は四輪が走れないような所も軽快に走り抜けられる事に意味があるというのに、あれの場合はその巨体が二輪である事の必要性を全部台無しにしてると言って良いからな。

 大型のワゴン車やホロを付けた人員輸送用の軍用車に匹敵するサイズともなれば、ひとたびバランスの取り方を間違えればすぐにすってんころりんと逝く。下敷きになる側の足に車重の大半がのしかかり、よくて粉砕骨折、最悪は足の細胞が壊死して切断になるというおまけ付きでな。

 しかし一方で感覚さえ完璧に掴んでしまえば、コイツはライダーに最高の走りを体感させてくれる最高のバイクへと一気に化ける。まあ今はご存知のように左側にサイドカーを付けてるから、よほど変な動かし方をしない限りは横転やコケたりってことはほとんど起こり得ない。可能性はゼロではないけどな。

 

 ふむ、オンボロの動かし方を知りたいというのであれば、教えることは吝かでもない。この先俺が運転できなくなる状況になることもあるかもしれないし。良い機会だし、二輪車の動かし方を彼女に仕込むとするか。

 

 

「いーや? 感覚さえ掴んじまえば意外と素直に言う事聞いてくれるんだぜ。乗る側がその感覚を掴むまでに時間がかかるってのがアレの良くない所だけどな。そんなに気になるんなら良い機会だ、二輪の動かし方を教えてやるよ。技能の方も含めて、実際に走らせてみるか」

 

「・・・素人にあのバイクを運転させるとは、正気でして?」

 

 

 ジトーーッとした目で見られる。確かにオンボロの本車じゃあ危なくてとてもやらせられないが、あれ自体そもそも普通のバイクと同じ感覚で運転しちゃいけない代物だ。まずは一般サイズの二輪車に乗ってもらって感覚をしっかりと掴んでもらわないとな。

 

 さっきも言った通り、自転車や小さいバイクなら転けて倒れても”防護をしっかりしていれば”そこまで大怪我になる可能性は低いが、いきなりオンボロで練習するのは万一の時のリスクが大きすぎる。スケアクロウなら足の部品を丸々交換という形で済むかもしれんが、しなくて良い怪我をしかねない方法をあえて選ぶ理由はない。

 加えて彼女は人形だ。一回物事を記憶しちまえば変なショックでも与えられない限り忘れることはほぼ無いわけで、下手すりゃ天才レベルの人間よりも物覚えが良いんじゃないかと睨んでる。

 

 

「さすがにそこまでの無茶振りはしないよ。前にタバコ止める止めないで揉めたギルドの建物があるだろ? あそこにメンバーの足用に普通の二輪車が何台か止めてあるんだ。まずはギルドに出向いてそれから練習だな。人間だったら何日か掛けてゆっくり覚えてかないとすぐ事故るだろうが、優秀な人形のキミならそんなこともないだろ?」

 

「・・・サラリとハードルを上げないでほしいですわ。ですが、教えていただけるというのでしたら是非とも。知識は持っておいて損はありませんもの」

 

「ああ。それに、頭だけで知ってるのと頭と体の両方で知ってるのとでは意味が全然ちがう。インプットされていたら直ぐに出来るってもんでもない・・・のか?」

 

 

 ちょっと待て。自分で言ってなんだが、よくよく考えたら昨夜の404小隊は自前の四駆を自分たちで運転してたよな。

 あれ、人形ってプログラムさえインストールされてれば一人前のドライバーと同じように運転できちゃうのか? 人形の作りについてはあまり詳しくないからよくわからん。

 

 

「それはその人形にインストールされる運転技術のプログラムが、どれほど複雑で高度な演算を行えるかの程度に依るでしょう」

 

 

 なるほど、どのような状況でどう動くのかってのを命令するコマンドがなかったらどうしようもねえわな。

 運転に必要な状況判断ってのは人間にとっても結構難しいものも多いんだが、大戦が終結して人手が圧倒的に不足しまくってるこのご時世、下手したら生き残った市街地を走るバスの運転も人形がやってたりするのである。

 人形を運転手に据え、実際に車を動かす中で遭遇する様々な状況とAIが導き出した判断、その結果どうなったかをとにかくデータとして蓄積しまくって、膨大な数の記録から最適解を見出して実際に実行に移し事故を回避する、なんてことも人形工学の技術が進んでいればきっと可能なんだろう。

 すなわち、人形の運転がゆりかごの様にマイルドな運転になるのか、起震車が起こす様なマグニチュード7みたいな運転になるのかは、人形にインストールされたプログラムの質によって変わるってことか。

 

 なら、プログラムどうこう以前に実地演習で彼女にインストールしてもらわなきゃいけない以上、教官役の俺は責任重大だな。

 

 

「んじゃ、その運転技術のプログラムとやらを、実地演習という形でインストールしてくんだな。目で見て耳で聞いて体で覚えて、運転に必要な知識や技能を余すことなく吸収してくれ」

 

「わかりました」

 

 

 ということでスケアクロウをサイドカーに乗せ、市街地にあるギルドの建物にまで走り抜ける。

 受付にて事情を話し二輪を二台借りてさっそく教習を始めるのだが、スケアクロウの衣装は明らかにバイクの練習に適してないので、ギルドが管理しているバイク用着の長袖長ズボンにプロテクターとヘルメットも一緒に借りてスケアクロウに着させる。

 本人はこのままでも大丈夫と言いたげな不満顔だが、はじめは誰だって絶対コケるから良いから大人しく着替えなさい。

 

 しぶしぶといった風に更衣室に向かうスケアクロウを見送って5分あまり、着替えを手伝ったアインスに付き添われながら練習着姿になった彼女が出てきた。

 ふだんはツインテールにしてる髪型も後ろで一括りに結ばれており、いよいよ練習を始めるぞという格好になった。これもこれで似合うじゃないか。

 

 

 教えるのはMT二輪の運転の仕方だ。ATしか乗ったことない奴にMTのバイクは動かせない。だがMTを動かせる奴は両方動かせる。ならどっちも動かせる方が仕事の幅は広がるよな?

 あともう一つ、大戦の影響で大抵の道がボロボロのオフロード状態になってるという現代の道路事情もあり、ニーグリップという体勢を構造上取れないか取り辛いAT車は現在ほとんど出回っていない。基本的にバイクを使うのは軍人か俺たちの様な裏稼業の人間くらいで、そういうやつらこそ路面に応じた運転時の安定性を最も重視するわけで、結果圧倒的に普及してるのはMT車のバイクなのだ。

 仕事の帰りでバイクをパクったりとかって事もあり得るし、スケアクロウは基本浮いて帰るんだろうが、そもそも浮いちまったら正体は即バレするわけで。

 

 なのでその旨を説明した上で、少々慣れるのに時間はかかるがMT二輪の運転の仕方を体に叩き込んでもらう。

 

 

 結果はどうなったのかというと、おおよそ誰もが考え付く通りの展開だ。

 

 まずバイクでも四輪車でも、MT車ってのは両手両足をフルで活用して動かす仕組みになってる。四輪ならまだゆったり座って操作できるから楽なんだが、二輪はこれに加えてどっちかに傾こうとする車体のバランスをとり続けなきゃいけない。

 右手でアクセルと前輪のブレーキ、右足で後輪のブレーキ、左手のレバーでクラッチ、左足でシフトチェンジを操る。そこへバランスキープに、前だけじゃなくて周囲やミラーも使って後方を含めた安全確認までしなきゃならないわけで。ぶっちゃけ慣れるまではMTのクルマを動かすよりもさらに頭を使う。

 

 

 もちろんいきなり動かさせてもコケるに決まってるので、最初は後輪が接地しないよう両脇から支えるスタンドにバイクを固定し、それに跨った状態でシフトチェンジとアクセルを回しつつ半クラからギアを徐々に繋げるという動作を反復練習させる。

 後輪は当然エンジンが動いてるのだからブンブン回るが、接地してなきゃただその場で空回りするだけ。とにかくバイクのギアの扱いを跨りながらやるってのをまずは経験してもらわないと次には進めない。

 

 ・・・ふむふむ。とりあえず本当に初歩の初歩はよく出来てるな。綺麗にクラッチ噛ませてスムーズな変速を行えてる。減速チェンジも同様に、1速と2速の間のニュートラルにも上手く入れられてる。

 じゃあ次、実際に今の動作を”駆動輪が接地した状態”でやる練習に進もうか。

 

 

 難しいのはここからだ。実際に二輪を動かすってなった瞬間にスケアクロウさん、まあよくコケる。あれ、プログラムでインストールするのと口頭で教わるのとではこんなに差があるのか? それとも俺の教え方が下手くそなだけ?

 

 今までの彼女の仕事での飲み込みの早さから、下手したら今日一日でもう路上に出られるんじゃねえかとも思ったんだが、このペースだと精々行っても走りながらバランスを取れる様になるので精一杯だな・・・あ、またコケた。

 

 

「・・・うぅ、どうしてバイクはこんなにも言う事を聞いてくれないんですの?」

 

「そりゃ慣れないうちはそんなもんよ。むしろあっという間にポンポンステップアップしていったら俺の立つ瀬がねえ。そうやってコケ続けてる内にある瞬間コケずに走らせられる様になるんだよ」

 

「本当ですの・・・?」

 

 

 あら、打ちひしがれてどよーんとしてらっしゃる。初めての事に挑戦して味わう挫折は初体験か? まあそりゃそうか。

 スケアクロウが自転車に乗れるんならまだ分かりやすく説明できるんだが、人形として生み出された彼女にそんなものを扱う機会があったとは思えないし、初見でこれにぶち当たっちまった以上は頑張って経験を積んでもらうしかない。

 

 それにしてもよくコケる。本当によくコケる。その度にうぅ〜と唸りながら涙目でバイクを睨むスケアクロウ。ほっこりする。俺も”あの人”にバイクの乗り方を初めて教わった時はこんな風によくコケてたっけなぁ・・・。結局次のステップに進むのに二日掛かったのは、良いんだか悪いんだかよく分からん思い出だけど。

 

 

「心配すんなって。小さい進歩じゃあるけど、だんだんコケた時に上手く受け身を取れるようになってきたじゃないか。怪我を最小限に抑えるやり方を確実に体が覚えてきてる証拠だ。その意気でどんどん乗っていこう。時間はたっぷりあるし、気の済むまでとことん付き合うさ」

 

「・・・んもう! そこまで言われたら何としてでも乗れるようになってみせますわ!!」

 

 

 スケアクロウの魂に灯がついた。

 

 目の色を変えた彼女は、それまでの打ちひしがれた絶望モードから立ち上がって見せた。必死にバイクを乗りこなせるようになろうと懸命に努力を続け、ひたすら練習に打ち込みまくる。何回も、何回も、何回も、ただひたすらに。

 

 ・・・それでも現実というのは厳しいもので、結局今日はスケアクロウは自力で走れるようにはなれなかったんだけどな。だが本来人間がバイクの練習をするとなりゃむしろこれが普通だろうし、スケアクロウ。そんなに気に病むような事じゃないぞ。明日も練習に付き合ってやるから今日はもう休もう?




 毎度どうも、作者です。前回の投稿からまーた時間がちょっと開きましてすんません。
 投稿開始直後のネタが浮かんでた頃ってのはやっぱり新規登録者限定のブーストアップ効果的なものだったんですかね?汗

 気がつきゃレイが車の仕組みのウンチクを話したりしてたんですけど、そんなもの見せられてもアレだよなぁとか思って直してるうちにまた日付跨いじまいました汗

 最近少しだけ調子が戻りつつあるので、少しづつ元の感じにペースを戻しつつ基本1話完結のような軽い感覚で書いていきたいなと思いますので、皆様改めまして応援よろしくどうぞです。

P90に名前を付けるとしたら?

  • そのまま『P90』でいんじゃね?
  • 『ナインティ』でいんじゃない?
  • ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
  • いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
  • 良いアイデアがあるから感想に書くぜ
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